4.実践授業等の実施内容




4.1 実践授業のIT環境(活用したハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ等)

 実践授業は、大分地区で2校、広域で2校実施していただいた。さらに、教材提供環境の評価、アドバイス校として3校にご協力いただき、一般の Spybotics 工作教室でも導入していただいた。それぞれ独自のIT環境で実施されており、ここでは大分地区の2校の環境について記述する。

(1)大分市立滝尾中学校

 コンピュータ教室のパソコン40台をそのまま使用した。生徒数は1クラスあたり約35名で、実習用ロボットが8台であったため、パソコン4〜5台につき1台の割合でロボットにプログラムを転送するためのケーブルを接続した。ロボットへのプログラムの転送は、このケーブルが接続されているパソコンでのみ行った。
 光センサーの実習のために、懐中電灯を8個用意した。
 OSは、 Windows98であった。


(2)大分県立別府鶴見丘高等学校

 コンピュータ教室の教室内LANに接続されたパソコン15台を、各生徒がプログラム(フローチャート)のみを作成し、ファイルサーバの特定の場所に保存するマシンとして使用した。
 ロボットにケーブル接続し、プログラム転送するためのノートパソコンを、教室内にLAN上にプロジェクト側で3台用意し、これらはプログラム転送専用パソコンとして使用した。
 これは、当校のパソコンのOSが Windows95 であり、ロボットにプログラムを転送できないことに起因する構成であった。プロジェクト側で用意した3台のパソコンのOSはそれぞれ、 Windows98, Windows Me, Windows XPであった。

 実習用ロボットを8台、光センサー実習用の懐中電灯を8個それぞれ用意した。


4.2 実践授業の内容

(1)大分市立滝尾中学校

実践授業は、以下の内容で実施していただいた。

・日時: 2004年1月20日(火) 10:45〜14:25(3時限)
2004年1月22日(木)  8:45〜10:35(2時限)
2004年1月23日(金)  8:45〜10:35(2時限)
・授業ご担当: 宿理 智明 先生(技術家庭科)
・対象:2年生の全生徒(7クラス、約240名)
・利用したロボット: LEGO Spybotics

 通常のカリキュラムの、技術家庭科の授業の中で、コンピュータの実習として7クラスを1時限ずつ、計7時限の実践授業を実施していただいた。
 実習前の事前授業として、コンピュータ制御に関する学習、教材アプリケーションのみを使用した基本操作の学習を、各クラス1時限ずつ実施した。
 各クラス生徒約35名に対し、実習用ロボットが8台であり、4〜5名のグループに1台の割合でのグループ実習形式で実施された。

 まず、課題1のフローチャートを各自作成。
  一旦進んで戻ってくるプログラム。
  課題1が全員できたら、班ごとにロボットを取りにいく。
 ロボットのタイプや電池残量に合わせ、キャリブレーション画面を使って各班ごとに微調整、試行錯誤を行う。
 ロボットのタイプや電池残量に合わせ、キャリブレーション画面を使って各班ごとに微調整、試行錯誤を行う。
 光センサーの説明の後、「明るかったら前に少し進む」プログラムを作成する。光センサー部分に懐中電灯で光を当てた場合と、当てない場合のロボット動作の違いを確かめる。
 光センサーの判断を利用して、ロボットのさまざまな動きを実現する応用を行う。
  フロントバンパーのタッチセンサー(スイッチ)を使用し、障害物に当たったら右に避けるプログラムを作成する。実際に障害物に当てて動作を確認、試行錯誤する。
 班ごとに応用課題に挑戦する。光を当てるとその場で回転したり、障害物に当たると元の位置に戻ってくるなど、各班で独自の考えを盛り込んだプログラムを作成していた。


(2)大分県立別府鶴見丘高等学校

実践授業は、以下の内容で実施していただいた。

・日時:2003年1月26日(月) 15:40〜16:30(1時限)
・授業ご担当: 田中  胤 先生(数学科)
・対象:1年生の受講希望者(15名)
・利用したロボット: LEGO Spybotics

