地域活動に関する実践研究の総括 |
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平成12年11月25日(土)12:15〜17:25 |
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前田教育会館(蕉門ホール) (三重県上野市大谷670番地) |
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教育ネットワークin 伊賀・2000 実行委員会 伊賀ケーブルネット普及推進研究会 |
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上野市教育委員会 財団法人コンピュータ教育開発センター |
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伊賀上野ケーブルテレビ株式会社 伊賀ケーブルネット普及推進研究会 株式会社内田洋行 教育産業株式会社 キヤノン販売株式会社 トーメンサイバービジネス株式会社 セコムラインズ株式会社 |
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伊賀地方の教職員、またその関係者 |
教育ネットワークin伊賀・2000実行委員会
伊賀ケーブルネット普及推進研究会
三重県上野地区における学校へのケーブルネットワーク接続と機器整備の機会に、地域に立脚した視点から、そのインフラメリットを生かしたインターネット利用の教育促進、それを基にした教育現場・地域・行政の三位一体となった教育ネットワーク(交流の輪)を作るきっかけとして、平成12年11月25日(土)三重県上野市前田教育会館(蕉門ホール)において「教育ネットワークin伊賀・2000」を開催した。
本報告書では、開催にあたりその背景・経緯、組織やイベント開催運営の手順を追い、今回開催運営によって得られたノウハウや留意点などについて報告する。
伊賀ケーブルネット普及推進研究会Laboratory for Iga Cable Telecommunication(LICAT)を母体として「伊賀ケーブルネット普及推進研究会教育ネットワークin伊賀・2000実行委員会」を組織し運営にあたった。
高速インターネット接続サービスや低料金電話サービスなど次世代のネットワークとして、ケーブルテレビインターネット(ケーブルネット)は大いに期待され始め、ケーブルネットは、いわば広域のLANでもあるという特性があり、伊賀地域のコミュニケーション手段を一変させる可能性をもつ。
といっても、ケーブル網そのものだけで地域が変わるわけではなく、この高性能情報基盤の活用手段の蓄積と普及が重要である。そのためにはネットワーク普及活動を通して人と人とのコミュニケーションの場を広げ、地域の人材を支援育成することが必須と考える。この考えに賛同する方を募り、人のネットワーク作りを実践する団体として設立した。
上記組織を母体として、会を開催するにあたり、伊賀ケーブルネット普及推進研究会教育ネットワークin伊賀・2000実行委員会を組織する。本会は、伊賀上野地区における学校のケーブルネット接続という恵まれたインフラのメリットを生かし、教育環境・市民・国内外交流の輪を広げ、明日の次世代を担う生徒児童やそれを支える教師、行政そして地元市民の深い理解を得るために実践発表と情報交換の場を提供することを目的とする会の開催を運営する。
上記運営委員会は伊賀ケーブルネット普及推進研究会の会員のうち、教育関係者によって構成され、委員会には委員長、副委員長、会計監事、会計監査の各1名の役員を置き実務は委員会の決定事項に従い伊賀ケーブルネット普及推進研究会事務局に委任する。
上記立案については基本案を前掲事務局で立案し委員会役員の合議・追認によって推進した。
教育関係の会の開催ゆえにその主催者構成に教育関係者が構成に加わることが必須であったが、開催趣旨と従来よりの母体組織(LICAT)活動が本大会の主旨に賛同しやすい活動目的にあったために、実行委員会組織と役員の決定はスムーズに遂行できた。
また、企画立案についても、LICAT設立当初より開催主旨・目的を含んだイベント実施の意向があり、今回の企画とタイミングが一致した。
上記のように、地元での企画開催の強い意向があったことが、企画・準備における遂行に大きく起因しているといえる。
上野市あるいは同周辺伊賀地区の学校では本格的なインフラが整備され、多くがこれから活用を始める環境である点を考慮して、インターネットの教育利用の可能性をアピールする内容とした。細かくは、下記のような構成とした。
