「酸性雨/窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」
実践マニュアル


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2. 幹事校のマニュアル

2.1 幹事校として活動するために

     広域的な協働学習の中心的な存在である幹事校には、次のような役割がある。

    (1) 活動内容の企画・立案

       幹事校はプロジェクトの活動内容や推進体制について、かなり早い段階から、大学の指導教官やCEC等と連携を図り、細かい実施計画を立てておく必要がある。新しい試みに学校が対応出来るのは、主として1学期と2学期であるため、活動のスタートが遅くなると、実質的な活動が出来なくなるためである。

       加えて幹事校には、プロジェクトの内容と将来に向かっての展望を、しっかり把握しておくことが求められる。

    (2) 参加校への支援

       いくつもの校種にまたがる、多くの学校が参加するこの様なプロジェクトでは、活動を行う過程で多くの問題が発生する。問題が発生したときの支援体制を幹事校を中心に作ることは、非常に大切なことである。この場合幹事校の負担軽減のためと、地域での協力体制確保のため、地域ごとのサブ幹事校のよる支援体制の確立も有効な手段である。しかし「酸性雨/窒素酸化物調査プロジェクト」のような広域的なプロジェクトは、ネットワーク利用による、一元的な管理体制によって可能になっていることも、このプロジェクトの特性として見逃してはいけない。

    (3) 蓄積されたデータの分析

       データは蓄積しただけでは学校における教育活動に活用出来ない。プロジェクトを専門的な立場から支援していただける、大学や企業のバックアップのもとに、学校で利用出来る形のものを、Webに公開していく必要がある。幹事校は大学や企業等との連携を深め、迅速な対応をしていただくための、協力体制を作らなければならない。

    (4) サーバーの管理

       データを蓄積したり、Webを運営するためのサーバの管理は、非常に重要な仕事である。

       幹事校となって、この様な役割を果たすためには、次の点に留意しておかねばならない。

      1) 学校の管理者や教育委員会に、プロジェクトの内容や幹事校の業務内容を説明し、理解していただいた上で、活動を始めること。

         特にこのプロジェクトのように、参加校が全国にまたがる場合は、学校が設置されている行政の範囲を越えてしまうため、内容によっては問題となる場合がある。特にサーバーの管理については、責任が大きいだけに十分理解してもらう必要がある。

      2) 担当する教師の負担が大きいため、次の2点について配慮が必要になる。

         学校の管理者や、同僚の先生に理解してもらうこと。

         CEC等で、幹事校の負担軽減のための措置や、予算配分について十分配慮すること。幹事校への財政的な援助も必要である。

       本プロジェクトがここまで継続することができたのは、これらの役割を認識の上、幹事校として遂行してきたからであると言える。

2.2 参加校の募集に関して

     酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトでは昨年度の実施報告書の中で、継続的な活動が要求されるプロジェクトの実施が、学校においてかなり負担になっていることを課題としてあげた。具体的には、データの送信や観測の業務が教師の負担増につながっていることが問題である。ネットワークを利用した共同学習は、それぞれの学校の事情をこえた共通的な活動が避けられないことを考えると、どうすれば各学校の負担を軽くすることが出来るか、プロジェクトの内容も含めた検討が必要であると考えた。

     今年度の参加校募集の段階では、各学校におけるネットワーク環境が急速に改善されてきている状況や、「総合的な学習」への取り組みの状況などを考慮に入れ、単に負担を軽くすることを目指すのではなく、参加することに意義をより強く感じることのできるプロジェクトへと成長させることを考えた。

     また、新学習指導要領による「総合的な学習」の完全実施時を想定し、より多くの参加校が活動する上でのノウハウを蓄積するためにも、できるだけ多くの学校に参加いただけるように、プロジェクトの広報活動も含め、幅広く参加の募集活動を行うことにした。

     企画立案したプロジェクトの参加校を募集する場合、いかに多くの教育関係者に見てもらえるかが重要である。以下、そのためどのようなメディアをどのように利用していったかをまとめる。

    2.2.1 Webによる広報を利用して参加校を広げる

       酸性雨・窒素酸化物調査ホームページでは募集要項を掲示し、そのページへトップページからリンクを張った。ただ、このページを参加校募集期間中に参加校以外の学校関係者が見る機会は少ないと考えられる。また、できるだけ多くの教育関係者に見ていただけるページということで、Eスクエアプロジェクトのトップページに参加校募集のお知らせを掲載していただき、そこから酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトホームページ上の参加校募集要項にリンクを張った。

       過去に、参加校募集に関する問い合わせも含め、プロジェクトに関する問い合わせをいただいた学校については、募集が始まると同時に電子メールを送って案内をした。

      =====<幹事校から発信した募集案内メール>=========

      >  那覇市内の小学校に勤務している吉村といいます。クラスで酸性雨や窒素酸化物に
      > ついての調査をしようと考えていますが、調査用具は、どういうところで購入できる
      > か、ご存知でしたら、教えて下さい。
      こんにちは、平賀@酸性雨調査事務局です。
      今年度の酸性雨調査の参加校の募集が、5月22日(月)から始まります。こちらへ参加していただけれ
      ば、酸性雨と窒素酸化物の調査キットを貸与させていただく予定になっています。参加をご検討ください。
      詳しくは、酸性雨・窒素酸化物調査ホームページをご覧ください。それから、もしいっしょに参加可能な
      学校があるようでしたら、お声をかけていただけたらと思います。
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    2.2.2 教育関係メーリングリストを活用して参加校を広げる

       インターネットにおける広報手段として、メーリングリストも活用した。教育関係のメーリングリストも、かなりの数が存在している。理科教育や環境教育など特定の分野を対象とするものや、地域に根ざしたものなどさまざまである。今回の募集においても、昨年度同様これらのメーリングリストに、参加校募集のお知らせを配信した。また、メーリングリストは参加者以外からの当校を受け付けない場合が多いため、参加校の先生方が参加しておられるメーリングリストに転載していただくようにお願いした。

    2.2.3 地域のネットワークの活用して参加校を広げる

       情報教育や理科教育など地域を基盤とする研究組織も数多く、活発に活動しておられるところも多い。特に酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト参加校の先生方が関わっておられる組織の会合などで、プロジェクトを紹介していただき、参加を勧誘いただく活動を推進した。プロジェクトに参加しておられる立場から紹介いただくことで、具体的に活動の内容や参加のメリットを説明いただけるため反響も大きく、実際に今年度から参加いただいた学校があっただけでなく、インターネットの環境が整ったら参加したいという表明も何件かいただいている。

       また、会合などでプロジェクトを広報するためには、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトを紹介するリーフレットのようなものがあると有効なのではないかと考えた。詳しくは後述するが、三重県で行われた「環境学習フェア」出展に際し、募集情報も含めてプロジェクトの概要を示した印刷物を作成し、これを必要に応じて配布可能なように必要な場合はメーリングリストを通じて申し出れば送付してもらえるように準備した。