 実習用ロボットは8台であったため、生徒2人につき1台の環境であった。プログラムができた生徒が、8台置いてあるロボットを任意に選択し、プログラムを転送して実行、というサイクルを自由に行った。
 希望者であり生徒の意識も高かったことから、実習はスムーズに進行していた。

 まずフローチャートの概念、操作方法を先生が説明。
 各自、基本動作のプログラム
  (進む、曲がる、待つ)を作成。
 ロボットにプログラムを転送し、実際の動きを確かめる。
  ループを使った応用例にも挑戦する。
 光センサーとタッチセンサー(スイッチ)を使い、条件分岐のプログラムを作成、実際にロボットを動かしてみて、その動作を確認する。
 思ったとおりに動かない場合は、修正して再度確かめてみる。試行錯誤を繰り返し、徐々に思いどおりに動くようになる。
 自由制作の課題に挑戦する。各自、さまざまなプログラムを作成してみて、より複雑な動作を実現する。


(3)北海道教育大学附属札幌中学校

実践授業は、以下の内容で実施していただいた。

・期間:2003年10月〜2004年2月
・授業ご担当: 榎並 典昭 先生(技術家庭科)
・対象:2年生 選択教科 技術(5名)
・利用したロボット: LEGO Spybotics

 生徒は自分たちでインターネットを利用しながら情報を集め、実習に取り組んだ。
 最初は遊び感覚で簡単なゲームのようなものを作っていた生徒も、ロボットの動きを改良しながらプログラムの学習を進め、さらにはメカニックな面でも改良を進めるに至った。

 生徒はみなとても興味をもって、主体的に実習に取り組むことで、理解を深めることに成功した。


(4)福岡市立平尾中学校

実践授業は、以下の内容で実施していただいた。

・期間:2003年9月〜2003年12月
・授業ご担当: 中里 秀一 先生(技術家庭科)
・対象:3年生(249名)
・利用したロボット: SONY AIBO

 事前授業として10時間、「制御のしくみ」、「センサーのしくみ」、「プログラム」の学習を実施した。
 実習は、まず教材アプリケーションで用意した課題に沿って実施され、2時間から3時間で履修した。
 次に、自由課題として先生が設定した課題に基づいた実習を、4時間から5時間でプログラミングした。その後、実際にロボットを動かしてみて、解決すべき点をみんなで確認し、プログラムの改良を手がけていった。
 その繰り返しで、完成までこぎつけた充実感をみんなで共有していくことができた。


(5)福岡市ロボスクエア スコーレ・アソカ  博多リバレイン 教室

一般の Spybotics 工作教室に、プログラミング講座の教材を導入していただき、以下の内容で実施していただいた。

・期間:2003年10月〜2003年12月
・ご担当: 冬野 正仁 様( 博多リバレイン 教室 室長)
・対象:小1(1名)、小2(3名)、小3(1名)、小4(4名)、小5(4名)、小6(2名)、中1(2名)
・利用したロボット: LEGO Spybotics

 事前授業として、教材となるロボット( Spybotics )のハードウェアの特性(車輪と軸、てこの原理を使ったアームなど)の説明を実施した。
 実習課題は、工作教室として独自の課題を設定した。

 まず、アルゴリズムについて概念の学習、プログラム作成、簡単な課題を通した実験、改良を繰り返す授業を1時間実施した。
 概念学習は、フローチャート型のプログラムとはどういうものか、ということについて、時間概念に関する他のプログラミングソフトとの比較を、生徒への質問形式で実施した。

 次に、教材アプリケーションでのフローチャートによるプログラミング操作手順の実習を実施した。
 そして、「何コマ進むか」という簡単なゲームを通じて、ハードウェアの調整(キャリブレーション)を実施し、最後に「車庫入れゲーム」を実施した。
 「車庫入れゲーム」は、複数の車庫を配置し、直進と回転の組み合わせでロボットを車庫に入れるゲームである。車庫にそれぞれ点数をつけて、高得点を目標にプログラム改良を促すよう工夫を行った。

 生徒は全員がとても興味を持ち、主体的に取り組んでいた。年上の生徒が年下の生徒の世話をするなど、一般の工作教室ならではの学習形態が見られた。先生による個別指導も効果を発揮し、時間を延長するほど熱心な取り組みであった。



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