産業界との協力授業
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実践事例
水族館の仕事から学ぶ環境保護の大切さ
実施した教育機関・生徒数・実施日
■福岡県福岡市立三筑小学校
学年 クラス 生徒数 実施日 合計授業時間
第5学年 3クラス 122名 平成14年 10月 7日 28日
      11月19日 27日
      12月 3日 12日
7時間45分

■福岡県福岡市立城南小学校
学年 クラス 生徒数 実施日 合計授業時間
第6学年 1クラス 31名 平成14年 11月6日 8日 12日
      12月4日 6日 11日
7時間45分

■福岡県福岡市立長丘中学校
学年 クラス 生徒数 実施日 合計授業時間
第1学年 1クラス 36名 平成14年 11月5日 14日
      12月4日 13日
4時間15分

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実施した教科・単元
■福岡市立三筑小学校
学年 教科名 単元
第5学年 総合的な学習の時間 環境

■福岡市立城南小学校
学年 教科名 単元
第6学年 総合的な学習の時間 環境

■福岡市立長丘中学校
学年 教科名 単元
第1学年 総合的な学習の時間 環境

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主催した教育機関
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授業概要

「総合的な学習の時間・環境保護への取り組みを学ぶ」において、地域の社会教育施設(水族館)「海の中道海洋生態科学館」を取り上げ、地域から地球全体までの環境問題、さらにウミガメやクジラ、メダカ、カブトガニなどの希少生物について、その減少原因に関する情報だけでなく、環境問題に水族館はどのような組織体制で対応しているかを調べ職員の考えを聞く。
 具体的な授業の構成として、事前授業では、子どもたちがWebや書籍などを活用して、環境問題、野生動物保護、水族館の概要などを調べ学習する。またその際に、水族館職員が学校に出張し、絶滅に瀕している身近な生物やその保護の仕事についての講話も行い、水族館の仕事や野生生物への興味関心を持たせる。さらに、子どもたちが水族館を見学した際は、環境に関するワークシート観察と、施設や仕事の現場の案内も実施し、水族館の役割や仕事へさらに理解を高める。その後、本事業で作成した教材(CD-ROM,Web)を使い、学校の教室にて水族館の仕事がいかに環境保護に関わっているか、職員の苦労はどこにあるか、について出張講話する。まとめの授業は、一連の学習を通して、子どもたちが感じたこと、気がついたことの感想の発表や、館の職員への質疑応答などを行い、本授業の成果評価の一助とした。

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授業のねらい
【小学校での目標】
 子どもたちが希少生物の生態や自分たちを取り巻く環境問題を調べたり、身近な地域の自然を見つめ直したりすることで、環境を守ることの大切さを理解することができる。また、水族館を様々な視点から横断的に学習することで,地域に貢献する産業としての機能や役割を知ることができる。さらに、水族館に関わりその仕事と役割を知ることを通して、環境を保護している水族館の姿を知り、環境を保護しようとする気持ちを育てる。加えてこの授業では、自分の必要な情報をインターネットを活用して収集し、メディアを使って聞き手に分かるように説明、発表することも目的とした。

【中学校での目標】
中学校においては、「総合的な学習の時間」における環境を単元に実施し、水族館の職員の仕事を知ることで、自分の周りの環境を守ることを気づく、という小中学校で共通した単元目標に加え、飼育管理や環境保護などに取り組む水族館職員の仕事や生き方に接することで、子ども達の勤労観や職業観を養うことも目標とした。さらに情報教育の面では、自分の必要な情報を様々なメディア(図書、インターネット、メール等)を適切に活用して収集したり、その情報をもとに自分の考えや課題を再構築し、聞き手に分かるように説明、発表することも目的とした。

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授業内容
実施単位 テーマ
1時限目 イルカの話

実施場所 福岡市立三筑小学校 視聴覚教室 実施時間 45分
講師 福岡市立三筑小学校
 村橋 正実
海の中道海洋生態科学館
 岩田 知彦
 梅津 令子
使用教材 授業シナリオ「イルカの体」

