7.実証授業及び普及啓発授業




7.3 普及啓発授業

 開発したコンテンツの汎用性と普及啓発を目的に,表 10に示すように普及啓発授業に取り組んだ。 以下に代表的な普及啓発授業の詳細を示す。

表10
月 日 学校名 教科 学年 指導者 参加者数
11月7日 岡山市立伊島小学校 道徳 佐野,濱本 40
12 月 11 日 作東町立吉野小学校 理科 5 ,6 林  美幸
12 月 12 日 作東町立吉野小学校 総合 5 ,6 砂  泰将
1月9日 岡山県立久世高等学校 生物 仁木  建
1月 16 日 御津町立御津中学校 理科 小倉 恭彦 25
1月 21,22 日 倉敷市立福田中学校 理科 野稲 幸男


(1) 小学校第5学年道徳「目標を持ってやり通そう」

使用コンテンツ

学習目標

主な学習活動と児童の反応

 コンピュータ画面から自分に語りかける難波氏 はとても説得力がある様子だった。「 本当の難波さんに会っているみたいで現実的だった。」「今度は本物の難波さんに会ってみたい。」等の感想が聞かれた。
  写真に対する思い入れや,虫たちは人間と同じ場所で一生懸命生きていることを語る難波氏のメッセージを熱心に視聴していた。登場する虫たちもおもしろく,ふだん見ることがないであろうユニークなしぐさや顔のアップ等を楽しんで見入っていた。
  身体のハンディを抱えながら 40 年以上も写真を撮り続けている難波氏のコンテンツは,彼自身の生きる姿勢や生き物・自然の素晴らしさ等,いくつものエッセンスが含まれており,”目標を持ってやり通そう”というこの授業のテーマのみならず,考えさせられるものがある。


難波氏のコンテンツ ”なんばさんと生きものたち”を活用した道徳の授業。テーマは「目標を持ってやり通そう」 。難波氏が写真家であること,その著作物であるジョロウグモの本が先生から紹介された。
左目が見えないハンディを乗り越え写真を撮り続けているという難波氏自身のメッセージを,教室前方のスクリーンで一斉に見た後,各自 コンテンツを視聴する児童たち。”目の前で私に語りかける難波さん”は,とても説得力があり,身近に感じる様子。登場する虫たちもおもしろい。
わかったこと・感じたことは,キューブミーティング(チャットソフト)に入力する。各自が入力した意見はリアルタイムでスクリーンに映し出される。他人の意見を見聞きすることで新しい発見をし,自分にない友達の視点を参考にすることができる。
自分がこれまで続けてがんばってきたことを発表。
  • 1つのことを続けていくのが大事だと思いました。ソフトボールをあきらめずにがんばっていきたい。
  • 今まで続けてきたことはないけど,ちょっとしたことであきらめないで,1つのことを続けていきたい。

 

 


※ この授業は「どこでも研究会」と題した道徳の中国地区小学校道徳教育研究の研究授業でもあり,インターネットによるライブ配信が行なわれた。(教室の後方で授業の様子をライブ配信する岡山県情報教育センターの職員。)


(2) 小学校第6学年理科「生き物と環境〜不思議な生き物オオサンショウウオ編〜」

使用コンテンツ

学習目標

主な学習活動と児童の反応

 珍しい生き物ながら,ほとんどの児童がオオサンショウウオを見たことがあるようだった。ユーモアのあるその容姿は児童たちにとって興味深い存在らしく,各自コンテンツを熱心に視聴していた。「 お父さんが巣穴に入って,すごいと思った。」「子どもを育てる半年間,えさをあまり食べない。」等,コンテンツから知識を得,それに対して驚きを抱いていた。
  ”オオサンショウウオになって人に話すとしたら?”という課題では,オオサンショウウオの気持ちになって,感情的に人間に警告する文章を書き込んでいた。また,「ぼくたちの名前は何?」,「ぼくってみんなから見るとどんなそんざい?」等,子供らしい発想もあり,周りがなごむ場面もあった。
  人間が住みやすい環境を作ったことで,逆にオオサンショウウオにとっては住みにくい環境になってしまったことを知り,環境問題への意識ができていた。


