平成12年度 「全国発芽マップ実践企画」
実施報告書


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2. 企画の実施

2.1 実施体制

    2.1.1 実施組織

      2.1.1.1 幹事校

        全国発芽マップ2000プロジェクト幹事校を宮崎大学教育文化学部附属小学校とし,幹事を同校の中西 英教諭とする。

        幹事校は,本プロジェクトにおける協働的実践の中心として,以下のようなことを行う。

        (1)公式ホームページの管理・運営
        (2)参加校の募集・受付
        (3)教師用メーリングリストへの参加校の登録・解除の取り次ぎ
        (4)教師用メーリングリストの運営
        (5)栽培する植物の種子の手配と配布(必要な学校に対してのみ)

         以上のことを行いながら,プロジェクトの協働的実践全般にわたっての目配りをする。

      2.1.1.2 参加校

         全国発芽マップへの参加は,参加を希望する教師から幹事校の幹事へ電子メールで申し込み,幹事が教師用メーリングリストへの登録を行ったことによって成立する。

         参加単位は,原則として小・中・高等学校,盲・聾・養護学校などの,いわゆる「学校」が単位であるが,大学の研究室や学校外の教育組織も「オブザーバー会員」として参加することができる。

      2.1.1.3 事務局

         事務局を(株)宮崎県ソフトウェアセンターに置く。担当者を,井上英幸とする。

         事務局は,書類の発行をはじめとする事務的な手続きの中心となる。

      2.1.1.4 技術開発

         技術開発責任者を,(株)宮崎県ソフトウェアセンターの井上英幸とする。

    2.1.2 プロジェクト委員会

      2.1.2.1 プロジェクト委員会の設置と委員構成

         プロジェクトの企画・運営を遂行するため,プジェクト委員会を組織する。プロジェクト委員会は,取り組みの問題点を議論し,より活発な活動になるよう柔軟に運営を進めて行く。

         2000年度は,以下のメンバーでスタートし,必要に応じて追加や組織替えを行う。2000年度の委員長を,中山 迅とする。

         中山 迅(宮崎大学教育文化学部)
         中西 英(宮崎大学教育文化学部附属小学校)
         宮本伸二郎(宮崎大学教育文化学部附属小学校)
         奥村高明(日向市立富島中学校)
         根井 誠(椎葉村立椎葉中学校)
         井上英幸(株式会社 宮崎県ソフトウェアセンター)
         長友信裕(株式会社 アボック西村)
         池永達也(富士通株式会社 宮崎支店)

         また,プロジェクト委員会とは別に,プロジェクト委員に代表的な参加校の教師を加えた「推進委員会」を組織する。推進委員会は,プロジェクトの具体的な活動の活性化のために,活動現場に即した提案を行い,実行する。

      2.1.2.2 プロジェクト委員会の活動

         プロジェクト委員会は,全国発芽マップのすべての企画・運営を司る。

         2000年度の活動内容は以下の通りである。

          (1)年間活動計画の作成
          (2)宮崎県,宮崎県教育委員会,宮崎市,ならびに宮崎市教育委員会への後援依頼
          (3)「全国発芽マップ2000の集い」の企画,運営
          (4)推進委員会の設置
          (5)ソフトウエア開発への助言
          (6)成果の報告

2.3 集会の実施

    2.3.1 実施の準備

       「全国発芽マップの集い」をプロジェクト委員会で,以下のように計画・実施した。

      (1)目的

         全国発芽マップの参加校の教師と一般の参加者が対面してこれまでの活動流れについて語り合い,今後の活動の方向性を見いだし,あわせて全国発芽マップの活動を広く普及することを目的とする。

      (2)日時と場所

         日時は,2000年11月11日(土)の13:00〜17:00で,開催場所は,宮崎市のシーガイア内のワールドコンベンションセンターサミットである。

      (3)開催についての告知

         「全国発芽マップの集い」の開催について,印刷物,電子メールの配布,Web上での案内の3通りの通信手段を用いて告知を行った。また,申し込みは,Webページ,電子メール,Fax,申込用紙の提出などの方法で行った。

         印刷物は,宮崎県内の各学校に配布し,宮崎県小学校理科教育研究会,及び,宮崎県視聴覚教育研究会には,とくに広報でご協力いただいた。宮崎県内の各学校に配布した文書は,以下のようなものである。

        平成12年10月30日
        各位 殿
        全国発芽マッププロジェクト委員会
        委員長  中山 迅(宮崎大学教授)
        「全国発芽マップの集い」開催のお知らせ
         インターネット活用実践プロジェクト「全国発芽マップ」は,100校プロジェクト の企画と
        して,1995年4月に宮崎から全国への提案によりスタートしました。以来,この企画は,植物
        の栽培に関する学校間での協同学習を通して,自然や社会に直接働きかける学習活動として発
        展してまいりました。今年は,全国で160校もの参加を得て,「協働実践」の初期段階から発
        展段階へ入って来ています。
         今年度,本プロジェクトは「情報処理振興事業協会」及び「財団法人コンピュータ教育開発
        センター」が主催するEスクエアプロジェクトにおいて,協働実践企画プロジェクトに採択さ
        れ,「広がる仕組み」へ向けた新たな活動を開始いたしました。
         その一環として,「全国発芽マップの集い」を別紙の要領で開催いたします。この催しは,
        ネットワーク上の活動とface to faceの活動をつなぐことによって,ネットワーク上の活動をい
        っそう深化・拡大することを目的としています。多数の方々のご参加をお待ちいたしておりま
        す。
         なお、会場の都合もございますので参加ご希望の方は,E-MailもしくはFAXにて事務局に申
        し込みいただきますよう重ねてお願い申し上げます。
        ※参加申し込みにつきましては,E-mailとFAXで受付致しますので下記URLをご覧ください。
        http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/tudoi/tudoi.html
        事務局 
         宮崎大学教育文化学部附属小学校
         住 所:〒880-0026 宮崎市花殿町7-49
         担 当: 中西 英
         E-mail:nakanisi@fes.miyazaki-u.ac.jp
         TEL:0985-24-6706 FAX:0985-24-3176
         URL:http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/
         
