地域活動に関する実践研究の総括 |
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平成12年12月2日(土)13:15〜20:00 |
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早稲田大学 14号館 (東京都新宿区西早稲田) |
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「コンピュータを活用した英語教育を考える」シンポジウム実行委員会 関東地区小・中・高・大連携英語教育情報化研究会(仮称) 早稲田大学情報教育研究所(仮称) |
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財団法人コンピュータ教育開発センター 早稲田大学メディアネットワークセンター 早稲田大学教育総合研究所 早稲田大学教育学部 早稲田大学教職課程 稲門教育会 東京国際大学 |
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株式会社内田洋行 株式会社三省堂 KDDIグループ |
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主に,関東地方を中心とした初・中・高等教育の英語教育を担当される 先生方,教育委員会の方々。さらに,教育現場や地域の情報化を支える方々や,ネットワーク関係者を対象とする。 |
「コンピュータを活用した英語教育を考える」シンポジウム実行委員会 事務局
報告者:伊澤久美(株式会社内田洋行/早稲田大学メディアネットワークセンター 特別研究員)
平成12年12月2日(土)に、377名(延べ人数/スタッフ除く)の参加者を集め、早稲田大学・西早稲田キャンパスにて開催した、シンポジウム『コンピュータを活用した英語教育を考える』について大まかな経過や、開催によって得られたノウハウ等についてレポートする。
<主催>「コンピュータを活用した英語教育を考える」シンポジウム実行委員会
関東地区小・中・高・大連携英語教育情報化研究会(仮称)
早稲田大学情報教育研究所(仮称)
<共催>財団法人コンピュータ教育開発センター
早稲田大学メディアネットワークセンター
早稲田大学教育総合研究所
早稲田大学教育学部
早稲田大学教職課程
稲門教育会
東京国際大学
<協力>株式会社内田洋行
株式会社三省堂
KDDIグループ
株式会社アルク
平成12年10月、兼ねてより連携を図ってきた早稲田大学および東京国際大学の英語教員および本シンポジウム参画企業を中心として、関東地区小・中・高・大連携英語教育情報化研究会設立準備委員会を発足。そのメンバーを中心に、まず連携型のコンピュータを利用した英語教育の実践のあり方や地域協力型で英語教育の実践を行うための研究実践について語り合うことを目的として、本シンポジウムの準備・運営にあたった。
シンポジウム実行委員会は主催団体および協力企業により構成され、早稲田大学情報教育研究所(仮称)代表・原田康也を実行委員長とし、事務局は以下に設置した。
〒135-8730 東京都江東区潮見2-9-15
株式会社内田洋行 教育システム事業部
「コンピュータを活用した英語教育を考える」シンポジウム実行委員会
事務局 | 伊藤博康(株式会社内田洋行 教育システム事業部) 伊澤久美(同上) |
テーマ:教科教育「英語」におけるコンピュータの活用とその実践
一般のシンポジウムで行われるテーマは、かなり絞り込まれた内容となっているが、今回のテーマの設定にあたっては、教育の情報化、とりわけ教科教育の情報化に日々立ち向かっている現場教員になるべく多くの事例発表をお願いし、(「英語」という教科としては特化しているが、理論・実践内容についてはバラエティに富んだテーマを発表者が自由に選択することで)「どんな学年・校種にあっても英語教育の情報化には皆苦慮し様々な努力をしている」という実態の共有化を図り、その問題意識向上と人材ネットワーク創りの一助になればということを目的としたため、広く・浅い内容を選択した。尚、このタイトルでのイベント開催は初めてにあたるため、多少会場の温度差が感じられたテーマもあったことは否めない。次回からはオンライン上で交わされるテーマをもっと深く・多角的に論ずる工夫を加え、英語教育、さらには教科教育の先陣となる諸課題への取り組みのために、多様な観点をもつ必要がある。
