5.研修パッケージの開発




5.1 研修パッケージの開発

図7 研修パッケージ 「でじこん先生」

 研修パッケージとして,図7のような「でじこん先生」を開発した。また,表8に示したように,教師や生徒がディジタルコンテンツに慣れ親しむことを目的とした研修用テキスト9本を中心に作成した。さらに,コンピュータや電子情報ボードなどのICTを活用した実証授業を紹介するビデオクリップを作成し,HTML化した。クイズやスタンプラリーでディジタルコンテンツに慣れ,実際の活用方法を紹介することで,授業イメージを高めることができる。開発した研修用テキストは,いずれも1テキスト 45分から50分で研修を行うことができる。先生用テキストには,トラブル対策や留意事項が記載してあり,生徒用のテキストは字数を少なくし,画面イメージを多く使用し,自学自習もできるようにした。
表8 研修パッケージ用テキスト一覧
でじこんスタンプラリー 先生用
でじこんマスターへの道1.
( Power Point 2002用)
先生用
生徒用
でじこんマスターへの道1.
(ハイパーキューブねっと用)
生徒・先生共通
でじこんマスターへの道2.
( Power Point 2000用)
先生用
生徒用
でじこんマスターへの道2.
( Power Point 2002用)
先生用
生徒用
オリジナルムービーの作成 先生用

5.2 特徴


(1)テキスト「でじこんスタンプラリー」・「でじこんマスターへの道1.」

図8 研修用テキスト

 生徒や教師がコンピュータのスキルを意識したり,身構えることなく,クイズやスタンプラリーを通して,多くのディジタルコンテンツを閲覧したり,検索機能を使用したりすることができる研修パッケージを開発した。小学校低学年にはスタンプラリーを,小学校高学年以上には,クイズ形式の研修パッケージの利用を勧めた。クイズでは,コンテンツを見て解答するだけでなく,プレゼンテーションソフトやホームページ作成ソフトに回答コンテンツのサムネイルをコピー・アンド・ペーストし,テキスト入力も行う。回答用紙となるプレゼンテーションファイルは,予め各クライアントに配布した。回答作成時には,ディジタルコンテンツの検索機能を使い,答えとなるコンテンツを探すためにキーワード入力にも工夫がみられた。ディジタルコンテンツを検索し,クイズを解くことに集中しているため,多くの教師や生徒は,同時に二つのソフトを使用する困難さを感じることなく,楽しんで慣れ親しむことができた。

図9 でじこんマスターへの道1.のクイズ
図10 回答用紙
図 12 中学校初任者 40名に聞きました
図 11 小学校初任者 51名に聞きました

 また,小・中学校の初任者研修にて「でじこんスタンプラリー」,「でじこんマスターへの道1.」の研修を行い,どの学年で使用できるかアンケートを集計した。小学校初任者 51名の集計結果は 図 11 のようになった。スタンプラリーは小学3年生から6年生で使用できるが30名以上,でじこんマスターは5・6年生で使用できると回答した初任者が30名以上となった。中学校初任者半数以上は,中学生でも使用できると回答した。でじこんシリーズの開発にあたり,スタンプラリーは低学年で,でじこんマスターは小学校高学年から中学生を対象していたので,このアンケートは願ってもない結果となった。


(2)テキスト「でじこんマスターへの道2.」

 第2段階として,ディジタルコンテンツをダウンロードし,自分でクイズを作成する内容の研修パッケージを開発した。テキストは,プレゼンテーションソフトのバージョンが学校によって異なることを配慮し,2バージョン作成した。クイズを作成することで,クイズとなるコンテンツを選択し,友達や先生に,わかりやすい作品をつくることが要求される。そのため,プレゼンテーションソフトのスキル部分に注意を奪われるのではなく,わかりやすいプレゼンテーション作成の練習にもなると考えた。実際,生徒の作品を見ると問題文やヒントの出し方にも工夫が見られた。教師にも,同様の研修を行ったが,同じ研修内容ながら教師には授業をイメージしながら作成してもらい,その後改良を重ねて授業に利用した。

図 13 生徒が作成したクイズ1
図 14 生徒が作成したクイズ2
図 15 素材を探す
図 16 テキストを見ながらクイズ作成
図 17 クイズを発表


(3)テキスト「オリジナルムービーの作成」

 第3段階として,ディジタルコンテンツを自ら作成する研修パッケージを作成した。この開発にあたり,特別なソフトを購入するのではなく,OSに付属しているソフトを利用することで汎用性を高めた。この研修は,希望する教師と,プレゼンテーションを控えた生徒に実施し,ビデオ撮影からコンテンツ作成まで取り組んだ。実際の作成方法を知ることで,ディジタルコンテンツに対する抵抗感をなくし,ディジタルコンテンツへの利用意識が高まると考えた。オリジナルの動画教材を作成し,授業に活用した教員も数名いた。このテキストは,ビデオクリップを多く活用する学校では必須であるという意見を多く得た。

(4)授業実践例ビデオクリップ

 授業イメージを高めるために,ディジタルコンテンツを使用した県内の授業実践例を紹介した。クリップは 30秒から1分30秒で作成し,いろいろな教科,校種の事例を提示できることで,授業への活用アイディアを持てるようにできるのではないかと考えた。研修のはじめに行う授業実践クリップの紹介は,何よりの普及啓発であった。

図18 ビデオクリップ紹介
図 18 校内研修会


5.3 活用に向けて

図 20 構成案の記述例(第1学年英語)

 教職員の研修終了後,企画やラフスケッチを記入した構成案(コンピュータを活用した教材の制作行程)を提出してもらい,教材作成を進めた。構成案( 図 20 )は,コンピュータを活用した授業を行う上で,教員とICT活用授業アシスタントを結ぶ重要な役割を果たした。この構成案を元に,ICT活用授業アシスタントが使用できるディジタルコンテンツや,素材を提供し,教員と話し合いを重ねることで,教員が求める教材へと改善されていった。教員は授業前にICT活用授業アシスタントとともに,電子情報ボードの操作を練習したり,教材の改善を行ったりすることで,機器に振り回されることなく教科の内容に力を注ぐことができた。

  また,教員用新聞「きりきり e-情報ボード」( 図 21 )を随時発行した。授業で使用される先生方の取り組みや生徒の様子を掲載することで,活用意識が高まると考えた。新聞発行後,機器操作の問い合わせや教材を作成するための支援依頼が増えた。


図21 きりきり e-情報ボード


前のページへ 次のページへ