6.授業実践等の事例




6−3−1 学校名
K市I小学校 K.I.教諭

6−3−2 授業実践に参加するに至った経緯
 知的障害学級には、4人の児童が在籍しているが、どの児童についても書字・識字指導には、日頃から頭を悩ませていた。中でも1人の男児は、なかなか文字が覚えられず、本人もそのことを気にしていた。毎日のように漢字を書かせたり、読ませたり、宿題に出したりして定着を図ろうとしたがなかなかうまくいかず、指導方法を模索していた。

 そのような時に、パソコンによる書字・識字指導のソフトが開発されているが使ってみてはどうかというお話をいただいた。その児童は以前よりパソコンが大好きであったので、このソフトによる指導が有効でないかと考え、授業に取り入れてみることにした。

6−3−3 児童のプロフィール

1)児童の様子や発達状態実態
  年齢 男児10歳(4年生) 知的発達障害

2)児童の学習形態や所属

3)学習や行動上の困難な点

6−3−4 指導計画
1)時間

2)目標

3)指導の順序
   手本を見る。
   読み方を聞く。
   画面上に書く。
   書き順が正しかったか確認する。
   3回続けて◎が出るまで書く。
   自分で納得できる字が書けたら保存する。
   鉛筆で紙に3回書く。
   漢字を使った文を書く。

6−3−5 指導記録

児童の活動
指導上の留意点
1.体の部分を表す漢字を見つける。
  • 体の絵の中から、漢字で書き表すことのできる字(口・目・耳・手・足など)を探させる。
2.小黒板に書く。
  • 小黒板に書かせることによって、自分の字を客観的に見させる。
3.字の間違いを見つける。
  • 手本になる文字と比べながら、間違いや曖昧になっている部分を見つけさせる。
4.タブレットパソコンで書字練習する。
  • 間違った文字について練習させるが、書き順や画と画の接点、終筆に気をつけるようにさせる。
5.鉛筆でプリントに書く。
  • パソコンで練習した文字を鉛筆でプリントに書かせる。
  • 最初に書いた小黒板の字と比べてよくなったところ を見つけてほめる。
  • 書き順を忘れたり、分からなくなった字については、もう一度パソコンで確かめたり練習したりさせる。
6.覚えた漢字を使って文を完成させる。
  • 練習した漢字が抜いてある短文に提示し、漢字を入れさせ、漢字の使い方を知らせる。

●児童の反応

●習熟度チェック
   1) 11月下旬の考察 : 80字中54字正解
   2) 1月中旬の考察  : 80字中69字正解


●つまずきやすい漢字(1年生80字)
   1)書き順を間違えやすい漢字
      (生・青・出・右・耳・花・円・気・女・田)

   2)覚えにくい漢字
      (村・耳・円・赤・音・虫・空・青・文)
      (入る・小さい・出る・立つ・正しい)
                    
   3) 混同しやすい漢字
      (早と草、体と休、人と入)

6−3−6 評価

 (良い点)
●ペンを画面にしっかり接触させて書かないと線が現れないので、丁寧にゆっくり文字を書くという体験をさせることができた。
●手本と練習部分が並列しているため、見やすい。
●書き順もその都度確認することができ、今までに身に付いた書き順のまちがいに気づかせることができる。
●書くことと消すことが簡単にできるので、何度も繰り返し練習させることができる。
●絵や音声によって多角的に漢字をとらえさせることができる。
●タブレットPCを使うようになって、(11月下旬〜1月中旬・冬休みは除く)
  正しく書けるようになった1年生の漢字が増える傾向にある。

 (改善点)
●ペンの角度や筆圧の加減により画面をなぞっていても線として現れないことがある。
●画数の多い漢字になると書き順が分かりにくい。
●◎の判定が児童によっては甘く、本人が納得していない字になっても◎が出てしまうことがある。
●何段階かチェック方法を変えられ、本人に合わせて判定できることが望まれる。
●今まで書いた字をすぐに見ることができれば、今書いた字との比較ができ、上達の過程を児童にも見せてやることができる。
●今後、漢字の使い方(漢字が入った短文)も入れることができれば、日常の文作りにもつながるのではないか。

6−3−7 総評
 このタブレットPCを使わせるようになってから、まだ2ヶ月である。成果と課題を述べるには時期的に早いと思うが、今、言えることは児童の漢字に対する姿勢が変わってきたこと、字を丁寧に書こうとする場面が多く見られるようになったこと、書き順を意識して書くようになったことである。このことは、担任にとって何より嬉しいことである。
 児童にとって大好きなパソコンを使い、自ら文字の正誤、自らの伸びやがんばりに気づかせることのできたこの学習方法は、書字・識字指導に大変有効であったと思われる。今後も、計画的に、短時間、集中的に取り組める時間をとり、興味を持たせながら有効な活用方法を模索していきたい。

 



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