7.プロジェクトの実践(ブログによるホームページの教育利用について)




7.1

1.実践テーマ:

「モバイル機器とブログを活用した修学旅行」

2.執筆者:

つくば市立吉沼小学校 山田摩耶

3.キーワード:

小学校,6年,総合的な学習の時間,修学旅行,モバイル,携帯電話,PDA,ブログ,掲示板,テレビ会議

4.IT活用の意図
 本校の修学旅行は,グループごとの体験学習が中心となっている。ブログと携帯電話やPDAといったモバイル機器を連動させて活用することで,自分たちのグループの活動内容や現在の状況等を画像付きで発信することができる。発信のみならず他グループの情報を受信することもできるため,離れた場所にいながらリアルタイムでの情報交換が可能となり,学習活動の活性化が期待できると考えた。

5.単元名:「学び・ふれ合い・体験の旅」〜東京・鎌倉体験学習〜
(1)ねらい
  児童は,自分たちの興味・関心に基づいて情報を収集,下調べをし,旅の計画を立てる。そして,それを実行に移す過程において,さまざまな「学び」を得,人との「ふれ合い」に感動し,小学校生活最後のよい思い出となるような旅を創りあげることができるようにする。
(2)指導目標

(3)利用場面
  主に修学旅行のグループ行動時にグループ1台を基本として活用した。1日目は全員で国会議事堂を見学後,渋谷(NHKなど),お台場(日本科学未来館など),池袋(防災館など),上野(国立科学博物館など),御茶ノ水(サッカーミュージアムなど)方面に分かれて体験学習活動を行った。2日目は全員で鎌倉大仏・長谷寺・鶴岡八幡宮を見学後,市内の寺社巡りを11グループに分かれて行った。

 
【図1 活動計画を立てる児童】   【図2 児童が立てた計画】

(4)利用環境(修学旅行当日)

6.指導内容
 修学旅行でモバイルを活用するのが本実践のメインとなるが,そこに至るまでの流れを記していく。
a 中学生とのテレビ会議(5月下旬に実施)
 本校の修学旅行は昨年度からグループ別の体験学習を中心としたものとなった。児童にとっては自由に計画が立てられる楽しみもあるが,一方で自分たちがどこまでできるのか,不安が多いのも事実である。そこで,昨年度,修学旅行を経験した6年生とTV会議を行い,自分たちの疑問に感じていることを尋ねたり,アドバイスを得たりすることができた。
 互いによく知った相手であったため,緊張もすぐにほぐれ,和やかな雰囲気のテレビ会議となった。

【図3 テレビ会議中の様子】 【終了後の児童感想より】

b 親子モバイル体験
  親子で修学旅行を疑似体験することで,保護者にも当日の児童の活動について関心を持ってもらったり,コンピュータの操作等に少しでも慣れてもらったりする目的で実施した。最初は児童が保護者に教える形で掲示板への書き込み練習を行った。その後児童は校庭などからモバイルで掲示板に画像やコメントを寄せ,それを保護者がCAI室で受信して返事を返す,という活動を行った。
  PHSの電波状態が良くなかったので,あまり多くの画像は送れなかったが,保護者はこの活動を非常に喜び,自宅から掲示板にコメントを寄せてくれるようになった。

 
【図4 PDAで画像を送信する児童】   【図5 親子で掲示板の使い方を練習】

【図6 夏休みも賑わった掲示板】

c 学校ホームページをブログ形式に移行
 これまで利用してきた掲示板は,個人が無料で提供しているものであった。それゆえ,スポンサーの広告が表示されることが気になっていた。また,個人運営であるため,突然閉鎖するかも知れないという不安もあり,このまま公式の掲示板として使い続けることは難しいと判断した。
 そこで,操作や管理などの面から考慮した上で,市のITアシスタントの協力を得て,学校ホームページをブログ形式に移行した。ブログは,現在着実にそのユーザーを増やし,認知度も高まってきてはいるが,従来のホームページと全く違う形式になるため,全学年の保護者に向けて利用法などを知らせるマニュアルを配布した。
 また,保護者からの質問にはメールで迅速に対応することができた。

【図7,8 保護者に配布したブログのマニュアルの一部】

d 修学旅行
  携帯電話の操作にも,児童は事前の練習ですぐに慣れた。各グループにPDAと携帯電話を1台ずつ渡したところ,出発時からブログへの書き込みが絶え間なく寄せられた。現在地を知らせるもの,自分たちの体験活動について報告するもの,驚きや喜びを素直に表現したものなど,書き込みはさまざまであった。

【図9 修学旅行当日のブログの一部】

 そして,そのような児童の様子を,保護者は自宅のパソコンや携帯電話などからブログにアクセスして受信することができた。修学旅行の2日間は,本校職員の協力を得てCAI室のパソコンも保護者に開放したため,自宅にパソコンがない保護者も楽しむことができたようである。子どもたちは情報発信に一生懸命だったので,グループ間の交流はあまりできなかったが,保護者が子どもたちに対して励ましのメッセージを送るなどして呼びかけたので,離れた場所にいながらブログを介して親子間でのコミュニケーションを取ることができた。2日間のアクセス数は,5000を超えた。

【図10 鎌倉での様子を伝えるブログ】

 また,今回はテレビ電話機能を活用して池袋の防災館グループの児童が渋谷のNHKグループの児童に地震体験の様子を実況中継した。まるでテレビを見るように,その場の緊張感が伝わったようだ。テレビ電話を通じて,お互いの活動についてその場で質問し合い,短い時間ではあったが情報交換や体験共有に役立てることができた。

 
【図11 地震体験を実況中継】   【図12 その様子を受信する児童】

7.成果と課題

【図13 2日目のブログアクセス統計】

 今後の課題としては,グループにより情報発信の活動意欲に差があったことと,通信費用の問題である。殆どの児童が意欲的に活動していたが,事後アンケートで機器の操作が難しかったと答えた児童もいた。モバイル機器はパソコンに比べてまだ児童にはなじみの薄いものであるので,事前に操作の練習をする時間を十分に確保したい。

8.ワンポイント・アドバイス

 本校のホームページリニューアルに当たっては,コンピュータやシステムに精通している方の協力が必要であった。しかし,livedoor blogのようなサービスを利用すれば,比較的手軽に画像とコメントがアップできるので,宿泊学習や遠足などの学校行事や校外での学習活動などさまざまな場面での活用が可能だと考える。

【図14,15 モバイルで撮った画像は事後のまとめ学習に活用できる】

 


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