        
        「全国発芽マップの集い」
        
        
        主催 全国発芽マッププロジェクト委員会
        後援 宮崎県,宮崎県教育委員会,宮崎市,宮崎市教育委員会
        日程 11月11日(土曜日)
        会場 シーガイア コンベンションサミット2F オーチャード
        総合司会 奥村 高明 氏  宮崎県日向市立富島中学校教諭
        13:00〜13:15 開会行事
        挨 拶  綾部 正哉 氏  宮崎県教育庁教育調整監
        13:15〜14:15 基調講演 
        講演者  美馬のゆり 氏  はこだて未来大学システム情報科学部 教授
        演 題 「コミュニケーションと子どもの学び」
        14:15〜14:45 事例発表 
        宮脇 公治 氏 北海道勇払郡鵡川町立花岡小学校教諭 
        深井 美和 氏 富山県富山市立水橋中部小学校教諭 
        井柳  強 氏 静岡県清水市 地球クラブ      
        15:00〜15:15 休憩
        15:15〜16:45 バネルディスカッション
        〜テーマ「子どもにとっての全国発芽マップとは」〜
        コーディネータ  中山  迅 氏  宮崎大学教育文化学部 教授
        パネラ      谷本 泰正 氏  岡山県立岡山芳泉高等学校教諭 
        中嶋 弘行 氏 京都市立朱雀第二小学校教諭 
        根井  誠 氏  宮崎県椎葉村立椎葉中学校教諭 
        水野 宗市 氏 宮崎県宮崎市立本郷小学校教諭 
        安富 直樹 氏 神奈川県横浜市立神大寺小学校教諭 
        コメンテータ 美馬のゆり 氏 はこだて未来大学システム情報科学部 教授 
        16:45〜16:55 全国発芽マップ宣言
        宣 言  中西  英 氏  宮崎大学教育文化学部附属小学校教諭
        16:55〜17:00 閉会行

         

      (4)プレゼンテーション

         当日のプレゼンテーションは,原則的にプロジェクタにパソコンを接続して行うことにした。そのため,あらかじめ発表者からファイルを送ってもらい,会場用ののパソコンにインストールして動作確認をした。

      (5)配付資料

         「全国発芽マップ2000の集い発表論文集」を作成した。これには,当日のプログラムの他,講演,事例発表,パネルディスカッションのパネラからの原稿を掲載した。

    2.3.2 集会の実施内容

       当日のプログラムは,前掲の通りで,祝辞,講演,事例発表,パネルディスカッション,及び,全国発芽マップ宣言から構成される。

       祝辞では,宮崎県教育庁教育調整監の綾部正哉氏から,全国発芽マップの趣旨を分かりやすく,しかも明快に説明していただいた。また,集会が「集い」と称している意味は,全国発芽マップの参加校と,それ以外の者が一堂に会して意見交換を行いながら新しい教育活動を創造するための集まりだからであるとの説明があった。

       全国発芽マップの集いでの提案内容については,以下に当日のプレゼンテーションで使用された内容を順に掲載することで示したい。

      全国発芽マップの集い
      【プログラム】11月11日(土)
      発表プレゼンテーション
      発表の様子はこちら
                   
      12:00     受付開始
        進行:奥村高明 氏(宮崎県日向市立富島中学校 教諭)
      13:00     開会行事
        挨拶:全国発芽マッププロジェクト委員長 中山 迅 氏(宮崎大学 教授)
           宮崎県教育庁 総務課 教育調整監 綾部正哉 氏  
      13:15     基調講演
        テーマ:コミュニケーションと子どもの学び
           美馬のゆり 氏 (はこだて未来大学 教授)
      
      14:15     事例発表
        発表者:宮脇公治 氏(北海道勇払郡鵡川町立花岡小学校 教諭)
            テーマ:小規模校における『発芽マップ』の取り組み               
      
            深井美和 氏(富山県富山市立水橋中部小学校 教諭)
            テーマ:ケナフから環境を考える子供たち               
                〜アースケナフプロジェクトの取り組みから〜
      
            井柳 強 氏(静岡県清水市 地球クラブ 代表)
            テーマ:夢! 全国発芽マップから世界発芽マップへ!!  
      15:00 休 憩
      15:15 
       バネルディスカッション
        テーマ:子どもにとっての全国発芽マップとは
        コーディネータ:中山 迅 氏(宮崎大学 教授)
        パネリスト  :谷本泰正 氏(岡山県立岡山芳泉高等学校教諭 教諭)
                根井 誠 氏(宮崎県椎葉村立椎葉中学校 教諭)
                水野宗市 氏(宮崎県宮崎市立本郷小学校 教諭)
                安富直樹 氏(神奈川県横浜市立神大寺小学校学校 教諭)
      
        コメンテータ :美馬のゆり 氏 (はこだて未来大学 教授)
      16:45


           全国発芽マップ宣言   宮崎大学教育文化学部附属小学校(全国発芽マップ幹事校)    中西 英 氏 16:55     閉会行事

2.2 教育実践の実施

    2.2.1 実施の準備

      2.2.1.1 共同で栽培していく植物の選定

         植物の栽培・育成・観測企画,特に全国発芽マップのような参加校が広く全国にわたる企画の場合,全国共通の植物を栽培することを通して観測データの共有を図ることができ,栽培活動や観察活動が活性化されるものと考える。

         例えば九州と北海道では,播種から発芽,開花,結実までの期間などは当然違う。その相違等から子どもたちや教師が興味や疑問をもち学習が始まっていく。また,調べていく過程においても,地域による気候の違いや特徴などの新しい学習が様々な方面に広がっていく可能性があるのである。また,電子メールやホームページ,テレビ会議などで成長の様子などを情報交換をすることで,観測データを正確にしかもリアルタイムに伝えるとともに,共同で栽培している共有感をもつことができるのである。

         2000年4月14日(金),幹事校である宮崎大学教育文化学部附属小学校から以下の内容のメールを全国発芽マップメーリングリストに流した。

         発芽マップメーリングリストのみなさん。
         お久しぶりです。中西@宮崎です。
         昨年度の発芽マップではいろいろとお世話になりました。今年も少しずつ発芽マップに
        参加したいとのメールがきています。参加校がまた増えそうです。今年も参加校の子ども
        先生と一緒に情報交換しながらみんなでつくる発芽マップでいければと思います。今年も
        よろしくお願いします。
         さて,本年度育てる植物についてですが,みなさんのご意見を伺いたいと思います。昨
        年度はケナフでした。ケナフの教育的な価値を考えると今年もケナフでもいいようにも思
        いますが,いかがでしょう?また,種まきの期日についてもご意見ありましたらお教えく
        ださい。(ちなみに昨年は5月15日でした。)
         1 育てる植物(         )
         2 一斉種まき期日(  月  日頃)
         3 その他(要望等)
         ご意見お待ちしております。

         この電子メールに呼応して昨年度まで参加していた学校から,共同で栽培していく植物は「ケナフ」でという意見も数多く寄せられた。また,中にはケナフ以外の植物も共同で栽培してみてはどうかという意見を頂いた。

         本校でもケナフのよさは,十分わかっているのですが,3年間のケナフ栽培の成果は,
        十分あったように思います。
         インターネット共同学習の推進力としては,新しいものは何かないかと考えています。
        できれば,ケナフ+ケナフ出ない植物にも挑戦!というのは,どうでしょうか?
         具体的なものが出せなくて申し訳ないのですが・・・
          千成ひょうたん等もおもしろいかな?等と考えています。
          千成というけれど,何個なるのかな?とかいかがでしょう
         1 育てる植物(ケナフ+千成ひょうたん )
         2 一斉種まき期日( 5月15日ごろ頃)
         3 その他(要望等)
          千成ひょうたんの方は,ケナフと別に参加校を募ってもよいかも知れません。 

