4.国際交流の実践




4.1.4 平尾中学校−クァンム女子中学校(日韓国際交流)

 平尾中学校(福岡県福岡市)とクァンム女子中学校(韓国・釜山広域市)は、2002年度Eスクエア・アドバンス・プロジェクトにおいても交流を行っており、今年度も継続して掲示板、テレビ会議を利用した交流を行った。両校間では、ホームステイ (2003年8月)や修学旅行(2003年10月)で実交流が主であり、これと連携するかたちで掲示板やテレビ会議による交流を実施した。平尾中学校では、国際交流を総合的学習の時間における国際理解教育の一環としてとらえ、交流だけでなく韓国についての事前学習や韓国語の学習も実施している。交流が実イベントの開催が中心になるため、掲示板上のメッセージの内容は、修学旅行などにまつわる話がほとんどであった。掲示板を参照することが毎日の習慣となっており、表4−9に示すように、イベントの調整のため先生間のメッセージ交換が非常に盛んであった。掲示板上での日韓・韓日翻訳は、大体において理解できるものとなっており、両校間では非常に自然なコミュニケーションをすることができた。必要に応じてチャットも併用していた。コーディネーターとしては、同校韓国語講師のイ・ソニ先生が交流の調整および通訳をされた。
  本交流の指導案については、付録2−3、付録2−4を参照されたい。

表4−7 掲示板上のメッセージ交換数とテレビ会議の実施
  9月 10月 11月 12月 1月 2月  
平尾中学校(生徒)     9 3 6   (件)
クァンム女子中(生徒)     9     2 (件)
平尾中学校(先生) 10 10 11 13 4 1 (件)
クァンム女子中(先生) 10 6 5 6 2   (件)
チャット(先生)   10月22日          
テレビ会議       12月8日 1月28日    
修学旅行   10月22日          

