4.国際交流の実践




4.1 各学校での国際交流活動

以下、各参加校の国際交流活動状況を示す。


4.1.1 時津東小学校−Staten Island Academy(日米国際交流)

 時津東小学校 ( 長崎県西彼杵郡 )とStaten Island Academy (米国・ニューヨーク市)は、2001年度から交流を行っており、2002年度は、 Eスクエア・アドバンス・プロジェクトにおいて交流を実施した。継続交流なので両校とも当初よりカリキュラムに組み込まれており、計画的な交流を実施できた。小グループに分けて、テレビゲーム、ファーストフード、祝日・行事、事故・災害、映画、スポーツなどのテーマを決めて議論を行った。明確なテーマがあったため内容的にかなりかみ合った交流ができた。コーディネーターとして、同校の村瀬先生が参加し、テーマや交流の調整およびテレビ会議時の通訳をされた。コーディネーターが同じ学校内にいることで担当の先生とスムーズな連携を取ることができたようだ。
  本交流の指導案については、付録2−5、付録2−6を参照されたい。

表4−1 掲示板上のメッセージ交換数とテレビ会議の実施
  9月 10月 11月 12月 1月 2月  
時津東小学校   87 47 27     (件)
Staten Island Academy 10 49 21 9 26 13 (件)
テレビ会議           2月13日  

 授業参観、ヒアリング結果、アンケート結果をもとに両校の活動状況および担当の先生の意見を表4−2にまとめて示す。アンケートは、付録1−1、付録1−2を用いた。


表4−2 時津東小学校−Staten Island Academyの交流
学校名 時津町立時津東小学校 Staten Island Academy
所在地 長崎県西彼杵郡 ニューヨーク州ニューヨーク市
指導教員 神田吉郎先生 Eileen Corigliano 先生
参加児童 6年生 101名 6年6組 39名
国際交流経験 昨年度本プロジェクトに参加
実施教科 総合的な学習の時間 コンピュータ、歴史
国際交流授業計画 年度当初から組み込み 年度当初から組み込み
教育目標 ・お互いの共通点と相違点を理解する。
・他文化を知る
・ほかの国の児童と交流する。
・ほかの文化に対する関心・意識を高める
・どのような技術が利用できるのか教える
交流テーマ ・習い事について
・コンピュータについて
・学校でも習う言語について
・映画/テレビについて
・ペットについて
・食べ物について
・地域の歴史について
国際交流授業のための時間確保 ・あまり時間が取れなかった。
PC教室の使用日が限られてしまう。
PCの台数が2人に1台しかない。
ある程度確保できた
先生間の事前打ち合わせ メールである程度の話し合いができた。 ある程度できた
テレビ会議の実施 まだ実施していない。2月13日に実施予定。
掲示板上での交流の継続性 ある程度継続的に実施できた ある程度継続的に実施できた
コーディネータの有無と必要性 ・仲立ちをしてくれる人がおり、活動してくれた。同小学校の村瀬先生が英語を使ってメールや電話でメッセージを伝えてくれた。
・絶対に必要だ。
・コーディネーター不在
・コーディネーターは絶対必要
掲示板上でメッセージを受けたとき ・うれしがっていた。
・返事が返ってこない時は残念に思う。
・メッセージがたくさんあり、自分の探したいメッセージが見つけにくい。
・意味は大体わかった。
・意味がわからないときは、先生が児童に意味を教えてあげた。
・とてもうれしそうだった
・意味は、大体理解できた
・意味が分からないときは、先生に聞いたり、友だち同士で考えたりした。
掲示板上でメッセージを発信するとき ・わくわくしていた。
・利用するのは少しむずかしかった。
・翻訳、逆翻訳の利用のしかたがむずかしい。また、主語の概念はわからない。
・わくわくしていた
・正しく伝わるかどうかは少し心配の様子
・操作は全然むずかしくない
掲示板利用による
児童の関心や学習態度の変化
・大きな変化があった。 ・少し変化が見られた
・日本文化に対する理解が深まった
掲示板利用交流は思いどおりに進んだか ・大体思いどおりに進んだ。
・ただし、PC台数の不足の問題がある。また、逆翻訳の使い方がむずかしい。
・思いどおりに進んだ
今後も掲示板を利用するか ・利用する ・利用する
掲示板利用交流の適当な頻度 ・週に1回程度 ・週に1回程度


