5.授業実践事例




5.2 その他の同期型システム利用授業実践事例

 同期型e−ラーニングシステムのさまざまな活用事例を蓄積するために、本プロジェクトでは現場教員の要請を受け、情報倫理授業以外の授業の支援を行った。
  1つのパターンは、例えば社会人講師がその職場から仕事の紹介をするなど、「その人」「その場所」である必然性が高い授業実践のパターンである。中学校の総合的な学習の時間で実施した社会人講師授業と、工業高校の専門科目の時間に実施した浄水場の施設見学授業がこれにあたる。
  またもう1つのパターンは、異なる学校・学級が交流学習を行うパターンで、やはり遠隔通信を利用する必然性が高い。交流学習については小学校の生活科で実施した。
  これらの授業実践によって、今後e−ラーニングシステムを活用した授業実践を情報倫理授業以外に展開してゆく際に、基礎となる知見を得ることができた。以下にそれぞれの授業実践を説明する。


(1)あきる野市増戸中学校における同期型e−ラーニングシステムを利用した社会人講師授業(総合的な学習の時間)

(A)指導計画・指導案の概要

 あきる野市立増戸中学校では、総合的な学習の時間を利用して、第1学年では職場訪問、第2学年で職業体験、第3学年で進路指導を行って、段階的に社会とのかかわりや自らの進路を考える取り組みを行っている。
  今回の授業は、第2学年生が職業体験に取り組む前の事前学習として、さまざまな仕事を取り扱う就職情報誌の編集者を招いて話を聞く、社会人講師授業として計画された。
  社会人講師が自らの仕事や仕事に対する考え方を説明する部分は、教室で対面して行うことに必然性がある。このため、学ぶ楽しさ・働く楽しさをよりよく伝えるという付加的な目的で、授業の一部に別の社会人講師(パソコン教室経営者)の職場(パソコン教室)からの中継を取り込む形で授業を計画した。
  講演の流れとしては、まず教室を訪問している社会人講師が自分の仕事の内容や所属している企業の概要を紹介し、そこから自分の職業観(「楽しいから、働く」)を、特に企業理念と個人の目標を両立させる観点から、自らの成功事例を交えて説明する。
  次に、主に高齢者を対象に、パソコンを通して学ぶことの楽しさを伝えながら、自らも楽しんで仕事をしているパソコン教室経営者に、職場の様子や生徒の作品を交えて、中継で話を聞く。
  最後に、生徒に簡単なワークシートを配って、将来の進路への不安や考えていること、質問などを記入してもらい、教室の社会人講師と遠隔の社会人講師が一緒になって答える、という流れである。
  職業体験の前の動機付けという授業のねらいと、楽しみながら働くことの意義を伝えるという社会人講師の目標が設定されており、事例の一部として遠隔の社会人講師の中継が位置づけられている。

(B)概要

日 時: 2003年 10月 2日 13:30−15:00
場 所:あきる野市立増戸中学校・体育館
テーマ:「どうして はたらくの?」
講 師:株式会社リクルート 大橋幸子氏
ゲスト:パソカレッジ 森 万見子氏(高田馬場の教室より中継)
内 容:「楽しいから私は働く。お腹も心も、いっぱいにする。」
タイムテーブル
0:00:講師による仕事紹介

0:10:講師の職業観の説明

0:25:仕事の成功事例紹介
※(通信機器トラブルにより切断)※
0:35:仕事や進路に関するQ&A

※(通信機器が復旧、通信再開)※
1:10:外部ゲストによる仕事・職業観紹介

1:25:社会人講師によるまとめ
1:30:授業終了

(C)実践授業の評価

    (ア)社会人講師授業としての評価

 本授業実践は、職業体験学習の事前学習として計画され、生徒に職業や進路についてより深く考えるきっかけとなることを学習目標としていた。
  この意味では、社会人講師自身の仕事の説明はたいへんわかりやすく、職業観も非常に魅力的なものであり、多くの生徒の共感が得られている様子であった。
  特に社会人講師の商品である非常に分厚い情報誌について、生徒全員分の現物を持ち込んで手にとらせ、具体的に行われた説明は興味深く、「ビジネスモデル」のような一見高度な話も、自然に理解することができたようであった。