      =====<酸性雨推進委員会 荒島先生からのメール>=======

      荒島@札幌発寒中です。
      >  今月末、当方に届く予定ですので、届き次第、送付致します。
      ありがとうございます。
      > さしあたって500部の予備があるのですが何部ほどあれば足りるで
      > しょうか?
      札幌の小中高で高速ネットワーク校(TAO&MultiMedia)に
      それに、元100校と元IWEと元こねっと校を加えると40校ほ
      どになります。
      研修会は20名ほどですから、「70部」いただけると助かります。
      教育とコンピュータ利用研究会(ACE)&隠れインターネ
      ット接続校には、こちらで白黒印刷して配付します^^;

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    2.2.4 他のメディア利用の検討

       現在の状況ではもっとも広い範囲に届くメディアといえば、テレビや新聞が考えられる。酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトでもそうしたメディアによる広報や参加校の募集を考えたが、次のような理由から今年度は行わないことにした。まず、現在の学校へのインターネットの導入の状況からすると、すべての学校でインターネットの利用環境が整備されるまでには至っておらず、プロジェクトに参加はしたいがネットワーク環境が原因で参加できない学校があると考えられること。また、こうした学校が参加した場合、ネットワーク環境の不備が原因で、活動に支障が出たり、活動の継続が困難になることが予想されると考えた。

       そのため、今年度の募集も昨年同様、インターネットを利用した募集方法をとることにした。今後インターネットがすべての学校に整備され、積極的な利用が行われる段階になれば、テレビや新聞などで広報活動を行っていく検討が必要となると考えている。

2.3 プロジェクトの運営方法

     「酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」をどのように活性化し、また参加校に魅力あるプロジェクトにしていくか。この点をどのような視点から捉え、どのように実践していくか、昨年度の実践を元に考察し、今年度の運営方針を決定していった。大きな変更点として、次に示すように、測定に関する変更と運営組織に関する変更を行った。また、初めての試みとして、小学校の体験参加校の募集を行った。

    2.3.1 観測機器と測定方法

       「酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」では、1995年の観測開始以来、すべての学校で同一の観測機器を用い、マニュアル化された同一の方法で測定を行うというコンセプトを打ち出してきた。特に酸性雨の観測においては、大気汚染の状況を酸性雨という指標で全国の観測データを用いて比較するためにも、同一機器・同一方法による測定であるということが大きな意味を持っていたと考えている。

       しかし、昨年度より大気環境をより総合的に捉えることを目的として、窒素酸化物の調査を実施したが、窒素酸化物調査については、実施後の各参加校からの意見等をもとに判断して、次のような問題点があると考えた。

       年度利用した簡易測定法では、比色によって窒素酸化物の濃度を決定したが、誤差が大きく、また、測定値がppm表示されないので、特に高等学校では内容的に物足りないものであった。

       測定用のカプセルを設置して24時間放置し、回収後にさらに測定に時間がかかるため、特に小学校ではより短時間で測定ができる、簡便な方法が望ましい。

       また、窒素酸化物の濃度は、各参加校が10カ所で測定したデータを見ると、10カ所でかなり大きな測定値の変動が見られ、道路の交通量など測定地点の条件が極めて大きく反映されるため、他の学校との比較を行うことの意味がないのではないかと考えられた。これらをもとに検討した結果、窒素酸化物の調査は、中学校・高等学校ではより精度の高い機器を利用し、環境基準の数値との比較ができるようにするなど、より高度な内容に対応可能な機器に変更する。また小学校では、昨年同様の機器を用いるか、または同程度の測定精度であればより短時間で測定可能な機器に変更することを決定した。

       プロジェクトとしてはここで初めて、測定開始以来のコンセプトとしてきた「同一機器による測定」からの変更を決断したわけである。また酸性雨の調査についても、小学校については、pHメーターは測定する毎に蒸留水による洗浄が不可欠で、センサー部分が物理的な衝撃に弱く洗浄の際に少し力を強く押さえると破損して使えなくなるなどの欠点があるため、より簡便で子どもたちの手で容易に測定ができる、比色による測定方法に変更することを決定した。

    2.3.2 推進委員会の設置

       今年度は運営組織の面でも大きな変革を行った。これまで酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの運営は、広島大学附属福山中・高等学校が事務局としてプロジェクトのとりまとめの作業を行い、その上で、広島大学からの指導や、CECや企業からの技術や運営上の支援を受けながらプロジェクトを実施してきた。今年度はこのプロジェクトの実施体制を一新し、次に示すような推進委員会を組織し、運営を行うことにした。

      推進委員会

       特に推進委員会の中にサブ幹事校を設置したことで、さまざまな活動において活性化の方向を示すことができたと考えられる。サブ幹事校の活動については、後の項においてそれぞれ紹介することにする。

    2.3.3 体験参加校の募集

       新しい学習指導要領に示された「総合的な学習」の実践が開始されている。特に小学校・中学校では、移行期間中ではあるが、「総合的な学習」を教育課程に組み込んで実践している学校が数多く見られる。特に小学校ではさまざまな実践事例が発表されている。酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトは、環境問題を子どもたちの観測という実体験をもとに考え、インターネットを活用して参加校同士の交流を行うという、「総合的な学習」の活動のテーマとして、きわめて有効であると考えられる。特に、学力の低下が懸念される中、ただ生徒の興味にまかせた活動を行うのではなく、教科の学習に基盤をおいて内容のある「総合的な学習」を行おうとしたとき、21世紀を生きる子どもたちに、酸性雨などの環境問題は、是非とも考えさせたいテーマである。

       現在「総合的な学習」の実践は、特に小学校で進んでおり、「総合的な学習」の実践をにらんで小学校の参加校を増やし、総合的な学習としての活動に重点を置いて「体験参加」してもらう学校を募集したいと考えた。「総合的な学習」としてある程度充実した活動を展開するためには、同一校種の学校が多数参加することが、交流活動を活性化するためにも必要となる。今年度はこうした考えから、小学校に重点を置いて体験参加校を募集し、「総合的な学習」に向けての実践事例の収集と活動のためのノウハウの蓄積を行いたいと考えた。

       ただ、実際問題としては体験参加校の募集が9月からになり、実際に測定機器の配布が終了したのは10月末で、十分な活動期間がとれなかったことが残念である。来年度は、この体験参加校から多くの学校がプロジェクトに継続して参加し、小学生による活発な活動が行われるのではないかと期待している。

2.4 参加校のためのマニュアル整備

     これまで、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトでは、観測に必要となる必要最小限のマニュアルを作成し、それ以外の活動については、その都度メーリングリストを利用して連絡を行ったり、参加校の自由裁量にまかせてきた部分が多い。ただ、実際に活動する上で、酸性雨や環境問題に対して率先して指導していただける先生のおられる学校では、のびのび自由に活動していただき、すばらしい実践を数多く残していただいてきた。しかし、逆に、プロジェクトに参加し観測を始めてみたものの、その後どのように活動を進めていけばよいのか、あるいはどのようにデータを利用していけばよいのか、実践が進まなかったという意見も頂いた。

     今年度は、こうした意見をプロジェクトに生かし、これから参加する学校にも、「このプロジェクトに参加して活動をすればこのようなメリットがある。」ということを示すことができるように、できるだけ具体的な事例を盛り込んだ形で、実践をしていく上でのマニュアルの整備を行いたいと考えた。