今回は他地域等であまた開催されているこの種のイベントの構成と表面上は同じようなプログラムであるが、それぞれの発表の主旨を性格付けて全体を構成した。
すなわち、上記のように、a)最先端の技術的環境でのリアルタイム海外交流という「夢の実現」のステージ、b)具体的な先進地域事例での「今後の方向性」のステージ、c)地元での実践例を紹介することによる「実践着手への障壁意識の低減」ステージ、d)パネルディスカッションによる先進他地域の「広汎なサポート協力」と小学校・中学校を代表した先生による今後の実践活動の「ビジョンと方向性の表明」ステージという機能付けと段階を考慮した。
具体的なタイムスケジュールの決定において、約半日の設定としたので一見プログラムの内容を盛り込み過ぎの傾向があるようにもとらえられるが、今後地域の活動を起動して活性化していくと言う命題を最優先させて一連の実践ステージの進化モデルを提示し、また先進他地域の支援も得られることを明確化させる意義を重視した。
【留意点】
基調講演や他地域先進事例は今までCEC等で発表され全国的にその実践活動が注目されている方でまた、地域の活動支援に賛同・協力していただける先生をえらんだ。単に1回のイベントのためだけでなく今後地域(地元)で先生方が活動されていく上で地域を越えた人脈(人と人のリンク)が重要になるという考えがあった。
一方、地元上野市では既にインターネットの教育利用で実践を重ねられている先生がおられ実践発表もされているが、伊賀地区のこのような学校・行政・一般を対象としたオープンな発表の機会として今までの実践の集大成という意味での講師依頼をした。幸いにも地元講師は同実行委員会の役員メンバーであったので選定は問題なかった。ただ先進地域例の発表だけでは他山の石のごとく当事者意識が薄れるのとまた、地元実践を認知、周知してもらう目的があった。
また、幅広い講師選定でインフラ協力のCATV会社より紹介の地域イントラネットを実践している講師もお招きできた。
このように、地域の立ち上がりとしてのイベントの性格に立脚し、他地域(全国)先進事例、地元先進事例とバランス自体はよかった。また、新しい試みとしてこれから実践を始める小・中の先生の代表をメンバーとし既出講師を交えたパネルディスカッションの構成をした。
講師の先生方には事前に設置しこの大会のメーリングリストに参加してもらい発表の内容等を相談しながら準備していただいたことで、講師の先生方がそれぞれどうゆう主題であるいはどうゆう立場で発表されるかが事前に明確になっていた。
【留意点】
会場選択といっても幅広く選ぶ候補がある状況ではないので、市のホールと今回実施した財団所有ホールの2箇所が当初より候補にあがった。市のホールは施設料も安いとのことだったが、収容人員が1000人程度の大きな会場であり、初回の開催としては大きすぎる感があり、200人収容の今回の会場を最終選択した。
他地域は通常、そのイベントの性格上、インターネット回線の設備、プロジェクターのPC接続等のプレゼンテーション設備の要件が会場選択の大きな要因となるであろうが、今回イベントでは主催委員会の上部LICATのメンバーにCATV会社や映像機器会社が参加しているので、このかたがたの協力でインターネット接続とプレゼンテーションインフラは希望するように準備できたのは非常によかった。惜しむらくは、会館専任の舞台設備会社にPA関係や照明関係、舞台レイアウト等をまかせたが、このようなインターネット+PCを利用した発表の舞台準備の経験値が低いので運用の際にいろいろと説明をしたり、従来と違う段取りを了承してもらったり余分な手間と時間を取った感がある。
もし、次回があるとすれば基本的インフラが自前で設備できる限りはすべて実行委員会サイドで多少時間と人手をかけても思い通りにストレスなく実施できるのではと感じる。この件は、多少他地域の実施状況とは異なるのか。
【留意点】
前項にもあるように、インターネット回線についてはCATV仮設回線の設置、発表用機器については3000ルーメン程度の高輝度プロジェクターを3台用意(1台は予備)し発表提示用とインターネット接続提示用のマルチスクリーン運用にした。また、発表用PCは原則発表者持込とした。