         このメールからこれまでの参加校の方々の中には3年間続いた共同栽培植物である「ケナフ」の教育現場での有効性を認識しながらも,新しい植物の栽培の挑戦していこうとする参加者の主体的な意識の現れでもあると考える。また,インターネットを活用した協働学習の推進力としより相応しい植物という点で今後,全国発芽マップのシステムの在り方にも関係する重要な部分である。

         ただ,全国発芽マップの趣旨及びこれまでの成果,ケナフの学校教育の場における有効性を踏まえ,2000度もケナフを共同観察の植物として選定した。

         共同で育てていく植物の選定については,参加している子ども,教師の活動及び学習の意識の継続にもかかわる重要な部分であるので,参加校の子ども,教師の意見,育てる植物の教育的な意義等を踏まえる必要があると考える。

         共同で栽培する植物の選定については,参加校が広く全国にわたり,参加校も100校以上にのぼる大規模プロジェクトを推進していく上で今後,重要な検討課題になることが予想される。このメールが,今後の全国発芽マップの内容やシステムの在り方の考えていく1つのきっかけになったことはいうまでもない。  

      2.2.1.2 全国一斉播種の期日の設定

         全国発芽マップの目的として,「同日,同時刻に一斉に全国各地で種子をまき,その成育の様子や子どもたちの活動を電子メールやホームページ等で情報交換し交流を図る。」とある。それは,1つには同日,同時刻に一斉に播種するということで,参加意識が高まること,2つは植物の栽培・育成・観測企画ということで,気候,地域による成育の状況の違いを明確にするためである。

         そこで,育てる植物・一斉播種期日の返信を集計したところ,5月中旬から下旬頃が相応しいとの意見を多数頂いた。そこで,5月の中旬から下旬にかけて学校において行事を組み易い期日を洗い出したところ,5月20日(土)が適当な期日であろうと考えた。また,土曜日ということもあり,午前10時という時刻を設定した。ただ,この全国一斉播種の期日の設定については,栽培する植物の成長の特性等も考慮して設定する必要がある。

         また,北海道から参加されている先生から以下のようなメールを頂いた。

        北海道○○小学校の○○○○です。
        本年度もよろしくお願い致します。
        >  1 育てる植物( ケナフ )
        >  2 一斉種まき期日( 6月10日頃)
        >  3 その他(要望等) 昨年度もそうでしたが,北海道では露地栽培だと,やはり時期
        をずらさないと発芽すらしません。
         みなさんの学校と合わせることができるとよいのですが。

         全国各地の参加校がわたると気候も違い植物によっては発芽すらしない状況が予想される。ただ,全国発芽マップの趣旨から考えると播種期日を一斉にそろえることで学習が生まれてくるため,この時点では5月20日(土)の午前10時で播種期日を全国統一した。

        4月24日(月)に宮崎大学の中山教授から以下のメールを頂いた。

        宮崎大学の中山 迅です。
         今年の「全国発芽マップ」は例年になく盛り上がりそうですね。
         新しい参加者も次々と増えて楽しみが大きくなってきました。
         今年度は,CECに新しい企画の申請をして,児童・生徒の直接の書き込みによる対話が
        出来る仕組みを作りたいと思っています。とは言うものの,開発に時間がかかるので,今
        年度の紙すきに間に合うかどうかかもしれません。それでも,新しい試みができるかもし
        れないので期待して下さい。
         それから,「全国発芽マップ」の何相応しい活動になるように,出来るだけ多くの県か
        らの参加があるといいですね。まだ参加のない県に知り合いがいらっしゃる方は,ぜひ声
        をかけて参加者の幅を広げて下さい。
         よろしくお願いします。

         このメールをきっけにしてこれまでに参加のない県への呼び掛けが参加者を中心に進んでいった。2000年の4月からこれまでに全国発芽マップのメーリングリストに登録したアドレスの数を集計してみたところ,以下の表のように4月,5月,6月を中心にメーリングリストへの登録が集中しているのが明白になった。

         また,このように5月20日の全国一斉播種を過ぎてからも参加の声は止まず,第1回目の全国一斉播種の参加数の3割にあたる参加希望があった。このような状況を考え,第2回目の全国一斉播種期日を設定する必要が出てきた。

         また,この時期に財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)から「Eスクエア(e2)・プロジェクト」の協働実践企画に選定されたとの報告を受け全国に以下のメールを流した。

         全国発芽マップメーリングリストのみなさん。
         中西@宮崎附属小です。本日(5/30)で第1回目の全国一斉播種からちょうど10日です。
        この記念日に嬉しいお知らせです。
         財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)では,情報処理振興事業協会(IPA)と共同
        の「Eスクエア(e2)・プロジェクト」を実施しています。その協働実践企画の1つとして
        全国発芽マップが選定されました。
         本日(5/30)から正式に「Eスクエア(e2)・プロジェクト」の協働実践企画としてCEC
        のホームページに全国発芽マップの目的,参加校の募集等について掲載されていますので,
        ご覧ください。
         以下に本年度の全国発芽マップの取組の予定(抜粋)を簡単に載せておきますので,ご
        確認ください。
        (1)Web上での,児童・生徒の直接対話の実現
           これまでも参加校の先生方から要望がありましたが,Web上に各学校で撮影したデジタ
          ル画像を公開したり,Web上で児童・生徒が直接対話を行うための掲示板を設置する計画
          です。(ただし,稼働は2学期以降になる見通し)
        (2) 「全国発芽マップの集い」の実施(秋口を目処に)
           年間の活動の後半の時期に,代表的な参加校が一堂に会して交流・協議を行う「全国発
          芽マップの集い」の開催を計画中です。この催しは,ネットワーク上の活動とface to face
          の活動をつなぐことによって,ネットワーク上の活動をいっそう深化・拡大することを目
          的とします。
        詳しくは,「Eスクエア(e2)・プロジェクト」のページをご覧ください。
        http://www.cec.or.jp/es/E-square/
         そこで,これから更に参加校が増え,第2回目の全国一斉播種期日(6月)を設定する
        ことになります。新しい参加校の募集期間が平成12年5月29日(月)から平成12年
        6月12日(月)まで設定されていますので,6月12日(月)以降になりますね。先生
        方のご希望をお知らせください。
        --------------------------------------
        第2回目の全国一斉播種期日希望期日
        播種期日:平成12年6月  日( )
        播種時刻:     時
        --------------------------------------
        よろしくお願い致します。

         そこで,第2回目の全国一斉播種期日を集計したところ,やはり土曜日ということもあり,6月17日(土)の希望が多かったため,第2回目の全国一斉播種期日を6月17日(土)の午前10時に設定した。

         2000年度は参加校が160校を超える多数にのぼり,第1回目の全国一斉播種期日以降も参加申し込みが相次いだため,播種期日を2回設定した。このため結果的に北海道・東北地方など寒い地方の参加校にとっては播種期日を合わせることができた。