    2.4.1 観測のためのマニュアル

       今年度の酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトでは、酸性雨についても、窒素酸化物(NOx)についても、小学校と中学校・高等学校で測定機器と観測方法をそれぞれ変えて実施したため、それぞれについての観測マニュアル、あわせて4種類を準備した。これらの測定マニュアルは、8月に実施した酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査参加校情報交換会で詳細に解説し、9月からの観測に備えた。また、ホームページにも掲載し、参加校が必要なときにこれを参照することができるようにした。

    2.4.2 WEBの利用マニュアル

       このプロジェクトも今年度は6年目を迎え、これまでに実施してきたプロジェクトの経緯が、ホームページの中にもさまざまな形で反映しており、ホームページの構造はかなり複雑でわかりにくいものになってきている。データ入力の画面やデータ閲覧の画面などは比較的頻繁に利用されているため、どの学校も迷うことなく表示することができるが、例えば、測定マニュアルを表示したり、あるいは酸性雨や窒素酸化物に関するリンク集を表示させるといった、ふだんあまり利用しないページについては、どこからたどればよいのか、わかりにくくなっていた。こうした実情をふまえ、だれでも目的の情報を素早く見つけることができるように、Webの利用マニュアルを作成した。特にこのマニュアルは、今後参加校がデータを加工し、データを活用していくような実践が行われ、あるいは参加校がこのページを活用して活発な授業実践をおこなうようになる上で、必ず役立つものと考えている。

2.5 参加校間の交流

     これまでの数度のアンケート調査でも、参加校からの要望として、参加校同士の交流を推進するための仕組みを求める声が多かった。酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトでは、これまでにも交流を目的とした電子掲示板を設置するなどしてきたが、あまり積極的な活用は行われないままであった。

     電子掲示板は、WEBを読むことができる環境があれば、だれでも読み書きできる仕組みであり、個人のメールアドレスを持たない生徒にも自由に書き込みができるという利点がある。しかし、発言はよほど誰かに返事を期待するような書き方をしない限り、だれに当てて書いているのかわかりにくく、学校間の交流や生徒同士の交流の手段としては、なかなか具体化しにくかった。

     生徒同士の交流は、環境学習を進める上では不可欠である。環境問題を解決するためには、理論を学ぶだけでは解決はあり得ず、個々人の努力と実践が必要である。そのとき、個人としての努力には限界があるかもしれないが、仲間同士の交流を深め、行動の輪を広げていくためのコミュニケーション能力を高めることで、より確固たる実践力を得ることができると考えられる。

     今年度の運営上の課題として、電子掲示板に代わる交流のためのシステムを構築し、実践を行うことをあげた。生徒用のメーリングリストの設置も考えたが、まだ生徒が自由にメールを読み書きできる環境が整っている学校は少ないので、主たるシステムとしては、WEBの画面上での「チャット」を利用することを考えた。具体的な実践のようすについては、後の「2.7 大規模プロジェクトの活性化方法」の項で詳しく紹介する。

2.6 データの分析及びその結果の提供

     酸性雨の調査も6年を経過し、かなりの数のデータが蓄積されてきた。これらのデータをまとめることによって、学術的にも意義のある情報を明らかにすることができるのではないかと考えられる。今年度の事務局の活動として、データの分析を進め、その学術的な価値を示し、「酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」社会的な意義を明らかにしていくことを目指した。また、同時にそれを参加校に示すことで、このプロジェクトでデータを集める意義を示し、参加校の観測を継続していく上での動機付けにしたいと考えた。

     雨が降るたびにデータを集め登録することは、根気のいる作業である。それを継続していくためには、データが増えると、このようなことが明らかになってくるという「目標」が設定されていることが望ましい。これまでに蓄積されたデータの分析から、学術的にも意味のある結果が示されれば、観測数の少ない学校でも、これから測定数が増えデータの蓄積が進めば、同じような解析の方法によって自分たちの地域の環境のようすを、自分たちの集めたデータをもとにして考えることができるようになるという「目標」ができる。雨の観測も「目標」を持って、観測自体に意義を感じることができるようになると考える。

     参加校の募集に際しても、「このような方法でデータを蓄積して分析を行えば、自分たちの身の回りの環境を、ここに分析したような視点で捉えることができる。」ということが明らかであれば、「身の回りの環境について、このような分析をしてみたいと考える方は、どうぞご参加ください。」という動機付けをしやすいだろう。このようにしてプロジェクトに参加することのメリットを明らかにすることは、参加校を増やす上でも重要だと考えている。

    2.6.1 地域ごとの雨の特徴について

       これまでの観測データの中から、測定回数が多く、風向きや降水量などのデータがそろっている広島大学附属福山中・高等学校(広島県、65データ)と大和市立光丘中学校(神奈川県、138データ)の1998年10月から2000年9月までデータを基にひとつの分析を行った。分析に際して、それぞれの雨を季節ごとにまとめて、その地域の傾向を比較した。今回は、はじめの1カップのデータ(初期値)および平均のデータを使って分析した。

      <季節ごとの降水量と平均pH>

       右の2つのグラフを比較して福山(広島県)より、大和市(神奈川県)のほうが雨が多いことがわかる。また、そのpHの散らばりも大和市の方が大きくなっている。

       いずれも地区も、降水量が多くなると平均pHは基準の5.6に近づく。降水量の多い雨ほどトータルで見て汚染が少ない。

       これに比べ、降水量の少ない雨のpHは散らばりが大きく、大和市ではpH2〜8.5までの大きな散らばりがでている。

       季節ごとで比較すると、どちらの地区でも、秋(9月〜11月)に比べ春(3月〜5月)の雨のpHの値が大きくなっており、春の雨に何らかのアルカリ性物質が溶けていることが多いと考えられる。

       この分析は1例であるが、このような分析方法を採ることで、それぞれの観測地点における雨の汚染状況を把握することが可能となる。ある程度測定数が増えなければこうした分析は行うことができないが、今後継続して観測を行っていくことによって、こうした傾向を明らかにできるという見通しを持って活動ができるという意味で、参加校の目標設定を行う意味からも、こうした分析結果を示すことに意義がある。今回の分析を行ってみて、こうした分析を行うためには最低でも2年分、50測定程度のデータが必要であると感じる。ぜひ多くの学校で、こうした分析ができるだけのデータを集めていただきたいと期待するものである。

    2.6.2 同一の雨雲から降る雨の変化について

       今年度は参加校が増加したため、日本列島を西から東へ移動する同一の雲が、日本各地にどのような雨をもたらしたかという分析をすることが可能となった。次の分析例は、そのようすを示したものである。

       今年度9月になり、新規参加校も測定が始まった。これ以降は、日本列島を移動する雨雲が各地にどのような雨を降らすのか、それぞれの地域のデータを比較することでその雨の特徴を見ることができる。

       9月、次のようなメールのやりとりがあった。

      <幹事校からのメール>

         こんにちは、平賀@福山です。
         昨日降った雨は、降雨7mmの平均が3.8という、ひさしぶりに酸性度の高い雨で
        した。においはしませんが、火山ガスの影響でしょうか?それとも中国大陸からやって
        きた雲ですから、越境汚染の影響でしょうか?
         みなさんのところの雨はいかがでしょうか。 

