地域活動に関する実践研究の総括


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4.7 大阪府:「いよいよオープン」研修会

    • 日時:


    平成12年10月14日(土)13:30〜17:00
    平成12年11月18日(土)14:00〜17:00
    平成12年12月16日(土)13:30〜17:00
    • 会場:


    第1回 大阪府立茨木養護学校
    第2回 大阪府立吹田養護学校
    第3回 大阪府立盲学校
    • 主催:
    大阪養護教育コンピュータ研究会
    • 共催:
    財団法人コンピュータ教育開発センター
    • 協賛:
    養護学校情報教育推進プロジェクト(OPEN)
    • 協力:

    富士通株式会社
    株式会社内田洋行
    • 対象:
    大阪府下、周辺地区の全障害児学校

「いよいよOPEN」研修会 開催報告書

大阪養護教育コンピュータ研究会ネットワーク研究部会
大阪府立盲学校 中島康明

1.研究会の趣旨・目的等

      1.1 目的

         本研究会の目的は、大阪地域の障害児教育におけるネットワーク等の活用を促進することである。

         そのために今秋から始まったNPOプロップステーションと教育委員会の共同事業である、養護教育諸学校のネットワーク整備事業「OPEN」の立ち上げにあわせて、連続の研究会を開催することにした。

      1.2 「OPEN」というプロジェクト

         「OPEN」は府下の全ての養護教育諸学校にインターネット常時接続、複数の端末、教育用ソフトウェアが一斉に整備されるおよそ2年あまりのプロジェクトである。ネットワーク基盤を生かして子どもたちが交流し自立にむけた取り組みが期待されている。大阪地域の養護教育諸学校では、これまで府立、市立、衛星市立それぞれの教育委員会ごとに独自のネットワーク整備がされてきた。

         ネットワーク基盤の整備が比較的遅いだけでなく、コンピュータの整備、教員のリテラシーアップについても従来各学校の努力に期待する面が強かった。端的に言って「やりたい人が好きでやっている」のが情報教育、教育の情報化であり、ネットワークの活用もごく一部の限られた範囲でしか取り組まれていない。つまり先進的な取り組みと成果を上げている学校がある一方で、ネットワーク整備が始まったばかりや、専門的知識や指導経験のある教員が不足しているためほとんど活用されていない学校も少なくない。

         しかしながら、「OPEN」によりこれからは全ての学校・教室がネットワークで結ばれ、子どもたちは学びの道具としてコンピュータを使い、教員もよりよい指導のためにネット等を活用する時代になる。

         そのときまず問題になるのが教員のレベルアップである。ものは予算が付けば揃うが、使う人の育成には時間も手間もかかる。

         「OPEN」により共通のハード、ソフトとネットワーク接続により、実践の準備の半分は整ったといえる。今後もIT関連の予算によりハード面の整備は進むと思われる。しかしあと半分の要素である「人」の問題が残っている。

         養護教育諸学校におけるネットワークの活用については、一般校における知識・技能などはもちろん必要である。

         それに加えて、個々の子どもにあった環境づくりのノウハウやプライバシー保護など一般校よりも専門的な知識、取り組みが必要となる。

      1.3 今回の取り組み

         今回の取り組みとして、その教員のレベルアップのまず第一歩となるよう、各学校においてネット活用の中心となれる知識、技能を身につけるための研修等を行い、各学校の「情報リーダ」として育成することを考えた。

         大阪養護教育コンピュータ研究会は、大阪府下における障害児教育にコンピュータ等を活用するための研究会として平成元年から10年以上にわたり活動している任意団体である。

         ネットワーク活用についても実践の交流や「大阪障害者マップ」作成プロジェクトなど実践的な取り組みを続けてきた。

         しかし任意団体であることからせっかくのノウハウや成果が全ての学校で共有されにくかったり、これから始めようという「初心者」にとっては内容が高度すぎたりといった問題点があった。

         また、校内LANの設置やテレビ会議といった「お金のかかる」取り組みでは「ものがないから」と初めからあきらめる学校が多く、そのためにネット活用が進まないという悪循環も存在していた。

         そこで「OPEN」の整備にあわせて、大阪養護教育コンピュータ研究会のこれまでに蓄積されたノウハウを生かし、短期間に集中した連続の研究会を開催することによって各学校に「情報リーダ」を育成すべく、研修プログラムを行うこととした。

         この研修プログラムを推進するプロジェクトの名前を「いよいよOPEN」と名付け、月1回で3ヶ月間(計3回)開催することとした。

        (「いよいよ」とは「iyo2 」Internet,Yougogakkou,Osaka 2nd Stage という意味で1st Stage とは各市や学校ごとに立ち上がってきた時期。2nd Stageでは「OPEN」をきっかけとし、基盤としてお互いに協力し協働していくことをあらわしている)

        第1回 10/14(土)
        全体説明と技術講習会

        • OPENの活用及び校内LANの組み方についての講習(LAN接続、プリンター共有、イントラネットサーバーの導入やLANケーブルの敷設)

