4.国際交流の実践状況




 実験システムを利用して国際交流を日中,日米,日韓の計6校で実施した。その実施状況に関して報告する。

4.1 日中交流

4.1.1 日中交流の実施校

(日本側)
千葉県旭市立琴田小学校(http://edu.city.asahi.chiba.jp/es-kotoda/
児童数:194人
学年:小学校5年
教科:総合的な学習の時間

図4−1 琴田小学校

コンピュータ整備状況
場所 台数
パソコン教室 児童用18台 教師用1台
図書館(調べ学習室) 児童用2台
普通教室 児童用各1台
職員室 教師用 1台
保健室 教師用 1台
多目的ホール 児童用 5台

インターネット接続環境:ADSL 1.5Mbps


(中国側)
中華人民共和国 花家地(ホアチアティ)実験小学校
児童数:910人
学年:小学校4年生
教科:コンピュータ教育
コンピュータ整備状況


コンピュータ整備状況
場所 台数
パソコン教室 50台
普通教室 各教室 2台
図書室 8台

インターネット接続環境:専用線 100Mbps


4.1.2 日中交流における実践報告

テーマ:インターネットで広がる国際交流の輪 
―小学生でも楽しめる国際交流学習の実際―

報告者:旭市立琴田小学校 木内順子


(1) 実施体制

 「総合的な学習の時間」の趣旨には,各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を確保することにある。また,自ら学び自ら考える力などの[生きる力]は全人的な力であることを踏まえ,国際化や情報化をはじめ社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するために,教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習をより,円滑に実施するための時間を確保する必要がある。
 そこで本校の研究としては,昨年度に引き続き,『自ら考え,主体的に活動できる児童の育成を目指して』という研究主題のもと,副題を「情報機器の活用を通して」として,特にネットミーティングを活用した国内・国外の遠隔地交流を中心に研究に取り組み,実践を重ねてきた。


(2) 交流方針

 「いつでも,どこでも,誰とでも,仲良く分かりあえる世界を開拓できる児童の育成」を目指し,総合的な学習の時間が始まる3年生は,市内の小学校とEメールのやりとりをしたり,相互訪問による交流を行い,4年生からは,ネットミーティングを使った学習が始まり,宮城県の白石市立福岡小学校長峰分校と,昨年度からの継続した交流学習をさらに発展させ,5今生になると,相手校は海外に広がり,中国北京市の花家地小学校との交流がスタートした。6年生は遠く太平洋を越えて,アメリカニューヨーク市にあるモットホール小学校と,昨年秋から継続し,今年6月まで交流を行う国際理解教育実践授業を行った。


(3)スケジュール

図4−2 掲示板を利用している様子

☆中国の新学期に合わせて,昨年9月から今年の3月までの予定で国際交流のスケジュールをたてた。

 7月 学校代表による中国訪問(夏休み)

 8月 担当者打ち合わせ(メールアドレスがわからず,断念)

 9月 中旬から交流開始

 10月 自己紹介(掲示板・グループ毎)
     ネットミーティングの準備

図4−3
中国について調べている様子

 11月 ネットミーティングの準備・リハーサル
     ☆14日,ネットミーティング(60分間)

 12月 行事と祭り,遊びについて(掲示板)