         播種期日の設定については,この企画が全国規模の企画であるため,共同で栽培する植物の成長の特性,参加校の数,全国の参加校の各地の気候の様子,種子の有無,送付などについても見通して柔軟に期日設定する必要があると考える。

      2.2.1.3 種子の有無の調査及び種子の送付

         共同で栽培していく植物については,参加者の総意に基づいて決められるため,何度毎にに変化していくことが考えられる。共同で栽培する植物が決定したした時点で種子の確保及び参加校への送付を行う必要がある。

         2000年度は1999年度と同じくケナフを共同で栽培することが決定したため,2000年5月2日(火)に,ケナフの種子の有無についても参加校に以下のような電子メールをメーリングリストを通して流した。

        発芽マップメーリングリストのみなさん。
         中西@宮崎附属小です。
         宮崎からもケナフの種子を送付させていただきたいと思います。
        ------------------------------------------------------------
        種子の送付希望書
        種子の送付先
        郵便番号:(   -    )
        ご住所:(                       )
        学校名:(                       )
        お名前:(                       )
        ------------------------------------------------------------ 
         5/20までには届くように送付したいと思いますので,5/9(火)までに連絡いただけると
        助かります。

         このメールを受けて,この種子の送付に関しては,幹事校から送付するだけではない。

        これまでの実践校から送付される場合もあれば,地域のボランティア団体に問い合わせて

        種子を入手する場合も考えられる。つまり,種子の入手に関してもネットワーク上のつな

        がりで交流が生まれるのである。

         以下のメールはこれまでの参加校が自主的に種子の送付を行おうと全国発芽マップのメーリングリストに流したものである。

        北海道○○小学校の○○○○です。
        > 種子に余裕がある方は譲って頂けないでしょうか。
        でどころとケナフの品種ははっきりしないものであれば,若干ご用意いたします。
        返信用の封筒に切手(80円か90円)下記に郵送してください。
        具体的にどれくらいご用意したらよいでしょうか?

         このように,全てのことを幹事校が行うのではなく,参加者が自ら新しい活動を生み出したり,交流をしていくという点は,全国発芽マップの特徴の1つと言える。

         今回の種子の有無の調査後,新しく参加した学校も含めて合計50校以上の参加校にケナフの種子を送付した。             

    2.2.2 教育実践の実施

       本企画を実施する上では,ケナフが一年草ということもあり一年間の大まかなスケジュールをつかんでおく必要がある。ケナフを栽培したときの一年間の節目は,全国一斉播種,発芽,成長の観察,開花,災害,収穫及び紙すき等の流れである。この一連の流れの中でメーリングリスト,ホームページ等で全国の子どもたちの活動や先生方の活動が広がってきたのである。また,それぞれの地域の立場や状況でケナフや全国発芽マップに対する思いが見えてくる。このことは全国発芽マップのメーリングリストの数からも明確になっている。

       全国発芽マップ’2000 全電子メール数 970件

      (2000年度:2000年4月6日〜2001年2月23日まで)

       上記の表をもとに月ごとの主な内容を分析してみた。

       年間のメール数を見てみると,年度当初の4月,5月は参加申し込み,植物の選定,種子の入手方法,全国一斉播種期日の設定,発芽報告などでかなりの数のメールがやりとりされているのが分かる。また,2000年度は第2回目の播種期日を設定したこともあり,6月のメール数もかなりの数にのぼっている。

       2000年度は例年になく,台風の被害が少なかったせいか,台風による被害のメールは少なかった。また,9月,10月,11月にはケナフの料理,紙すきなどが活発になる 時期であり,その方法や実際の進め方などのメールのやりとりが多いのが分かる。

      2.2.2.1 全国一斉播種

         2000年5月20日(土),午前10時,全国約120校(その後42校増えて最終的には162校)の参加校と一斉にケナフの種子を播いた。

         広島県の参加校からは次のような電子メールが届いた。

        「ケナフの種まきは,10時7分に終了しました。宮崎では,何時に終わりましたか?早
        く芽がでたらいいですね。今日の天気は晴れでした。
         気温は,23度でした。昨日,てるてるぼうずをつけてお願いしたので晴れました。嬉
        しかったです。
         種まきの様子と,終わってからの写真を送ります。また,宮崎の様子を教えてください
        ね。」

        といった具合で播種した時の様子やこれからの思いが寄せられた。また,ある子どもはその時の様子や思いを次のように日記に書いている。

        「今日,全国120校以上のお友達と一緒にケナフを植えました。10時きっかりに植え
        ることになっていたので,10秒前にカウントダウンをしました。「10,9,8,…3,
        2,1!」となった時,一斉に種を自分の掘った穴に植えました。育つのが楽しみです。」

         別の子どもは,その時の思いを振り返って,全国発芽マップについて以下のようなイメージマップによる思いを広げていった。

         ケナフの種子を全国の120校あまりの参加校とともに播いたことで,これからの世話,収穫してからの葉書の交流までの思い,ケナフを全国の参加している仲間と育てているという共有感,ケナフの環境への有効性等の特性などについての思いを広げていることが分かる。

         このようにして,全国発芽マップ’2000は,ケナフとともに子どもたちと先生方の大きな夢をのせて始まったのである。

      2.2.2.2 発芽

         2000年度は,早いところで2日後に発芽し,全国発芽マップのメーリングリストにおいてもぞくぞくと発芽の一報が寄せられた。

         京都の○○小学校の○○です。
         残念ながら? 幸いなことに? 日曜日の間には発芽しなかったのですが、きょうになって
        10時頃から教室のがビニールポットの中でどんどん芽を出してきて、その変化が撮れてお
        もしろい一日でした。教室に行くたびに伸びてるのがわかります。メイとサツキの畑みた
        い。
         機会を作ってまたwebに登録したいと思います。とりあえず嬉しかったのでお知らせで
        した。

         ほとんどの参加校が5月23日から5月25日にかけて発芽報告がなされた。それに伴って,各地で発芽の状況を各学校のホームページにアップする活動を盛んになってきた。 

      2.2.2.3 成長の観察

         ケナフは数カ月で3メートルから4メートルにまで,急速に成長する植物である。そのため子どもたちにもその成長ぶりに驚きや感動がある。このことは継続観察していく上でもポイントとなることである。また,成長する過程において葉の形が変わったり,7月から10月にかけては台風も数多く接近することでも数多くの交流や活動が生まれる。

         観察の過程においては,教師自ら観察した結果をホームページに掲載したり,電子メールで情報交換する場が数多く見られた。また,子どもたち自身も観察したことを電子メールを使って他の学校に報告したり,ホームページを見たりしながら成長の様子を比較したり,それをもとに育て方を工夫するなどの取組が見られた。 

         また,子どもたちが観察をしていく上でその観点を与えて観察していくことも考えられる。今回は試行的に先のような形式の観点を絞った観察活動を行ってみた。

      2.2.2.4 開花

         ケナフは大抵の場合,9月から10月にかけて開花する。クリーム色をしたハイビスカスに似た花である。

         開花の状況も全国各地から報告されたが,開花だけでなく,ケナフの花を使ってのジュース作り,工作,ケナフ染め物など,開花1つとっても様々な活動が生み出されてきている。