        第2回 11/18(土)
        技術講習会と討議

        • テレビ会議実習
        • セキュリティ、ポリシ−に関する話題

        第3回 12/16(土)
        実践事例の紹介、授業にて

        • 「踊るコラボ」(メディアキッズの活動)
        • OPENネットワークを使ったTV会議

2.主催組織の概要

      2.1 主催組織の結成・その運営

         大阪養護教育コンピュータ研究会の幹事のなかから有志によりネットワーク研究部会を組織した。

         主にメールによる報告、連絡、相談と会議による集中討議、決定による運営をおこなった。幹事メーリングリストを立ち上げ(9/29に草案の投稿から始まり12/25時点でメールの延べ数は約250通あまり)、その他にも大阪養護教育コンピュータ研究会メーリングリスト、OPENスタッフメーリングリスト等への情報提供も行った。

         企画立案から実施(第1回)まで2週間ほどしかなく、開催組織の立ち上げ、計画の作成、関係団体等との折衝などに十分な時間がとれなかった。また毎月1回のペースは受講者には好評であったが、主催者側への負担はかなり大きいものであった。

         研修会の位置付けとして、会の趣旨から言えば、各学校の情報リーダは本来学校長の推薦により出張で参加する事が望ましいと考えたが、各教育委員会、それぞれの学校の事情もあり、また研究会も任意団体であることから、参加は任意とした。

         教育委員会の後援依頼も行わなかった。しかしこのことは研究会の「かたさ」をなくすという効果もあった。

3.研修会について

      3.1 プログラムについて

         平日に設定できなかったため、学校のある土曜日の午後や休日に設定をして研修会を行った。

         一方的に知識を受け取るだけの受動的な研修会ではなく、参加者それぞれがもっているもの(情報)を提供しあったり、悩みを解決するためのアドバイスをもらえるよう自己紹介をしたり、その他質疑応答の時間を多めにとったり、と参加型の研修会にすべく、配慮してプログラムを組み立てた。

         具体的な内容としては、飛び抜けて先進的な事例よりも誰にでもできそうな自分もやってみたくなるような事例の紹介を多く取り入れた。

         一方で、予定していた講演者とのスケジュール調整がうまくいかないことが多く、最終的には幹事が講師を務めるケースが多くなった。

         また養護教育・障害児教育対応のハードウェアやソフトウェアの紹介等もプログラムに取り入れようと検討を行ったが、結局準備時間が間に合わず実施できなかったのは残念である。

         プログラム組み立てにおいての検討材料として、毎回のアンケート実施、その他ビデオ・写真等の撮影を行った。それらをもとに次のプログラムを検討・反映させていった。

         配布資料としては、レジュメ、各種イベントの案内、技術資料、事例集等、なるべく多く準備するよう努めたが、その中でCECからもネットワーク活用の関係資料を各種ご提供いただいたが、大変役に立った。

      3.2 会場・研修会環境等について

         幹事の勤務する学校の中から、ネットワーク、ハードウェア・ソフトウェアなどが比較的潤沢にそろっている学校を会場として選定した。しかし今回は、十分な打ち合わせと準備が行えずに予定していた学校で実施できないこともあった。

         今回の研修会には、車椅子での参加者が毎回おられた。開催会場が養護学校と言うことで、施設内での移動等はあまり問題にならなかったが、開催会場までの交通手段については配慮が必要な場合もあった。

         また研修環境としては、各学校に配備されている「OPEN」の端末を利用したが、インストールして安定して使用できるテレビ会議のためのカメラがないことが判明したので急遽「カメラの評価」を実施せざるを得なくなった。

         上記のようにプログラム、会場、環境など研修会運営については、予算面も含めてそれぞれ臨機応変に対処せざるを得ないケースは多いだろう。

      3.3 後援依頼、集客等

         今回の研修会を開催するにあたり、後援名義取得に対して教育委員会の担当者とは非公式に協議を行った。最終的には、今回の研修会については、後援名義取得は見合わせる結果となった。それでも、研究会の趣旨、成果については今後のプロジェクトや施策に引き継いでいけるようにしたい、と考えている。具体的には、今後の教育センターでの研修等へ発展的に継続していけるのではないだろうか。

         参加募集については、個別メールの発信や、ホームページ上での案内掲載、学校向け案内文書作成・配布などを行った。

4.評価・課題等

       開催準備のため既存の研究会から幹事を募る形になったが、主催者として参加しない幹事にもML等での情報共有を続けた。途中から幹事以外のメンバーが主催者として参加してくれた。研究会にとっても新しい活力を取り入れる良い機会となったと言える。

       参加者の反応はおおむね良好だったが、参加者数、今後各学校で何をどうやっていくかなどまだまだ課題は多い。

       メーリングリストでの情報交換は初心者には難しく、直接会って話のできる機会は多い程良いが、比例して開催者の負担も大きくなっていく。月一回の会合を続けていくために幹事は月2回の会議と毎日のメールにつきあわなくてはならない。

       今後は初心者から中級者が自分のリテラシーを高める手段としてこのような企画に参加していくモデルが有効であろう。



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