(イ)通信トラブルによる混乱

 本実践においては、外部のパソコン教室から中継を行おうとした直前に、通信機器トラブルによって接続が切断した。障害の原因は、かなり離れたパソコン教室から無線LANによってインターネット接続をしており、電波の状況が悪化したためである。この障害については、無線LAN機器のアンテナの位置を調整することによって解消し、授業の最後には中継を間に合わすことができた。
  しかし最後に通信が再開して中継が可能になったとき、どうしてわざわざ外部から中継を行うのか、そこで語られることをどう位置づけたらよいのかという点で、聞き手の側はかなり混乱してしまったように思われる。そしてこの中継の部分については、教室の社会人講師の側も外部ゲストの側も、この混乱を収拾できないまま授業を続けてしまうことになった。
  社会人講師は授業のような場で話をすることに慣れているとは限らない。特に社会人講師同士が中継を通して会話しながら講演を進めるような場合、よほど事前にシナリオを決めておかないと、障害等があった場合に対応することが難しい。今回は社会人講師授業の中で、外部からの中継をどう位置づけるかという点で、検討が不足していたように思われる。

(ウ)質疑応答にむかないe−ラーニングシステム

 中継にあたって、教室の社会人講師と外部ゲストとの事前の打ち合わせでは、教室の側が主導権をもって外部ゲストの側にインタビューを行うような形式で、仕事の特徴や職場環境、生徒である高齢者の様子やユニークな作品などを紹介してもらうことを予定していた。
  ところが、同期型e−ラーニングシステムはインターネット公衆回線を経由して通信するため、電話回線や無線回線に比べると極端な形で、通信に時間遅れが発生する。上記のようなインタビューでは、このような時間遅れが発生すると極端に話しづらくなってしまう。特に、資料は外部ゲストの手元にあり、話しの主導権を教室の社会人講師が握っているという構図は、一度問答がかみ合わなくなるとなかなか復帰できなくなるという欠点があることが判明した。
  さまざまな障害への対応も考慮して、むしろ外部ゲストの側が資料を操作しながら、主導権をとってプレゼンテーションを行い、教室の社会人講師の質問は最後にまとめる、というような構成をとることが安全だという知見を得た。


(2)東京都立田無工業高校における同期型e−ラーニングシステムを利用した施設見学授業(工業科・土木施工)

(A)指導計画・指導案の概要

 本授業は都立工業高校の専門教育において、IT技術を有効に利用するための実験授業として計画された。「土木施工」の「工事の管理」という単元で、境浄水場という身近な水道施設を題材にとりあげ、同期型e−ラーニングシステムを活用して浄水場の管理担当者に、浄水場の概要や工事管理の特徴などを話してもらうという形態の授業である。以下に指導案を示す。

工業科「土木施工』学習指導案

日時 平成 15 年 11 月 13 日 ( 木 )5 校時
学校名  東京都立田無工業高等学校
授業者  教諭渡邉隆
学年 都市工学科 2 年 B 組 39 名

1単元名「工事の管理」
2単元のねらい
土木施エと管理に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、実際に土木エ事を指導・監督できる能力と態度を育てる。

3授業の位置づけ
「土木施工」は、土木材料1施工技術、土木工事管理、工事用機械と電気設備、土木施工に関する法規の5つの内容から構成されている。土木工事管理では・土木工学を学ぶ者としての誇りをもたせ、職業資格の大切さを認識させることで、学習意欲の向上を図る。