         本年度は2000年7月28日に開花の第1報が全国発芽マップのメーリングリストを通して流された。

        暑中お見舞い申し上げます。
        山形県○○学校の○○です。
        5月の標準日に植えたものはまだ、1メートルくらいですが、ビニールハウスで育苗して、
        6月に移植した苗が見る見る生育して、最高で2メートル50センチに成りました。
        昨日、茎の途中に蕾を二つつけていましたが、今朝、そのうちの一つが開花しました。昨
        年の秋以来、1年ぶりの白い花です。二つのうちの一つはすでに落下しました。
        このまま、順調に育てばと願っています。台風などの被害が無ければと思います。

        また,このメールの呼応するように,

        ○○市立○○小学校の○○です。 
        連日の厚さでケナフも順調に成長しています。2ヶ月めには140センチほどだったケナ
        フも2メートル近くに伸びてきました。
        今日、学校にみずやりに行って、花が2つ咲いているのを発見しました。去年より2週間
        ほど早く咲きました。そんなに大きくのびているケナフではありませんが、次々と咲いて
        いきそうです。

         このように,全国各地の参加校でビニルハウス栽培などの育て方を工夫したり,昨年度との成長の比較をしたりするなどして工夫した取り組みも報告された。このような電子メールでのやりとりを通して,自分たちの栽培しているケナフの様子を振り返るきっかけにもなっている。

      2.2.2.5 収穫及び紙すき等

         10月頃からは,収穫の段階に入る。収穫といっても紙すきをするために茎を用いたり,工作をするために茎や葉を用いたり,ケナフを使っての料理をするための収穫である。ケナフは素材的にも捨てる部分がなく,ほとんど全てを使うことができる。茎は紙の原料や工作の素材,葉は料理の材料,手作り葉書の飾り,花はジュースの材料,押し花など使い方次第で様々な活動を行うことができる。

         宮崎大学教育文化学部附属小学校では,全国発芽マップでの一斉播種を学校行事「ケナフとともに」として教育課程に位置付け,そこから生まれる子どもたちの自由な発想を生かした活動を展開した。子どもたちは主に総合的な学習の時間に全国発芽マップから生まれる学習や活動に取り組んでいる。以下はその実践の様子である。

         6年生の実践から〜

         上の写真はケナフを用いたケナフパルプ作成と紙すきの際の様子である。子どもたちはこのパルプ作りに2週間かけて取り組んできた。また,このパルプを作るまでに,パルプ化の仕方,それに伴う準備等をほとんど自分たちの力で行ってきた。教師は一緒に活動を楽しんだり,安全面など必要な助言をしながら子どもたちの活動を見守ってきた。

         この他にもケナフの葉のパウダーを作ったクッキー作りやホットケーキ作りなど,料理の活動,また,他地域の友達と電子メールの交換をする姿も見ることができた。

         4年生の実践から〜

         本校の4年生の中に,全国発芽マップの一斉播種を経験することで,ケナフに興味をもち総合的な学習の時間にケナフの葉書を作ろうということになった。そこで,自分たちでインターネットや教師から情報を集パルプ作りから紙すきまで行ってきた。

         2000年10月6日の「鳥取県西部地震」で被害にあった,全国発芽マップ2000の参加校にできた葉書を送ろうということになった。

         会見小のみなさんへ
         元気ですか?私たちは宮大附属小学校の4年生です。地震は大丈夫でしたか?私たちは
        とても心配しています。
         ケナフはだいじょうぶでしたか?この紙は私たちがケナフで作ったものです。もし,ケ
        ナフが地震でだめになってしまったのなら,私たちがパルプを作ったのでそれを送ります。
        地震に負けないでがんばってください。  
        宮大付属小学校の4年3組 より

         このように,ケナフの成長に関することやケナフをもとにした様々な活動が生まれていった。また,ケナフのことだけでなく,参加校の様子を心配するといった活動も生まれていった。

    2.2.3 幹事校,参加校の活動

      2.2.3.1 幹事校の活動

         全国発芽マップのように参加校が多数にのぼり,参加校が日本全国にわたる協働プロジェクトを推進していく上で,幹事校として次の点に留意してプロジェクトを推進してきた。

        ○ 参加校に対する種子の提供及び送付 

           本企画の準備段階で全国の参加校に対して,種子の有無を全国発芽マップのメーリングリストで問いかけ,種子のない学校や新しく参加した学校については幹事校から種子を送付する必要がある。

           2000度も昨年度と同じく,ケナフを共同で栽培していくことに決定したため,これまでの参加校は種子を収穫している場合もある。しかし,成育の状況,地域差による気候の違いによっては種子を収穫できなかった場合もあった。しかし,各地のボランティア団体や近隣の参加校から種子を分けてもらうなど新しいネットワークも広がってきている。

           本年度の場合は新しく参加した学校を含め,全国50校以上の参加校にケナフの種子を送付した。

        ○ 全国発芽マップのメーリングリストの使い方の共通理解

           参加校の先生方のコンピュータや電子メールの使い方は一律ではなく,初心者の方もいればベテランの方もいる。そこで,全国発芽マップのメーリングリストの使い方をある程度共通理解しておく必要があると感じた。

           そこで,以下のような内容で全国発芽マップのメーリングリストの使い方を共通理解した。

           昨年度までの取組からいくつかの「とりきめ」がありましたので,お知らせします。

          1 全国発芽マップのメーリングリストへのアドレスの新規登録及び変更,削除については私の方で集約して申請します。アドレス,所属等を明確にしてお知らせください。ま た,変更については旧アドレスと新アドレスを併せて送ってください。

          2 参加している学校のホームページへのリンクは自由です。ただし,画像,文章など作成者の許可を得る必要があると考えられるものの使用については,個人的に承諾をえるようにします。

          3 電子メールには差し支えない項目について以下のようにな署名をつける。

           (形式はどのようなものでも結構です。)

          -----------------------------------------------------------
           学校名:宮崎大学教育文化学部附属小学校
           住 所:〒880-0026 宮崎市花殿町7-49
           名 前: 中西 英(発芽マップ・算数担当)
           Name: SUGURU NAKANISHI
           TEL:○○○○-○○-○○○○ FAX:○○○○-○○-○○○○
           URL:http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/
           E-mail:nakanisi@fes.miyazaki-u.ac.jp
          -----------------------------------------------------------

          4 メールへ写真等,画像の添付は原則的にしません。ホームページを公開できない学校 等はできるだけ画像等の容量を小さくして添付してください。

           (ダイヤルアップの学校はダウンロードにかなりの時間がかかるようです。)

          5 メールをHTML形式ではなく,メール用のソフトの初期設定を「テキストメール」と か「書式なし」でお願いします。

           このようにある程度のメーリングリストの使い方を共通理解しておくことで,参加校のそれぞれの環境にも対応できるとともに,事務処理の手間を省くことができた。

        ○ 観察結果の共有化(Web化)