4.1.2 淵野辺小学校−Eugene Field小学校(日米国際交流)

 淵野辺小学校(神奈川県相模原市)と Eugene Field小学校(ミズリー州・ハンニバル市) は、数年来手紙や作品の交換を行ってきたが、掲示板を利用した交流は今回がはじめてであった。相模原市のネットワークセキュリティのため、テレビ会議は実施できず、掲示板を利用した交流のみとなった。
  掲示板上の交流内容は、自己紹介のほか正月の過ごし方を紹介した。 Eugene Field小学校からのメッセージの翻訳文について大体は理解できたようであった。
  写真4−1、写真4−2は、メッセージ入力の様子である。あらかじめ写真4−3のような原稿を書いておき、それを見ながら入力している。キーボード入力の苦手な児童は、写真4−4に示すソフトキーボードを表示し、マウスで文字を選択しながら入力していた。写真4−5、写真4−6は、 Eugene Field小学校で掲示板上のメッセージを見ている画面である。
  淵野辺小学校は、授業の中の学習ではなく、課外活動として有志の児童が参加する形態を取った。そのため活動時間が昼休みしか取れず、表4−3に示すように活動が一時中断してしまったようだ。
  なお、同校は後述のように韓国のフィギョン小学校とも掲示板を利用した交流をおこなっており、それぞれ他方の交流の仕方を参考にしながら交流を進めている。

表4−3 掲示板上のメッセージ交換数とテレビ会議の実施
  9月 10月 11月 12月 1月 2月  
淵野辺小学校 7 1 10     14 (件)
Eugene Field 小学校 22         3 (件)
テレビ会議              

 授業参観、ヒアリング結果、アンケート結果をもとに両校の活動状況および担当の先生の意見を表4−4にまとめて示す。アンケートは、付録1−1、付録1−2、付録1−4を用いた。

写真4−1 メッセージ入力の様子
写真4−2 先生による指導の様子
写真4−3 原稿の準備
写真4−4 ソフトキーボードによる入力
写真4−5  Eugene Field小でのメッセージ画面
写真4−6  Eugene Field小の画面