4本時の学習

(1)本時のねらい

ア教科としての本時のねらい

      1. 土木を学ぶ者としての誇りをもたせる.(知識と技術の取得)
      2. 職業資格の大切さを認識させる.(役割と意義、職業資格)
      3. 工事において安全がすべてにおいて優先されることを理解させる。(諸問題の解決.工事の安全管理の在り方、環境)
      4. 工事監督者の資質について考えさせる。(実際に活用できる能力と態度の育成、現場監督)

イ育成したい情報活用能力

(1情報活用の実践力1情報の表現及びコミュニケーション能力)
テレビ会議システムを活用した専門家からの遠隔授業を行い、論理的に伝え合い、交流し、自分の考えを深める。
(メディアを利用したコミュニケーション能力の育成〉


(2)「土木施工」における観点別評価規準(この謝槻準ぱrおおむね満足できる」状況を示している)

関心・意欲・態度 思考・判断 技能・表現 知識・理解
土木の基礎的な知識
と技術に意欲・関心を もっている、
多面的に思考し、課題
を設定することがで きる。
学習した知識と技術
を今後に生かすこと ができる。
土木の基礎的・基本的
事項を理解している .

(3)展開

過程 学習内容 指導上の留意点


6

O全体概要の説明 ・プリント配布 (パンフレット等→メディアを活用〉
・本時の内容とねらいを説明する。
・上水道施設のあらましを説明する。
・専門家と境浄水場の紹介をする。


3
8
1.上水道工について
2.社会資本整備
3.工事の管理
4.工事の監督
Q意見、質問→回答
・【テレビ会議システムを活用した専門家からの遠隔授業】
・水の大切さを理解させる。
・境浄水場について、プレゼンテーションソフトを活用し て説明していただく。 (概要、処理方式、原理、緩速ろ過、 ろ過池の維持管理等〉
スクリーン 1専門家
スクリーン 2プレゼンテーションデータ
・社会資本整備、公共事業について説明する。
・工事の管理、特に安全がすべてにおいて優先するほど重 要であることを認識させる。 (現場での体験を話す)
・工事監督に必要な資質と、職業資格の大切さを認識させる。
・安全と監督者の資質について各自で考えさせる .
・【専門家との交流 (テレビ会議システムを活用)】
・生徒からの意見、質問を求める。



6
○まとめ
○自己評価カードヘの
記入
・上記の内容が、施工技術者試験に出題される可能性が高 いことを説明する。
・本日の授業内容におけるポイントを確認させる。
(1.社会資本整備とは、2.ヒ水道工について、3.工事は 安全が最優先、4.土木技術者の資質 )

(4)評価

ア教科としてのねらい

      1. 土木施工と管理に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得できたか・
      2. 土木工学を学ぶ者としての誇りがもてたか。
      3. 視聴覚教材を使いイメージを膨らませ、企業経験を交えての授業は、生徒が興味をもてたか .
      4. 職業資格の大切さを認識でき、学習意欲の向上が図れたか。
      5. 土木工事の大部分が公共工事であり、工事等へ従事することへの使命ややりがいをもてたか .

イ育成したい情報活用能カ
テレビ会議システムを活用した専門家からの遠隔授業(境浄水場)を行い、論理的に伝え合い交流したことで、生徒が興味・関心をもち知識・理解を深めることができたか。

      • 普通の授業では出かけられない場所で、専門家からの授業を受けることができる。→授業の質向上
      • 生徒達の質問に、専門家が的確にその場で答えてくれる。→意欲的にコミュニケーションがとれる
      • 専門施設には、興味・関心を湧かすことができるものが多くある。→生徒自らが、「その場に行ってみたい」と思う気持ちを引き出す→学習意欲の向上

(5〉評価にあたっての留意点

ア学習の前後・途中におけるペーパーテスト、ノート・レポート・自己評価カードなどの内容や提出状況、出欠、授業中の発言などを評価の対象とする。
イ生徒の「自己評価カード」から、生徒の関心・意欲・態度などの情意面や努力の度含いを参考に、個々の生徒へのアドバイスや到達度を記入し。生徒にフィードバックする.
ウ提出されたノート・レポート・自己評価カードに結果等を記述し、成績表や面談などを通して生徒や保護者に十分説明し、共通理解を図っておく。