           観察結果の共有化については,本企画が全国規模でしかも観察データの活用が望まれていることから,子どもたちでも容易に活用することができるホームページを作成する必要がある。

           幹事校として,2000年度は参加校の数,学校名,場所等を一目で確認できる参加校一覧のページを作成した。しかし,現時点では参加校の子どもたちや教師が,発芽や成長の様子等の比較を容易にできるようなホームページではないため,今後は一覧比較できるようなホームページの在り方の検討していくことが必要である。また,子ども同士が直接観察した結果などをもとに意見をやりとりする掲示板機能を備えたページなどを整備していく必要もある。

        ○ 観察活動の推進

           観察活動の推進については,幹事校として以下のことを行ってきた。

           まず,全国一斉観察日を設定したり,観察結果のweb化をしたりして情報の共有化を図ることである。全国一斉観察日を設定することは植物の成長の特徴にも左右されるが,継続的に観察活動を続けていく上では有効であると考える。また,観察結果のweb化については観察結果の記録の役割も担っているので,今後も進めていきたいと考える。ただ,参加校の環境によっては自校のホームページを持つことができない学校もあるため,ホームページを持つことができなくても観察結果の共有化をすることができるシステム開発も課題として挙げられる。

           次に全国発芽マップメーリングリストを通して,観察活動の呼び掛けを行ったり,参加校の活動を紹介したりして活動への意欲を高めることである。この点については幹事校のみならず,参加校同士の電子メールのやりとりによって成り立っている場合も多い。つまり,参加者同士が刺激し合って次の活動が生まれてくるのである。

           全国発芽マップの活動や学習は,参加校にまかされている部分が多い。このことは,各参加校の教師や子どもたちが自主的な活動を期待しているとも言える。

           観察活動の推進については,来年度へ向けての全国発芽マップの構想,システム作りの面でも重要な部分である。共同で栽培する植物,参加校の数等を考慮しながらどのような方法が効果的か検討していきたいと考える。

        ○ 全国発芽マップを活用した授業を実践

           全国発芽マップを活用した授業実践は理科をはじめ,学級活動,創意,総合的な学習など様々な教科,領域等で実践されてきている。

           ここでは,宮崎大学教育文化学部附属小学校の子どもたちがこれまでの取り組んできた実践例を学級活動,学校行事,総合的な学習の時間で紹介する。

          1 学級活動においての実践

            ○ 題材名  ケナフで広げようぼくらの夢を

            ○ 題材について

               本題材は,ケナフという素材を通して,他の教科等で学習したことを生かしながら,ケナフのよさや特性を学校内外に広げていく手段や方法を学級のみんなで考え,実践していく題材である。

               この活動は,子どもたちの今の思いを実践として表すことができ,子どもたちの期待を十分にふくらませることができる活動である。また,話合いや実践を通して,お互いに協力して活動したり,自主的に活動したりする姿が期待できる。さらに,子どもたちが,この活動をきっかけにして,他の教科等での学習でも地域の方々との交流を継続していこうとしたり,環境を意識した活動をしたりする姿も期待できる。

            ○ 子どもについて

               子どもたちは,これまでに理科の学習を中心にした教科等の学習の中で,ケナフの特性やよさについて学んできている。また,PTCA活動で,「ケナフの収穫祭」に取り組んでおり,その活動に向けて,子どもたちは,収穫祭の内容や運営方法,紙すきや料理等の準備を進める等,自発的,自治的な活動を行ってきている。そして,これらの学習や活動を生かして,あまり知られていないケナフの特性やよさを,学級のみんなで地域に広げていきたいという思いを抱いている。話合い活動では,日頃からよく発表する子どもを中心に活発に意見交換する姿が見られる。また,教師の支援のもと,男女を問わず協力する姿がある。

            ○ ねらい

               これまでの他教科等の学習を生かし,ケナフの特性やよさを広げていく活動を通して,活動のよさや成就感を味わいながら,学級の一員としての所属感や地域社会の一員としての自覚を高める。

            ○ 各教科との関連

               理科「植物の成長」,家庭科「野菜を使った料理」,図画工作科「ケナフを使って」等の学習内容と関連を図りながら実践に生かしていく。

            ○ T・Tを中心とした協力的な指導 

               活動の内容や場の広がりに応じて,複数の指導者が,子どもたちとともに一緒に活動を行う。地域の方からの手紙や励ましの言葉等を紹介し,実践への意欲付けを図る。

            ○ 教育の場の広がりに留意した学習活動

               PTCA活動「ケナフ収穫祭」での紙すきや料理等の体験活動,運営,準備等の自発的,自治的な活動を 生かしながら実践に発展させていく。

            ○ 期待される学習効果

              各教科等の学習を生かしながら,ケナフを広げたいという思いを実現することができる。
              活動に対する励ましや賞賛の言葉かけにより,ケナフを広げていこうという思いがふくらみ,活動の成就感を味わうことができる。
              学級や友だちのよさを確かめ合うことができる。
              今後の教科等への発展が期待できる。

            ○ よさを発揮している子どもの姿

              今までの学習を生かしながら,ケナフの特性やよさを広げる活動への思いをふくらませ,活動への意欲をもつ。
              自分の思いや願いを,話合いや実践の中で表現しようとする。
              お互いの活動や学級のよさに気付き,これからの自分たちの学習や活動に生かす。

          2 学校行事においての実践

            1 目 的

              ケナフに関する学習や活動を通して,ケナフに対する関心や自然環境に対する意識を高める。
              活動を電子メールやホームページ等で情報交換したり,データをまとめたり,交流を図ったりする活動を通して,各教科のねらいを実現すると同時に,総合的な学習に発展することを期待する。

            2 日 時

              ○ 平成○年○月○日(土)○校時

            3 現 状

              ○ ケナフの成長が思わしくない。
               ※ 原因としては,わかたけ農園の土壌不良,天候不良等が挙げられる。
               ◎ 反面,この現状を学習のきっかけにすることも考えられる。

            4 実施方法

              子どもたちの実態(ケナフに対する意識等も含めて)やケナフの成長の様子等を考慮しながら各学年・学級で内容や実施の有無を検討し,実施できる場合は実施する。5 予想される学習・活動内容 
              発芽マップ参加校のホームページ(ケナフ関連)を閲覧する。
              紙すき活動(ボランティアの方を招いて)
              紙すきをしたはがきを使っての他校との交流
               (発芽マップ参加校一覧については本校ホームページ参照)
              ケナフを素材にした料理
              ケナフを素材にした工作
              学級のホームページの作成(構想や内容の話合い,作成)
              電子メール等による他校との情報交換及び同時授業
               (発芽マップ参加校一覧については本校ホームページ参照)
              ケナフの世話
              ケナフについて調べる。(生長,開花,結実の様子)
               ※その他,様々な学習や活動が考えられる。

