2.プロジェクトの概要




2.1 実施方法


(1)実験参加校

本年度は、昨年度の継続交流校のほか、新規参加校を加えた。新規参加校は、インターネットは利用していないまでも、郵送による手紙や作品の交換も含め、既に何らかの国際交流をしている学校ペアを中心に選定した。

<日本−米国交流>     

時津東小学校(長崎県)−  Staten Island Academy(ニューヨーク)
淵野辺小学校(神奈川県) −  Eugene Field小学校(ミズリー州)

<日本−ニュージーランド交流>

琴田小学校(千葉県) −  Liston College(オークランド)

<日本−韓国交流>

平尾中学校(福岡県) − クァンム女子中学校(釜山)
淵野辺小学校(神奈川県) − フィギョン小学校(ソウル)
芳明小学校(岡山県) − フィギョン小学校(ソウル)

<日本−中国交流>

琴田小学校(千葉県) − 花家地実験小学校(北京)

このほかにも、交流候補校があったが、十分な交流開始にまで至らなかったので、学校名の紹介は割愛する。


(2)実験システム

本プロジェクトでは、図2−1に示すような実験システムを構成し、授業実践に利用した。

図2−1 国際交流支援システム


(1) 翻訳機能付き電子掲示板システムおよびチャットシステム

 電子掲示板システムは、昨年度試作した日本電気株式会社製の自動翻訳システムBestiLandをベースにした多言語電子掲示板を利用した。掲示板上では、日本語−英語、日本語−中国語、日本語−韓国語のそれぞれ双方向の翻訳ができる。翻訳文作成時には、次のような工夫がなされている。

  1. 自国語入力→相手国語翻訳→自国語逆翻訳のプロセスによる確認が可能。
  2. 文章を単純化して翻訳精度を高めるため小入力欄を複数用意。
  3. 固有名詞を明確化する表記方法の採用(中国語)。
  4. ひらがな入力に対応した辞書の作成(韓国語、中国語)。

また、メッセージ参照時には、次のような特長を持つ。

  1. 自国語−相手国語を対照形式で参照できる。
  2. 添付写真をそのままイメージで見られる。
  3. 交流実施当事国以外の学校からはその国の言語にも翻訳され、参照できる。

 今年度は、主に両校先生間の交流運営の打合せを目的とした翻訳機能付きチャットシステムも追加した。翻訳機能および操作は掲示板システムと同様だが、短いメッセージをリアルタイムで交換しあえるようにした。システムの詳細は、第3章で述べる。


(2) テレビ会議システム

 テレビ会議システムについては、画質・音質および安定性の問題に加えて、一般に、地域イントラネットのセキュリティシステムを通過させる設定が複雑であり、使いたいときに気軽に使用できないという問題がある。この問題を改善できるテレビ会議システムを調査し、NECシステムテクノロジー (NECST)製のWebカンファレンスを利用して実験を行った。日本語や英語だけでなく、韓国語、中国語(簡体字、繁体字)など9ヶ国語表示に対応しており、国際交流での利用に適している。詳細は、第3章にて述べる。


(3)プロジェクトの進め方

 各学校のIT環境や交流の方針によって進め方は異なるが、標準的なパターンを提示して進め方の参考にしてもらった。テレビ会議の利用については、ネットワークセキュリティや回線環境等の問題があり、すべての学校で行うことはできなかった。

(1) システムの利用方法を習得してもらう
  担当の先生に対して翻訳掲示板システム、翻訳チャットシステム、テレビ会議システムの利用について説明し、利用方法を習得してもらう。海外の学校に対しては、マニュアルを送付し、読んでもらう。必要に応じて電話で細く説明を行う。

(2) 両校先生間での基本方針、スケジュール確認、進め方の検討を行う
  両校の先生に掲示板やチャットを利用して事前打合せをしてもらう。交流の目的、目標および進め方についてお互いに理解しあい、整合を取る。国によって学校年度のサイクルが異なるため、夏休み・冬休みなどの長期の休み期間、学芸会や運動会などの行事の実施時期が異なり、交流ができない時期が発生する。お互いに交流相手校の事情を理解した上で交流を進める必要がある。そのためには、年間行事表を交換しあうとともに、交流内容と交流時期についてもよく調整しておく必要がある。

(3) コーディネータを依頼する。
  交流がさまざまな事情により途中でとぎれてしまうことがある。特に電子掲示板のような電子メディアの場合には、双方が主体的に参加する形式のメディアであるため、片方が参加をやめてしまうとコミュニケーションが取れなくなってしまう。コーディネータは、交流の状況をウォッチし、交流がスムーズに遂行するように調整する役割を持つ。両国語を使用することができ、時には電話で相手と折衝することが必要となる場合がある。国際交流担当の先生自身がこのような能力があれば問題ないが、一般には別にコーディネーターをたてる必要がある。保護者や地域のボランティアにお願いできないか検討する。

(4) テレビ会議により双方の顔合わせを行う
  相手の様子が映像および音声でわかると親近感が増大し、交流に対する意欲も増大する。このためにテレビ会議で顔合わせを行っておくのは効果がある。

(5) 5〜6名の交流小グループを作成する。
  40名程度のクラス対クラスで交流する場合には、1クラスを単位として交流すると各児童・生徒の参加機会が少なくなってしまう。反対に、個人単位で参加してしまうと授業としてのまとまりがなくなってしまうとともに、相手校側からも交流対象を特定できなくなってしまうおそれがある。そこで、両校ともに5〜6名の小グループを編成し、グループ単位で交流を行うのが適当である。

(6) 掲示板を使用して自己紹介する
  まず交流相手がどのような人なのかを知るために自己紹介を行う。掲示板を使って、それぞれのグループの中にどのような人がいるのかという形で自己紹介するのが適当であろう。

(7) 小グループ単位でテーマを決め、掲示板上でメッセージ交換する
  テーマを自由にしてしまうと一方は興味があっても他方は興味がないということもありうる。両校間で十分テーマを吟味し、双方が興味を持って取り組めるようなものにすべきである。

(8) テレビ会議でまとめ
  最後にまとめをすることは重要なことである。テレビ会議ができる環境があれば、これを利用してまとめをしたい。


2.2 実施体制

プロジェクト全体の準備および実施については、以下の体制で行った。


(1)プロジェクト運営

片岡 靖、森本 泰弘(NEC)


(2)プロジェクトアドバイザー

藤村 雄一(鳴門教育大学)


(3)翻訳技術サポート

三浦 貢(NEC)
? 志良、真下 修三(高電社)


(4)実験システム構築

坂下 一彦ほか(NECソフトウェア北陸)


(5)サーバーシステム管理

インタラクトテクノロジー


(6)授業実践

前記、実験参加校



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