      <推進委員会 中村先生からのメール>

         神奈川県大和市でも9月に入り、低pHの降雨がほとんどです。
         すでに、Webに掲載しましたが、ほとんどがpH4.5>です。
         初期降雨だけでなく、降り終わりの雨水も低い状態が続きました。
         ローカルなものは初期降雨で落ちてしまうと仮定すると、平賀先生の言われる通り、
        もっと広域の影響によるものと考えられますね。
         雲粒は消滅、再生を繰り返し、汚染物質は、乾性、湿性の形で、大気の動きと共に移
        動するものと考えております。
         この雨雲は、日本列島縦断したようですので、ぜひ、各校で測定結果をWebに掲載
        していただきたいですね。
         参加校で、掲載していただければ、雨雲の特徴が時系列で把握できるのではないかと
        思います。
         この原因が、三宅島の火山ガスか大陸からの越境汚染物質なのか、それとも他にある
        のか、手がかりがつかめるのではないかと期待しています。
         私たちのところでは、地域汚染の特徴を、初期降雨のpH、EC、イオン定量分析に
        よって調べる試みをしておりますが、このような降雨では特徴が飲み込まれ、現れない
        気がします。(^^;;;

       9月11日の雨では、四国でpHが小さくなっているが、他の地域では5.6付近を示している。緒方工業を除いて平均伝導率も小さく比較的きれいな雨と考えられる。これに対して、23日の雨では、どの地域も導電率が大きくなり、pHの値も小さく酸性度が強くなっている。9月11日は太平洋上で発達した台風14号が北上し、日本列島に雨をもたらした。このように一般に台風の雨はあまり汚れていない。これに対して、23日は中国中部から東へ進んだ低気圧が、列島を西から東へと横断し雨をもたらした。この雨のpHは4付近とかなり強い酸性となった。

       10月28日は日本列島を西から東へと横断する形で前線が延びている。この前線は中国中部でできた低気圧が発達したもので、細く長く伸びる雲が移動することで雨を降らせた。

       この雨の酸性度も高く、pHの平均が9月23日と同じ値となっている。この日も日本全国で強い酸性の雨となった。平均導電率も9月23日とほぼ同じ値になった。

       11月15日の雨の平均pHは5.73、平均導電率は53.9である。各地で高い導電率を示しているがpHはそこまで小さい値を示していない。この日は北部と南部の2つの低気圧が影響しており、北の雲は中国北東部から進み、南部の雲は中国南部、台湾付近で発達し列島へと進んだ。この雨の導電率から、酸性物質や、海水によるアルカリ性物質など複雑に影響していると考えられる。

       これまで、説明したように、日本全体で共通した特徴をもつ雨もある。これは広域的な原因をもつ酸性雨と考えられ、中国等からの越境酸性雨の可能性が考えられる。環境問題は、地域や国レベルでの取り組みや調査だけではなく、国を越えてのグローバルな視点で考えねばならない。生徒は、この酸性雨調査を通して実際にこの点を確信するだろう。

       以上の分析では、雲がどの地域で形成され、どのような経路で日本列島に達するかが、雨の酸性度に大きな影響を与えていることが示された。これは、これまで他の酸性雨調査によっても指摘されていた、海外からの越境酸性雨の可能性を示唆するものであり、またそれだけでなく国内の大気汚染の状況が、それにさらにオーバーラップして酸性雨の状況を複雑なものにしていることを明示している。観測データがどのような意味を持っているのか、それは非常に複雑な現象であり、今度専門家によるより詳しい分析を行っていくことが必要だと、あらためて感じている。

    2.6.3 専門家の分析の必要性

       こうした分析によって、各参加校は共同観測の成果を確認できることになる。小・中・高校生による測定と言うことで、観測結果をどの程度信頼できるか疑問視する向きもあるかもしれないが、測定器具と測定方法を統一して行った観測であるので、ある程度信頼に足るデータになっていることがこの分析結果からも示すことができたのではないだろうか。また、こうした分析を環境問題の専門家の手によって行い、その結果を示すことで、参加校の観測に対する意欲を高めることができると考える。場合によってはこのプロジェクトで示された結果が、日本の環境問題を示すデータとして利用される可能性もあり、そうした観測に参加することの意義は、生徒にとって計り知れないものであると考えている。

       こうした成果が参加校の観測意欲につながり、以前にもまして興味・関心を持って活動が継続されていることを期待している。

       以上の認識に基づき、本プロジェクトでも専門家による分析を行ってもらった。その結果は、に示す。

2.7 大規模プロジェクトの活性化方法

     プロジェクトを広げるためには、内容が充実して参加校がやりがいを感じるプロジェクトであることが重要である。他の学校がプロジェクトに参加して活躍している様子を見た先生が、自分の学校でもやってみようか、参加してみようかと思わせるような魅力が必要である。

     酸性雨/窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトは観測を基に環境の現状を考え、環境問題を解決するために共に考え行動していこうとすることのできるこどもを育みたいと考えている。特に小・中学校では「総合的な学習」の実施に伴い、「総合的な学習」としてこのプロジェクトを活用する学校も増加している。また、選択教科の授業としての参加や、科学クラブやコンピュータクラブなどのクラブ活動、学級活動など、さまざまな形態による参加が見られる。昨年まで事務局としての活動は、それぞれの学校の事情や都合を配慮し、参加校の主体性を重視してきた部分が多い。観測のデータの利用方法も、ホームページ上でグラフを作成する機能などを準備しているが、その解釈は参加校にまかせ、主体的な利用を促してきた。

     こうした考え方は、酸性雨プロジェクトが始まって以来継承してきた基本的なコンセプトの一つであり、そうした自由度の高さがプロジェクトへの参加を容易にすると考えてきた。

     観測開始から数ヶ月後の状況を見ても、データ未登録の学校が見られた。事務局では様々な要因があるものと推察しているが、事務局がより積極的に各学校の活動に関わっていくことで、より活発な活動が展開できるのではないかと考えた。データが未登録であることを批判するのではなく、むしろシステムとして酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトを成熟させ、参加する意義を強く感じることのできる魅力あるプロジェクトにすることで、プロジェクトが活性化されると考えている。

     インターネットに接続する学校が増加する中で、環境問題に興味関心を持っている学校が気軽に参加でき、大きな意義を共有できるプロジェクトを目指したいと考え、本年度はプロジェクト活性化のための方策を検討し、以下のような活動を実施した。

    2.7.1 メーリングリストの活性化

       酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトでは、参加校への連絡や教員同士の交流の場として、メーリングリストを作成してきた。今年度は、利用目的に会わせ、企画用、推進委員会用、全参加校用の3つのメーリングリストを内容によって使い分けて連絡を行った。

      ・企画用   :
      参加者はCEC、幹事校、事務局(MRI)の担当者。企画調整に関する連絡が中心。
      ・推進委員会用:
      参加者は企画用のメンバーに、広島大学の指導教授と今年度から委嘱した酸性雨調査推進委員会のメンバー。プロジェクトの推進のための連絡や意見交換を行った。
      ・全参加校用 :
      参加者は推進委員会用のメンバーに、その他の参加校の担当者を加えたメンバー。プロジェクトに関する諸連絡や担当者同士の交流、意見交換に利用した。