            6 その他

              実施された場合には,生写真,デジカメ,ビデオ,日記等の記録を数多く残していただきたい。
              Eスクウェアープロジェクトとの関連

          3 総合的な学習の時間においての実践

            1 活動名 はばたき調査隊!〜私たちの生活,環境を見つめて〜

            2 活動について

               小学校最高学年の総合わかたけ活動のスタートにあたり,1学期にアンケートを実施した。子どもたちからは,5年生までの学習や体験をもとに『人との交流活動』『環境に関する活動』『創造的な活動』等の活動内容が出された。そこで,その結果をもとに,総合わかたけ活動の取組について各学級で話し合った。各々の学級での話合いでは,活動内容を話し合う前に,「学年全体で活動を進めた方が,活動が広がるのではないか。」という意見が出て,学年全体で話し合うことになった。

               学年全体での話合いでは,「ケナフに関しての活動がしてみたい。」「外国の料理や健康によい料理をつくってみたい。」「今,問題になっているいじめについての映画づくりをしてみたい。」「環境にやさしい素材を使ってものをつくってみたい。」等の具体的な活動内容が出てきた。しかし,グループによっては,活動が単発的であったり,活動自体が滞ってしまったりする等の問題が生じ,途中で活動内容を変更する子どもも出てきた。

               子どもたちが1学期から続けたいと思っていることや新たにやろうとしていることは,身の回りの生活や環境と関係の深いものであった。そこで,2学期の初めに環境というキーワードでイメージマップをとり,環境から連想される事柄のイメージが広がっていった。子どもたちが連想していったものから,活動の可能性を話し合った。そしてその結果,身の回りの生活や環境について興味のあることに取り組んでいこうということになった。現在,次のような活動に意欲的に取り組んでいる。

              「廃材を使っての本棚作り」「ケナフに関する活動」「グリーンマークを活用した活動」「環境に関するマンガ作り」「サラダプロジェクト」「リサイクルに関する活動」「環境に関するホームページ,ラジオ番組作り」「シンガポールと日本の環境の比較」

               このようにして本活動は生まれてきたのではあるが,環境というテーマのもとで単に環境問題の現象を扱うのではなく,一人一人の生活に結び付く学習になるようにしていきたい。このことから,本活動は,自分の生活を見つめながら,活動を進めていけるようにしていくことが大切になる。また,自然や社会とかかわる直接的な体験は,子どもが自分なりに生活や環境を見つめ直す場やきっかけになっていく。

               本活動は子どもが身の回りの生活や環境を見つめ直すことを通して,自分にとっての環境の意味を問い直していく活動である。そして,子どもや教師がともに,学びの共同体として認め合い,励まし合いながら新たな自分をつくりだしていく活動であると考える。

            3 期待する子どもの姿

              ○ 自分の生活や環境に関することについて自分の活動に見通しをもち,自分なりの考えをもって取り組もうとしている。

              ○ 自分の生活や環境に関することについて関心をもち,進んで環境に関することについて自分なりの方法で情報収集をして調べたり,表現したりしようとするなど,これまで の学びを生かして学習を進めようとしている。

      2.2.3.2 参加校の活動

         2000年度の全国発芽マップの参加校は計162校である。

         実際には全国各地の学校でボランティア団体との交流など,学校間だけでなく様々な活動や交流が生まれている。また,全国発芽マップの特徴の1つでもある,参加している参加校が独自の提案ができることから自主的な活動も生まれはじめている。

         ここでは,それらの各学校等の独自の取組や提案を紹介する。   

        ○ 参加校の自主的な取り組み

           北海道勇払郡鵡川町立花岡小学校の宮脇先生は自主的に全国の参加校のクリッカブルマップを作成してくださった。このクリッカブルマップは,各地の参加校のひらがなの読みも記入してあり,子どもたちにとって非常に分かりやすいものであった。また,参加者もリンクを張り,積極的に学校の読みを教え合うなど活動が活性化した。

           岡山県立岡山芳泉高等学校の谷本先生の作成された全国の開花状況を日本地図上にまとめるページでは開花状況を色分けして見やすくしていただいた。これまでの活動ではなかった新たな活動であった。

        ○ 全国発芽マップから派生したスモールプロジェクトの取り組み

           全国発芽マップ2000の取り組みの1つとして,全国発芽マップの中で,参加者に「研究会」や「フォーラム」を立ち上げていただきその世話人となっていただくことを提案した。研究会のテーマは,たとえば「ケナフは生態系をこわすのか?」「もっと環境にやさしいパルプづくり」「ケナフの成長の条件を探る」「きれいな花のコンテスト」「ケナフで何でも作ってみよう」「ケナフ以外の植物を育てよう」等など,何でもよいこととした。

           すると参加者の先生から研究会についての提案をいただいた。

          「地球クラブ」井柳 強先生からのご提案です。

          ----------------------------------------------
          MLのみなさん、こんにちは。
          在職中、100校プロジェクトで学んだ体験を子どもたちに還元しようと退職後、「地球クラ
          ブ」という地域の子どもたちのクラブを作り、活動を支援している井柳と申します。ここ
          には、オブザーバー参加させてもらっています。
           先日,全国発芽マップ幹事の中西先生から,「研究会」「フォーラム」募集のメールが
          流れてきましたので,それにお応えする形で,ミニ研究会(または同好会)の提案をさせて
          いただきます。
           ケナフの栽培、紙漉きなどの活動を通して、バ ーチャルだけではなくリアルな対話の面
          白さをを実現した「全国発芽マップ」は、発足当初に比較して参加校も増え、内容的にも
          充実してきたことに驚かされました。これをさらに発展させるにはどうすればよいかとい
          う、ひとつの案として、「全国発芽マップ」の国際化を考えてみました。
           私たちのこれまでの地球クラブの活動は、1:1の交流であり、「全国発芽マップ」の
          ような組織的な活動体験はありませんでした。しかし,今回は全国発芽マップの活動の中
          のオプションとして,ミニ研究会または,同好会のような形で「世界発芽マップ」をスタ
          ートさせ、そこで試行錯誤してみようということを計画、ここに提案をさせていただきま
          した。
           「えっ!世界発芽マップ」 気候の異なる北半球、南半球、アラスカ、インド。。。言
          語、学期制度、カリキュラムの相違。検疫制度により海外への種子の送付の困難。。。。
          こんな違いの中で、何をどうやってする?」確かに多くの問題点を抱えています。
           でも、植物の国際共同栽培は、英語を使わないで、小学校低学年でもデジタルカメラ画
          像や、手書き絵などををとおして、子どもたちの感動をお互いに伝え合うことができると
          いうすばらしさをもっていることは事実です。
            例えば、「地球クラブ」では、9月から「サラダプロジェクト」 という企画の準備をし
          ています。サラダの食材になる野菜をプランタで育てサラダを作る計画です。
           1)サラダParty日の決定(アメリカ感謝祭前を予定)
           2)栽培種子の選択
           3)播種日の決定(サラダParty日の前に収穫できるように自分のところの気候に
          合わせて決める)
           4)成長の様子、栽培方法などの情報(画像)交換,成長の様子伝える絵葉書作りと交換
           5)収穫
           6)サラダ作り
           7)Virtual Salad Party
           8)自分たちが栽培した野菜で作ったサラダの国際比較
           8)相手とひとつのHTMLを共同で編集
           9)英語はできるかぎり使用しないでComunication for picturesをする。
          いろいろな、問題点がありますが、それだけに学ぶところも多いと思います。まず、仮名 「世界発芽マップ」同好会を発足させたいと思います。皆さんの参加をお待ちします。ど れだけの参加者、どんな活動ができるか、うまくいくか、予想はできません。さしあたり は、「全国発芽マップ」ML内のミニ同好会ということで、情報を共有させていただく形 でスタートさせてもらえればうれしいです。

