2部 インターネット教育利用の協働的実践研究

全体編 協働的実践研究の総括


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5. 各企画の概要

5.1. 酸性雨/窒素酸化物調査プロジェクト

       酸性雨や窒素酸化物の測定を核にして、ネットワークを利用した新しい教育システムを総合的に開発しようとするものである。本年度の活動は、大きく「指導者研究会」の開催、児童・生徒に使いやすく授業でも活用できるWebページの開発の2つから成る。

       広域ネットワークを使って、全国的な規模で展開されるこのプロジェクトは、次のような目的を持っている。

      平成12年度の目標と実績

        (1) 推進委員の設定

           参加校から積極的にプロジェクトを推進してもらえる推進委員(リーダー校)を目標6名以上(目標)を選定する。実績は6名の推進委員を選定した。

        (2) 総参加校数

           総参加校数を80校以上(目標)とする。実績は106校が参加した。

5.2. 全国発芽マッププロジェクト

       子どもたちの対話と協働的な学びの道具としてインターネットを利用する教育活動の雛形として「全国発芽マップ」を位置づけた。そして,この企画を発展させると同時に,この企画をきっかけにして新しい協働学習の企画が生まれてくるような仕組みづくりを目指して,協働実践プロジェクトを遂行した。

      (1)広げる仕組み作り

      (2)全国発芽マップの集い

         ネットワーク上の活動とface to faceの活動をつなぐことによって,ネットワーク上の活動をいっそう深化・拡大することを目的として,2000年11月11日(土)に「全国発芽マップの集い」を開催した。これは,全国発芽マップの代表的な参加校が一堂に会して交流・協議を行う初めての試みである。

         集いの参加者は約100名にのぼり,これまでの全国発芽マップで培ってきた実践をもとに,活発な協議を行った。ここでは,栽培する植物などの「自然」,あるいは,インターネットを通して接する「人々」から直接学ぶということが再確認された。そして,「すべての活動を参加者がつくっていく」という全国発芽マップの文化がいっそう広がった。

      (3)児童・生徒の直接対話を促すシステムの開発

         発芽マッププロジェクトの大きな課題の1つとして『児童・生徒の直接対話による協働学習の実践』がある。現在までの活動は,"先生"を中心とする大人が媒介として存在し,児童・生徒の活動,ひいてはアイデアや発想といったものは,すべて"先生"を仲介し伝達されていた。学校のインターネット環境や現実的な運用体制を考慮し,児童・生徒の直接対話による協働学習を実現するため,今年度の事業で,Webを用いたコミュニケーションシステムの開発を行った。

5.3. エネルギー・環境問題総合教育用地理情報データWebシステムの構築と活用

       全国規模で小学校、中学校、高等学校等の参加と連携を求め、自然放射線の継続的な測定作業とその結果を題材に、インターネットに接続された「エネルギー・環境問題総合教育用地理情報データWebシステム」の構築と活用を通じ、エネルギー問題や、人体、環境への影響理解を総合的に深めることを目的とする。

       エネルギー・環境に関する測定対象データには種々のものがあるが、本テーマでは自然放射線を測定対象とし、医療をはじめ暮らしの中で深い関わりのある放射線、放射能について正しく認識させるとともに、人体、環境への影響についての知識と理解を深めるものとする。放射線測定については、簡易測定器の無償貸出制度、手作り測定器等を活用し全国規模で継続的に実施する。その測定結果をインターネット経由にて「エネルギー・環境問題総合教育用地理情報データWebシステム」に集積しGISの各種分析機能を用いて可視化し、太陽活動による変化、標高による変化等の物理、地理、地学的分析を加え総合的に考察する。

      (1)Webサイトの構築

         サイトを開設し、全国規模でインターネットに接続可能な中学校、高等学校の参加を求め自然放射線の測定をはじめとするエネルギーや環境に関する各種データを継続的に測定しGISに蓄積して共同学習に活用できるようにした。

        • 測定結果の情報発信:参加校の位置を日本地図上にプロットし、自然放射線の測定結果を表示するホームページを作成した。測定結果については、測定データを汎用的に蓄積できるGISにより処理し、各種統計分析機能と可視化アプリケーションの組み合わせ利用により、環境(地理的条件、地質、建物等)との相関関係等を考察できるよう配意した。特に、自然放射線量の地域差に影響すると考えられる地質図を表示できるようにした。

        • 放射線教育用インデックス:インターネット上にある放射線に関する各種情報を容易に検索でき、かつ授業に使用可能な関連ホームページへのリンク集として、放射線教育用インデックスを用意した。

        • 掲示板:自然放射線の測定結果や放射線についての情報交換、交流を行うことを目的に、電子掲示板を設置した。特に放射線教育に関する質問については、専門家による質疑応答が行なえるよう配意した。

      (2)自然放射線の測定

         自然放射線の測定には、放射線計測協会より「はかるくん」の無償貸与を受け、全国規模(平成12年度は、各都道府県に1校を目標に47校)で参加協力校を選定し、共通測定条件(3種類)を設定した放射線測定記録シートに基づき自然放射線の測定を実施した。また、共通測定条件以外のものについては、各学校の自主性に任せ測定を実施することとした。

         Webシステムの機能仕様策定、放射線教育の実践、指導方法の検討については、学識経験者(放射線教育フォーラム)、中学、高等学校教諭から成る委員会の指導体制のもと研究を進めることとした。

5.4. 子ども用交流ホームページ「子どもの広場」プロジェクト

       これまで、子どもたちの交流に主眼を置いたウェブのシステムのあり方、また、インターネットの学習活動への活用の模索のための検証・検討が行われ、ウェブデザイン(インターフェース)の検討、ウェブ上の電子会議室の数、活動テーマ、子どもたちのメールのやり取りに関する教師の援助の仕方、スタッフのモデレートの仕方についての示唆が出された。