 1月 行事と祭り,遊びについて(掲示板)
   交流のまとめ2月 交流のまとめ

 3月 発表会(リハーサル・本番)
   中旬にネットミーティング


(4) 交流内容

 1学期に,交流相手校が中国・四根柏小学校に決まり,2学期からの交流を前に,進んで中国に関する資料を集めたり,中国語の本を読んで中国語について調べたりする児童も見られ,2学期からの交流を楽しみにしていた。前回のアメリカとの交流では,連絡の行き違いによる失敗がいくつかあったため,その反省点を踏まえて事前の準備・計画を進めた。
 交流学習が始まる2学期までに,交流相手校の担当者と交流内容を話し合い,交流方法について共通理解を図ることを考えていた。そのため,児童から,交流内容についての希望も取り,それらをまとめて,おおまかに5つのテーマを設定した。自己紹介,学校紹介,国の紹介,行事や祭りの紹介,遊びの紹介である。
 さらに,夏休み中に,学校を代表して,校長と教務が,中国に行き,交流相手校を訪れることになった。児童一人一人が描いた似顔絵に,漢字・ローマ字のほか,日本独特の文字であるひらがなの3種類の文字で名前を書き,あて名も「四根柏小学校」と代表児童によって丁寧に書かれた。
 中国訪問を前に,四根柏小学校の担当の先生に,あいさつをかねて,おおまかな交流内容,交流方法についてまとめたものをメールで送った。1学期終了間際のことであった。ところが,何日もたたないうちに,交流相手校が変わったとの知らせを受け,一体何があったのかと,この交流学習に不安を覚えた。後で聞いたところによると,四根柏小にはネットミーティングをするための十分な設備がなかったとのことで,こちらからのメールで交流内容にネットミーティングが入っていることがわかり,交流を断ってきたようである。変わって,交流相手校として紹介を受けたのが「花家地小学校」である。
 中国訪問の1週間ほど前のことである。あまりにも急な変更であったため,こちらからの訪中の日程は大きくは変えらなかったものの,なんとかネットミーティングのリハーサルまで行うことができた。また,予定していた四根柏小学校のスタッフと,間に入って連絡調整の手助けをして下さったパワーライズさん,そして,花家地小学校の教頭を含むスタッフ数人と会合を持つことができた。そして,その席で,こちらの交流希望と計画を伝え,9月から始まる国際交流学習についての確認を取ることができた。しかしながら,交流相手校が急きょ変わったことで,担当者の連絡先(メールアドレス)は,白紙の状態になってしまい,また,互いに夏休み中ということもあり,こちらから花家地小学校あてにメールを送っても,何の返事も返ってこない日がしばらく続いた。 このまま交流学習をスタートしてしまって大丈夫だろうかという不安がよぎった。
 そして不安な中で迎えた2学期,運動会が終わった9月中旬から,予定通り交流学習を開始した。といっても,まだ花家地小と何のコンタクトもとれていない段階であったので,とりあえず,いつでも交流学習が始められるようにするための準備から始めた。
 自己紹介は全員でするとしても,その後の交流テーマが4つに分かれるので,児童の興味関心別にグループ編成をした。学校紹介,国の紹介,行事や祭りの紹介,遊びの紹介のうち,国の紹介は希望者が多かったので,面積や人口など国土の特色やNo.1を紹介するチームと,衣・食・住を紹介するチームの2つに分け,全部で5つのグループができあがった。グループ名は,中国の友達にも通じるようにと,パンダ・ラビット・ドッグ・シャーク・ホエールというように動物の名前にした。メール交換ができるかどうかはわからないが,グループ名の頭にそれぞれ「KOTODA」をつけて,メールアドレスの登録も済ませた。
 次はいよいよ自己紹介だと,児童の心がはずんだ。自己紹介の項目を学級で話し合って,1.名前(性別)2.生年月日(年令)3.血液型 4.趣味 5.好きな食べ物と嫌いな食べ物 6.中国の友達へ一言,という内容に決まった。簡単な下書きを書いた後,思い思いにパソコンで入力する練習をしながら,「中国では,休み時間に何をして遊ぶのだろう。」「中国の人は,どんなおやつを食べるのかなあ。」などと,心はまだ見ぬ中国の友達のことを考えていた。
 9月の末に,翻訳機能のある,ネット上の掲示板が使えるようになり,10月に入ると早速使い方の練習を始めた。最初は長いアドレスを正しく打ち込むだけで四苦八苦していたが,2度,3度とくり返し挑戦するうち,ほとんどの児童が1回で正確に打ち込めるようになった。何も見ないで10秒程度で打ち込める児童もでてきた。
 自己紹介は,グループごとにまとめて行った。「初めまして」と入れると「初次見面」
というように,日本語が中国語に訳されて画面に出てくるのを見て,あちらこちらから歓声があがり,児童は自己紹介の項目の一つ一つを日本語と中国語とを比べながら,楽しんで掲示板に載せることができた。児童の中には,画面に出てきた中国語を熱心にメモする姿も見られた。中国の友達に自分たちの顔を覚えてもらえるようにと,グループで写真を撮り,画面に添えた。掲示板に書き込みをする際,次の4つの点に注意するようにした。