授業の進行・内容 授業の様子
■進行
 担任の司会により、海の中道海洋生態科学館と学校の間を、テレビ電話による生中継の遠隔授業を行った。水族館のイルカショープールにビデオカメラを置き、そこから、館の職員、講師がイルカの体や生態、保護、飼育係の仕事などについて、クイズも交えて伝えた。

■内容
・水族館で飼育している、3種類のイルカの特徴を説明した。子どもたちは、それぞれの違いを確認し、イルカの名前の由来やイルカごとに個性があることに驚いていた。
・クジラとイルカの違いについて解説した。子どもたちは、イルカとクジラが同じ仲間であること、全長4メートルを境に呼び分けられていることを聞き、改めてイルカに興味をひきつけられた。
・イルカの体の各部分のつくりや仕組みについてクイズなどを行いながら解説した。子どもたちは、イルカの鼻が頭の上にあることやその理由、耳が頭に中にあることなど、同じ哺乳動物であってもすむ場所により体の構造や機能が適応していることを学んだ。
・糸電話を使い、イルカと同じようにあご骨で音が聞けるという体感実験は、イルカになった気分を味わえることから、子どもたちに大人気であった。
・死亡したイルカの胃から出てきたお菓子の袋やプラスチックケースを紹介し、イルカショーなどでとても親しみを感じているイルカが、私たちが知らないうちに死ぬ原因を作っていることを伝えた。子どもたちは、自分たちが気をつけることでイルカを守ることができることを学んだ。
テレビ電話を使った遠隔授業(福岡市立三筑小学校)
テレビ電話を使った遠隔授業
(福岡市立三筑小学校)

テレビ電話を使った遠隔授業(海の中道海洋生態科学館 イルカショープール)
テレビ電話を使った遠隔授業
(海の中道海洋生態科学館
 イルカショープール)

実施単位 テーマ
2時限目 絶滅に瀕している生物を調べよう

実施場所 福岡市立三筑小学校 パソコン室
福岡市立城南小学校 パソコン室
実施時間 各校45分
講師 福岡市立三筑小学校
 副島 香代子・井上 信宏
 西原 敦子 ・村橋 正実
福岡市立城南小学校
 池野 尚昭
使用教材 なし

授業の進行・内容 授業の様子
■進行
 学校の教員が指導を行いながら、子どもたちがパソコンを使って、インターネットで情報検索し、絶滅の恐れのある野生動物やその保護、水族館の仕事などについて調べた。また、海の中道海洋生態科学館の概要についても調べた。
 調べた内容を、水族館での見学に生かしたり、班毎の発表や水族館職員への質問にも活用した。

■内容
・生徒たちを班編成し、班ごとに担当する生物種を、サメ、イルカ、ラッコなどに分けて調査した。
・また水族館やその他の水族館のHPを閲覧して調査した。
・絶滅に瀕していて、保護が必要な水の生物はどのような種類がいるか、またその保護のためにはどうしたらいいのかなどを調べた。
・調べた成果をまとめの授業で発表することを前提にまとめた。
パソコンを使った調べ学習(福岡市立三筑小学校)
パソコンを使った調べ学習
(福岡市立三筑小学校)

パソコンを使った調べ学習(福岡市立城南小学校)
パソコンを使った調べ学習
(福岡市立城南小学校)

実施単位 テーマ
3時限目 カブトガニと自然保護活動

実施場所 福岡市立三筑小学校 視聴覚教室
福岡市立城南小学校 体育館
福岡市立長丘中学校 視聴覚教室
実施時間 各校45分
 同じ授業内容を3校で実施
講師 海の中道海洋生態科学館
 学芸員 高田浩二
使用教材 Microsoft(R) Powerpoint(R)
 カブトガニと水族館の自然保護活動