(B)概要

日 時 : 2003年 11月 13日 13:00−13:50
対 象 :東京都立田無工業高校 都市工学科 2年B組
テーマ :「専門家の意見を聞く〜工事管理にあたって業務の実践を知る〜」
授業者 :遠隔側講師・境浄水場 管理担当 長谷川氏
      教室側教員・東京都立田無工業高校 渡邊教諭
タイムテーブル
0:00:教室側教員による説明

遠隔側講師による説明

0:05:生徒側チューター(渡邊)による解説

0:20:リアルタイム職場紹介

0:45:生徒側(長谷川)による総括

0:50:授業終了

(C)実践授業の評価

 本授業実践は、工業高校専門教育の「工事の管理」単元について、同期型e−ラーニングシステムを活用して、その職業に実際に携わる社会人講師に、実際の職場から講義をしていただく内容である。浄水場の概要とその管理の仕事に関しての知識理解の目標と、遠隔の専門家の話を直接伺えることによる動機付けや、土木工学を学ぶ者として誇りなど学習態度に関わる目標を同時に設定していた。以下にそれぞれの観点からの評価を説明する。

(ア)知識理解に対する評価

 知識理解に関しては、事前に担当教員と社会人講師の間で講義のシナリオについて綿密な打ち合わせがなされ、結果的に必要十分な内容を適切な形態で生徒に提示することができた。
  特に指導計画や指導案を策定した教員と、仕事内容や特徴を熟知している社会人講師がそれぞれ自分の立場から、十分に意見を出し合って講義内容を設定できたことが有効であったと考えられる。

(イ)学習意欲や学習態度に対する評価

 学習意欲や学習態度に対する目標については、遠隔の浄水場現場からの専門家の講義ということで、一定の効果はあった。特に授業設計上、導入部分で教室側教員が将来の進路と直接関わる内容と授業実践を位置づけたこと、また遠隔側講師の話が一段落したところで教室側教員がそれまでの内容をまとめ、要点を強調したことなどは、学習意欲や学習態度の向上に寄与していた。
  しかし同期型e−ラーニングシステムは、教室の生徒の様子を講師に伝える、または社会人講師の仕事に対する熱意や態度等を教室に伝えるという点では制約となった。授業の最後に、生徒から仕事上の苦労について質問があり、浄水は24時間365日止められないと講師が答える場面があった。まさに社会人講師授業らしい展開だが、教室で直接講義を行っていたら、もう少しそのようなやりとりが充実していたのではないか。

(ウ)教材コンテンツに関する評価

 本授業実践では、あらかじめ策定された講義シナリオに基づいて、同期型e−ラーニングシステムで利用する教材を、コンテンツ制作チームの取材によって制作した。打ち合わせによって教育内容が細部まで確定しており、また資料等も適切な用意があったので、短期間に教育効果の高い教材コンテンツを制作することが可能であった。

(エ)情報システムに関する評価

 社会人講師が講義を行った境浄水場の会議室にはネットワーク設備がなかったため、遠隔側講師のインターネット接続はFOMAのプロバイダサービスによって行った。学校側はコンピュータ教室を利用し、接続に関して障害はなかった。
  ただしFOMAでのインターネットの接続は時によって不安定になり、しばしば遠隔側講師の動画映像が静止画となることがあった。しかし音声については良好に通信できたので、同期型e−ラーニング利用の目的は十分に達成できた。
  本授業実践と同様の通信形態を採用すれば、電源のない屋外等でも同期型e−ラーニングによる遠隔講義が可能になる。今回は会議室からの講義であったが、機械や設備等の面前からの講義等、工夫によって効果的な授業に利用できると考えられる。


(3)江東区立数矢小学校−西東京市立田無小学校における同期型e−ラーニングシステムを利用した交流学習授業(生活科)

