地域活動に関する実践研究の総括


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4.8 和歌山県: 「ここからはじまるeネットinわかやま」フォーラム
           −学校教育と情報化フォーラム−

    • 日時:
    平成12年12月3日(日)9:50〜16:00
    • 会場:

    和歌山マリーナシティ わかやま館
    (和歌山県和歌山市)
    • 主催:

    和歌山県情報化推進協議会教育文化情報部会
    「ここからはじまるeネットinわかやま」実行委員会
    • 共催:
    財団法人コンピュータ教育開発センター
    • 後援:
    和歌山県教育委員会
    • 協力団体:


    和歌山スクールネット研究会
    和歌山障害児とコンピュータ・ネットワーク利用研究会
    ネットデイ2001和歌山実行委員会
    • 協力企業:








    株式会社内田洋行
    株式会社アライドテレシス
    株式会社シースターリンク大阪営業所
    株式会社日立京葉エンジニアリング
    株式会社日本IBM
    日本文教出版株式会社
    旺文社デジタルインスティテュート
    株式会社ジェプロ
    株式会社図書館流通センター ( TRCD )
  1. 対象:
  2. 教育関係者、教育現場を支える方々

「ここからはじまるeネットinわかやま」フォーラム開催報告書
―ヒューマンネットワークが支える学校・教育の情報化―

「ここからはじまるeネットinわかやま」実行委員会
実行委員長 栗本 恵司
和歌山県立海南高等学校
kurimoto@nnc.or.jp

1.はじめに

       平成12年12月3日(日)和歌山市にあるリゾート施設マリーナシティに於いて、県内では最大の情報教育イベントとなるフォーラムが開催された。記念講演、小・中・特殊に加えて校内情報化の4分科会に県内外から161名(うちスタッフは30名)が集まった。このフォーラムは、県内各地域で精力的に活動していた教員が中心となり実行委員会方式で運営され、(財)コンピュータ教育開発センター(CEC)の支援を受けた。本稿では、フォーラム開催に至る経緯・組織・準備内容及び実施内容等について報告する。

      なお、本実行委員会のWebサイトは、http://start.at/kokokara である。

2.組織

       和歌山では、これまで教育の情報化やインターネットの教育利用に関する研究会等は教育委員会などの公的機関がその所管する学校や教員に対して実施されるものが大半で、対象となる校種も限られていた。今回、下記の研究会・ネットデイ活動等を行っていた者が大同団結してスタッフとなり実行委員会を組織した。

      ○和歌山県情報化推進協議会教育文化情報部会(公的団体)

        和歌山県内の産学官が組織する協議会の中の1つの部会。今回の実行委員会の代表である和歌山大教育学部野中助教授が部会長となり、情報教育全般に関わり活動している。

      ○和歌山スクールネット研究会(任意団体)

        インターネットの教育利用に関わる事柄の中で、現在は特にコンピュータやネットワーク環境構築に関する分野について、メーリングリストを中心に活動を進めている。会員は教員を主に約130名。

      ○和歌山障害児とコンピュータ・ネットワーク利用研究会(任意団体)

        特殊教育諸学校に勤務する教員を中心に、コンピュータやインターネットが障害を克服する道具となりうるよう研究活動を進めている。会員は約30名。

      ○ネットデイ2001和歌山実行委員会(任意団体)

        小中学校でのネットワーク環境構築を支援するためのボランティア団体。1998年から県内各地で年数回のネットデイを実施している。会員は約100名。

3.開催までの経緯

       平成12年9月、栗本(実行委員長)は上記団体メンバー数名に働きかけ事務局を立ち上げた。9月9日第1回実行委員会は5名でスタート、11日にはメーリングリストを立ち上げ、以後12月3日当日までの約3ケ月間に490通のメールが飛び交った。実行委員会は合わせて6回開き、スタッフは最終的に約30名となった。9月29日フォーラム名を「ここからはじまるeネットinわかやま」と決め、同名の実行委員会形式で行くことが決まった。Webサイト http://start.at/kokokara もこの頃公開した。フォーラムは当初、和歌山スクールネット研究会主催で開くことになっていたが、教育委員会後援名義取得が困難であることがわかり、和歌山県情報化推進協議会教育文化情報部会とともに主催することとした。4つの分科会それぞれにカンパニー制を取り入れ、分科会の準備は各カンパニーの責任者に任せる方式を取り入れた。さらに全体の事務局用メーリングリストとは別に小学校と特殊教育スタッフ専用のメーリングリストも立ち上げた。

4.会場の確保・環境設定

       参加者の便を考えて、大きな無料駐車場のある会場を確保した。JR・バス・タクシーなどの交通アクセスもあり、また隣接するホテルは遠方からの宿泊や懇親会に利用できた。会場となった「わかやま館」の3階をほぼ借り切っての開催となったが、小雨にもかかわらず、予想をはるかに上回る160名もの参加を得、一部立ち見の分科会もでた。遠方の方でも場所がわかりやすく、無料の駐車場があること、メーリングリストによる参加者へのPRが功を奏したようだ。

       会場には、ISDN回線を引き、ルータとハブを使って自前でLAN工事を行った。さらに協賛企業等から無線LANの提供を受けることができ、結局すべての部屋で有線・無線によるインターネット環境が整った。

       今回会場の広さの関係で、協賛企業の製品展示は行わず、予稿集広告掲載及びパンフレット配布にとどめた。

5.行政等の後援名義

       和歌山県は南北に長く、移動に時間がかかる地域が多い。参加者教員の負担を軽くするためには、出張扱いでの参加が望まれる。実行委員会では、当初和歌山スクールネット研究会主催で開くことになっていたが、実績のない任意団体単独では、教育委員会後援名義取得が困難であることがわかった。そこで行政に知名度があり、またスタッフの多くが以前から深く関わっていた和歌山県情報化推進協議会教育文化情報部会の力を借りて一緒に主催することになった。県教育委員会後援名義取得には約2ケ月を要したが、本来はもっと事前に話を持ちかけておくべきであった。