  1. 文や言葉の切れ目に区切りをつけるためにはスペースキーでなく,「,」または「,」を打つこと
  2. 文章には主語と述語を入れること
  3. 漢字にできるものはできるだけ漢字にすること
  4. 文は長くなりすぎないように短めにすること

などである。
 また,書き込みをした後は,日本語→中国語→日本語と2段階に翻訳される画面のうち,特に中国語から日本語に再翻訳される画面を見て,意味の通じる日本語になっていなかった場合,元の日本語に間違いがなかったかを確認するようにした。誤訳の例としては,「おかし」をひらがなのまま書き込んだところ,おかし→侵犯→侵犯する,といったとんでもない訳がでてきたことがある。これを「お菓子」と漢字に直して書き込んだところ,今度は,お菓子→点心→お菓子ときちんと訳すことができた。翻訳の画面を見ながら,意識して正しい日本語を使うよう気をつけるようになった児童も多い。誤訳ではないが,中国語にない言葉であったために(予想だが・・・)うまく翻訳されなかった例がある。「給食は,どんなものを食べますか。」と書き込んだグループが,「給食」がうまく訳せず,どうしようかと困っていた。相談した結果,「昼食」として書き込んだところ,うまく訳すことができたのである。試行錯誤をくり返しながら,児童は掲示板に少しずつ慣れていった。この作業と並行して,グループごとのテーマに沿って,調べ学習を進めた。
 この後,11月14日のネットミーティングに向けて,発表内容の検討会を行った。担任も児童も初めての経験ということもあり,発表内容を,学校紹介,国土の紹介,衣・食・住の紹介の3つに絞ると共に,発表しないグループについても,司会・進行の係やカメラ係,プログラムやあいさつの文字カード作り等役割分担をし,全員参加の授業を考えて準備を進めた。さらに,自分たちの発表内容が少しでも中国の友達にわかりやすいようにと,「スーパーYUKI21i」を使って写真などを取り込んだ発表画面を作ることになり,デジカメを持って校内を回る児童も見られた。
 ネットミーティングが近づくにつれて,児童は楽しみな気持ちと同時に,失敗したらどうしよう,自分の声がちゃんと中国まで届くのだろうかと心配をつのらせていた。
 ネットミーティング2日前のことである。学級の児童とカメラテストをした時のこと,「ニイハオ,花家地小学的各位」(花家地小学校のみなさん,こんにちは)という手書きの文字カードをカメラに向け,画面に映った文字を見て,思わずみんなで声を挙げてしまった。文字が左右逆の鏡文字になって写っていたのである。カードを作っている時にはだれ一人気づかなかったことであった。急いでカードを裏返し,裏からもう1度書き直すというドタバタ劇があった。
 2度のリハーサルを経て,機器は順調,児童の発表準備も完了,あとは11月14日のネットミーティングを待つばかりという前々日の12日,昼休みに,教室で掲示板を開いた児童が,中国からの書き込みを発見し,教室中ががぜん盛り上がった。1台しかないパソコンの周りに子供たちが殺到し,押すな押すなの大騒ぎ。日本語訳がわかりにくいところもあったので,教師が読み上げながら,補足説明を行った。中国の子供たちの自己紹介であった。琴田小の児童が首を長くして待っていた,初めての中国からの書き込みである。「やったー!」とバンザイをしている児童もいた。教師側から見れば,すべりこみセーフ,という感じである。やっと交流らしくなってきた,これならネットミーティングもうまくいくかもしれないと,ネットミーティングに向けての期待が高まる。ところが,その翌日のこと,帰りの会をしている教室に突然連絡がきて,保護者あてに緊急な連絡をしてほしいという。話を聞いてみて,「えっ?」と声をあげてしまった。花家地小に最終確認の国際電話を入れたところ,ネットミーティングの時間が,打ち合わせていた午前10時20分からではなく,午後4時半からだと一部の先生が勘違いをしているらしいとのこと。最悪の場合には,ネットミーティングが午後4時半からの60分間になるかもしれないという。そうなったとしたら,終わる時刻の5時半には,外はもう真っ暗である。急いで連絡帳にその旨を記入し児童を下校させる,というハプニングが起こった。信じられなかった。これまで掲示板にもネットミーティングの日時,内容については書き込みをし,リハーサルの際にも花家地小学校の先生に直接確認をし,さらに,琴田小の児童が作ったプログラムを中国語に翻訳したものをメールで送ってあったのである。何がどうなっているのか,中国側は,何を考えているのかと,疑問に思った。幸いにも,当日は予定通りの時間帯で,ネットミーティングが行えることになり,ほっと胸をなでおろした。
 いくつもの試練を乗りこえて,いよいよ11月14日を迎えた。朝,児童が心配そうに「ネットミーティングはどうなりましたか?」「今日,ネットミーティングはできますか?」と真っ先にたずねてきた。予定通りできることになった旨を伝えると,「ああ,よかった!」と,うれしそうな笑顔が返ってきた。
 ネットミーティングでは,両校の校長のあいさつの後,琴田小児童の進行により,琴田小と花家地小が交互に発表を行った。残念なことに,中国側の回線の都合により,「スーパーYUKI21i」の画面を表示することができず,口頭での発表になってしまった。それでも児童はうろたえることもなく,学校紹介に始まり,自国の紹介まで順調に進めることができた。資料はネットミーティングの際のプログラムとその様子である。