       参加校への連絡には原則としてメーリングリストを利用しているが、現状は確実に連絡を取る手段としては、不十分であると言わざるを得ない。電子メールが送られた先のサーバやメールアドレスが存在しないなどトラブルのある場合はリターンメールが返ってくるが、それ以外に電子メールが確実に届いたかどうかを確認する手段はない。

      =====<リターンメールの例>=============

      Hi. This is the mail-sending program at fukuyama.hiroshima-u.ac.jp.
      I'm afraid I wasn't able to deliver your message to the following addresses.
      (Your message、 however、 may have been successfully delivered to any other
      intended recipients.)
      This is a permanent error; I've given up. Sorry it didn't work out.
      <*****@************>:
      Sorry、 I couldn't find any host named ******* (#5.1.2)

      =======================

       またたとえ届いていてもそれが読まれているかは不明である。小規模なメーリングリストであれば必ず返事を書いてもらうという方法で確認が採れるが、本プロジェクトのメーリングリストでは参加者が多すぎて現実的でない。以下に示すメーリングリストのテストメールに対し、約2時間後から返事のメールが返ってきはじめ、最後の確認のメールが届いたのが8日後であった。

      =====<幹事校から メーリングリスト開設のお知らせ>=====

      新規参加校の担当者のみなさん、はじめまして。
      継続参加校の担当者のみなさん、ご無沙汰しています。
      平賀@酸性雨/窒素酸化物調査事務局(広島大学附属福山中・高等学校)です。
      
      このメールは、参加校のみなさんのメールアドレスを登録したメーリングリストのテストメールです。
      2000年度のメーリングリストのアドレスはrain@fukuyama.hiroshima-u.ac.jpです。
      このメールを読まれた方は、恐れ入りますが、ちゃんと届いたかどうかの確認をしたいと思いますので、
      hiraga@fukuyama.hiroshima-u.ac.jp
      宛に「届いた」の一言でけっこうですのでメールをお願いします。

      =======================

       例えば、観測データをホームページに登録する際に必要なパスワードについて、1年間に10件以上の問い合わせがある。電話での問い合わせもあるが、メールでの問い合わせに関してはすべての参加校に確認していただく意味も込め、原則としてメーリングリストに返事を出した。

      =====<幹事校より パスワードのお知らせ>=====

      こんにちは、平賀@福山です。
      On Mon、 2 Oct 2000 07:12:28 +0900
      > 9月3回ほど、酸性雨を測定することができました。しかし、測定結果はいずれも
      > 8.5でへんだなーと思っています。
      > 心配なので同じ試薬で酢などを測定してみましたがちゃんと酸性をしめしています。
      > とりあえずそのまま結果をアップしようと思いますが、パスワードが分からず、書き
      > 込めません。
      > 夏休みのオフ会のときの資料からは、読みとれなかったのでパスワード、あるいは手
      > 順を教えてください。
      
      まず、パスワードですが、学校の郵便番号が初期設定として設定してあります。
      WEB上から変更できますので、適当に変更して使ってください。
      (以下略)

      =======================

       それでもこうした問い合わせが後を絶たないのは、担当者がメールを利用し、毎日確認する状況になっていないことの現れであろう。学校によっては個人のメールアドレスではなく、学校名のメールアドレスを利用している学校もある。また、インターネットを利用できる端末が職員室に1台のみといった状況の学校もある。参加校のインターネットに関する設備状況の条件として「インターネット接続環境を有すること(連絡や学校間の交流等に電子メールや電子掲示板を利用するため)。」「メールを随時送受信できる環境を有すること。」が募集要項に記載されているが、このプロジェクトの担当者全員がインターネットの利用に堪能なわけではなく、様々な要素が合わさってこうした状況になっていると考えられる。インターネットの環境がすべての学校に整備されると言っても、その状況には大きな開きがある。全教員が個人専用のメールアドレスと端末を利用できる環境がベストであるが、そのような学校は極めてまれな存在であろう。むしろ、学校全体でいくつかのメールアドレスを利用している場合、メーリングリスト宛のメールは特に誰に宛てたものかが明記されないため、担当者の手元に届かず読まれないままになってしまうケースがあるのかもしれない。また、プロジェクトに参加はしてみたものの、メーリングリストという始めての仕組みにとまどい、思うように活動が進んでいない学校もあるかもしれない。実際、まだまだ学校にインターネット利用が定着した状況とはいえないのが現状であろう。学校のインターネットの設備が十分でないため、担当者の個人のメールアドレスを利用している場合も多く、かえってそうした先生の方が活発に活動していただいている印象を受ける。進んでプロバイダーと契約し、インターネットを家庭でも利用しておられる先生に、プロジェクトを牽引するバイタリティーに溢れた先生が多いと感じるのは、それだけの意欲と利用するための技能を持っておられると言うことであろう。インターネットの教育現場への浸透度は、まだ学校で教員がメールを自由に読み書きできる環境には至っていないというのが現状であり、このあたりが改善されると、このプロジェクトのような共同企画の運営も随分と容易になるのではないかと予想される。

       さて、こうした状況の中で、ではどのようにしたらメーリングリストによる情報伝達の状況が改善できるであろうか。

       メーリングリストのやりとりの内容に関しては、昨年度までは、各学校からの書き込みに対し、主に幹事校の担当者が返事を書くというパターンになっていた。しかしこれでは参加校全体のメーリングリストという意識が生まれにくく、メーリングリストの活性化は望めないと感じる。今年度は、プロジェクト推進委員会の先生方に、メーリングリストに積極的な書き込みをいただき、昨年までに比べかなりメーリングリスト自体の活性化につながったと感じている。内容的から見ても、観測に対する疑問や苦労話し、悩みなど、幅広い書き込みが行われた。みんなで自由に書き込める雰囲気になってきたのではないかと思う。

      =====<推進委員会 山内先生からのメール>=======

      鹿児島県 屋久島 岳南中学校の山内です。
      酸性雨/窒素酸化物調査プロジェクトに参加のみなさんお元気でしょうか?
      『酸性雨・NOx調査プロジェクト』この企画、よく考えるとすごい企画だなあと改めて思っています。
      我々は、そのプロジェクトに参加しているのだという自信をもっていいと思います。
      一緒に頑張っていきましょう!
      このMLが活発になればと思っています。
      どんな些細なことでも構わないのではないでしょうか?
      (ですよね、平賀先生)
      メールを書いてみてください。
      そこから始めましょう。

      =======================

    2.7.2 オフラインの会議

       メーリングリストの書き込みの幅が広がった原因のもう一点は、8月に開催した酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査参加校情報交換会の成果だと考える。これまでにもプロジェクトの参加校の担当者が集まって会合を持ちたいという希望を持っていたが、今年度始めてCECのご尽力により実現することができた。

        酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査参加校情報交換会 プログラム

        挨拶 (広島大学附属福山中・高等学校 副校長 長澤武)

        講演 (広島大学 教授 中根周歩)

        観測・データ登録方法等の説明(広島大学附属福山中・高等学校 平賀

              博之)授業実践事例紹介(大和市立光が丘中学校 中村孝夫)