表4−4 淵野辺小学校−Eugene Field小学校の交流
学校名 相模原市立淵野辺小学校 Eugene Field 小学校
所在地 神奈川県相模原市 ミズリー州ハンニバル市
指導教官 坊野博範先生、岡部純子先生 Terry Smith 先生
参加児童 5年生有志 8名 4年生 21名
国際交流経験 数年前から手紙、作品交換などによる交流を実施
実施教科 課外活動として実施。実施は昼休み。 言語、コンピュータ技術
国際交流授業計画 ・自動翻訳掲示板を利用した活動は新規に発生 ・途中から計画を変更
・そのための苦労はそれほどなかった
教育目標 ・外国の子どもたちと実際にコミュニケーションを行い、お互いの文化や生活について知ること ・日本の文化、米国の文化を相互に学びあう
・日本の子どもたちに自分たちの言いたいことをはっきりと伝えさせる
交流テーマ ・自分の好きなこと嫌いなことを教えあう(音楽、食べ物、本、なぞなぞ等)
・祝日の習慣について教えあう
国際交流授業のための時間確保 昼休みしか使えないので時間が足りない 十分な時間が確保できた
先生間の事前打ち合わせ あまり打合せをしなかった。ただし、何年かやっているので先方の状況は理解できる。 あまり打合せをしなかった。その必要もあまりなかった。掲示板の使い方は日本語の先生が説明してくれた。児童には何をすればよいか見せただけだ。
テレビ会議の実施 相模原市のイントラネットのセキュリティ設定の問題でテレビ会議が実施できなかった。
掲示板上での交流の継続性 交流が中断することがあった。活動時間が昼休みしかないので、メッセージを発信するのに十分な時間が取れなかった。 交流が途中で中断した。システム上の理由で接続が切れてしまったことがあった。掲示板を使うのを楽しんだし、大体うまく動作した。
コーディネータの有無と必要性 地域のボランティアの方が、英文化する作業はやってくれた。交流自体のコーディネートまでは依頼していない。 ・コーディネーター不在(技術面で)
・私は、ネットワークやコンピュータに詳しいので必要ない。
掲示板上でメッセージを受けたとき ・とてもうれしかった(6名)、うれしかった(2名)。
・意味は、大体わかった(4名)、少しわかった(2名)、全然わからなかった(2名)。
・意味がわからなかったときには、先生が教えてあげた。
・とてもうれしそうだった
・意味は、完全に理解できた
掲示板上でメッセージを発信するとき ・わくわくした(6名)
・意味が通じるかどうか心配そうだった(3名)
・操作は、たいへんむずかしかった(1名)、少しむずかしかった(4名)、特にむずかしくなかった(4名)
・なかなか翻訳がうまくいかなかった。自分が書いた言葉と逆翻訳された言葉を見て子どもがとまどっていた。
・わくわくしていた
・操作は少しむずかしかった
掲示板利用による
児童の関心や学習態度の変化
・アメリカに対して少し興味を持つようになった。 ・少し変化が見られた
・画面上で翻訳が行われるのを楽しんでいたと思う。
掲示板利用交流は思いどおりに進んだか ・あまり思いどおりにいかなかった。
・翻訳の問題とともになかなかメッセージを発信する時間が取れなかった。
・相手校の先生との十分な打合せが必要である。
・大体思いどおりに進んだ
・掲示板のほかにテレビ会議もやってみたい
今後も掲示板を利用するか ・利用する ・利用する
掲示板利用交流の適当な頻度 ・月に1回 ・週に1回


4.1.3 琴田小学校(千葉県)−Liston College(日本−ニュージーランド国際交流)

 琴田小学校 (千葉県・旭市)は、2001年度より国際交流活動を行っており、2002年度には、Eスクエア・アドバンス・プロジェクトにおいて中国の花家地実験小学校との交流を実施した。Liston College(ニュージーランド・オークランド市)は、13歳から17歳の生徒が通うカトリック系男子中高校である。琴田小学校は小学校6年生、Liston Collegeは10年生(16歳)という学年の離れた交流であった。また、琴田小学校の交流の主目的は、テレビ会議を利用して英語で話すことであり、10月にはテレビ会議を実施した。NPO法人企業教育研究会に参加している川名隆行氏(千葉大学)がコーディネーターとして参加し、日程や内容についての事前調整および通訳を行った。旭市は、文部科学省の 「NPO等と学校教育との連携の在り方についての実践研究事業」に参加しており、「企業と協力した授業づくり」というテーマで NPO法人企業教育研究会と連携した教育を進めている。川名氏は、この活動の一環としてコーディネーターを引き受けてくださった。
  テレビ会議に加えて、12月、1月は、掲示板を利用して自己紹介をしあった。翻訳文は、概ね理解しあえたようだ。
  本交流の指導案については、付録2−1を参照されたい。

表4−5 掲示板上のメッセージ交換数とテレビ会議の実施
  9月 10月 11月 12月 1月 2月  
琴田小学校(生徒)       11 22   (件)
Liston College(生徒)       13     (件)
琴田小学校(先生) 2 15 2 1 2   (件)
Liston College(先生)   10         (件)
テレビ会議   10月16日          