発表内容の検討において、プログラム構成は大きく「理論編」と「実践編」の2部構成とした。「理論編」は校種に限らず、英語教育の情報化の現状を企業および研究者の視点での発表を依頼した。「実践編」は校種毎に先進的な実践を行っている教員に、その実践内容の紹介を中心に発表を依頼することとした。
第1部 理論編「英語教育の国際化と情報化」(当初定員80名)
コーディネータ:早稲田大学教育学部教授/中野美知子
◇新学習指導要領について −教科書作成の立場から−
株式会社三省堂 英語教科書編集室編集長/伊藤悦裕
◇スピーキング能力育成講座における教師の役割
株式会社アルク チュートリアルプログラムトレーナー
/マービン・ルイス(※本発表は英語での発表)
◇英語学習と情報技術
早稲田大学法学部教授/原田康也
◇英語が話せるようになるために必要なこと
−日本語教育の経験から小学校における英語教育法を考える−
岩崎言語教育プログラム開発代表/岩崎美紀子
第2部 実践編「コンピュータを活用した英語教育」(定員200名)
コーディネータ:早稲田大学商学部助教授/森田彰
◇小学校の部
総合的な学習の時間における国際理解と英語教育
玉川学園小学部(東京都)教諭/小川恵子
◇中学校の部
ネットワークを利用した英語教育への取組
桐蔭学園中学校(神奈川県)教諭/渡邉剛志
コンピュータを利用した英語教育への取組
富士見中学校(東京都)教諭/池上稔
◇高等学校の部
コンピュータとインターネットを活用した英作文
早稲田大学本庄高等学院教諭/高山正弘
使う・出会う・自信を得る −学校連携・国際連携の中で−
名古屋市立西陵商業高校(愛知県)教諭/影戸誠
◇大学の部
インターネットと英語
帝京科学大学理工学部(山梨県)助教授/山本涼一
英語によるプレゼンテーションとディスカッション
東京国際大学国際関係学部(埼玉県)助教授/渡辺浩行
本シンポジウムにおいては、1人の講演時間を発表15分・質疑応答5分、計20分予定していたが、先進的で様々な活動をしている発表者だけに「伝えたい」事項が多くスケジュールオーバーが続出した。そのため質疑応答に十分な時間が取れず、殆どの場合、講演者と参加者のディスカッションには発展しなかった。その様子は、参加者アンケートからも汲み取ることができ、是非MLで続きをという声が多数聞かれた。
本シンポジウムでは「英語教育の情報化に関心はあるが、周囲の環境等のため二の足を踏んでいる」ような教員から、先進的な活動をしている教員までを参加者ターゲットとしたため、ダイレクトメール&FAX受付を中心とした体制を取った。尚、小学校・中学校には直接DMを送付するのではなく、教育委員会宛にDMを発送し、各校の担当教員へ告知願うよう配慮した。
また、WebやMLによる参加者受付も同時に実施した。Webサイト(開催案内や登録フォーム)は株式会社内田洋行内に掲載し、早稲田大学のWebサイト上にも開催案内を掲載した。(登録フォームはリンクにてウチダのサイトへ)
受付開始後約1週間で、第1部については当初定員80名に達し、暫定措置として登録人数の拡大と会場増設(CATVによる同時中継)をすることとなった。これについては参加登録が早かったにも関わらず、本会場へ入場できなかった参加者から不満の声が聞かれた。
結果的には、定員を第1部200名、第2部250名に増員し、当日の参加者は関係者を除き377名が参加した。受付案内用の電話は事務局にて対応したが、その中でも一番多かった質問は「第2部は各校種毎に別々の会場で実施されるのか」というものであった。これは一般に実施されているシンポジウムやフォーラムがテーマ別の複数講演の開催という形式が定着しており、現状、小学校と高校というような教員同士の情報交換の機会が極めて少ないことを示す結果であるといえる。
当日の参加者の内訳は以下のとおり。
【公表フォーラム参加者人数】
●前々日までの申込人数 延べ | 442名 |
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●当日会場入りした実数 |
延べ377名 |
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●前日までのキャンセル数 |