授業の進行・内容 授業の様子
■進行
 PCの中にあらかじめ作ってきた、カブトガニに関するプレゼンテーション資料を、スクリーンに投影しながら講義した。
  最初に担任から講師の紹介があり、講師が用意してきたプレゼンテーション資料を使って、以下の順番で講義を展開した。
1.ウミガメ、スナメリ、イルカなど私たちの身近な水辺環境にも保護が必要な生き物がいる。カブトガニもその一つ。
2.カブトガニについて知っていることを聞く。
3.カブトガニのすむ干潟の環境について。
4.オスメスの体のつくりと違いの理由。
5.カブトガニの生活史。
6.産卵について。
7.幼生の生態と調査活動
8.干潟の生物
9.干潟の役割
10.生きている化石とは?
11.恐竜とカブトガニはどっちが強いか。
12.カブトガニがいなくなったら困るか。
13.カブトガニを守るにはどうしたらいいか。

 これらの講義の後に、実物のカブトガニを使っての説明や、子どもたちが触っての観察体験なども行った。また講師は、適時、子どもたちに質問やクイズ、意見交換の機会を与えたり、質問の時間を持つなど、講師との対話も心がけた。

■内容
・私たちが親しみを感じているイルカ、ウミガメ、メダカなどの私たちに身近な生き物も、絶滅の危機にあることを伝えた。また市内に、カブトガニの産卵生息地があること、そのカブトガニも危機的な状況にあることや原因などを一緒に考えた。
 子どもたちは、名前や姿はなんとなく知っているが、それ以上の知識はなく大きな興味を持って講義を聞いていた。
・カブトガニの体のつくりと特徴、すみ場所としての干潟の環境、繁殖行動、生活などを解説したが、子どもたちは「干潟」という言葉やその意味を的確に説明できる基礎知識がなく、改めて干潟の意義や役割、そこにすむ生物の多様さや重要さを学んだ。
・水族館がカブトガニの保護のために行ってきた調査活動などを紹介する。子どもたちは、何もないように見える泥ばかりの干潟で、どのようにしてカブトガニの調査研究をするのかに、大きな関心を寄せていた。
・2億年以上も昔から生き残ってきたカブトガニが、なぜ絶滅しようとしているか、なぜ守らないといけないのかを考え、どうしたらカブトガニを守ることができるかなどの意見を発表した。子どもたちからは、ゴミを捨てない、海を汚さない、ゴミを拾うなどの意見が出され、自分たちが環境のためにできることがあることに気づいたようである。
カブトガニの体の仕組みを解説(福岡市立三筑小学校)
カブトガニの体の仕組みを解説
(福岡市立三筑小学校)

パワーポイントでカブトガニの生態を解説(福岡市立城南小学校)
パワーポイントでカブトガニの生態を解説
(福岡市立城南小学校)

カブトガニに触れながら観察する(福岡市立長丘中学校)
カブトガニに触れながら観察する
(福岡市立長丘中学校)

実施単位 テーマ
4時限目 水族館に行き環境学習と職員の仕事を学ぶ

実施場所 海の中道海洋生態科学館
(レクチャーホール、館内、飼育施設)
実施時間 福岡市立三筑小学校 240分
福岡市立城南小学校 240分
福岡市立長丘中学校 120分
講師 海の中道海洋生態科学館
 学芸員 高田浩二
海の中道海洋生態科学館
 学芸員 岩田知彦
 解説員 鈴木淳子
 技 師 折居 巧
使用教材 Microsoft(R) Powerpoint(R)
(水族館の飼育係はどんな仕事をしている?)
ワークシート
(水族館で考える環境問題)

授業の進行・内容 授業の様子
■進行
 最初にレクチャーホールに集めて、パワーポインター教材「水族館の飼育係はどんな仕事をしている?」を使って、飼育職員の仕事や苦労など、通常の見学だけでは判らない講話を行い、水族館の役割や職員の仕事へ興味関心を引き付けた。
 次に、水族館の飼育施設を案内し、職員がどのような場所で仕事をしているのか、生物たちはどのように管理されているか、などの解説を受けた上で見学した。
 展示見学では、環境をテーマにしたワークシートを使い、観察記入後にレクチャーホールに集めて、回答講話を行った。
 授業の時間配分は、各校の予定で以下のような配分とした。(中学校はイルカ・アシカショーの見学は削除した)

