5.教材の開発




5−1 開発する教材の背景

 学習に障害ある生徒の中には、読むことよりも書くことに大きな困難を示す者もいれば、読み書き、つまり文字の受容と表出の両方を苦手とする者もいる。前者は視覚を通じて得た情報を受容する視覚認知よりも、そうした情報を文字や文として表出するために変換し、運動機能に伝える過程のどこかが首尾良く機能していないと考えられるし、後者は視覚認知にも問題があると考えられる。文字を書くためには、視覚情報の分析、統合、記憶や目と手の運動の調整などの複雑で高度な能力が必要である。
 このため、こうした児童生徒に対しては、文字や文などの視覚情報を絵や図などの他の視覚情報と関連させて提示したり、目と手の運動の協応を図ったりするなど、複数の感覚器官の能力を統合させる指導が考えられる。また、文字を書き写させるいわゆる視写課題の遂行と、聞いたことを書かせるいわゆる聴写課題の遂行に差があるかなどの視点も指導の展開に取り入れた。なお、書字に困難を示す児童生徒の中には、描画などを苦手とする者も多いので、易しい点結びや描画課題を取り入れるなどの工夫をした。書字のための運動機能に困難を示す児童生徒には、文字を書くことや自分の考えを文字で表すことに興味を持たせることに留意し、そのような教材を開発する。

5−2 教材の機能要件

 教材を使用する生徒と指導する教師は、生徒の学習軌跡を確認することができる。また学習の進歩を自らで評価できる環境を提供する。学習軌跡は前回の軌跡が自動的に登録され、複雑な操作をしなくてもワンクリックで再生できるような仕様にした。
 各項目毎に点数(スコア)を設けて、段階別に点数の表示を変えるなどの工夫によって、学習意欲を増すインターフェイスを盛り込んだ。

(図1.児童のログオン画面)

5−3 作成した教材の仕様

作成した教材の仕様は以下のとおりである。

●教材仕様 

(1)管理者及び学習モード

(2)教材の概要

図2,3,4,5で示す以下の教材を開発する。
1)ひらがな
【ひらがな】48文字
    あかさたなはまやらわん
    いきしちにひみ り 
    うくすつぬふむゆる 
    えけせてねへむ れ 
    おこそとのほもよろ 
2)漢字(漢字は小学校一年生が学ぶすべてとした)
3) 点つなぎ
4)線なぞり

(図2 ひらがなの選択、習得済みのものは赤で表示)

 

(図3 漢字学習のインターフェイス画面)

 

(図4 点つなぎ学習の画面)

 

(図5 線なぞり学習の画面)

5−4ハードウエアの注意点など

1) 筆圧管理について:
 タブレットPCには原則的に筆圧感知機能が採用されているが、使用を予定しているマクロメディアフラッシュではその情報を取得管理が出来ない.したがって今回の教材では、この機能を採用しない。

図7 タブレットPC上での筆圧の設定

2) 誤答などのノイズ(雑音情報)処理について:
 児童生徒が意図する所と違うところにペンを押す等のノイズに対して描画領域をプログラム時に設定するので、それ以外の部分をクリックしても無効になる。但し、システムがアラームを鳴らす領域をペンでピックしてしまうと警告音が鳴る事も予想されるので、PCのボリューム設定など運用上の注意が必要となった。

5−5 ソフトウェアの概略フロー図

 



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