 授業参観、ヒアリング結果、アンケート結果をもとに両校の活動状況および担当の先生の意見を表4−8にまとめて示す。アンケートは、付録1−1、付録1−3を用いた。

表4−8 平尾中学校−クァンム女子中学校の交流
学校名 福岡市立平尾中学校 クァンム女子中学校
所在地 福岡県福岡市 釜山広域市
指導教官 笠 裕美子 先生 パク・ヨンミ 先生
参加児童 2年生全員  224名 2年生  340名
国際交流経験 昨年度本プロジェクトに参加。掲示板およびテレビ会議を利用。
実施教科 総合的な学習の時間  
国際交流授業計画 年度当初から組み込んでいた ・年度の途中から計画した
・苦労した
教育目標 ホームステイや修学旅行で交流を深めた生徒がさらにインターネットを使って交流を続ける。 世界化の流れに沿って外国文化を理解し国際的な素養を養うにあたり、助けをいただき、我が国の文化を日本へ伝えお互いの文化を交流しながら理解の幅をぐっとひろげること。
交流テーマ お互いの国の文化の違いを理解する お互いの文化を理解するため修学旅行団訪問、ホームステイ、掲示板を活用したメール交換、テレビ会議などの活動を通し、両国の文化交流を行う。
国際交流授業のための時間確保 十分な時間が取れた 十分な時間が取れた
先生間の事前打ち合わせ ある程度の話し合いができた 十分な話し合いができた
テレビ会議の実施 12/8、1/28に実施
掲示板上での交流の継続性 ある程度継続的に実施できた。 継続的に実施できた
コーディネータの有無と必要性 ・韓国語講師のイ・ソニ先生がコーディネーターとして調整をしてくれた。
・絶対に必要だ。
・平尾中学校のイ・ソニ先生が調整をしてくれた。
・絶対に必要だ。
掲示板上でメッセージを受けたとき ・とてもうれしがっていた。
・メッセージの意味は、ほとんど全部わかった。
・とてもうれしがっていた。
・メッセージの意味は、大体わかった。
掲示板上でメッセージを発信するとき ・わくわくしていた
・意味が通じるかどうか心配そうだった
・操作は、特にむずかしくはなかった
・わくわくしていた
・意味が通じるかどうか心配そうだった
・操作は、特にむずかしくはなかった
・意味がわからないときには、先生が教えてあげた
掲示板利用による
児童の関心や学習態度の変化
・大きな変化があった。英語以外の外国語(韓国語)をしっかり勉強しないでも交流ができることがわかった。 ・大きな変化があった。日本に対する興味と関心が大きくなり、日本文化に対する理解の程度が大きく向上し、韓国文化を日本へ積極的に伝えるようになった。
掲示板利用交流は思いどおりに進んだか ・思いどおりにできた。 ・思いどおりにできた。
今後も掲示板を利用するか ・利用する。 ・利用する。
掲示板利用交流の適当な頻度 月に1回 月に1回
掲示板に対するその他の感想、希望   掲示板はよく活用していて大変満足しているが、翻訳がもう少しよくなるよう翻訳プログラムが改善されたらと思いますが、今後だんだんよくなると思います。
テレビ会議のときの子どもたちの様子 ・とても生き生きとして交流できていた ・生徒たちは、大きな好奇心と興味を持って積極的にテレビ会議に参加し、おもしろそうに活動していた。
テレビ会議による
児童の関心や学習態度の変化
・大きな変化があった。
・ライブで交流ができることを喜んでいた。
・少し変化があった。
・日本の生徒たちの姿を直接見ながら対話をして文化交流をするようになったので、外国文化を理解し、自国文化を紹介するのに積極的に活動するようになった。
テレビ会議の準備 ・調整に時間がかかった ・調整に時間がかかった
テレビ会議時の画質・音質 ・相手の表情や動きは、なんとかわかった。
・音声は、大体聞こえた。
・相手の表情や動きは、大体わかった。
・音声は、大体聞こえた。
利用の簡単さ ・やはり技術サポートが必要だ ・やはり技術サポートが必要だ
テレビ会議システムの利用方法 ・テレビ電話的に使いたい 日本文化について気になる点や文化交流時に必要な活動において必要だと思うる
テレビ会議に対する感想、希望 もっと身近に使えるようになるとよい。 画面の転送速度がまだ少し遅いようです。動きの速度と鮮明度がもう少し改善されるようお願いします。


4.1.5 淵野辺小学校−フィギョン小学校(日韓国際交流)

 淵野辺小学校(神奈川県相模原市)は、コンピュータ利用については先進的な学校であり、国際交流についてもこれまで米国やオーストラリアの学校と手紙や作品の交換を行ってきた。フィギョン小学校(韓国・ソウル特別市)は、コンピュータ利用が盛んであるとともに英語教育にも力を入れている小学校である。両校の先生が日本で直接出会って話をし、交流を開始させた。相模原市のネットワークセキュリティのため、テレビ会議は実施できず、掲示板を利用した交流となった。淵野辺小学校は、授業の中の学習ではなく、課外活動として有志の児童が参加する形態を取った。
  表4−9に示すように、掲示板を利用した交流は、9月〜11月を中心に行われた。内容的には、自己紹介のほか、祝日、食べ物などに関する質問回答であった。翻訳文に関しては、自己紹介が中心だったため、日韓翻訳、韓日翻訳ともに名前の誤訳が目立った。そのためか一般的には高いはずの日韓・韓日翻訳の評価が、「大体わかった」「少しわかった」の程度の評価であった。双方の児童は、興味を持って取り組み、お互いの国に対して関心を高めたようだ。ただし、残念ながら12月以降は交流が途絶えてしまった。淵野辺小学校が課外活動としての取り組みであることから、活動時間が昼休みに限定され、十分なメッセージ発信の時間が取れなかったようだ。
  授業参観、ヒアリング結果、アンケート結果をもとに両校の活動状況および担当の先生の意見を表4−10にまとめて示す。アンケートは、付録1−1、付録1−2を用いた。