        授業実践事例紹介 (屋久町立岳南中学校 山内耕治)

       この会により、これまで顔を合わせたことのなかった参加校の担当者の先生方が初めて集い、これをきっかけにしてメンバーの間に仲間意識が育ったのではないかと感じている。特に授業実践事例紹介のあとで、フリートークの時間を持ち、気軽に話をすることが重要なポイントではなかったかと感じる。「生の平賀先生に会えた。」という迷言も飛び出し、和やかな雰囲気で会を終えることができた。

       同じ意見交換を行うにしても、相手がどのような人であるのか、それがたとえ一度あっただけの人でも、まったく面識のない場合に比べると様子が変わってくる。人間の絆は、やはり直接会って話をしなければ育たないものだと感じている。

      =====<参加校 熊谷先生からのメール>=====

      こんにちは。熊谷@四日市工業高校 です。(*^_^*)
      初めて、このプロジェクトのオフラインミーティングに参加しました。
      環境保全に対する熱意を感じました。
      今後、pH自動測定と同時にモニタリングしたいと考えています。
      雨水の撹拌に、圧電ブザー(数キロヘルツ)の振動を使うと電極の清掃も可能であることを三重県立松阪
      工業高校の先生から聞き、試したいと考えています。
      また、毎日、国道1号線の歩道を歩くと、1メートル毎にタバコのフィルターが約1個落ちています。い
      ったい何本のタバコを投げ捨てたことか、想像するだけでいやになります。
      なんとかなりませんかねぇ。それでは、また(^_^)/~

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      =====<参加校 久保田先生からのメール>=====

      > ご参加いただけなかった先生方にも、当日の様子が伝わるように、このメーリ
      > ングリストを活用していけたらと思います。
       長澤先生のお話の中にもありましたが、一度は顔をあわせないとうまくコミュニケーションが取れませ
      ん。みなさんとはこれを実現しましたので、次はメール上でコミュニケーションを取りたいですよね。

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      =====<参加校 金井先生からのメール>======

      前橋四中(前橋市立第四中学校)の金井です。
      NOx測定キットを開封し、生徒と一緒に測定の方法を確認しました。
      我が街、前橋は、群馬県の県庁所在地ですが、全くの田舎町で、「水と緑と詩(うた)の街ー前橋」という
      キャッチフレーズです。
      一応、きれいな空気も売りの一つですので、結果が楽しみです。
      タンポポの継続研究をずーっと続けており、生徒は先年度の終わりから、今年度にかけて、研究の用意を
      行い、やっとまとめの段階です。
      10月中旬からは、酸性雨とNOxに本腰がいれられます。
      よろしく、おねがしします。

      =======================

       メーリングリストは全体的に活性化してきていると感じているが、それはメーリングリストに投稿されたメールの数でも知ることができる。昨年度(平成11年度)に1年間に流れたメールの総数が131通だったのに対し、今年度(平成12年度)は、6月から12月までの6ヶ月間で320通のメールがやりとりされた。参加校の増加を考えても、この数は圧倒的な増加のようすを示している。

    2.7.3 事務局から参加校への電話連絡

       メーリングリスト全体としては活性化の方向にあると考えられるが、一部の学校ではメールが読まれていないという深刻な事態も生じている。その対策を紹介したい。

       メーリングリストや電子メールによる連絡が取れない場合や、長期間観測データの入力が行われていない場合、電話で状況を伺っている。初期の段階で多かったのは、登録されていたメールアドレスが普段使われていないアドレスで、メールチェックがされないまま時間が過ぎていたというものである。この段階では、メーリングリストに登録するメールアドレスを、担当の先生が普段使っておられるものに変更して対応した。メーリングリストのメンテナンスは手間がかかるものであるが、インターネットを通して共同で観測を行うプロジェクトでは、メーリングリスト無しでは活動は困難である。しかし、ここできちんと連絡が取れる状態にしておかなければ、活発な活動は望めないのは明らかである。

      =====<参加校 担当者の先生からのメール>=======

      すみませんが、メールのアドレスを******@********に変更していただけませんか?
      届け出をしたアドレスは学校のものなので、頻繁なメールのやりとりには私個人が学校で使っているアド
      レスのほうがいいと思いますので。
      お手数おかけしますが、よろしくお願いします。

      =======================

       データの入力が行われないので電話をかけてみると、器具が破損して観測ができない状態だが、それを修理する予算のめどが立たず、そのままになってしまったといった悩みを伺うことができた例もある。事務局から電話がかかることで、初めてその状況をお話しいただけた。参加校の側から事務局への連絡は先送りになってしまいがちで、そのうち日常の忙しさに紛れてしまう傾向があるのではないか。そうならないためにも、時折事務局の側から連絡をしてみることが必要だと感じている。

       参加校はこのプロジェクトに参加すると、測定機器を貸与されるというメリットがある。しかし、活動が停滞したり、参加のための条件としてあげている「測定結果を利用した実践(授業、クラブ活動、学級活動等)」「実施報告書(A4用紙で6枚程度)を提出できること」などが果たせなかった場合でも、参加校に何らかのペナルティを課すことは行なわずに来ている。このプロジェクトに参加する学校の状況は、文部省の研究指定校のように教育委員会の指導や学校あげての組織体制づくりが行われることは少なく、むしろ学級や授業、クラブの担当の先生の裁量のもとで校長の許可を得て参加している学校が圧倒的に多いという状況であることが予想されるためであった。

       このあたりも、システムを変更する時期に来ているのかもしれない。具体的には、活動が停滞しないようにするための方策、例えば次のような、事務局として常に参加校の状況を把握できるような項目を設定して参加校に実施してもらい、事務局からのチェックを行うようにすることを検討したい。

        (1)年度の活動開始とともに観測の体制を整備し、その状況を事務局に報告する。

        (2)メールを1ヶ月に1通以上、メーリングリストに投稿する。

        (3)ホームページに、「雨が降ったが測定できなかった」という登録も行うように変更し、登録の機会を増やす。

       もし、こうした活動に停滞が生じ、事務局からの改善要請にも応えられなかった場合、機器を返納していただくなりのペナルティを課すことを募集の際に明記しておく必要があると感じている。

    2.7.4 チャットによる生徒の活動の活性化

       ここまで、プロジェクトの活性化について、教員の活動の活性化を中心にその方策を見てきたが、次に生徒の活動をいかに活性化させるかについて考えたい。

       これまで毎年実施してきたアンケートの結果を見ても、生徒は「積極的に参加した」「インターネット利用に対する関心が高まった」「環境問題に対する意識が高まった」という高い評価を得ている。酸性雨や大気の汚染を観測し、それをインターネットを利用して共同して学習を進めていくというこのプロジェクトは、生徒にとっては魅力的な存在となっているのは間違いないだろう。さらに教育的な効果を高める方策として今年度は、生徒同士の交流の深化と学習の深まりを目指して、「チャットによる交流」を実験的に実施した。 チャットのシステムは今では様々なホームページ上に設定されており、中にはアイドルやミュージシャンのホームページなどにあるチャットを毎日のように楽しんでいる生徒もいるような状況である。遠く離れた同じ興味関心を共有する人たちと文字によって交流するチャットのシステムは、生徒にとってはインターネット利用の楽しみの一つになっている。

