13.今後の展開および検討課題




13.1今後の展開

 本実践授業では,基本的に,ICタグをデジタルマップの表側あるいは裏側にはりつけて利用した。地域が俯瞰して見えるリアルの地図は,個々の地点の調べと対をなすものであり,鳥の目と虫の目に例えられる。子どもたちが両方の視点から学区を見られることは,より教育的効果が期待できる。
 ICタグのよさは,手軽に情報を出し入れできることである。学校におけるICタグの利用シーンとして,地図のような平面物だけでなく,立体物にはりつけることも,今後の展開として考えられる。
 具体的には,生活科,学校探検という授業において,学校の敷地内のいろいろな場所に,ICタグをおいて,子どもたちの学びにつなげることも可能であろう。先生の体に直接,ICタグをはることも,子どもたちの興味関心を引き寄せるために有効と思われる。
 理科の授業では,岩石などに直接ICタグをはりつけ,地層や堆積物に対する情報を埋め込むことにより,物質とその形成過程が関連付けられることで,より深く理解されることが期待される。
 国語科では,図書館にある本にICタグをはることにより,必要な本や作者の情報を容易に探し出すことも可能になり,子どもたちや先生が,誰でもいつでも,容易に情報を引き出せることが想定される。
 他の事例としては8.1でも触れているように,家庭科における「ミシンの使い方」でも有効な使い方が考えられる。予め使い方を覚えるだけではなく,実際にミシンを使う際にICタグから読み込んだ使用法を確認することで,直感的に理解させるという点で効果があると考えられる。(図12-1参照)

 このように,リアルとバーチャルを適切に結びつけて,子どもたちが,自分の身につくような形になることが,我々が教育現場におけるICタグの活用において,理想とするところである。
 本実践授業では,一方の学校では,地域の調べから,ウェブコンテンツの制作に重きをおいていた。このため,登録された情報量は多く,その地域の情報収集を目途とする者にとってたいへん有益なものとなった。
 もう一方の学校では,地域の調べから,その情報を見る対象として,同じ学校の下級生を想定していた。こうして作られたプレゼンテーション資料を登録したため,文字数や文字の大きさに配慮した,わかりやすいものとなった。
 教育的観点からみると,「自分が,何を誰にどのようにして伝えたいのか?」という指導を,より一層,子どもたちにおこなうことが望まれる。子どもたちが,自分の課題に対して調べた多くの情報の中で,捨てる情報と残す情報を選択することも必要であろう。
 本実践授業で集められた情報は,平成17年度以降には,この学校に,そしてこの地域に集う人たちの貴重な資産となる。子どもたちの集めた情報と地域の人たちの集めた情報が交わること,また,今の情報と過去の情報が交わることで様々な視点が生まれ,それが想像力と探究心につながるものと考えられる。
そして,学校と地域が一体となって,コミュニティがより活発に促進されるツールとして,ICタグやデジタルマップが利活用されることを期待したい。

13.2検討課題

 ICタグとアプリケーションのデータベースの対応が今後の検討課題としてあげられた。
 本実践授業で開発されたアプリケーションは,ICタグ1個に対して,複数のコンテンツを登録する(関連づける)ことが可能である。これにより,情報収集者が異なる同一地点のコンテンツを同じロケーションで重ねること,年代の異なるコンテンツを同じロケーションで重ねることができる。
 本実践授業では,ひとつの学校に,デジタルマップを2枚用意した。当初,この2枚を重ねて利用することを想定していたが,約半年間の実践授業をおこなった中で,先生方より,2枚をそれぞれ別個に使って多くの児童に使わせることが有益であるとの結論に至った。
 これを実現するためには,アプリケーションのデータベース1個を,複数のICタグに書き込めるよう,仕様を変更する必要がある。また,ICタグリーダ・ライターが,安価で個数を増やせるようなものであれば,よりよいと思われる。
 「コンテンツ登録ツール」や「コンテンツ閲覧ツール」のインターフェイスに関しては,利用する子どもたちが使いやすいように,より考慮したものに改善したほうがいいとの提案があった。
 特に「コンテンツ閲覧ツール」のトップページは,先生が,授業をはじめる前に,その日の授業目的にあわせて,自由に文章を変更できるような仕組みを取り入れたほうが望ましいと思われる。このICタグを利用したデジタルマップは,利用する学年により,その授業のねらいがそれぞれ異なるためである。画面についても,子どもたちの興味を引くような工夫が必要との意見も挙げられた。

 



前のページへ 次のページへ