6.実施内容



6.2 開発環境と技術

6.2.1 開発環境

 授業ビデオの制作環境において、まず必要となってくるのがある程度の処理速度CPUを実装しているか、また十分な仮想メモリを積んでいるかということと、ビデオを取り込めるだけの容量をもったHDかどうかという点があげられる。事実、DVテープからの取り込んだ生データは1分で約220MBになる。30分だと6.6GB、1時間で13.2GBを要し、作業していくなかでも当然レンダリングファイルに相当な容量が必要になってくる。
  家庭用のパソコンでも現在販売されているものの標準は、十分要件を満たすものとなってきているが、学校で教員が作業することを考えると導入時の仕様によって異なるので確認が必要である。Windowsユーザーで代表的に使用されているAdobe Premiere Proの必要システム構成を参考に動作環境を以下に記す。

* Intel Pentium III 800 MHz以上
* Microsoft Windows 98SE、2000、ME、またはXP
* 256MB以上のRAM(1GB以上推奨)
* プログラムインストール用に600〜800MB以上のハードディスク空き容量
 (インストールするアプリケーションによる)
* ビデオキャプチャと編集用に10GB以上のハードディスク空き容量
 (編集対象の時間によってはそれ以上)
* フルカラーで最低解像度1024x768が表示可能なディスプレイアダプタおよびモニタ
  (ビデオ編集ソフトの画面レイアウトに対応するだけの大きさが必要)
* マウスまたはポインティングデバイス
* サウンドカード(音声の出力が必要)
* 32bit以上のカラー表示をサポートするグラフィックカード
 (Microsoft Direct X対応のグラフィックカードを推奨)

さらにリアルタイム機能を望むのであれば以下のスペックを満たすことが必要である。
* Pentium 4、2.0 GHz以上のCPU
* 512MB以上のRAM
* 7200回転以上のIDE ハードディスク

 また必須条件として、ビデオ機器からのキャプチャや書き出しを行う場合に、各アプリケーションによって認証されているビデオキャプチャカード、もしくは IEEE 1394インタフェイス(FireWireまたはiLinkとも呼ばれる)が必要。
 アプリケーションソフトは様々なものが販売されているが、その機能を確認の上使用することが大前提である。多くの学校ではほどんどが、Windowsを導入されているという現状を踏まえ、以下、代表的なアプリケーションを一部紹介するが、あくまでも動作環境、条件によってメリットデメリットがあるので、導入の際は他のソフトも含め慎重に吟味願いたい。

* Windowsムービーメーカー
  (マイクロソフト社から無料でダウンロードできる。但し、出力エンコードには制 
   限があり出力はwmvファイルが基本となっておりWindows Media Playerの再生は
   可能だが、他ソフトで再生できるエンコードは今のところ実装していない。)
* Ulead VideoStudio
  (比較的安価であるが、出力形式は充実している。)
* Adobe Premiere Pro
  (機能が充実しており、プロフェッショナル向けでやや重装備であるが、Adobe   
   Premiere Elementsであればシンプルな機能かつ安価で導入しやすい。)

 

6.2.2 教材開発技術

 今回のデジタルコンテンツ(アイテム)はFlashコンテンツであった。Flashコンテンツの作成はかなりの専門的技術が必要なのでここでは触れないが、授業ビデオは撮影・編集の技術さえあれば、以降に記述する要領で作成は可能である。PDF練習問題は、PDF以外でもWordや一太郎での作成が可能である。
 本プロジェクトでは、コンテンツの素材部分はすべてAdobe illustratorやPhotoshopで加工した物が基本となっているが、これに限らず類似の描画ソフト、画像編集ソフトを利用することも可能である。

 

6.2.3 ビデオ撮影

 ビデオ撮影において、ポイントとなってくるのが、撮影前にしっかりと主軸を決めておくことである。またその主軸の内容を正確にシナリオに落とし込むことが更なる課題であり、この部分がしっかりとしていれば、逆に撮影は自然な流れで進行する。特に現場の教員が講師をする場合は経験から、ある程度のアドリブは生徒を引き込んだり、内容を充実させるものになることが予想されるが、今回のように、実際に教壇に立ったことのない人にとって中身の部分の内容が明確でなければならない。
  また、この授業ビデオの一番の難点は、見ている側の反応をつかむことができないことである。ビデオは一方方向に流れるため、予想できる質問事項や疑問点を想定し、丁寧に作る必要がある。たとえば、間の取り方もその一つで、カメラの向うに相手がいると認識し、必要な箇所で適度な間を持たせることが重要である。
 撮影においては、最終出力する際に圧縮がかかるということを念頭に、動きのある映像は画質が悪くなる原因となるので必要な動き以外はできるだけ避け、カメラはしっかり固定すべきである。また、画質は良いに越したことはないが、カメラの性能に関わる問題なので、せめて撮影環境では逆光は避け、色が飛ばない程度のできるだけ明るいところを選ぶべきである。

 

6.2.4  授業ビデオ制作

 前項に表記のとおり、授業ビデオにおいては内容とシナリオが最も重要なので、制作はそれに従って進めれば良いのだが、編集の技術的な部分を特記するなら、まずキャプターに関しては必要な部分のみ取り込むことである。DVの生データは容量が画像等と比較できないくらい大きく、HDの負担を減らすためにも、あらかじめ取り込み箇所をピックアップする必要がある。また、編集のつなぎ目もタイミングに注意し、自然な流れになるように心がけたい。

 

6.2.5 ビデオ配信

 ビデオ配信においては、Quick timeでの再生を前提としてmov形式を採用した。主な理由は以下のとおりである。

 しかし、問題点としては、Quick timeはほとんどの学校でWindowsを使用しているという点からもPlayerのダウンロード・インストールが不可欠である。管理者による制限がかけらている環境もあり、あまりパソコンを触ったことのない人にとってこの作業は容易ではないことから、説明をつけるなど、今後なんらかの対策が必要である。

 またビデオ配信の細かい設定は専門的になりすぎてしまい、また編集ソフトによっては設定できる範囲が限られているため、本プロジェクトの設定を下記に表記し、それをもとに簡単に行う。

1) サイズ:320×240pixel 
2) フォーマット:(映像)Sorenson Video3
           (音声)QDesign Music2 モノラル、22Hz
3) フレームレート:15/秒
4) データレート:344kbit/秒

 1)についてはDVで撮影した場合、最大出力サイズは640×480であるが、特に細部の表示が必要でないと考え、学習においてその1/2のサイズを妥当した。サイズは見せる物の内容によって検討が必要であるが、大きければ当然画質が乱れやすくなるので、それ相応のデータレートでの配信が求められる。回線の状況にもよるが、配信速度においては見る側の負担にもなり、また全体の容量に関わる問題なので、適宜検討する必要がある。

 2)については出力するアプリケーションや出力ファイル形式によって決まるが、movファイルではもっとも高圧縮高画質といわれるSorenson Videoを使用した。音声についても同様にファイル形式に依存するが、音質へのこだわりがない場合はモノラル、サンプリングレート22Hzで十分対応できる。

 3)フレームレートは動きに影響する。最大30フレームで通常テレビなどで目にするアニメは24フレームで構成されている。これも見せる物によって検討する必要がある。

 


前のページへ 次のページへ