○三筑・城南小学校の授業時間内訳(240分)
 講義       30分
 バックヤード見学 30分
 ワークシート見学 150分
(イルカ・アシカショー見学含む)
 ワークシート回答 30分
○長丘中学校の授業時間内訳(120分)
 講義       30分
 バックヤード見学 20分
 ワークシート見学 50分(ショー見学なし)
 ワークシート回答 20分

■内容
・「水族館の飼育係はどんな仕事をしている?」という、パワーポイントのプレゼン資料を作成し、水族館に行く目的、水族館の4つの役割の話に続き、調査、収集、輸送、研究、繁殖、給餌など18項目の仕事内容について20分間の講話をし、質問にも対応した。
 子どもたちは、捕獲や輸送にも職員が携わっていることに驚き、また危険と隣り合わせと大変な仕事であることを学んだ。質問は、これまでに一番大変だったことやうれしかったことなど、仕事内容に対する質問が多く出された。
・施設見学では、水量1400トンの大水槽の飼育区域、予備水槽、調餌室などを20分間で見学した。案内には飼育技師や解説員が担当し、飼育管理上の苦労話も行った。また随時、質問にも回答した。
 子どもたちは、水族館の飼育管理部を見学するのは初めてであり、多くの設備がそこにあり向上のようになっているのに驚いていた。また、魚の餌の与え方や掃除の仕方などについての管理面での質問が多く出された。
・ワークシートでは、スナメリ、ウミガメ、メダカ、ラッコ、カブトガニ、の5箇所の観察ポイントをまわり、環境問題や野生生物の保護に関して、観察や解説版を読んで判ることを、ワークシートの中に記入した。30分間の回答講話では、単なる答えあわせではなく、意見や感想などを引き出せるように、ホワイトボードなども使って、「なぜその生物が危機的な状況にあるのか?」「私たちはどうしたらいいか?」などの意見交換も行った。子どもたちは、ゴミの問題など、日頃の生活を見直すだけでも野生動物の保護につながることに気づいた。
飼育係の仕事の講話(福岡市立三筑小学校)
飼育係の仕事の講話
(福岡市立三筑小学校)

魚類や無脊椎動物用の餌を作っている様子を見学(福岡市立城南小学校)
魚類や無脊椎動物用の餌を作っている様子を見学
(福岡市立城南小学校)

実施単位 テーマ
5時限目 水族館の環境保護の仕事を学ぶ

実施場所 福岡市立三筑小学校 視聴覚室
福岡市立城南小学校 体育館
福岡市立長丘中学校 視聴覚室
実施時間 各校45分
 同じ授業内容を3校で実施
講師 海の中道海洋生態科学館
学芸員 岩田知彦
解説員 森 奈美
使用教材 Microsoft(R) Powerpoint(R)
(水族館の仕事から学ぶ
 環境保護の大切さ)
CD−ROM
(水族館の仕事から学ぶ
 環境保護の大切さ)
イルカの調教道具、ラッコの毛皮
紙コップの糸電話

授業の進行・内容 授業の様子

■進行
 飼育管理や解説員の経験をしている職員を講師とし、CD−ROM教材「水族館の仕事から学ぶ環境保護の大切さ」の画像を使いながら、体験談を交えて、水族館の多くの仕事が、動物たちの保護につながっていることを解説した。また、館からラッコの毛皮、イルカの調教道具、紙コップの糸電話などを持参し、道具を使った体験実験を行い、子どもたちの興味関心をひきつけた。さらに、授業の最後には質問の時間を設け、職員との対話も行った。