1.始めの言葉

図4−4 テレビ会議の様子

2.学校紹介

3.自国の紹介・No.1紹介

4.自国の紹介・衣・食・住

5.質問タイム

6.終わりの言葉

図4−5 テレビ会議の様子

 今回,ネットミーティングの際の通訳として,市内在住の在日中国人の中学生をお願いし,リハーサルから本番まで,スムーズに進行することができた。
 画面が見づらかったり,音が聞こえにくかったりした場面もあったが,児童は一生懸命に画面に見入り,話に耳を傾けていた。花家地小の児童数や先生方の数が,琴田小よりずっと多いことに驚き,また,日本在住の経験があるという中国の生徒が,上手な日本語で自己紹介や中国の紹介をする様子に驚きの声が挙がっていた。自分たちの発表についても,最初は緊張している様子が見られたが,次第に緊張もほぐれ,カメラに向かって互いに手を振り合う光景も見られた。最後に歌を披露し合う場面では,琴田小からは児童が大好きな「翼を下さい」,花家地小からは「校歌」と「蛍の光(英語版)」の発表があり,大いに盛り上がった。予定より時間が長引いてしまい,質問・意見交換の時間が取れなくなってしまったため,掲示板への書き込みにより,質問や意見を交換し合おうということで,ネットミーティングを終了した。授業を終えて児童は,「中国の人と友達になれてよかった。とても楽しかった。」「また,ネットミーティングをやりたい。」「中国と日本では,国土や食べ物などずいぶん違うと思った。」というような感想を述べていた。この後,児童からすぐにでもネットミーティングの感想や質問を掲示板に載せたいという声が挙がり,その日のうちにグループごとに書き込みを行った。すると,中国側からもすぐに書き込みの返事があり,中国との距離がぐっと近づいたような気がした。
 授業後の職員間の話し合いの中で,ネットミーティングでの発表内容は,聞いただけである程度イメージできるものがよい,という意見が出された。例えば,『東京タワー』は,私たち日本人にはなじみが深く,簡単にイメージできるが,外国人にとっては,説明を聞いただけではイメージすることが難しいのではないか,というのである。また,掲示板に書き込んで交流できる内容については,できるだけ掲示板を活用し,ネットミーティングでは,ネットミーティングでなくては伝えられない内容を選択して交流してはどうか,というような話し合いがなされた。
 ネットミーティングを経験してからというもの,児童は中国との交流学習に対して,それまで以上に積極的に取り組むようになった。総合的な学習の時間に限らず,いつ中国から書き込みがあってもすぐに返事が出せるようにと,教室のパソコンで毎日休み時間を使って,掲示板を開いては中国からの書き込みがないかどうかチェックし,書き込みがあると大喜びでそれを見,質問に対しては,すぐに返事を出し,こちらから質問したい内容については,グループで相談しながら,書き込みをしていた。
 第1回ネットミーティングの後,琴田小が考えていた当初の交流学習の年間スケジュールでは,3学期・1月後半に2回目のネットミーティングを予定していたため,後半の交流内容になっていた「祭りや行事」「遊び」について,掲示板を使って意見交換が始まった。しかし,12月に入るころになると,中国からの書き込みはほとんどなくなってきていた。それでも3学期からの交流を楽しみに,琴田小が冬休みに入ることの連絡を書き込みして,2学期の交流を終えた。