表4−9.掲示板上のメッセージ交換数とテレビ会議の実施
  9月 10月 11月 12月 1月 2月  
淵野辺小学校 6 10 3       (件)
フィギョン小学校 18 19 59     1 (件)
テレビ会議              

表4−10 淵野辺小学校−フィギョン小学校の交流
学校名 相模原市立淵野辺小学校 フィギョン小学校
所在地 神奈川県相模原市 韓国ソウル特別市
指導教官 岡部純子先生、坊野博範先生 シン・ヒョンジョン先生
参加児童 5年生有志 11名 5年6組 40名
国際交流経験 手紙、作品交換等の形であり  
実施教科 課外活動として実施。実施は昼休み。 コンピュータ、ときどき英語
国際交流授業計画 ・自動翻訳掲示板を利用した活動は新規に発生 ・途中から計画
・少し苦労があった
教育目標 ・外国の子どもたちと実際にコミュニケーションを行い、お互いの文化や生活について知ること ・当初の目的は、児童に英語を書かせることだった。その後ほかの文化を知ることに変更。
・児童に楽しさを与えること
交流テーマ 自己紹介、正月の過ごし方 ・10才の児童なので、話の内容は簡単なもの。学校、家庭、自分の国、自分自身の紹介。
国際交流授業のための時間確保 昼休みしか使えないので時間が足りない ある程度の時間が確保できた
先生間の事前打ち合わせ あまり打合せをしなかった。 ・少し話し合いをした。
テレビ会議の実施 相模原市のイントラネットのセキュリティ設定の問題でテレビ会議が実施できなかった。
掲示板上での交流の継続性 交流が中断することがあった。活動時間が昼休みしかないので、メッセージを発信するのに十分な時間が取れなかった。 ある程度は継続できた。
コーディネータの有無と必要性 ・NECでいろいろと調整をしてくれた。
・必要だと思う。
・いない
・たぶん必要だと思う
掲示板上でメッセージを受けたとき ・とてもうれしかった(2名)、うれしかった(6名)。
・大体わかった(4名)、少しわかった(4名)
・意味がわからなかったときには、先生が教えてあげた。
・とてもうれしそうだった
・意味は、ある程度理解できたが、よくわからないこともあった。
・ときどき掲示板の翻訳機能が韓国語として適切でないことがあった。子どもたちはおかしがって笑っていた。
・意味がわからないときは、子どもたち同士で聞きあっていた。
掲示板上でメッセージを発信するとき ・わくわくした(3名)
・意味が通じるかどうか心配だった(8名)
・操作がとてもむずかしかった(2名)、少しむずかしかった(6名)
・なかなか翻訳がうまくいかなかった。自分が書いた言葉と逆翻訳された言葉を見て子どもがとまどっていた。
・わくわくしていた
・意味が通じるかどうか心配に思った
・操作は少しむずかしかった。
・はじめは、メッセージを書き込むとき、どのボタンを押すのかよくわからなかった。一二度試行錯誤の後うまく書き込めるようになった。
掲示板利用による
児童の関心や学習態度の変化
・韓国に対して大変興味を持つようになった(2名)、少し興味を持つようになった(6名)。 ・あまり変化はなかった。
・児童は、メッセージ交換に興味があったが、相手校からのメッセージがすぐに返ってこなかったので、相手校にもメッセージを出さなくなってしまった。そしてだんだん興味がなくなってしまったようだ。
掲示板利用交流は思いどおりに進んだか ・あまり思いどおりにいかなかった。
・定期的な利用ができず、交流が深められなかった。
・交流の仲立ちをしてくれる人がいれば、もっとスムーズに交流ができると思う。
・あまり思いどおりには進まなかった
今後も掲示板を利用するか ・利用する ・利用したいと思うが、児童が使うというよりは、教師のグループや組織で利用したい。
掲示板利用交流の適当な頻度 ・週に1回 ・週に1〜2回
掲示板に対するその他の感想、希望   自動翻訳システムは、すばらしいプログラムだと思うが、韓日翻訳のレベルをもっと改善する余地があると思う。