■内容
・サメの皮膚や歯の画像を使い、サメの本当の姿や生態、飼育する上での苦労話、県内各地の河川にいたヒナモロコが、今では限られた川にしか生息せず、その繁殖活動に水族館が取り組んでいることを解説した。子どもたちは、恐い生物と思っていたサメが危機に瀕している状況を知り、驚いた様子であった。
・また周辺の海岸にはイルカやクジラ類も漂着しており、死因の一つにゴミが影響していること、また水族館がイルカやクジラの保護活動をしていることも、PCやVTR映像などで説明した。
 1年前の鹿児島でのクジラの漂着救助の映像では、危険を冒して保護活動に取り組む職員の責任感や勇気に感動していた。
・イルカのトレーニング過程を、イルカの着ぐるみを着た児童をイルカに見立て、調教体験を行った。イルカがどのようにしてジャンプを覚えるのか、自分の身をもって体験し理解がすすんだ。
・紙コップで作った糸電話では、イルカが顎の骨で音を聞く体感実験を行った。骨から音が伝わることを知り、感動していた。
・ラッコでは毛皮を用意し、防寒着として人の役に立ったことを体感させ、一方で乱獲され絶滅の危機にあること、さらに油流出事故で保護したラッコの様子を放映し、保護のために水族館などの飼育経験を持つ施設が役立っていること解説した。
 水族館と言う飼育技術を持った施設にしかできない救助活動があることを学んだ様子であった。
・作成したCD−ROMでは、豊富な写真や動画を使いながら、水族館の様々な仕事の様子を紹介し、教育の仕事では自然や動物の大切さを伝える機能、研究の仕事では繁殖や病気の治療、リクレエーションの仕事では調教することで健康管理に役立つことを解説した。またどの仕事も動物や環境の保護につながっていることを解説し、水族館という産業が、遊びや楽しさを満足させる機能だけではないことを話し、職員の仕事が、野生動物と関わる責任とやりがいの有る仕事であることも伝えた。
・なおこの授業では、城南小学校が、事前にWebなどを使って絶滅に瀕している野生動物や、水族館との関わりなどを調べており、学習に入る前に班ごとに発表し、職員は感想を述べ質問にも答えた。子どもの中には、保護団体が運営するホームページで水族館や動物園の存在を否定するコメントを見つけ、どちらの意見が正しいのか悩んでいたが、当館職員のアドバイスにより、改めて水族館の役割を学んだ。

 

CD−ROM教材の映像を使い解説(福岡市立三筑小学校)
CD−ROM教材の映像を使い解説
(福岡市立三筑小学校)

CD−ROM教材の映像を使い解説(福岡市立城南小学校)
CD−ROM教材の映像を使い解説
(福岡市立城南小学校)

イルカの調教を体験(福岡市立城南小学校)
イルカの調教を体験
(福岡市立城南小学校)

実施単位 テーマ
6時限目 これまでのまとめの授業

実施場所 福岡市立長丘中学校 視聴覚室 実施時間 45分
講師 海の中道海洋生態科学館
 学芸員 高田 浩二
 学芸員 岩田 知彦
使用教材 なし
 口頭対応

授業の進行・内容 授業の様子
■進行
 教師から、これまでの授業を振り返って、水族館の役割、自然保護に関する仕事などのまとめ的な講義があり、続いて、生徒たちが6つの班に分かれて、班ごとに、これまでの学習で感じたこと、学んだことの発表や、水族館や生物に対する質問を行った。
 授業に同席した水族館職員から、発表に対する講評や質問への回答をし、生徒たちとの交流も行った。

■内容
 教師から、これまで3回にわたって学習してきた水族館の仕事や役割、野生動物の保護などについて振り返える話が10分程度あった。
 引き続いて、あらかじめ教師が配布していたプリントに記入したことを、生徒たちが6つの班ごとに分かれて発表した。記入項目は以下であった。