昨年度開発したコンテンツ ”ふしぎな生きものオオサンショウウオ”を活用した授業。まず,”オオサンショウウオはどんなところが不思議かな”という課題が出された。コンテンツ画面を指し「黄色の部分をクリックして考えてみましょう。」と先生 。
コンピュータ画面の動くオオサンショウウオに興味を示し,それを解説する声に注意を向ける様子。スピーカーそのものと,それから出力される音量が小さいため,片手に持って一生懸命視聴する児童たち。その後,一人ずつ,コンテンツを通してわかったことを発表した。
”オオサンショウウオになって人に話すとしたら?”という本日の2つめの課題に取り組む様子。自分がオオサンショウウオだったら人間にこんなことを言いたいという気持ちで,用意されたワークシートに自由に書き込んでいった。
書き込んだ答えを一人ずつ発表していく。「川をほそうするな!すめなくなるじゃないか?ぼくたちをいじめないで!」等,環境問題を人間に訴えかけたり,「ぼくってみんなから見るとどんなそんざい?」等,ほのぼのした意見もあり,周りがなごむ一幕も。
授業の後,オオサンショウウオコンテンツの制作者でもある藤本氏の周りに児童が集まってきた。不思議な生物であるオオサンショウウオと,その研究者 を目の前にして,興味は尽きることなく次々に質問がなされた。


(3) 小学校第6学年理科「生き物と環境〜がんばれアユモドキ編〜」

使用コンテンツ

学習目標

主な学習活動と児童の反応

 コンテンツをクリックする度に新しい情報が得ら れ,児童それぞれの中で,今まであまり知らなかったアユモドキに対するイマジネーションが膨らんでいる様子だった。アユモドキの気持ちになり,くだけた言い回しや顔文字を使って楽しく表現していた。
  制作者の気持ちに関しては,アユモドキの気持ちとは違う大人の表現をしていた。
  コンテンツを視聴することにより,今まで知り得なかった天然記念物アユモドキの姿や生態についての知識が得られ,絶滅寸前のアユモドキを通して,自然を大事にする心や人間と他生物との共存についての意識が芽生えたようだ。


今年度開発した新コンテンツ ”がんばれアユモドキ”を活用した授業。アユモドキは,全国でも,岡山と琵琶湖水系にしか生息していない珍しい生き物であり,このコンテンツが児童たちに新たな知識を与え,興味を呼ぶものとなるだろう。
”アユモドキになって人間に話すとしたら?”という課題が出され,入力していく。コンテンツをクリックする度に新しい情報が得られ,同時に児童それぞれの中でアユモドキに対するイメージができてきた様子。
入力した回答を前に出て発表。どのコンテンツを見てそう感じたかを,電子情報ボードを操作しながらみんなに説明する。
このアユモドキコンテンツは,4人の制作者の思いが盛り込まれている。 ”○○さんになってみんなに話すとしたら?”という課題に対し,制作者ごとに分かり易く色分けされたコンテンツを視聴して,ワークシートに書き込んでいく。
さきほどはアユモドキの気持ちで考えたが,今度はアユモドキを守る大人の気持ちになって考える。異なる視点からの課題にも皆よく考えて発表していた。






(4) 高等学校第3学年生物「課題研究〜アユモドキ,オオサンショウウオの保護〜」

使用コンテンツ

学習目標

主な学習活動と生徒の反応

 ”人間は俺たちの住家を破壊しすぎだ!!人間のせいで川も山も汚れていって俺たちは住家をなくし絶滅しそうだよ〜”,” 人間は自分達のことばかり考えすぎじゃい!例えば,森林伐採でもそうだよ。環境破壊しているのは人間じゃないか!”等,怒りの表現が多く見られた。人間による環境破壊により,生物たちを追い込んでいるという事実をあらためて認識する。普段,なんとなく見聞きしている環境問題が,コンテンツ中のリアルな映像や詳しいナレーションによって,具体的に迫ってきている様子だった。