さらに、後半のパネルディスカッションにおいて小型CCDカメラを用意し前面スクリーンに発表者の大写し画面を投影し会場にわかりやすいような工夫をした。本格的設備のそろった大会議場等ではよく見かける環境であるが小型CCDカメラやビデオカメラを併用すれば会場設備によらず工夫次第で演出可能な運用設備である。ただし、これに見合うプロジェクターの複数化、当然CCDカメラ複数、そしてこれらをつなぐ長距離RGBケーブル複数とコントロールできるRGB切替器が必要で、言うまでもなく設置できるノウハウとオペレーションできるマンパワーは必須である。本大会ではこれも幸いにもAV機器会社が委員会上部LICATの構成メンバーでありまた協力会社であったので実現できた。
【留意点】
発表用機器はPCでの発表を前提に液晶プロジェクター投影という標準的構成をベースにこの大会の特性であるCATVインフラを生かして、専用臨時インターネット用ケーブルネット、パネルディスカション時の発表者投影等の分割2スクリーン、2プロジェクターなど企業協力のメリットを出した会場演出をした。
今回は実行委員会上部組織のLICATの構成企業より費用の拠出をいただいたので、自主的な単独研究会とちがって、良く主旨を理解していただいているところなので額に係わらず理解いただけた。費用の大きな支出の構成は会場費(PAを含む費用)が占めているが、前掲のように効果的な会場運営をしようとすればある程度の設備費は当然かかるのが前提と考えると、このような協力してもらいやすい企業を協賛なりの形で実行委員会等の主催該当組織にあらかじめ関与してもらっておくことが、特に予算の源泉の少ない地方では重要でないだろうか。
これは、単に費用だけでなく、費用換算すれば侮れない人的援助をも協力してもらえる可能性もある。
【留意点】
何らかの商売上のメリットがないと企業は協力しにくいと言うニュアンスの内容は過去の実施報告書に散見されるが当然の事実であろう。ただし、協力対象の企業は必ずしもそこで物販等をして商売するわけではない。多少なりとも教育分野に係わっており、またこの分野を視野にいれる戦略を模索している企業は多いはずである。
本大会は何度も話しているように、その主旨をCATV会社やAV機器・PCシステム販売会社が地域で密着して日ごろより支援活動をしている。
一方で特に企業協力はなくても会は開催できるだろうが、前出した会場運営等の実例を見ても協力のあったほうがより充実した運営ができるのが事実であるし、また主体となる研究会・委員会のメンバー(多くは先生で当日講師も兼ねる)の余分な負担を軽減できるのも事実である。
企業に対しては日ごろから活動の主旨を理解し、いざイベント開催となると協力(人的協力も含めて)してもらえる素地作りは必要である。また、ただ物販のみに興味があるのか、あるいは戦略として興味があるのか等の企業の対応姿勢をも日ごろから判断して選択する必要もある。
【留意点】
本件に関しては、本大会はその管掌である上野市教育委員会が主旨に賛同していただき、後援ではなく共催に、と事態は発展した。当然、地域のインターネット等を使った学校教育に対して委員会の日ごろより意識の高さに大きく起因しているが、後援依頼等に係わらず、本大会の構想段階から積極的に後の委員会メンバーや事務局を中心に会の構想を伝えコンセンサスを得ていたことも忘れてはならない。
上記の事情により共催手続き等は何の支障もなく遂行され、さらに予稿集巻頭の挨拶を始め当日の大会も教育長に寄稿・開催あいさつをいただける段取りへと発展した。
地域によって色々と状況は異なるだろうが、前項の企業協力を含めて、開催の決定から動くのではなく、なにかイベントを企画する際に誰がキーマンとなるかを把握し日ごろよりコンタクトをし「人のリンク」を維持しておくことが、あるいは活動の主旨を知らしめておくことがスムーズな依頼等につながるであろう。
【留意点】
本会においては、CATVのスポットと上部LICATのホームページに大会を告知し募集した。また、教育委員会が共催になった関係で各学校には教育委員会より案内告知をしてもらうルートが確保できた。地元の単独でははじめての開催例であるので、あまり手を広げて手当たり次第のDM等の勧誘はせず、市民加入者も多く視聴率の高いCATVのスポットを利用したという経緯である。
【留意点】
今回の大会は同地域で開催されるこの種類の性格の大会としては初めての試みであり、その位置付けから本番終了後の情報交換会も活動全体からみれば非常に重要な催しものとなった。今回は、大会会場から場を移して市内ホテルで軽食を囲み、講師の先生方、事務局関係者、参加者の内の希望者、という構成で40名程度の参加であった。
講師や大会関係者の情報交換と慰労を表向きとしたが、実際は講師の大会のコメントや参加者の感想・コメント等を進行に盛り込み、まだ大会の熱気が覚めやらぬうちに振り返りができたのは良かった。同時に今後の活動の決意や方向性の表明もでき次に繋がる、あるいは継続発展できる雰囲気を大会関係者に与えたことは有意義であった。