          という提案内容であった。そこで,幹事校として井柳先生から提案のあった「サラダプロジェクト」に参加させて頂くことにした。

           この「サラダプロジェクト」では外国語の学習,自然体験,HTMLによる共同編集,児童同士の交流など活動が拡がる可能性を感じたためである。

           以下はこの「サラダプロジェクト」に参加した子どもたちと地球クラブとの電子メールによる交流の記録である。

          「地球クラブ」より
          中西先生、それと宮崎附属小みなさん、「地球クラブ」からこんにちは。
          宮崎附属小みなさん、はじめまして,きょう、先生とあなたがたの活動風景をみました。私
          たちもここにいるから私たちのプランタもみてね
          いっしょにがんばろうね。  ○○ より
          http://www.iceberg.org/~iyanagi/salad/fl/fl1/earth2.html
          ○○さんへ。
          お手紙ありがとう、きのう、活動があり、10月14日が次の活動日です。
          それまで、メンバーから手紙がかけなくてごめんなさい。
          かわって、地球クラブのおじさんからのメールです。
          ニュース
          * "Kristen E. Russell" <kristenerussell@hitter.net>
            Kristen 先生からメールがとどきました。
          * あなたがたの活動の様子を掲示したURLをアメリカ・フロリダ州に伝えました。
          * 地球クラブ宛てに4枚の画像がとどきました。
          1枚を紹介します。あなたがたのともだちの活動風景です。
          http://www.iceberg.org/~iyanagi/pdata/florida1.jpg
          * はやく、あなたがたの様子を伝えてくださいね。
          * Thank you so much for all of your hard work. My students are thrilled with 
          everything you are doing.
           と、あなたがたと地球クラブの活動について書いていました。
          * アンケートありがとう、翻訳して、ホームページに掲載させてもらいます。
           このクイズ、あたるかどうかな?種があまっていたらあなたがたも挑戦してみてね。
          「地球クラブ」のおじさんから
          「宮崎大学教育文化学部附属小学校」より
          ○○ちゃんへ
           これからも,がんばってね。
           また,メール送ります。
          「地球クラブ」より
          ペルーのサラダ野菜と宮崎の二十日ダイコンと姫ダイコンそれに清水のロケットが一つの
          皿の上でこんにちは!
          ああ、おいしそうだなー。ロゴマークは、皆さんにお任せします
          それでは、また  
          「宮崎大学教育文化学部附属小学校」より
          地球クラブのおじさんへ
          メール有難うございました。
          発芽したので,写真を送ります。今日には,送れるので待ってて下さい。
          「地球クラブ」より
          楽しみにまっています。簡単な説明も日本語でつけてね。
          世界発芽マップの絵はがきを作りました。うまく、見みることができたらおしえてね。
          こんな、簡単なカードでよいから外国のちもだちにおくってあげるとすぐともだちになれ
          るよ。
          写真ありがとうぶじに到着しました。上のURLをみて、7,11,12,13ページの
          説明を書いて送ってもらえませんか。英語でも、日本語でもいいですよ。3-4行くらい
          にまとめてお願いします。
          「宮崎大学教育文化学部附属小学校」より
          ペルーのお友達もみてくれるといいな!!
          「地球クラブ」より
          完成したら、ペルーにつたえます。ビニールハウスで栽培、すごいですね。
          頑張ってください。14日が活動日です。みなさんの活動風景を見せる予定です。

           この電子メールのやりとりのように,本校の子どもたちは自分たちの活動を画像として記録し,それを説明文とともに地球クラブに送った。そしてそれらの画像や文章をもとに井柳先生を中心に共同でホームページを作成して頂いた。この相手とひとつのHTMLを共同で編集西行をすることは初めての試みであった。

           子どもたちは,この「サラダプロジェクト」に参加して様々な活動を行うことができた。例えば畑作り,栽培する野菜の選定,野菜の世話,サラダのレシピ探し,英単語の翻訳,電子メールによる交流などである。

           参加校の数は少なかったものの,内容の濃い活動を展開できたのではないかと考える。この取り組みでは,インターネットによる協働学習の参加校の数,内容など多くの成果を生み出したと考える。また,このようなスモールプロジェクトが全国発芽マップのの中の取り組みとしてこれからも増えていくことが予想される。

2.4 教育実践活動の対外的な公開、普及方法

    今年度の活動に関し、対外的に公開・普及するために、下記の活動を行った。

    (1) 

    「全国発芽マップの集い」の開催

     学校関係者訳100名が集まって,美馬のゆり先生の講演,全国発芽マッブの先進的実践校からの発表,パネルディスカッションによる協議などを行った。特に,宮崎県内の学校関係者へのPRを行った。

    (2) 

    「全国発芽マップの集い」の資料集の内容と,PewerPointの内容をホームページで公開することで,「集い」に参加していない学校に対して,実践の趣旨と今後の展望の周知を行った。

    (3) 

    明治図書の教育雑誌「楽しい理科授業」(2001年3月号,特集: 授業のIT化-子どもにどう体験させるか)に「全国発芽マップ」の紹介した。これは,全国発芽マップの集いの講演者の美馬のゆり氏,プロジェクト委員の中山 迅,奥村高明,そして推進委員の深井美和がそれぞれ原稿を書いた。

    (4) 

    明治図書の教育雑誌「授業研究21」(2001年2月号,特集: インターネット活用で授業が変わる)に「全国発芽マップ」の実践を紹介した。

    2.4.1 成果物の公開

      今年度の成果物に関しては、下記のURLにて公開し、利用を希望する学校にはWebからの申し込みで利用できるようした。

      http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/HomePage/kyoudoupuro/hatuga13/hatuga13.html

2.5 中間報告会でのコメントに対する対応

    2000/11/10に行われた中間報告会において下記のコメントをいただいた。

    それに対しては、平成13年度の取り組みから本格的に取り組んでいく。

    具体的には、複数のプロジェクトを立ち上げる予定であり、「紙創りプロジェクト」などが候補に上がっている。

    場の提供に関しては、2月から約1ヶ月間、参加校に実験的使用を呼びかけた。6校から希望があり、成長記録や掲示板機能を実際に試用していただき、非常に好評を得ることが出来た。こちらも平成13年度に本運用に入る。



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