(A)指導計画・指導案の概要

 本授業は小学校生活科の「ともだちっていいな」という単元で、TV会議システムによって地理的に隔たりのある小学校2校を結び、IT技術を有効に利用した学習活動を検証するための実験授業として計画された。以下に指導計画と指導案を示す

生活科学習活動案

1単元
「ともだちっていいな」

2単元のねらい

  • 友達とのかかわりを振り返り、自分の成長に気付く。
  • 成長への願いをもち、意欲的に生活できるようにする。
  • テレビ会議を用いて多様な人々とリアルタイムで触れ合い交流を深める。

3単元で育成する情報活用能力

情報活用能力の要素 項目 ねらい
I.情報活用の実践力 (1)情報の表現及びコミュニケーション ・自分の言いたいことを考えながら表現する。
・要点を考えて表す。
(2)メディアを利用したコミュニケーション ・テレビ会議を利用して交流する。
(3)問題の発見と計画 ・集めた情報の共通点や相違点から、課題を見つける。
(4)情報の収集 ・身近な人から情報を集める。
(5)整理・分析・判断 ・話し合って意見をまとめる。
・相手に伝えたいことを絵図や資料にまとめる。
(6)発信伝達 ・まとめたことをみんなの前で話す。
III.情報社会に参画する態度 (1〉情報に対する態度 ・他の人の発信した情報の良いところを見つける
(2)情報モラル ・相手を考えた言葉遣いで情報交換する。
・他の人の情報を大切にする。

4単元の設定理由

(1)研究主題との関連
本研究では、情報活用能力のうち「メディアによるコミュニケーション」の能力を育成することを重点と捉えた。そこで、具体的な活動や体験を通して、自分と身近な人々とのかかわりに関心をもち、自分自身や自分の生活について考える」という教科目標をもつ生活科を通して研究主題にせまることとした。
(2)異なる学校同士の低学年の児童が交流する意義
普段接している同じ学校の児童でなく、初めて接する他の地域の学校の児童との交流を通して、人とのかかわり方がより豊かになるものと考える。また、今後はテレビ会議システム等が整備され遠隔地との交流が増えることが予想される中、小学校の低学年段階における体験が、3年生から始まる総合的な学習の時間の中で生かされるものと考える。
(3〉テレビ会議システムを活用することの意義
咋今はコミュニケーション手段が広がり、インターネットを活用した画像や音声を含めた通信が一般的になりつつある。低学年段階では身近な人との直接的なかかわりにおける、コミュニケーションが基本になり、その中でコミュニケーションの能力を高めていくことが大切である、テレビ会議システムは双方向の情報発信をリアルタイムで行うことができるため、
学習への成就感すなわちコミュニケーションを行うことへの意欲を高めるために有効な手段であると考える。また、教科のねらいを達成しながら通信ネットワーク上のモラルに関することがらを体験的に学ぶことができ、情報に対する主体的な態度を育成するきっかけとなるものと考える。
さらに、今回使用するような簡単なシステムが近い将来学校現場にも普及するものと捉え、こういった環境への対応も視野に入れ活用を試みることとした。

5指導計画(全4時間)

時問 学習活動 指導上の留意点 学習指導要領
の指導項目
育成する
情報活用能力
1. 仲良しの友達を紹介し合う。







仲良しになるコツを発表し合う。

*4月当初に比べて友達が増えたこと等
自分と友逮とのかかわりの変化に気づかせ
ることにより、自分の成長を振り返らせる。
*友達とのかかわりが苦乎な児童については、
その児童なりに努力した場面等を認めるように
配慮する。
*仲良くなったきっかけやお互いの良さ・共通点
を発表し合い認め合う活動を行い、自分の良さに
自信をもたせる。
(8) 【表現】
2 遠くの小学生と友達になる
方法を考える。