6.予稿集

       今回のフォーラム開催にあたって、予稿集を編集、発行した。この予稿集は、発表者等から電子メールで原稿を集め、編集係が校正を行った。協賛企業の広告のページを入れて約100ページとなった。当初、印刷作業までスタッフで行う予定であったが、素人集団のためレーザープリンタによる両面印刷に失敗し、やむなく印刷と製本を業者に発注した。この結果、予稿集の売り上げの大半が、消えてしまった。

7.案内・参加者募集の方法

      ○全国と地域のメーリングリストに案内と募集方法を送信

      ○CECのEスクエア・プロジェクトのページに案内を掲載

      ○Webサイト http://start.at/kokokara に案内と募集方法を掲載

       Webから直接申し込むフォーム、電子メール用フォーム、FAX用フォームの3種類を用意した。

      ○A4版チラシを作成し、各カンパニーが考えられるすべての方法で学校や教員あてに配布した。例:県立学校長あて郵送、地方教育委員会を通じて学校に配布を依頼、協賛企業の社員が配布に協力、知人を通じて配布依頼。

      ○地方新聞に掲載

       結果、Webからの申込みは100通を越えた。これはメーリングリストの効果だと考えられる。電子メールを利用していない人の参加を得ようと思うならば、地方新聞や大手新聞の地方版が有効と思われる。学校へ配布したチラシは、特定の教員にだけ届くことが多い。

8.参加者の管理

       参加希望者のほとんどは電子メールアドレスを持っていた。参加者専用のメーリングリストを立ち上げ、会場までの案内や参加状況、会場のLAN環境など、参加者にとって有用な情報を当日までの1ケ月間に計8回流した。またフォーラム終了後は、和歌山スクールネット研究会のメーリングリストとして存続させ、情報交換などに利用していく旨のアナウンスを予め行っておいたため、次回研究会の案内なども容易である。退会者はほとんどなく、登録者の方は少しずつ増えて、平成13年1月末現在で約130名となり、和歌山で最大の教育関係メーリングリストに成長した。

9.参加者の詳細

      総参加者 161名 (実人数、スタッフを含む実人数)
        特殊教育(午前) 46名 29% (総参加者に対する百分率)
        特殊教育(午後) 39名 24%  
        小学校(午前) 34名 21%  
        中学校(午後) 31名 19%  
        校内LAN(午前) 58名 36%  
        図書館(午後) 42名 26%  

      参加者の職業
           
        教員 115名 71%  
         (内訳 小学27 中学21 高校28 特殊30 大学5 高専1 専修3)
        学生 19名 12%  
        一般 22名 14%  
        行政 5名 3%  

10.参加者アンケート

       フォーラム終了後、メーリングリスト登録者にお願いし、39名の方から回答を得た。

      回答から、参加者にとって今回のフォーラムは充分満足のいくものだった。参加者の関心の多くがネットワーク関係であることは、校内情報化分科会が最も盛況であったことからもうかがえるが、学校のネットワーク環境の整備が遅れているのが原因かも知れない。

11.フォーラム開催における問題点と解決方法

       開催決定から当日までの時間が3ヶ月と短く、非常に厳しいものがあった。スタッフにとってこのような大規模なイベントは初めての経験であり、各カンパニー責任者は非常に苦労したと思う。スタッフ専用メーリングリストは大いに利用されたが、一定の決まり事は、スタッフ専用掲示板をWeb上に作成するなど情報共有化の工夫が必要である。

       前日の会場設営時間がタイトであった。これは、会場貸出時間が午前9時から午後5時という規則が原因であった。このため、機器調整の時間が取れず、開会式までずれ込んでしまった。今後、この会場を使用する場合は、前日の早い時間帯から機器調整を最優先しておくべきである。

12.おわりに

       フォーラムの目的は、これまで、各校種・各地域ごとに草の根的に取り組んで来た先生方のインターネットの教育利用や先進的な実践についての報告、大学との共同研究の取り組みを紹介するとともに、先生方の交流と情報交換の場を提供すること、短く言うと「ヒューマンネットワークの構築」であった。まさに「ここからはじまる」というネーミングの通り、多くの方が集まり、人の輪をさらに大きく出来たことは、感慨に耐えない。

      その中でも、特殊教育の分科会が置かれたことは特筆されるべきである。スタッフ30名の半分が彼ら特殊教育諸学校の若い先生方であった。障害を持つこども達にとってコンピュータやインターネットの教育利用がいかに有効で、また障害を克服できる可能性を秘めている事を肌で感じていた先生方であった。このフォーラムを通じてそう感じた方は少なくないだろう。今後、和歌山の研究会に「特殊」の分科会がないということは考えられないし、普通にあってしかるべきだと思う。そして、後に「あのフォーラムが和歌山でのビッグバンであった」と言われるのは間違いないだろう。

      次回フォーラムの開催に向けて、構築したヒューマンネットワークをさらに広めていくためにも、今回のフォーラムの成果を基にメーリングリストをベースにした全体での意見交換を積み上げていきたいと考えている。また合わせて、特殊を始めとしたそれぞれの分科会ごとのネットワークも強化していき相互での波及効果を期待していきたい。

      最後に、フォーラム開催にあたってご指導・ご助言頂いた各機関・各協賛企業の皆様方に深くお礼を申し上げたい。



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