「オオサンショウウオはこの辺に住んでいるし,アユモドキは岡山県南に住んでいます。」と先生から説明。生徒の希望により,どちらかのコンテンツを選択し,ほぼ半数ずつに分かれた後,自由に視聴する時間が設けられた。
オオサンショウウオは岡山県中北部に生息するため,見たことのある生徒が多数。珍しい存在ではないが,コンテンツの中には,今まで知らなかった新しい発見がたくさんあるはず 。
自分がオオサンショウウオ(もしくはアユモドキ)になったつもりで,人間に言いたいことをワークシート( PowerPoint)に入力していく。 入力後,友だち同士で意見交換を行なう。
最後に,入力したことを発表する。まず,先生が生徒の入力した内容を読み上げた。「それが同じ生物に対してすることか!」アユモドキが人間に対して怒っている様子を教室中に響き渡る声で表現された。続いて数名の生徒が先生に倣って発表。


(5) 中学校第1学年理科「岩石・鉱物の広場」

使用コンテンツ

学習目標

主な学習活動と生徒の反応

 一見難しそうな岩石名クイズにも,慣れた手つきでコンテンツを操作して,解答を探っていた。教員により,クイズのヒントも解答も,電子情報ボードで分かりやすく解説された。
  草地教授のインタビューを視聴した感想では,「最初から絶対新しいものを見つけようとしているのだと思っていた。でも実際には,初めから見つけようとしているのではなく,努力の結果見つかるということがわかった。鉱物学者への見方が変わった。」,「石は年に 50種類位増えている。石なんかみんな同じだと思っていた。日本では1000種類,世界では4000種類もの石があるというのは驚き。大事なものを見せてもらってありがとうございました。」等,自分が鉱物学者に対して抱いていたイメージが変化したり,鉱物に対しての知識が深まっている様子だった。そして,草地先生に対して感謝の気持ちを述べているのは印象的である。


組織の違いと有色鉱物の割合に着目して,4種類の岩石名を答えるクイズに挑戦。2人で1台のノートパソコンを操作し,話し合いながら観察する。経済産業省,CEC,教育関係者等多数の大人が参観する中,生徒たちは慣れた手つきで DRAGRIで再生・停止を自由にコントロールしながら動画(コンテンツ)を操作していた。
ヒント及び解答は,電子情報ボードを駆使して説明。
鉱物学者(博士)である草地先生のインタビューを視聴し,コメントの中から印象に残ったものを選んで,今までの自分の考えや見方を振り返って草地先生にメッセージを書く。
コンテンツの中で印象に残ったものや草地先生へのメッセージを前に出て発表する。同時に,友達の意見を聞いて,見方・考え方をさらに深める。鉱物に対しての知識が深まったり,鉱物学者に対してのイメージが変化する様子が窺えた。
”フィールドに出かけよう!草地先生のように鉱山跡で鉱物採集をしてみよう!”というタイトルのスライドを映し, 鉱物採集をする機会である町内でのフィールドワークについて説明 。「実際にこんな石が採れるよ。」と先生。


(6) 中学校第1学年理科「水晶にアタック」

使用コンテンツ

学習目標

主な学習活動と生徒の反応

 教師が,普段はあまり見ることのない鉱物を次々に披露し,コンテンツを視聴しながら,また,生活に密着した例を挙げてわかりやすく説明した。
  生徒たちは珍しい鉱物,きれいな鉱物に興味を示し,「わあ〜」とか「きれい」とか口々に素直な感想を発しながら見入っていた。
  水晶の角度を測ることで,鉱物にも特徴があることを認識していた。


「学校にはなかなか実物の石や資料がないけど,みんなに勉強してもらいたくて,岡山県情報教育センターを始め,多数の人が授業の準備をしてくださっています。」と,まずEスクエアアドバンスプロジェクトに感謝の言葉があった。
「鉛筆の芯は 石墨で,ほとんど 炭素でできていて,ダイヤモンドと成分は一緒。でも結びつきが違う。」等,身近なところで鉱物が使われていることを先生が説明。コンテンツを電子情報ボードに映し,草地先生について,石の名前になるほど世界でも有数の名誉な方であると紹介。
次々に鉱物を示す先生。目の前で,今まで見たことのないきれいな石や変わった形の石を見て,「わあ〜!」という感嘆の声があがる。「この石は磁石の性質があり,方位磁石が狂うよ。」等,それぞれの石ごとに興味深い解説をされた。
水晶が各班に配られ,水晶の特徴や結晶の角度を測って,ワークシートに記入する。・きれいに光った六角形・先がとがっている・手を当てると透けて見える・氷みたい・鉛筆みたい・つららみたい等,観察した特徴を自由に記入していた。
水晶の結晶の角度を,角度測り器や分度器を使って測定。「 120度,135度・・・?」”結晶の角度を測って気が付いたこと”という課題に対し,”だいたいの角度は同じということがわかりました。”という解答が得られた。


