5.国際交流支援システムの有効性




(3) 最終アンケート結果・ヒアリングの結果と分析

1)先生に対するヒアリング・アンケート

アンケート回答数
琴田小学校 1
時津東小学校 4
平尾中学校 1
Staten Island Academy 2
合計 8名

 琴田小学校の最終ヒアリングの中の掲示板全般の質問では,先生は70%の満足度,児童たちは80〜100%の満足度を達成したと思われるとの回答だった。国際交流をする上で,翻訳機能付き掲示板は,非常に便利であり,特に全くわからない言語の翻訳を簡単にできることは,多少の誤訳があったとしても不便をせずに使用できたそうだ。また,このようなシステムは,国際交流をする上では必須で,自動翻訳掲示板を利用することにより,児童たちの交流をする上での不安を減少させ,言葉の壁を気にせずに交流に集中させることができたと思うとの回答だった。

 掲示板の使い勝手全般では,システムの反応が,速かったり遅かったりすることがあり,登録画面のままで登録できないことが交流期間を通して数回あったが,12月以降のエンジン変更後は,動きが速くなり特に問題はなかったようだ。速さも予想以上に早く,苛付くことはほとんどなかったとの回答が各校からあがった。また,自動翻訳掲示板特有の,原文,翻訳文,逆翻訳文の3つの画面が同時に出ることは,作成した文章の内容を確認する上で非常に便利だとの回答が多かった。

 操作性の質問では,わかりやすく,使いやすいとの回答が半数を超えた。先生は,2〜3回の使用で掲示板が使えるようになり,児童は,5回目の使用で完全に覚え,先生の力を借りずに自分たちで投稿することができるようになった。入力に時間がかかったり,翻訳の確認に時間がかかったりする児童も中にはいたが,中・後半はほとんどの児童が操作に慣れ,ボタンの機能,位置なども特に問題なく使用できることがわかった。写真や,データの添付は,コンピュータに慣れていない児童には多少困難かもしれないが,慣れれば問題がないと思われるとの回答がほとんどであった。また,先生の指導がなかったのにも関わらず,児童は,全訳と個別翻訳のボタンをきちんと使い分けていた。特に後半では,翻訳精度を上げるため,各学校ともあえて短い文を作成させており,琴田小学校では,1〜2回の編集の時以外,個別翻訳ボタンを使用せず,ほとんど全訳ボタンの使用だけで投稿できたという。

 翻訳精度の質問では半数の先生が今後の掲示板改良での見直しが必要と考えていることが,5-31最終アンケート結果(先生)質問aから5-36最終アンケート結果(先生)質問fまでの結果を通してわかる。交流で使用するには必須のシステムでも,翻訳レベルは普通授業での使用にはまだ改善が必要との意見が半数を占めたことが,5-37最終アンケート結果(先生)質問fの結果からわかる。韓日・日韓の翻訳精度は他の言語と比較すると高いことは、日韓の先生方のヒアリングからわかるが、日英,日中・中日については翻訳の問題を多く残している。児童の使用も含め,「何とか理解できる,何とか意味が通じているだろう」と感じる先生が半数を占めてはいるが,実際に授業で十分に使用できるものと考える先生はほとんどいないことが,グラフ5-37最終アンケート結果(先生)質問gの結果からわかる。実際に,日本側では,交流初期に名前などの固有名詞の翻訳が固有名詞として翻訳されず,児童も先生もかなりの時間を費やしたようだ。琴田小学校では,翻訳文そのものを見て,大体あっているようなら,逆翻訳文が原文から多少かけ離れたものでもそのまま送信してしまうこともあったという。文章が長いものでは意味がとり難いものがあり,各校の先生が読み返して説明をしなければならない場面もしばしばあったようだ。先生の負担は増えてもいないが,減少もしていない。

 しかし,検証の結果,正しい翻訳ができない理由として,児童の原文入力の正確さが低いことが挙げられた。間違いに気がつかない児童もおり,また先生自身も文章作成が苦手な児童につききりで,他の児童の投稿文内容の確認を見落としてしまうこともあったという。翻訳精度を挙げる緊急対策として,各校,投稿時には逆翻訳の画面は常に確認するようにさせ,グループ単位での学習で登録を行う際,意見を言い合いながら確実なものを登録させ,分からず不安であれば,必ず先生へ質問をさせるなどの工夫もしたようだ。

 交流を進める上で,時間に制限のある先生は,まず便利さと手軽さを求める。今回,コンピュータに詳しい先生とそれほど詳しくない先生の参加があり,機能面での改善要求などの意見は多少異なるにせよ,児童や生徒の使用が主となることから,初心者でも簡単に理解でき,使用できるような操作性が必須ということが最終ヒアリングからわかる。琴田小学校の先生からは,児童の自主性を尊重し,児童の力だけで,文章を作成し投稿させることができるシステムが欲しいというコメントが出た。翻訳精度を上げるため,また児童だけでも問題のない文章が投稿できるようにするためには,児童が普段使用している言語,類似文章を事前に登録する,サンプル文を増やす,文法的に間違いのある文章を投稿前に知らせる機能を追加するなどは,今後改良を行っていく上で必須事項となると思われる。

グラフ5-31最終アンケート結果(先生)質問a
【回答数8名・無回答数5名】

グラフ5-32最終アンケート結果(先生)質問b
【回答数8名・無回答数5名】

グラフ5-33最終アンケート結果(先生)質問c
【回答数6名・無回答数7名】

グラフ5-34最終アンケート結果(先生)質問d
【回答数8名・無回答数5名】

グラフ5-35最終アンケート結果(先生)質問e
【回答数7名・無回答数6名】

グラフ5-36最終アンケート結果(先生)質問f
【回答数7名・無回答数6名】

グラフ5-37最終アンケート結果(先生)質問g
【回答数7名・無回答数6名】

 グラフ5-41最終アンケート結果(先生)質問kの結果から,掲示板を利用することにより交流に対しての不安はさほどなくなり,交流が促進されたのがわかる。交流をする上で掲示板を利用することは必須であると感じる先生が多かった。米国側からは,この掲示板を使用して再度挑戦したいとの声もあった。翻訳は分かりづらかったが,何とか意味を汲み取ることはでき,交流には欠かせないものと感じたという。
 しかし,送信する度に先生が内容及び逆翻訳の確認をする必要があり,先生への負担が多いのも事実である。また,グラフ5-40最終アンケート結果(先生)質問jの結果からもわかるように,交流そのものの準備や,普通授業との兼ね合いも含めて交流を進める上で先生への負担は,中間・最終を通してピークとなり,交流そのものへの負担から交流を継続したいという先生は少なかった。

 しかし,交流に自動翻訳掲示板を利用したことにより,異文化の認識の向上を促したと答えた先生がほとんどであった。また,各国とも児童・生徒のコミュニケーション能力の向上,交流相手国に対する理解の向上,交流相手国言語に対する関心の高まり,自国・自文化に対する関心の高まりが交流を通して見られたとう評価が出ている。異国文化の中で,類似点が多いことを児童自らの学習と交流を通して学び,海外へ目を向ける大きな第一歩となったとの意見が各校からあった。

グラフ5-38最終アンケート結果(先生)質問h
【回答数7名・無回答数6名】

グラフ5-39最終アンケート結果(先生)質問i
【回答数6〜7名・無回答数6〜7名】

グラフ5-40最終アンケート結果(先生)質問j
【回答数8名・無回答数5名】

グラフ5-41最終アンケート結果(先生)質問k
【回答数6〜7名・無回答数6〜7名】



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