 授業参観、ヒアリング結果、アンケート結果をもとに両校の活動状況および担当の先生の意見を表4−6にまとめて示す。アンケートは、付録1−1、付録1−2を用いた。

表4−6 琴田小学校−Liston Collegeの交流
学校名 旭市立琴田小学校 Liston College
所在地 千葉県旭市 ニュージーランド・オークランド市
指導教官 小笠原親子先生 Suzanne Kitto 先生
参加児童 5年1組 32名 10年生  22名
国際交流経験 一昨年度より掲示板、テレビ会議を利用した国際交流を実施  
実施教科 総合的な学習の時間 日本語
国際交流授業計画 当初から組み込んでいた。 カリキュラムには組み込んでいなかった。
教育目標 英語で会話をする経験をさせる。 異なる文化間での交流を進める
交流テーマ テレビ会議を通じて英語で会話をする経験を持つ。 お互いの生活や学校での活動
国際交流授業のための時間確保 十分時間が取れた。 十分な時間が取れなかった。正規の授業外の活動。
先生間の事前打ち合わせ ある程度の話し合いができた。 あまり話し合いができなかった。
テレビ会議の実施 2003年10月16日に実施
掲示板上での交流の継続性 ある程度継続的に実施できた。 交流が中断したことがあった。正規の授業外の活動なので十分な時間がとれない。
コーディネータの有無と必要性 ・NPO法人企業教育研究会の川名隆行氏(千葉大学)が仲立ちをしてくれた。
・仲立ちをしてくれる人は、絶対に必要だ。
・いない。
・たぶん必要だ。
掲示板上でメッセージを受けたとき ・児童は、うれしがっていた。
・意味は大体わかった。
・意味がわからないときは、先生が児童に教えてあげた。
・うれしそうだった。
・意味は、ある程度わかっていたようだ。翻訳が意図した内容と異なっていたことがよくあった。
・意味がわからないときには、先生に聞いた。
掲示板上でメッセージを発信するとき ・児童は、わくわくしていた。
・操作は少しむずかしいと感じた。変換(翻訳)操作が不安である。
・操作は全くむずかしくない。
掲示板利用による
児童の関心や学習態度の変化
・少し変化があった。相手の国に興味を持ち、ニュージーランドのことを調べようと考えるようになった。具体的には、国技がわからなかったのでさらに学習しようと考えた。 ・少し変化があった。日本文化や生活習慣についての興味が増大した。
掲示板利用交流は思いどおりに進んだか ・あまり思いどおりにできなかった。記入しても相手からの返事が直ちに来ないことがあった。
・教師同士も交流を行い、信頼関係を築いておくことが必要である。また、テーマを絞ったほうがよい。
・掲示板の利用については、期待していなかった。
今後も掲示板を利用するか ・まだわからない。  
掲示板利用交流の適当な頻度 1週間に1回  
掲示板に対するその他の感想、希望 ・ログインのメンバーをグループに合わせて作成できるとよい。
・リーダーがあるとよい。
・メッセージが来たときにランプがつくなどわかるようになっているとよい。
 
テレビ会議のときの子どもたちの様子 ・興味を持った。何か新しい発見があるか。
・いつもより積極的な活動をしていた。
興味を持って参加した。あまり緊張はしていなかった。日本語を話すときは少しはずかしそうだった。一生懸命交流しようとした。
テレビ会議による
児童の関心や学習態度の変化
・少し変化があった。
・臨機応変に受け答えができるようになった。
・少し変化があった。
・何かつながりができたような感じを持ったようだ。新しい経験で興味を持ったようだ。
テレビ会議の準備 調整に時間がかかった。 システムのセッティングをするのにまる一日かかった。
テレビ会議時の画質・音質 ・相手の表情や動きが大体わかった
・音声は、はっきりと聞こえた
・表情や動きは、比較的はっきり見えた。
・声や音、比較的はっきり聞こえた。
利用の簡単さ やはり技術サポートが必要だと思う 技術サポートは絶対必要だ。
テレビ会議システムの利用方法 ・eラーニング(遠隔教育)的な使い方も考えられる。たとえば、大学、企業、他の事業所の方の話を聞いたり、質問に答えてもらう。 姉妹校間や交換留学校間での交流
テレビ会議に対する感想、希望 ・NTTのフェニックスのようにつなげばすぐ使えるシステムがあるとよい。 ・実施日時、参加者、環境などについてもっと打合せをする必要がある。
・両校で行うのに適した時間帯を選ぶ必要がある。


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