また、会場では進行上深く出来なかった講師への質問や参加者の相互紹介など人とのリンク作り(人脈作り)の場として今後の活動に生かせる場の提供ができた。
【留意点】
本大会の課題点については、当然このような地元大会開催は事務局にとってあるいは地元にとって未経験のことであり、スタッフの構成メンバーも本大会のようなイベントを運営するのはまったくの初体験であり経験則がまったくなかったということを前提として検証したい。
前日準備は動員人員が限られ一人当たりの負荷が大きかった。
発表者の熱意かタイムスケジュールどおりに行かず、最終が押した。
→ | これらの多くは経験不足からくるもので、また初回と言う意味もあり準備運営の人員はどうしても事務局中心のかぎられたメンバーにならざるを得なかった。会の運営を経験することによって実施の流れとポイントを体得できるであろう。 |
→ | また今回の実行委員会は初回であるのでその運営事務局メンバーの構成人員が限られていたが、今後その上部団体とともに日常活動の中からイベント実施の際のメンバー構成要素(人員)の増大を図っていく必要がある。 |
当日動員が予想より少なかった。
→ | 地元教育関係者中心という中で、その動員を教育委員会よりの各学校への案内に負うところが大きかったがこの動員予想がはずれた。ただし、実行委員会側としてのこの結果の危機感は強く、教育委員会とも今後より一層こういう実践発表活動などを通して地域に深く浸透する教育活用活性を図る決意がますます強くなったようで、ある意味で次に繋がる緊張感を維持でき、「来年は」と言う言葉が情報交換会でも出てくる雰囲気になったということは、ある意味で大きなインパクトを与えた。 |
→ | その上で今後の動員方法も動員ターゲットの明確化とその動員手法、あるいは事前広報活動の範囲等は開催企画時に明確にスケジュール化しておく必要がある。 |
参加者の意見収集について
→ | 開催当日、参加者に対してアンケート用紙を配布し、実施後はWebでの公開を予定していたが、参加者が少なかったこともあり、ほとんど回収できなかった。これは主催者側スタッフのイベント運営に対する経験がなかった為の不慣れから、開催進行に傾注し過ぎて、アンケートの事後の回収がおろそかになった。運営に関わるスタッフの人員配分を含めて今後の課題とすべきであろう。ただし前述通り、開催後の一般参加を含めた情報交換会においては、こういう学校、地域が共同した開催の意義の評価と、これをきっかけに情報化をキーワードにした教育に地域各分野の参加者が積極的に今後も人的ネットワークを含めて恒常的な活動を目指していく意見・意向が感想・所信として発表されたのは開催の感想としてのひとつの成果と考えて良いのではないだろうか。 |
当初の予測はインターネットの教育利用について地元の各学校にこれから設備されるシステムを通じて幅広い実践活動のスタートを喚起するものであった。当然その効果もあるが、むしろ教育委員会が共催に加わりそのインフラ提供の役だけで終わることなく、実践の支援も視野にいれて今後の積極的な教育利用に、先進実践のキーマンの先生と共にイニシアチブをとるという方向に動いたことは特筆すべきであろう。
生徒・児童を中心においてそれを支える学校、教育委員会(行政)、地域(研究会)が三位一体となってこの大会で動いたという事例はおそらくはこの上野が初めてであろうし、この三者を一体にむすびつける効果は大きい。
また、図らずもまだ余裕のある予稿集を事後の教育委員会主催研修会の資料として利用するなど継続活動のベースになり得た。
事後そのままに事務局MLを活用して教員IT講習会の連絡等、本大会開催において準備したシステムが有効に日常活動に反映できている。
「伊賀2000」から「伊賀2001」へという流れがはやくも情報交換会からちらほら聞かれた。実際に実施するかどうかは別にして本大会のように地元(地域)で人が集まり繋がっていくことが教育環境を向上させ実践活動を活性化させることに大きな意義がある。このように実感してもらったこと、燃えてもらったこと、それが「2001」と言う言葉に表れたと解釈した。また、本大会は開催自体の意義から、むしろそれがきっかけあるいは引き金となって、明日の時代をになう生徒・児童を中心にそれを支える教師、行政、地域の三者が一体となって新たに得た情報インフラを利用して教育的活用に基づいた地域活性へと集約させる役割を新たに付加し、今後の継続発展・活動への道を開いたと言えるだろう。