 (1)これまでの学習で判ったこと。
 (2)感じたこと。
 (3)今後どうしたらよいでしょうか?
 (4)水族館職員への質問

 (1)では、水族館の職員の仕事が予想以上に大変だったこと。水族館が自然保護や野生動物保護も行っていたこと。動物の調教には動物とのコミュニケーションが大切であること。人が原因で死ぬ動物が多いこと。などがあげられた。
 (2)では、水族館が楽しむだけでなく、いろいろなことを学んでもらうために学芸員たちが頑張っていること。水族館の職員は動物に責任を持って接していること。動物のことをちゃんと知っておかないといけないこと。などの意見が聞かれた。
 (3)では、環境や動物のことをよく考え、すべての生き物が住みやすい環境を作ること。水族館職員だけでなく、一般の人も生物のことを学び、助けられるようにしたい。という発表があった。
 (4)での質問は、生物に対すること、仕事に対すること、水族館に対することに分けられた。生物では、保護の必要な生物への質問が集中した。仕事に対しては、やりがいや楽しかったこと、つらいことは何か、などが多かった。これらのすべての質問に対して、館の職員が口頭で回答し、意見交流も行った。
生徒による感想や質問の発表(福岡市立長丘中学校)
生徒による感想や質問の発表
(福岡市立長丘中学校)

生徒の感想や質問に応える職員(福岡市立長丘中学校)
生徒の感想や質問に応える職員
(福岡市立長丘中学校)

実施単位 テーマ
7時限目 まとめの授業

実施場所 福岡市立三筑小学校 体育館
福岡市立城南小学校 6年3組
実施時間 各校45分
講師 福岡市立三筑小学校
 西原 敦子
福岡市立城南小学校
 池野 尚昭
使用教材 なし

授業の進行・内容 授業の様子
■進行
 教師の指導のもと、子どもたちが本授業の経過や学んだことをまとめ、自然保護や地域での環境に対する取り組みなどを報告した。
 三筑小学校では3組が合同で実施し、各人が発表の役割を持って全員参加の発表会を行った。また、他の学年や保護者の参観も受けた。

■内容
・こどもたちが、地域の水辺環境を学習するために、水族館とどのような交流を行ってきたかを、経過報告とともに学んだこと、感じたことなどを口頭で発表した。
・城南小学校では、班別にPCのパワーポイントを使いながら、感じたこと、学んだことの発表を行った。
まとめの発表会(福岡市立三筑小学校)
まとめの発表会
(福岡市立三筑小学校)

まとめの発表会(福岡市立城南小学校)
まとめの発表会
(福岡市立城南小学校)

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授業の成果
 水族館の学芸員や飼育技師という専門家から、日頃の学びの場である学校で、非日常的な授業を受けたという感動だけでなく、貴重な経験談と学校では入手が困難な映像資料、実物の生物とのふれあい等の体験を元に、子どもたちが親しみを感じているイルカ、カブトガニ、メダカ、ウミガメでさえ、危機的な状況にあることを知ることができた。さらにそれにより、子どもたちは自分の生活や身の回りの自然を見つめなおすきっかけになった。
 水族館での見学においては、飼育施設を見学することにより、生き物を飼うことの大変さ、生き物の情報を伝えようとしている水族館の姿勢、生き物の健康管理のための努力や工夫など、館で働く職員の情熱が伝わったものと思う。ワークシート見学では、これまでの来館見学とは違い、観察の目的を「環境」に絞り込んで、自ら意欲的に学習に取り組んだ。またこれまで、あまり目を通さなかった「解説板」を読んだり、館の職員との対話を通して情報を得るという行為を引き出すことができたと思われる。子どもたちは、このような水族館での特別な体験を通して、自分の中に水族館が特別な場所であるという意識が芽生え、また水族館の仕事への興味関心が増大したものと思う。
 水族館見学後には、各学校でWebや図書などを使った学習が行われ、水族館以外からでも絶滅に瀕した生物の情報や野生生物の保護活動などについて調べることができた。ここでは、あらかじめ水族館で学んだ基礎知識が役立ったものと考える。
 作成したCD−ROMを使っての授業では、映像情報を見て解説するだけの単調な授業ではなく、標本や実物資料、トレーニングの小道具、実験装置など、様々な教材が学校に持ち込まれ、前述の貴重な資料映像との相乗効果で、一層、水族館の仕事や役割に対しての理解が増したものといえよう。
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実施環境
実施場所 ・福岡市立三筑小学校 視聴覚教室
・福岡市立城南小学校 6年3組教室 体育館
・福岡市立長丘中学校 視聴覚教室
・海の中道海洋生態科学館 レクチャーホール 館内 飼育施設
使用した機器 ・ノートPC、プロジェクター、ビデオデッキ、スクリーン
その他 ・イルカの調教道具、ラッコの毛皮、紙コップの糸電話、カブトガニ(生体)
・ワークシート