 3学期に入って,中国・花家地小学校の冬休みが1月18日〜2月17日だということが教師用の掲示板の書き込みの中からわかり,大変驚いた。こちらの始業式は1月7日である。どう考えても,1・2月のネットミーティングは日程的に折り合いがつかず,やむなく断念せざるをえなかった。児童にこのことを告げると,皆,がっかりしていた。なんとか掲示板だけでも交流を続けていきたいと,掲示板を開くが,2学期末にこちらから質問を書き込んだまま,返事が返ってきていない。返事がまだこないうちに,次々と質問や意見を書き込むのはどうかと,はやる気持ちを押さえて,祈るような気持ちでひたすら中国からの返事を待った。なんとか返事を欲しいとの旨をメールで送ったところ,1件の書き込みがあった。「運動会は何月ごろにやるのですか。どんな種目がありますか。」との質問に対しての返事で,10月にやることと,陸上競技プロジェクトだというだけの簡単な返事であった。そしてその後に,小泉首相の靖国神社参拝について抗議を表している,残念に思っている,という内容の書き込みがあり,クラス中で顔を見合わせてしまった。小学4年生が本当にこんなことを考えるのだろうか,中国はどんな勉強をしているのだろうかと首をかしげていた。担任としても,交流学習の掲示板にこのような政治的な内容が入ってくるとは予想もせず,国が違うと,国民性,教育制度などずいぶん違ってくるものだと改めて考えさせられた。返事の仕方によって,交流学習に影響が出ては大変であると考え,どう返事をしたらよいものか校長と相談し,「自分たちは世界の平和を心から願っていること,これまで通り中国と友好的に交流学習を進めていきたいこと」を伝えた。中国側も,日本側の意図を快く受け入れてくれ,これからの交流に全く支障はない,との返事が届き,ほっと胸をなで下ろした。
 このやりとりを最後に,中国は冬休みに入ってしまったため,当分の間は意見交換ができないものと考え,琴田小の児童は交流学習のまとめの作業に取りかかった。グループごとに自分たちが調べ,中国の友達と交流し合った内容について,まとめ方を話し合った。ネットミーティングでの発表,掲示板を使っての意見交換で,質問に対する回答が得られなかったグループについては,自分たちで資料を集め,それをもとにまとめていった。まとめ方としては,どのグループもコンピュータを使い,一太郎スマイルやスーパーYUKI21iで本や紙芝居を作った。保存には共有ホルダを使い,どのグループの画面もお互いに見られるようにした。
 3月の初めに国際交流学習の集大成ともいえる発表会を予定している。4年生や職員室の先生方を招いて発表会をすることで,自分たちの行ってきた国際交流学習の様子を広く知ってもらいたいという目的である。日本と中国を比較しての発表内容だけでなく,コンピュータを使ってのまとめ方や,いろいろな操作方法を身につけ,どのグループも自信を持って発表できるよう,支援していきたいと思っている。最終的に全グループの発表内容を1つにまとめて次の学年に引き継げるようにしようと話し合っている。


(5) 成果と課題

☆成果

【その1】国際交流学習に対する意識の向上

 約半年の交流学習であったが,児童は中国の文化や生活について大変興味を持ち,楽しみながら交流していた。交流が始める前から,児童は中国に対する関心をつのらせており,テレビで放送されていた中国の特集について話す子,またそれをVTRにとって持ってくる子,図書館から中国語や中国のことが書いてある本を借りてくる子など様々であった。交流が始まり,学習を進めていくうちに,隣国であっても,言語も文化も風習も異なる国,中国について少しずつ理解が深まってきて,「中国に行ってみたい。」と言う児童が増えてきた。