5名 |
●参加をお断りした人数 |
3名 |
●資料送付希望 |
11名 |
本シンポジウムにおいては、開催時間および会場移動等の理由により協力企業の展示コーナーは設置しなかった。
開催時期: 対象が学校教員(小学校から大学までの各校種)であるため教員が参加しやすい日(土曜日午後および日曜日)を選ぶようにした。特に遠方からの参加者にはテーマ内容に熱心な教員が多く、出張扱いまたは休暇を取って参加された教員が多く見受けられた。参加申込および登録確認の送付については早めに処理し、開催内容や時間・場所等の変更についても随時案内する体制を提供できることが望まれる。
テーマ性: 学会でも同様であるだろうが、テーマがぼやけていれば人は集まらない。今回のシンポジウムでは「英語教育の情報化」という特化した内容であったため、実行委員会内でも、当初参加者が集まるのかという話題が出ていたが、やはり現場教員からの提案テーマだっただけに、申込者数の増加という面だけを取っても、反響は大きいものであったと言える。今後は徐々に専門性を高めることができるよう、同シンポジウムのタイトル通り、オンラインを活用した活動を推進することで、参加者そのもののリテラシー向上も図ることが可能であると考える。
会場: 今回は主催者と密接な関係がある場所を会場としたため、会場・設備の下見・リハーサル準備等に係る作業工数を抑えることが可能となった。しかし当初想定していた収容人数を遙かに越えた申込(第1部では予想の3倍、第2部では予想の2倍)により、CATVを利用した同時中継会場を2箇所追加設定するなど、会場設備のキャパシティを最大限に利用した実施となった。これは教育界の「教科教育の情報化」への高い関心を示しており、同実行委員会の予測以上に現場の意識が高まっていることを指している。また、開催曜日と講義実施の調整の結果、第1部と第2部で異なる会場を設定したため、来場者に負担を掛けることとなった。今後は十分な準備期間をもって、予測入場者数と不測の事態を想定し、会場の決定を行うことが重要である。
環境設定: 今回は第1部でCATVによる同時中継を実施したが、音声系統の設定ミスにより、第一講演者の声が聞き取りづらいという事態を招いた。準備に際し、そのリハーサルを十分に実施できなかったことに起因する今回のような設定ミスを防ぐことは、会場設営の基本であり、今後十二分に留意する必要がある。
本シンポジウムはできるだけ現場教育に近い参加者を重視したため、従来通りのダイレクトメールによる募集方法を中心に、Webとメーリングリストにて参加募集を実施した。その結果、およそ半数がFAXによる申込となり、申込登録と参加確認の発送に多くの時間が費やされ、申込者からの「本当に登録されているのだろうか」という問合せも数件見られた。今回得られた来場者リストにより、今後のイベント開催やML等の案内は、主催側にとってはとても効率の良いインターネットをいかにうまく活用するか、が成功の最大のポイントになるだろう。但し、これらのリストは今回開催されたイベントのみに対するオプトイン(承諾)であるため、利用に最新の注意を払う必要があることを付記しておく。
本シンポジウムの申込がFAXを中心に行われたこともあり、参加者属性等の管理は全てMicrosoft社のExcelにて実施した。またシンポジウム開催当日は、参加者受付にてリストチェックを実施しており、参加者アンケートにおいては研究会のML参加承諾(承諾する方はメールアドレスと氏名を記載する方式)を行った。それらの結果も上記データに反映されているため、今後はこのリストをデータベース化し、「英語教育の情報化」という分野に特化した研究会での有識者グループとして、実行委員会と共に今後の活動へ繋げていくことが必要である。
今回は、概ね現場教員が中心となったプライベートイベント的な色合いが濃かったが、次回からは、省庁の後援名義を取るということも考慮する必要がある。
尚、後援を得る為に必要な事項については、イベント開催前約3ヶ月を見込む必要があるので注意したい。申請にあたってはおよそ下記程度の資料を用意する必要はあるだろう。
