6.授業実践等の事例




6−6−1 学校名及び担当教諭
M市J小学校 担任 A.S. O.Y. 指導補助 H.Y.  指導補助 H.Y.

6−6−2 授業実践に参加するに至った経緯
 継続して漢字などを学習することが出来ないので、子供がゲーム感覚で学習できるタブレットPC、本プロジェクトに参加をした。

6−6−3 児童のプロフィール
小学校2年生(8.0歳)性別:男児 診断名:知的障害

1)読字に関する能力

2)書字に関する能力

3)生活・行動面の特徴

6−6−4 指導計画

1)概要

1週あたり2時間ほど個別で行う国語の学習時間を確保し、その時間に指導した。
他の学習課題との関係から、1時間あたり20分程度の時間を確保した。
指導には学級担任があたった。
指導補助者(以下私と記す)は1月中に2回授業の様子を観察することと指導の補助を行った。

2)学習の目標

苦手なひらがなや漢字を意欲的に書く練習ができる。
ひらがなの書字とあわせて、読みも理解できる。

3)学習の手順

本児が読みや筆順を覚えていて得意なひらがなから学習をはじめ、タブレットPCを使った学習に慣れる。
得意な文字を上手くできたときに誉めるとともに、PC上での上手くできたとき表示(◎)を確認し、学習への意欲づけを図る。
学習への意欲を大切にしながら、苦手な文字を練習することを促す。
上手くできたところをほめ、学習への意欲づけを図る。
無理のない範囲で読み方を確認させるようにし、読みの定着を促す。

6−6−5 指導記録

1)学習時の様子

教材提供初日の様子
  タブレットPCにはすぐに慣れて、操作の手順もよく理解できている。はじめは、自分の名前の文字を練習する。筆順も間違わずに上手くかけている。書けた後で読みを確認するが、答えることは難しかった。名前の文字を一通り練習した後、教師が指定した文字を書くようにした。「い」や「こ」など、以前から書ける文字は抵抗なくできている。少し複雑な文字になると、抵抗があって書くことはなかったが、学習の最後に、「あ」を書くように進めると自分から書こうとする。よく手本を見て、ゆっくりと正確に「あ」を書くことができた。出来栄えに本児も大変満足していた。

学級担任との授業の様子
 学級担任が以後の指導にあたる。すべての時間について、とても落ち着いて学習に取り組んできる。気に入った文字は何回も練習を重ねて、よくマスターできており、間違いなく書ける文字の種類も増えてきている。比較的苦手な「あ」や「れ」「む」なども、教師に促されて書いたり、自分から選んで書いており、文字を書くことへの抵抗感はかなり減ってきている。

授業の観察時の様子
 教材を導入してから、半月くらいがたったころに授業の観察に行った。半月前と比較して最も顕著な変化は、書くことに対する抵抗感がかなり軽減されていることであった。定期的に授業時間を確保することは難しかったと担任から聞いていたが、ほとんどすべてのひらがなをタブレットPCを使って練習していた。私が行ったときの授業でも、以前であれば苦手で書くことをためらっていた文字も、自分で選んで書き進めていた。文字を書いているときの様子では、筆順をしっかりと意識しながら一画ずつをとても丁寧に書いていたことが印象的であった。また書いている途中で筆順を再生して確認するなど、文字の形と筆順をよく意識して学習に取り組んでいた。3回の授業観察について、どの時間も20分は集中して学習に取り組んでいた。

しかし読みについてはまだまだ抵抗感は強く、教師の問いかけに対して間違っていなくてもなかなか大きな声で返答することは難しかった。

6−6−6 課題
 今後の課題としては、タブレットPCでの成果を他の学習にどうつなげていくかである。PCを使っての学習は本児にとっては意欲づけと書字への導入の要素が強い。PCを使って学習したことから、通常の鉛筆とノートを使った学習に何らかのかたちでつなげていく必要がある。そうしなければ、PCを使った学習もいつか遊びの要素ばかりが強くなってしまい、新たな意欲や自信へとつながっていかないのではないかと思える。   
 今後、以上のことを念頭において指導にあたる必要がある。また、書字については自信をつけることができたが、読字についてはそこまで至っていない。本児の状態から、読字についてはまだまだ時間がかかるだろうと思われるため、今後も継続的な指導を行い、読字への意欲づけを図りたい。

6−6−7 評価
 本児は学習には意欲的に取り組むが定着に時間がかかるケースである。本児のように文字に対する苦手意識が強く、なかなか意欲的に学習に取り組みにくい場合には、タブレットPCの利用は有効である。本児にとってはこれまでの学習とは形態が違うため、まず当初の苦手意識からある程度開放される。またパソコンを使うことによって、ゲーム感覚で学習を進めることができるため、楽しみながら学習に取り組むことができた。さらに、パソコンを使うことは基本的に自分でしたい課題を選ぶことになるため、本児にとっては自分が自信のある課題を何回も繰り返して取り組むことで、書字に対する自信をつける結果になったと言える。
 このように本児にとってタブレットPCの活用は、書字の練習をすることで書ける文字を増やすという効果よりも、繰り返し練習をすることで書字に対する自信をつけることの効果が高かったといえる。

 



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