テレビ会議での自己紹介の
計画を立てる。
*仲良しになる方法が他にもあることを伝え、
今後の活動に期待をもたせる。

*テレビ会議の進め方を理解させ、今までの友達
とのかかわり方との違いに気づかせる。


*仲良しになるコツを思い出しながら、自己紹介
の内容・方法を工夫させる。
(8) 【表現】
【問題の
発見と計画】
【情報収集】
【整理・分析
・判断】
【発信・伝達】
3 テレビ会議で仲良しを増やす。
(本時)
*遠くの友達とテレビを通してかかわる活動の中
で感じたことや考えたことを覚えておくように
伝え、今後の活動に活かすことができるように
する。
・発表の内容や方法について
・相手の小学校の良さについて
・リアルタイムの交流について
(8) 【メディアによる
コミュニケーショ
ン】
4 活動を振り返る。 *テレビ会議を振り返り、気付いたこ
となど感想を出し合うことにより
活動の意義を捉えさせる。
*相手の小学校に手紙を出す活動を
投げかけ、かかわりの継続への意欲
をもたせる。
(8) 【表現】
【発信・伝達】


6本時の学習
(1)本時のねらい

ア教科としてのねらい

  • 学級や学年の友達とのかかわりにおける成長を、表現活動を通して実感させる。
  • 遠くの小学校の友達との交流に関心をもたせ、積極的にかかわるようにする。
  • 交流の中での気付きや成就感をもとに、今後の成長に願いをもち意欲的に生活する態度を養う。

イ育成する情報活用能力

  • テレビ会議を利用して相互に情報発信し、交流を深める。
    【メディアによるコミュニケーション】

(2)展開

時間 学習活動 指導上の留意点
5 めあてをもつ
あいさつをする
*グループごとにまとめた内容を分かりやすく発表すること、感想 や考えをもつことを伝える。
5

30
共通の課題 (友達づくりのコツ)について
発表し合う
自己紹介をする
*相手の小学校と比べさせ、共通点や違いに気付かせるとともに 遠くの友達への関心をもたせる。
*めあてを確認させる 。
*自分や相手の小学校の発表の内容・方法の良さを見つけるよう 助言する。
5 感想を発袈する *感想を述べるときの観点を示す。
・発表の内容や方法について
・相手の小学校の良さについて
・リアルタイムの交流について

(3)評価

ア教科としてのねらい

  • 学級や学年の友達とのかかわりにおける成長を、表現することができたか。
  • 遠くの小学校の友達との交流に関心をもち、積極的にかかわることができたか。
  • 交流の中で気付きや成就感をもち、今後の成長に願いをもつことができたか。

イ育成する情報活用能力

  • テレビ会議を利用して情報発信し、交流を深めることができたか。

(B)概要

日 時: 2003年 11月14(金) 9:30〜12:30
場 所:西東京市立田無小学校 (劉 悦子教諭)

1時間目:1年2組(担当・秋山教諭)
2時間目:1年1組(担当・西脇教諭)
3時間目:1年3組(担当・西脇教諭)
江東区立 数矢小学校 (日下部 和彦先生)
1時間目:2年3組(担当・馬場教諭)
2時間目:2年1組(担当・遠山教諭)
3時間目:2年2組(担当・目黒教諭)

単 元:ともだちっていいな (生活科)
タイムテーブル
0:00:導入(両校)

遠隔授業であることの説明
発表することの確認

0:05:「ともだちになるこつ」(話し合い結果の発表)

数矢小発表 (グループ毎)
田無小発表 (グループ毎)

0:25:「フェスティバル」(両校の行事と作品の紹介)

数矢小発表 (グループ毎)
田無小発表 (グループ毎)

0:40:質問
0:47:総括(両校)

ピアニカ発表 (田無小)
挨拶

(C)実践授業の評価

 本授業実践は、小学校低学年生活科の「ともだちっていいな」という単元で実施する交流学習で、テレビ会議システムを活用しようとする研究授業実践である。教科の目標としては交流(自ら発表すること・他人の発表を聞くこと)を通じて、ともだちとのかかわりにおける自らの成長を実感することや、異なる小学校のともだちとの交流に関心をもち積極的に関わろうとすることなど目標としている。以下、本授業実践に対する評価を説明する。