今回は実行委員会を組織し、行政提供以外の資金を用意、各団体の協力の下シンポジウム実施となった。広報宣伝については、DM発送等は主に協力企業、またWebサイトによる案内発送やMLへの投稿等は主催者が実施した。会場費や準備設置等については主催者である早稲田大学からの全面的な協力を得ることができた。予稿集の作成やカタログの提供については各原稿を事務局にて収集の上、企業内のコピー機を活用する等し、準備を行った。当日の受付・案内・講演支援等についても企業側の人員を有志にて募り、外注などは一切利用せず実施することとなった。アンケート集計や本報告書作成については実行委員会事務局にて実施した。
シンポジウム開催にあたり、参加者の興味・関心が「英語教育の情報化」の中でもどのような内容・実践に向けられているものか、またシンポジウムそのものの進行等、今後のイベント開催に関する声を収集する目的で、参加者向けにアンケートを実施した。アンケートは講演実施前に会場にて直接参加者に配布し、終了時に出口回収を行う集合調査法にて実施した。集計結果等の詳細については別紙を参照いただきたい。また今後は、Webを利用したアンケート調査を実施することが必要であり、イベント内容の検討等に関する調査は開催前に、また今回のような内容に関するものは開催後に実施し、期間定常毎にその推移を分析することで、現場教員の意識変化や活動状況等を見る指標となるであろう。
開催内容の決定から実施日までの時間が非常にタイトであったため、事務局以外の方々との作業分担が上手く機能しなかった。また授業を実施している大学内での開催ということで、時間で区切られ会場を移動せざるを得なかったのは非常に残念であった。テーマが決定した段階で会場決定を行うことで、上記のようなミスは発生しないため、今後十分に注意する必要がある。
また講演者を多数募ったため、開催時間と発表したい内容にかなりのギャップがあった様である。せめて1講演者あたり質疑応答合わせて30分程度の発表時間を設ける必要があり、その方が参加者にも満足感を与える結果が得られるであろう。合わせて、各講演の休憩時間にも充分考慮されたプログラム内容にするために、会場下見の際に、休憩室(トイレ個数・喫煙場所等)等にも配慮する必要がある。
今回のイベントは「小学校から大学まで、英語教育の情報化における連携」を目的とした研究会の発足を狙ったものであり、今後平成13年度1月末を目処にメーリングリスト、また2月末までにWebサイトの構築を行い、今後の研究会のテーマを絞り、必要に応じて議論の続きをおこなったり、まとめたり、また次回のオフライン研究会(シンポジウムやフォーラム等)の実現を積極的に行っていく予定である。
また、このような後に続く研究会等の発足には、ML開設が必要不可欠であるが、その準備のために初期の登録者として、同シンポジウム参加者には開催当日に実施されたアンケートに登録アドレスの記入をお願いした。これはML参加の承諾であり、当日の承諾者は100名ほどであった。尚、別途ML開催案内については、同シンポジウム参加申し込書に記載されたメールアドレスおよび参加者が登録している別のMLへの投稿という形で、登録者を増やして行く予定である。
事務局という、いわば開催状況を客観視できる立場で会場を見渡すと、大変熱心に講演を聴きメモを取る現場教員の姿があちこちで見受けられた。アンケート結果等からもそれは明かであり、英語教育の情報化への興味・意欲は共に参加者の70%が「高い」と答えており、特に情報化への対応が目前に迫っていると考えられる30代・40代/高校・大学/男性教員からは大変熱心な感想が寄せられた。
しかしながら、本シンポジウムの申込・受付で未だ半数以上の教員が「インターネットによらない申込」を行っているという現状や「講演内容を役立てたい」という、どちらかと言えば受動的な参加意識が約70%を占めるという状況から推測するに、情報化への意識と行動は未だその溝が大きいと言わざるを得ないのではないだろうか。
「コンピュータを活用した英語教育」を本当の意味で推進していくためには、今回の参加者をオピニオンリーダーとして、まずは意識を行動へ変革させるその一助を担うべく、本実行委員会では今後ともサポートしていく責務を改めて感じている。
第一回シンポジウムの成功を糧に、サポートの第一歩として、MLでのフォローおよび次回シンポジウムの開催に向けての活動を開始し、着実に「コンピュータを活用」できる教員のネットワークを広げていきたいと感じている。