4.1.6 芳明小学校−フィギョン小学校(日韓国際交流)

 芳明小学校 (岡山県岡山市)は、先進的な情報教育を実践している小学校である。フィギョン小学校(韓国・ソウル特別市)は、前述のように相模原市立淵野辺小学校とも国際交流を実施している小学校である。日本福祉大学の影戸誠助教授にコーディネータになっていただき、交流が実現した。両校の調整がなかなかつかず、韓国の小学校が冬休みに入った2004年1月から交流が開始した。韓国の小学校の冬休みは1月1日〜2月10日、三学期は2月11日〜2月14日ということもあり、表4−11に示すように、掲示板を利用した交流は、芳明小学校側からのメッセージがほとんどとなった。メッセージの内容は、自己紹介と韓国についての質問が中心であった。翻訳結果については、ごく一部の固有名詞および原文表記の問題を除くと十分理解できるものとなっていた。
  ヒアリング結果、アンケート結果をもとに両校の活動状況および担当の先生の意見を表4−12にまとめて示す。アンケートは、付録1−1を用いた。

表4−11.掲示板上のメッセージ交換数とテレビ会議の実施
  9月 10月 11月 12月 1月 2月  
芳明小学校         29   (件)
フィギョン小学校           3 (件)
テレビ会議              

表4−12 芳明小学校−フィギョン小学校の交流
学校名 岡山市立芳明小学校 フィギョン小学校
所在地 岡山県岡山市 韓国ソウル特別市
指導教官 安原 暁美 先生 シン・ヒョンジョン先生
参加児童 4・5・6年生有志 21名 5年6組 40名
国際交流経験   淵野辺小学校と交流
実施教科 総合的な学習の時間 コンピュータ、ときどき英語
国際交流授業計画 ・途中から組み込んだ。
・あまり苦労はなかった。
・途中から組み込んだ
教育目標 遠隔英語レッスンの最終目標として英語のプレゼンを送る。 ・当初の目的は、児童に英語を書かせることだった。その後ほかの文化を知ることに変更。
・児童に楽しさを与えること
交流テーマ 異文化交流
国際交流授業のための時間確保 ・あまり時間が取れなかった。
・開始が遅れたことと翻訳付掲示板で思いどおりに文章を入力しにくかった。
・長い冬休みと短い3学期のために時間が取れなかった。
先生間の事前打ち合わせ あまり話し合いができなかった。 ・全然話し合いができなかった。
テレビ会議の実施 なし
掲示板上での交流の継続性 あまり継続的に実施できなかった 継続的に実施できなかった
コーディネータの有無と必要性 ・日本福祉大学の影戸誠先生が仲立ちをしてくださり、活動してくださった。
・絶対に必要だ。
・日本福祉大学の影戸誠先生
掲示板上でメッセージを受けたとき ・とてもうれしがっていた。
・意味は、大体わかった。
 
掲示板上でメッセージを発信するとき ・わくわくしていた
・操作は少しむずかしかった
・思ったように訳されない文になる。
 
掲示板利用による
児童の関心や学習態度の変化
・少し変化があった。
・他の児童も掲示板で交流することに興味を持った。
 
掲示板利用交流は思いどおりに進んだか ・まだ始めたばかりなので続けると交流できそうです。
・継続すると結果が出ると思います。
 
今後も掲示板を利用するか    
掲示板利用交流の適当な頻度    
掲示板に対するその他の感想、希望 ・動画や画像が貼り付くので交流しやすい。
・交流が手軽である。
・うまく翻訳できればさらに使いやすい。
 


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