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使用教材
教材タイトル 水族館で考える環境問題
教材仕様 ワークシート (A4:8ページ)
教材概要  子どもたちはこれらを館に持参し、見学をしながら記入する。ワークシートは、館の展示の中で、特に絶滅に瀕して保護が必要な生物にスポットを当て、なぜ数が減ったのか、なぜ保護しなければならないのか、保護するためにはどうしたらいいのか、などを考えることができる。

教材タイトル 水族館の仕事から学ぶ環境保護の大切
教材仕様 CD−ROM  
(静止画 HTML:77画面  動画 フラッシュ:23画面)
教材概要  CD−ROMのトップページには水族館の4つの仕事として、教育、研究、自然保護、レクリエーションがあることを明示し、それぞれの項目から、さらに詳細な役割についての解説へとすすむ。各仕事の画面では職員が登場し、館の様々な取り組みについて、豊富な写真や動画、文字にて解説する。またワークシートや授業のシナリオ、生物図鑑なども収録され、学校の学習教材としても活用できる。

教材タイトル 水族館の仕事から学ぶ環境保護の大切さ
教材仕様 Web (HTML:50画面)
教材概要  Webのトップページは、本事業の概要や経過を説明する入り口と、水族館の仕事や役割を解説する入り口の2つから構成されている。最初の入り口からは、実施校での授業の様子、準備委員会の概要などが閲覧できる。また、授業のシナリオや指導案、プレゼンテーション資料などもダウンロードできるようになっている。もう一つの入り口から入ると、水族館の仕事や役割の詳細が、文字と写真情報を中心に閲覧できる。またワークシートのダウンロード、キーワード検索も可能である。また、掲示板やQ&Aなどのコーナーも設けた。

教材タイトル カブトガニと水族館の自然保護活動
教材仕様 Microsoft(R) Powerpoint(R) 38画面
教材概要  イルカ、ウミガメ、メダカなどの私たちに身近な生き物も、絶滅の危機にあることを伝え、また市内にカブトガニの産卵生息地があること、そのカブトガニも危機的な状況にあることや原因などを解説。さらに、カブトガニの体のつくりと特徴、すみ場所としての干潟の環境、繁殖行動、生活などを説明し、水族館のカブトガニの保護や調査活動などを中心に制作している。

教材タイトル 水族館の飼育係はどんな仕事をしている?
教材仕様 Microsoft(R) Powerpoint(R) 18画面
教材概要  水族館に行く目的や水族館の4つの役割の解説に続き、調査、収集、輸送、掃除、研究、繁殖、給餌、展示、教育、など18項目の仕事内容について体験談などを中心に制作している。

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授業協力メンバー
所 属 氏 名 授業での説明
海の中道海洋生態科学館 高田 浩二
・カブトガニの講義・同資料制作
・バックヤード見学案内
・来館見学講義
  水族館の飼育係の仕事
  ワークシート回答
海の中道海洋生態科学館 岩田 知彦
・バックヤード見学案内
・CD−ROMを使った授業での講義・同資料制作
・講義中の映像機器の操作
海の中道海洋生態科学館 森  奈美
・バックヤード見学案内
・CD−ROMを使った授業での講義・同資料制作
・講義中の映像機器の操作

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授業の感想
■授業実施者
(産業界講師)