【その2】自国の理解の深まり

 今回の国際交流学習は,未来を担う児童が,世界に目を向けるよいきっかけとなった。それと共に,中国の友達に日本のことを知ってもらいたいという願いから,日本国内にも児童の目が向けられ,自国の理解にもつながった。

【その3】情報関連機器の活用能力・コミュニケーション能力の向上

 児童は,中国の友達に対して,そして,発表を聞いてくれる友達や4年生,先生方に対して,よりわかりやすいようにと,写真やVTR,文章を組み合わせて,工夫しながら発表画面を作った。その際,コンピュータだけでなく,デジタルカメラ,ビデオカメラ等,様々な情報機器を使用したため,これらの活用能力が高まった児童が多く見られた。また,友達や先生方,大勢のお客様方の前で,発表することにより,コミュニケーション能力の向上も見られた。

【その4】外国の言語に対する関心の深まり

 国際交流学習が始まる前に,1番心配していたのが「言葉の壁」である。翻訳機能のある掲示板は,小学生の国際交流の前に,必ずと言ってよいほど立ちはだかるであろう「言葉の壁」をぐっと引き下げてくれた。掲示板のおかげで,児童は言葉の壁をほとんど気にすることなく,思っていた以上にスムーズな意見交換ができた。意見交換以外にも,中国語を調べるという目的で掲示板を活用していた児童も見られ,外国の言語に対する関心が高まった。

【その5】ネットミーティングで縮まった中国との距離

 ネットミーティングを経験することにより,児童は中国の友達の顔を見,声を聞き,表情や声の調子を確認しながら,生の交流をすることができた。このことによって,中国の友達に対して,より親近感がわき,海を隔てた中国が「遠い国」ではなく,「お隣の国」だということを実感した。そして,中国のことをもっと知りたい,中国の友達ともっと親しくなりたい,という意識が高まってきた。


☆課題

【その1】連絡・調整の難しさ

 交流学習がスタートするにあたって,担当者と連絡を取ることを試みたが,思うように連絡が取れず大変困った。連絡方法として,英文でのメールのやりとりを考えていたが,中国側は,英文でコミュニケーションを取ることはできないと言われ,連絡手段が
掲示板のみとなってしまい,とても不便を感じた。こちらから連絡を書き込んでも,なかなか返事が返ってこないことが多く,やっと返ってきたと思ったら,内容がよくわからない,といったことも少なくなかった。児童の印象とは逆に,教師にとっては言葉の壁を感じることがしばしばあった。

【その2】交流学習に対する考え方の相違

こちらから何度書き込みをしても全く返事が返ってこない時期があり,児童の意欲を持続させるのが大変であった。そんな時,児童には,中国と日本では時間割が違うこと,行事等のスケジュールも違うことなどを話し,情報が不足している分については,自分たちで資料を集め,情報を補うようにした。担当者同士のコミュニケーションがもっとしっかり取れていれば,このような問題は起こらなかったのではないかと思う。

【その3】ネットミーティングの際の通訳探し

 ネットミーティングをする上で,必要不可欠なのが通訳である。身内,保護者,ボランティア等探し訪ねた結果,やっと見つかった次第である。在日中国人の方は,市内にも少なくないのだが,学校のスケジュールに合わせてきていただけるという方はなかなか見つからず,今回は,市内在住の在日中国人の女子中学生に,学校の授業中にもかかわらず,リハーサルと本番の2度来校してもらい,大変な思いをさせてしまった。

【その4】通訳を通すことによる効率の悪さ

 ネットミーティング本番では,日本側と中国側の話や発表の後,その都度通訳を通すので2倍の時間がかかってしまう。どちらにしても通訳の方が中国語を日本語に,日本語を中国語に訳してくれる際には,児童はひたすら待っているだけで,間が空いてしまい,意欲・集中力を持続することが難しい児童が見られた。




前のページへ 次のページへ