■進行
第一線の研究者である瀬崎氏が講師となって、「Spring-8と放射光を知ろう」と「科学について理解を深めよう」のふたつのテーマで授業を行った。
まず瀬崎氏から、SPring-8が世界一の放射光施設であり、それが自分たちの町にあることへの誇りについて説明や施設見学を含めた授業の概要を聞いた。
授業実施用教材マルチメディアライブラリCD-ROMから資料をスクリーンに提示しながら、SPring-8がどのような装置なのかについて放射光施設の概要を解説した。
次に、身の回りにある放射線を測定する実験を、放射線測定器で測ってみる実験を行った。自然界にもあること、意外なものから放射線が出ていること、知識があれば簡単に遮蔽できて安全なことなど、児童に科学的な考え方を実感させた。
質問をうけた後、「科学について理解を深める」ために、マルチメディアライブラリCD-ROMの資料を提示しながら、説明を行った。この中で児童達には、科学は自然の仕組みを理解させ、自然体験の不思議をまず考えることから「科学するこころ」が始まるということを知らせた。また科学の研究で知ることが出来た自然の仕組みや、地球46億歳の中で生命は進化をたどって、自分たちが生きていることを考察させた。
次の実験では、電位の異なる金属板(亜鉛と銅)をさまざまな野菜や果物に差し込んで電極にし、メロディカードから音がでるかを検証することで、科学的に実験結果を考察させてみた。
まとめとして、次回学習する予定の生命科学の話題やSPring-8の研究につながるキーワードを提示し、また科学できる目を育てる大切さを児童に語った。
■内容
授業進行のポイントとして、理解させるより、いかに興味を持たせるかに重点をおいて進めた。
・加速器で物質の構造や性質を調べることができる
・放射光の正体は強力なエックス線
・光は波動と粒子の性質を持っている
・電子が曲げられるときに放射光が発生する
・エックス線と物質には、4種の相互作用がある
・相互作用を利用して、自然の仕組みを調べたり、暮らしに役立つ新しい物質をつくることができる
・SPring-8は世界最大の装置
・世界中から研究をするために研究者がやってきている
・SPring-8は、新しい科学の知識を生み出して、世界の人びとに貢献している
・上郡町にSPring-8が作られたのには理由がある
・科学とは自然の仕組みを理解すること
・自然体験から考えることが大切
・科学するこころを持とう
・科学の研究で知ることが出来た自然の仕組みについて知る
・宇宙は150億歳、地球は46億歳。
・地球の生命は40億年の進化をたどり、いま私たちが生きていることを知る
・生命科学、とくにDNAについて存在を知る
・SPring-8の研究で、どんなことがわかろうとしているのかを知る
・科学できる目を育てる大切さを感じる
実験は、児童に直接携わらせることで、より体験的な学習効果が得られるように実施された。
身の回りにある放射線を測定する実験では、放射線測定器で自然界にも放射線が存在することを知らせた。残留放射線の話題なども、肥料から食物へ、そして体内にも存在しているという事実から、意外なものから放射線が出ていることを知らせた。時計の文字盤や入浴剤などからも数倍の放射線が出ていることを、知識があれば簡単に遮蔽できて安全なことなどを通して、児童に科学的な考え方を実感させた。
「野菜電池の実験」では、電位の異なる金属板(亜鉛と銅)をリンゴに差し込んで電極にし、メロディカードから音がでるかを検証することで、科学的に実験結果を考察させてみた。最初は乾電池、次に太陽電池、最後にリンゴという順で、児童に装置を組み立てさせて実験した。原理が理解できたところで、自宅にあったタマネギ、ゴーヤ、ピーマンなどさまざまな野菜や果物で実験を深め、科学的に実験結果を考察させた。
次の授業までに質問があれば、インターネットに設置された「Q&A掲示板」に書き込むように指導し、書き込みには直接講師が回答をしている。
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授業は大型スクリーンを2枚使って、 PC教室で行う

実験では、放射線計測器(サーベイメーター)等を持ち込んで、体験的に児童に分かりやすく解説を加える。

市販の入浴剤や時計の文字盤などから、多くの放射線が出ていることを、児童が直接測定させて見せる。

リンゴを電池にする実験では、異なる金属の電位の違いを利用して、音楽を鳴らせる実験を行う。

自宅から持ち込んだ様々な野菜や果物でも音楽がなることを体験し、その種類によって音量が異なるところから、科学的に実験結果を考察してみる。

講師は、テーマごとに児童からの質問を受け付ける。質問の内容は、小学生とは思えないような高度なものもあった。
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