 この授業を受けた子どもたちが、授業を重ねる度に職員と打ち解け、お互いに心を開いて交流できたことが最も印象深く、携わった職員の喜びでもある。
 授業の成果については、学校の授業で使用したワークシートなどへ書かれた子どもたちの感想を見るだけでも、水族館の役割や仕事への理解が深まり、野生動物や環境保護にも意識が高まる、という当初に掲げた目標や狙いは多くの部分で達成できたものと感じている。また特に中学生においては、日々努力を重ねる水族館職員の姿に触れ、将来の自分の進路や仕事や勤労に対する意欲を向上させることにも役立ったものと思う。
 今後は近くに水族館がない学校でも同等の経験ができる配慮が必要だろう。その点では、開発したCD−ROMとWebを、あらかじめ学校に送ったり、インターネット環境で閲覧することにより、子どもたちの事前学習、事後学習に役立てることができよう。
 遠隔地で水族館職員が直接学校に行けない場合でも、テレビ電話システムを使った遠隔授業をすることで、教室と水族館をつないだ双方向性のある交流が可能であり、またその際に、学校へ標本や実験キットなどをあらかじめ送っておき、授業中に体験してもらうことも有効である。

■担任の先生

 生徒の職業観を養うにあたって外部講師は、有意義であり、今後はもっと広がっていくと思う。外部講師は、生徒だけでなく教員にとっても刺激があり、外部講師の教材の工夫、生徒との会話のやりとり、話し方、ワークシートの作り方など参考になるところが多い。
 教材の点からみると、博物館は実物の教材を持っている。学校では、教材の写真やレプリカ程度があるが、実物は少ない。特に、生きている教材については、写真などと比べ生徒の興味・関心の高さは、比較にならないほど高い。この教材についての説明は、外部講師である学芸員しかできない。外部講師と充分な打ち合わせを行い実施すれば、考えた以上に効果がある。
 子どもたちがとても興味を持って参加でき、マリンワールドを支えている人々の苦労や使命、生き物の命を守ることの大切さなどがとてもよく伝わった。専門的な職業でもあり、生き物を生かす仕事であることから、子どもたちに十分、興味や関心を高めることができたと考える。命がけの体験にもとづく話で、動物たちの命を守ろうと努力する人(水族館)たちの話を聞き、子どもたちの心の中で努力することの大切さが理解できた。

■生 徒

 水族館はただ見学する所だと思っていたけど、いろいろなことを知ってもらう(勉強してもらう)ために学芸員の人たちは裏で頑張っている。
 学芸員だけでなく、普通の人も動物のことをよく知り、できるだけ助けられるようにしたい。水族館の人たちは、生き物を責任を持って保護していることがすごいと感じました。
 水族館の職員の仕事は、イルカたちと遊んだりするものと思ってたけど、本当はとっても大変な仕事をしているということが判りました。
 保護をするには、その生き物のことをちゃんと知っておかないといけないので、本当に大変な仕事であり、その生き物を飼育できる場所が必要で水族館だからできるんだと思いました。

■教育関係の立場から

 学校での授業内容、企業が提供できる資料などを話し合う機会を増やし、活用できるプログラムをテーマ別に作成、利用していくことでさらに深く連携がとれるのではないかと思う。
 現在の子供たちには、健全な職業観、勤労観を形成することが大切です。また、産業は社会にとって生命であり、理解させるべきであると思います。働く人の職業倫理や産業は何のためにがんばっているのかが伝わるように、さらにこの授業を発展させるべきであると思います。
 今回の学習を通して、子供たちは、おそらくそれまで抱いていた「水族館=イルカショー」、「水族館で働く人=イルカの調教師」といった画一的なイメージが改められ、水族館の役割やそこで働いている職員のことを、より多面的に捉えることができるようになったと思う。さらに学習時間数を増やせれば、例えば施設・設備の維持管理を担当している水族館職員の苦労話なども紹介することができ、一層の成果が期待できる。


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授業情報 実践事例 教材紹介

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