      =====<幹事校からのチャットの案内のメール>======

      酸性雨/窒素酸化物調査参加校のみなさん
      こんにちは、平賀@福山です。
      10月から実施した6回の窒素酸化物調査もおわり、プロジェクトの方もほっと
      一息というところでしょうか
      以前から生徒同士の交流の場をつくって、活発な交流ができないかと考えていま
      したが、その1つの実験として、子どもたちが参加するチャットを実施してみた
      いと考えています。
      参加のために特別なソフトを必要としないように、WEBページの上でチャット
      ができるようになっています。
      第1回は中学生を対象に、生徒のチャットを実施します。
      12月8日(金)16:30〜17:00です。
      中学校のみなさん、日程の都合がつきましたら、ぜひご参加ください。
      内容は、自己紹介、地域紹介、酸性雨に参加しての状況、感想などを考えていま
      す。
      なにしろ、はじめてのことで、どんなことになるかわかりませんが、よろしくお
      願いします。
      なお、今回は、中学校に限定ということで、小学校・高等学校はあらためて実施
      したいと思いますが、8日がうまくいきましたら、
      12月12日(火):小学校
         13日(水):高等学校
      あたりで実施したいと思います。
      参加いただける学校は、このメーリングリスト宛に参加表明をお願いします。

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       この呼びかけに対し、中学校5校、高等学校4校が参加して、それぞれ第1回目のチャット大会を開催した。

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      チャットのログ(別に掲載)

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      =====<推進委員会 山内先生からのメール>======

      鹿児島県 屋久島 岳南中学校の山内です。
      みなさん、寒くなりましたですね。
      12月8日(金)中学部会のチャットの練習を行いました。
      松山南中、宮浦中、岳南中、広大付属福山、前橋四中などの参加があったようです。(他に参加校がありま
      したら名乗りをあげてください)
      さて、やってみて参加人数が多すぎたという感じでしたね。
      (うちからも4台参加でした。)
      一つのことに対応しようとすると、もう次の話に変わっているという状態でした。
      チャットのことはよくわからないのですが、1対1がベストのような気がしました。
      もしいくつかの学校で取り組むのであれば、1ケ所がキーポイント(?)になり、書き込みを指示する形
      がいいのかなあと思うことでした。
       この件について〜中学校さんは、いかがですか?
        <返事>
       〜中学校さんの意見について・・・中学校さんは、どう思われますか?
        <返事>
        ・・・・・・・・
      という感じです。
      これでは、チャットの本来の効果が薄れるかも知れないのですが。
      でも生徒は、とても喜んでいました。
      楽しい、またやりたいと。
      以上感じたことです。

      =======================

      =====<幹事校から 高校生チャットの連絡>====

      こんにちは、平賀@福山です。
      明日(12月13日)は、高校生によるチャットを予定しています。16:00〜17:00の予定です。
      本日は小学校のチャットを予定しておりましたが、参加の表明がございませんでした。ちょっと残念・・・。
      明日は今のところ4校の参加表明をいただいています。
      奈良県立登美ケ丘高校
      大分県立緒方工業高校
      三重県暁高等学校
      広島大学附属福山
      もし参加表明いただいたのに漏れている学校がありましたらご連絡ください。
      もちろん、参加表明なしで飛び入り参加も大歓迎です。
      明日も、中学校の時と同じように、司会なしでやってみたいと思います。
      事前に何かご意見・ご希望がございましたらご連絡ください。

      =======================

       12月の学期末で、教員の多忙な時期であり参加校数は限定されたが、実験的な試みとして生徒の反応や、今後の第2回・第3回と続けていくためのノウハウを蓄積することができたと考えている。あとに示すチャットのログを見てもわかるように、中学生と高校生ではチャットの会話の流れに大きな違いが見られた。中学生は我先にと書き込み、書き込みが溢れて、誰がどの書き込みに対する答えを書いているのか、話題の流れがつかめないほどに速い展開だったのに対し、高校生は一つ一つの書き込みの流れを見ながら、それに答えていくという、自制の効いた書き込みで整然と交流が進んでいったという印象である。生徒の発達段階の違いが現れたものかもしれないが、次回にどのように運営すればよいかという指針を与えてくれる実践となった。

      =====<参加校 星川先生からのメール>=====

      こんにちわ 平賀先生、プロジェクトのみなさん
      先日、中学校の部のチャットに参加された学校の方々、どうもお世話になりました。
      子供たちは大変喜んで活動していました。
      感想、提案など載せました。(行数が多いので、ワードの添付ファイルにしました。)
      参考にしてください。もう少しまとめて、今後の紀要に載せるのもいいかなと考えて
      います。

      =======================

      =====<参加校 向先生からのメール>======

      大分県立緒方工業高校の向です。
       本日(12/13)のチャット高校の部では、お世話になりました。
      本校では、3年生の女子2名が、楽しそうに参加していました。
      この交流をまた続けてほしいと思います。
      本校でも、チャットの中で、研究のヒントがあり収穫がありました。
      では、今後とも、よろしくお願いいたします。

      =======================

      =====<参加校 大東先生からのメール>=====

      奈良県立登美ケ丘高校の大東です。
       先日のチャット高校の部では、大変お世話になり、ありがとうございました。
      また、接続に関して本当のサーバーにトラブルがあり、大変ご迷惑をおかけしました。
      私も生徒も、チャットが始めてで、何回も入室になってしまったり、試行錯誤の状態でしたが、本当に楽
      しく交流できて良かったです。
      データの閲覧だけではわからない生徒の様子や学校の様子がよくわかってとても面白かったです。
      また、新しいことも聞いたり良い刺激となりました。
      この交流をまた続けてほしいと思います。

      =======================

       また、学校の状況によっては、チャットは長時間回線を使用することになるので利用が難しいという学校がある。

      =====<参加校からのメール>========

      本校では午後4時代には先生方がたくさん残っていることもあり、生徒はもちろん教師だって電話回線を
      使ってインターネットに接続することなど自由にはできません。
      なので、ちょっとだけのぞかせてもらいました。皆さん楽しそうで、退室後、パソコン教室で生徒に履歴
      を使って見せてやりました。

      =======================

       チャット実施に関して、次のような考察を行った。

        (1)チャットの参加校数は多すぎると会話が成り立たないため、中学校では3〜4校程度が適切な規模である。

        (2)教員または生徒による司会者をおいて、会話の整理をする。話し合いのルールを確認しながら、チャットを行う。チャットに慣れていけば解決される問題かもしれないが、特に中学生では司会者を置くことが望ましい。

        (3)チャットの前にテーマを設定し、参加者はそのテーマについて事前に調べたり、学習して、自分なりの意見を持っていることが望ましい。そのような慈善活動ができる内容が、チャットの内容として適している。