(ア)交流学習に対する評価

 本授業実践では、事前に両校で指導案を策定した教員同士が交流の内容について詳細な準備を行い、交流を行う学級の担当教員に加えて、総合司会の担当教員を置いて全体の進行を管理するなど、交流を有効に進めるための体制を整えていた。また、発表する児童は事前に教員と相談の上発表内容を決め、資料の内容を考え、発表の練習をして当日に臨んだ。
  通信状況はかなり悪化することになったが、これら事前準備によって、交流学習自体は効果的に進行することができた。特に児童は、自らが発表するときは、ネットワークを通してではあるが、違う学校の生徒に対して話しかけているという意識を持ちつつ発表ができ、自らの番が終わると安心して相手の発表(あるいは自分の学校の他の児童の発表)に集中することができた。

(イ)情報システム活用に対する評価

 本授業実践にあたっては事前に通常利用しているネットワーク接続からインターネット公衆回線に接続し、双方から同期型e−ラーニングシステムによって通信する準備を行った。しかし両校に設置されているセキュリティシステムの要因と考えられる障害で、同期型e−ラーニングシステムによる通信ができなかった(フィルタリングソフト等に起因すると考えられる)。
  また実践校の1つは教育委員会のセキュリティポリシーにより、学校のLANに接続するPCとそれに搭載してあるソフトウェアすべてについて、事前に届出をすることが義務づけられていた。当初想定していた同期型e−ラーニングシステム以外を利用するのが実質的に不可能になるため、接続はPHSおよび携帯電話を利用した上で、いわゆるTV会議用ソフトを利用することとした。
  プレゼンテーション資料を事前に双方の学校で共有し、数種類の類似ソフトを試験して、比較的安定して接続できるソフトを選択したが、実際に授業実践を行う段階で、音質の劣化や音の回り込み(ハウリング)等が生じ、通信品質が極めて悪化する場面があった。画像として判別はできる程度の品質が保てたが、音声に関しては全く認識できない場面もあり、情報システムの利用としては、当初の目標を十分達成したとは言えない状況であった。
  原因として、通信環境による障害でそれまで情報倫理授業や施設見学授業でき実績のある同期型e−ラーニングシステムを利用できず、事前テストが十分でないままTV会議ソフトを利用したことと、音声劣化のような障害に対する代替案の検討がなされていなかったことが挙げられる。

(ウ)学習意欲や学習態度に対する評価

 交流学習については、非常に重要な部分として、学習意欲の向上や積極的な学習態度が目標となっている。交流する他者を意識して自己の紹介をすることが演出されればされるほど、日常とは違った視点で自らの振り返りができることになる。
  この意味で遠隔の学校との交流授業は格好の題材であり、上記のように情報システムとしては非常に機能不足の状態ではあったが、学習意欲や学習態度は肯定的に評価できる状態であり、児童の授業後の満足度も高い様子であった。
  背景には担当教員が全体の流れをあらかじめ完全に把握し、TV会議システムの音声が聞き取りにくくても、フォローするような形で交流をサポートしたこと、実際に画質や音質の問題よりも、ビデオカメラやマイクロフォンが設置され、たくさんの大人が支援しているという状況だけで、かなりしっかり動機付けがされたように見受けられた。
  例えばクラス自慢としてピアニカによる合奏を取り入れたクラスがあった。今回利用したTV会議システムでは、ナレーション以外の音声をきちんと送信することが極めて難しく、大音響の雑音のようになり、受け手は曲として認識することは不可能だった。しかし学習効果は、そのような自慢の演奏をした送り手の方に十分にあり、しかもその堂々とした態度から、受け手もそのクラス自慢を十分受け止められるというような現象が生じる。
  情報システム利用と学習効果の関係を、改めて考えさせられる授業実践となった。



前のページへ 次のページへ