       全国の学校を参加対象とする学習活動で活用できる交流の場、発信の場の構築を最終目標とするために、さらなるインターフェースの改良・変更、より多くの学校が参加した場合のシステムの負荷、会議室運営にかかわるノウハウを蓄積・改善を行う。これまでの4校から数十校へ拡げる仕組み作りを行った。

       子どもたちが情報収集のみに終わらない双方向性のある「子どもの広場」をウェブ上に展開することにより、総合的な学習に代表される学習場面への「場」を提供すると同時に、総合的な学習でも重視されている情報へのアプローチ、また、コミュニケーション力の育成にも寄与することができ、単にホームページのブラウジングで終わらず、モラル教育に活用でき、参加校教師にも実感できる「場の提供」を行った。

5.5. 学校・家庭・地域社会・自治体の協働学習支援ネットワークの構築

       「生きる力」を育むには、学校教育のみではなく、子どもたちが生活する地域社会でのあり方やアイデンティティーを学ぶことが重要である。また、関連する自治体の諸機関が有機的に連携し、支援する必要がある。そのためには、学校・家庭・地域社会・自治体が、協働して教育活動を展開していくことが重要となる。そして学校が行ってきた子どもたちの貴重な学習体験をインターネット等を通じ情報発信し、学習過程において同世代の仲間や専門家からの生の声を聞くことにより、学区間や地域間の比較ができ、交流が生まれる。それらをフィードバックすることで一層知見が深まり、広がり、そして感動を持った学習ができる。この感動を持った学習ができることにより大きな視野を持った相互理解が生じ、さらに敬愛の心が豊かな子どもたちを育てることができると考える。そのために、本テーマでは、学校・家庭・地域社会・自治体の協働体制と四者を結ぶネットワークのモデル化をはかり、新学習指導要領の柱に関わる諸活動においてモデルを適用し、開かれた学校や総合的な学習の時間等における子どもたちの交流学習や共同学習を支援する環境の構築を行う。

      (1)協働学習支援システムの開発

      (2)授業実践結果

         ふるさと学習データベースを中心とした協働学習支援システムを利用することにより、

5.6. 教育インターネット・サミット −国際交流から国際連携へ−

5.7. 「同一河川流域校交流学習」普及実践モデルの拡充研究開発

       本研究プロジェクトは、昨年度の「Eスクエアプロジェクト:協働企画」において、吉野川流域の上流、中流、下流に位置する学校同士が、各種メディアを活用して河川の流域独自の自然と生活、歴史と文化、産業経済の実態、流域間の特徴などを協働で調査し、インターネットを介して他流域との学校間および児童間の交流を行いながら、自分の地域の特色を、他地域との関係性や差異について理解を深める交流学習を企画・運営してきた。

       その結果、複数の学校の教師と子どもが、インフラ整備の状況の違い、活用経験の多寡等を乗り越えて、コラボレーションを展開するための16項目に及ぶ実践ノウハウを研究開発することができた。

       この実践ノウハウは、河川に限らず、海路、街道、高速道路、航路、地形など関連し合う地域を基盤とする交流学習においても有用であるが、より汎用性を求めてのブラッシュアップと、不足する項目内容の拡充開発が必要である。そこで、

        (1) 研究プロジェクトでは、さらなる汎用性、発展性をねらって、規模拡大を目指して、交流学習のメンバーを拡張する。

        (2) インターネットによる交流学習を推進するためのソフト環境の開発と実験成果を他地域への普及促進できるパッケージの研究開発を行う。

        (3) 目標

           「旭川」の流域に住む子どもたちの共同学習の単元プランの実証実験を通して、本プロジェクトの研究開発に取り組む。実験のフィールドは、旭川の上流域ー中流域ー下流域の中心校(経験校3校)のネットワーク活用を軸として、先行事例の吉野川での「同一河川流域内学校交流」で研究開発した「実践マニュアル」を検証しつつ、流域のビギナー校(3校)へ拡大していく。

           さらに、2年前より実施している他地域との交流も継続させ、それをインターネット活用の活性化の動機付けとする。

       具体的な研究目標は、次の通りである。

        (1) オンライン及びオフラインの場面を盛り込んだ交流単元プランの開発と実践

        (2) 児童及び教師の交流ガイドブックの作成

        (3) 子どもたちのコラボレーションを高める電子掲示板の運用と工夫上流域から下流域および他地域の水環境情報の構築に向けての旭川デジタルマップの作成

       以下の2つを実践環境として設定・整備して本プロジェクトを推進した。

      (1)学習のねらい

         情報活用能力の育成と地域理解の深化と郷土への愛着心の育成とし,具体的な交流活動は,上・中・下流域の6校の子どもたちが,共同して「旭川デジタルマップ」を制作するというプロジェクト型の交流学習を展開した。

      (2)プロジェクト型交流学習の実施

        特色

        • 期間限定で作品完成という明確なゴールの設定

        • 学校枠を越えたグループ編成

        • 子ども自身による企画・運営

         なぜ,プロジェクト型交流学習なのか?

         昨年度の調査・研究型の交流学習から,プロジェクト型の交流学習に移行した二つの理由。

        • 参加校6校の多様性に対応した学習展開にする必要性

        • この協働企画プロジェクト自体が,短期間での取り組みである。子どもたちに「デジタルマップの制作」という活動目標を先に提示すれば,全員が見通しをもって学習に取り組める。

         以上の点からデジタルマップ制作という共同作業の舞台を用意した。そして,マップ制作に関わる 4つの班【プロデュース班】,【デザイン班】,【コンテンツ班】及び【アピール・行動班】を学校の枠を越えて共同チームで取り組んだ。

      (3)成果



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