        (4)将来的には動画像も利用したテレビ会議システムによる交流に発展させたい。

       ただし、テーマや内容によって様子が変わると考えられる。いずれにしても、参加した学校からは、生徒が楽しく活動し、また次のチャットが企画されることを期待するメールが寄せられた。生徒は、こうした経験を通して共同で学習をしていることを意識し、その意識が興味関心を高め、学習を深化させることにつながっていくと考えられる。インターネットやコンピュータというヴァーチャルな世界の中で、相手の人間を感じることができるという意味で、インターネットを利用するプロジェクトでは、こうした取り組みが大きな意味を持つと考える。また、<チャットによる文字での交流>→<動画像によるテレビ会議>→<実際に会っての会議>というようにより具体性の高い交流へと発展していく方向が望ましい。特に環境問題に関してはヴァーチャルな体験ではなく実体験こそが重視される。環境問題を解決するつもりになっても何の意味もない。あくまでも実際に行動してこそ意味のあるものである。そうした意味からも、将来的にはインターネットを利用して交流した相手と実際に会ってみたい、話をしてみたい、一緒に活動してみたいという気持ちを育み、その最終段階としては、全国の参加校の子どもたちが集まる「酸性雨サミット」を開催して、交流を行うことを目標として考えたいと思う。

    2.7.5 プロジェクトの社会的な認知を目指す広報活動

       生徒にとっては自分たちが活動しているプロジェクトが、社会の中で評価されれば、活動に対して自信を持ち、より活発な活動を展開することが期待できる。そうした意味で、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの活動を、機会があるごとに広報して社会的な認知を広める活動を行った。

       こうした広報活動は、プロジェクトの活性化による広げる仕組みとなると共に、直接的に参加校を増やすことにもつながると考える。

      (1) 環境学習フェアでの展示

         プロジェクト事務局としての広報活動としては、三重県で行われた「環境学習フェア」への出展が最も大きな活動である。「環境学習フェア」毎年各県の持ちまわりで開催されている、環境教育に関する国内最大のイベントである。各県の教育委員会の環境教育担当者や環境教育の実践校の教員が集まり実践の交流を行っている。この場に酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの出展ブースをいただき、測定器具や活動を紹介したパネルを展示したり、ホームページを実際にコンピュータを操作しながらブラウズできるコーナーも設けた。数多くの環境教育関係者、特に教育委員会の関係者に広報することで、教育委員会の担当者が酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトを認知していただければ、各県の学校から環境教育に関する問い合わせが教育委員会に行われたときに、何らかの形でご紹介いただけるのではないかと期待している。また環境教育を担当する先生方にプロジェクトを広報することで、直接的に参加校の増加につながるのではないかと考えた。各県にもどられてから、この展示を見られた先生方が酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトを説明しやすいように、募集情報も含めて、プロジェクトの概要を示した印刷物を作成し、これを配布した。

      (2) 酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの教科書への掲載

         新学習指導要領が発表され、現在新課程における教科書作りが行われている。その中で、このプロジェクトがいくつかの教科書で紹介される予定である。高等学校において新設される教科「情報」の教科書や高等学校「国語表現」など、発行する出版社から連絡が入っている。

        =====<幹事校から 教科書掲載のお知らせ>=======

        酸性雨/窒素酸化物調査プロジェクト参加校のみなさん
        こんにちは、平賀@福山です。
        昨日、教科書を発行している「第一学習社」から、教科書に酸性雨調査ホームページを紹介させてほしい
        という、承諾を求めるメールが参りました。
        みなさんの観測の結果が、こんな形で利用されていきます。
        
        > ・書名   高等学校「国語表現T」
        > ・発行予定 2003年2月
        > 2001年1月申請図書提出、2001年度検定
        > 2002年度見本本公開(検定合格が条件)
        > 2003年4月より高等学校で使用
        > こちらの教科書の前見返しで、学習指導要領に従って、インターネット
        > の利用法について解説させていただく予定です。
        > 具体的には、近年、社会的問題として注目されている環境問題を題材と
        > して取り上げて、レポートを書くための材料をホームページを閲覧する
        > ことによって生徒さんに集めていただくという内容にしたいと考えてお
        > ります。
        > 実際に生徒さん方が調査なさっておられるということで、感銘を受けま
        > した。全国の他の生徒さん方の励みにもなるのではないかと思われます。
        
        こんな形で紹介していただくと、観測する側も励みになるのでは・・・。
        何かとてもうれしかったので、とりあえずご報告まで。

        =======================

        =====<参加校 矢島先生からのメール>======

        すごいです、今までの私たちの活動が大きく飛躍しそうで、本校も今後も頑張ります。
        矢嶋裕之

        =======================

         生徒に伝えたところ、自分たちの観測の結果が教科書に載って、その教科書を使って学習できることはとてもうれしいし、責任を感じるという感想を述べている。国語というのが意外な感じもするが、色々な切り口で本プロジェクトを活用できるということを示しているのだろうという感想もメーリングリストに流れた。

      (3) 環境イベントへの参加

         今年度は事務局を中心に、様々な環境イベントへ積極的に参加し、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトを広める活動に力を入れた。広島大学附属福山中学校では、平成7年度から酸性雨調査プロジェクトの活動と同時に、環境庁が主催する「こどもエコクラブ」に登録し、環境に対する活動を行ってきている。今年度はこれまでの活動が評価され、11月に広島県で開催された「国民文化祭2000」の閉会式で生徒の代表が酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの活動のようすを紹介し、このようすはNHKの総合テレビでも放送された。また、2月には日本で開かれる「第2回こどもエコクラブ アジア・太平洋会議」に日本代表として参加し、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの活動について発表し、海外からの参加者との交流や意見交換を行うことになっている。

         こうした活動を通して、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトがマスメディアなどにもいろいろな形で取り上げられ、社会から注目されるにしたがって、生徒たちの活動もより充実したものになっていくであろう。このプロジェクトに参加しているこどもたちが、こんなすごいプロジェクトだったんだと、あらためて感じることができるような形を残すことができるように、様々なチャンスを生かして広報活動につとめることが、プロジェクトの活性化にもつながると考えている。

2.8 大学及び企業との連携強化

     21世紀に入って学校教育も、学校・企業・大学という三者の連携の中で進めることが求められるようになってきた。このプロジェクトにおいても、平成12年度はこの点が大きな課題となった。三者の連携についての考え方は、次のようにまとめられる。

     学校・大学・企業の目的

    学校   児童・生徒の教育活動の場
    大学   学問研究の場。
    スペシャリストの要請(例  教員養成系大学では教員養成)
    企業   企業の活動を通しての利潤の追求と社会貢献

    プロジェクトにおけるそれぞれの役割

    学校  プロジェクトへの生徒・教師の参加

      データの収集・登録 データベースを使った教育活動の展開
      学校間の交流 教師の研修

    大学  専門的な立場からのアドバイス

      観測データの分析・評価

    企業  最先端の技術による支援(ネットワーク関連)

      企業の組織による支援
      プロジェクトの事務的な支援  

    プロジェクトに参加して得られるもの

    学校   新しい教育活動の導入
    新しい教育環境の整備
    教師の研修・学校間交流
    大学   大学と学校との連携強化
    大学の社会貢献
    研究資金の確保
    企業   企業の活動のなかでのプロジェクト参加(利益の成立)
    企業の社会貢献

     このような分析を通して明らかなことは、三者の連携を成立させるためには、プロジェクトを支える資金の確保が、必要である。



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