(7) 中学校第1学年理科「造岩鉱物の観察」

使用コンテンツ

学習目標

主な学習活動と生徒の反応

 日常的にはあまり馴染みのない6種類の鉱物を珍しそうに観察していた。セキエイやチョウセキ・クロウンモは県南の海水浴の砂であるという,生活に密着したわかりやすい先生の解説で,これらが実は身近に存在するものだという認識ができたようだった。
  特殊な偏光顕微鏡についても,偏光板での実習及び,コンテンツの視聴やDRAGRIを操作することで,理解を深めているようだった。


代表的な造岩鉱物を6種類(石英 ・長石・黒雲母・かくせん石・輝石・かんらん石) 観察し,その特徴をワークシートに記入する。
・かんらん石→えだまめみたい。・石英→ひし形のおもちみたい。塩が固まったみたい。・黒雲母→のりみたい。等,見たまま,感じたままを自由に記入していった。
白雲母の標本を2枚の偏光板で観察する実習を通して,偏光顕微鏡に使われている偏光板の原理を説明。偏光顕微鏡で見るためには透明でないといけない,コンテンツ中の”岩石薄片の作り方” の動画を見ると鉱石を透明にする方法がわかることを紹介。
偏光板を動かして観察する生徒。偏光顕微鏡に関するコンテンツを映して説明する先生。
花崗岩は”墓石”,安山岩は”豆もち”のような模様と説明される。”この岩石はな〜んだ?岩石薄片から考えよう”というコンテンツで偏光顕微鏡画像を DRAGRIで自由に再生・停止させ,観察しながら,実物の花崗岩・安山岩とコンピュータ上の模様(偏光顕微鏡で見た場合)を比べている。


(8) 中学校第1学年理科「鉱物の研究って?」

使用コンテンツ

学習目標

主な学習活動と生徒の反応

 「これきれい!」,「すご〜い,沙漠のバラだって。」と,コンテンツを視聴しながら驚いたり楽しんだりしている様子だった。日頃馴染みのない石(鉱物)に,実は様々な形や色のものが何種類もあり,「意外に種類は多いんだ。」という感想を持った様子だった。
  そして,コンテンツ中の草地先生の語りもわかりやすく,今まで抱いていた科学者に対する暗いイメージが変わったという意見が多数聞かれた。
  「前はあまり興味がなかったけど,『岩石・鉱物のふしぎ』の勉強をして興味がわいた。」等,この授業を通して科学者に対する見方が変化したり,今まであまり気にとめなかった,もしくは知らなかった鉱物というものに対して,興味を持つきっかけになったようだった。


”草地先生の研究に対する考え方や姿勢,鉱物をみつめ調べていく態度,科学者という仕事について感じたこと,思ったことを書いてみよう。”という課題に取り組む。まず,電子情報ボードでコンテンツの一部を一斉に視聴。
「すごいきれい!」「欲しい!」「透けて見えるよ。」水晶を見ている女生徒たちは,楽しそうに素直な感想を述べていた。「すご〜い,これ沙漠のバラだって!」等,今まで見たこともなかった石の不思議さに驚いていた。
「これくらい薄くなると顕微鏡で見えるよ。」前回の授業で学習した偏光顕微鏡のコンテンツを視聴している生徒に,先生が再度偏光板で説明。
「科学者は研究所にこもっていると思っていたけど違った。野外調査が中心だっていうことをはじめて知った。」「好きでやっているから楽しいし,難しいことがあっても解決できるんだなぁと思った。」「一つの事にとことん打ちこめる草地先生が羨ましくなりました。」


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