2.1.3.6.Vメール    帝塚山学院泉ヶ丘中高等学校   辻  陽一

 

@ねらい
Vメールはビデオファイルを含むマルチメディアを用いたメール・メッセーによる交流の場として設定された。Vメールという名称を使っているが、個々のメール交換ではなく、掲示板を使ったコミュニケーションを目的としており、内容としては自己紹介や近況紹介など気楽な喫茶室的なものを考えていた。

  掲示板を使った理由はメールだと参加校の生徒が1対1の個人メールとなり、   クラスとしての広がりを持たなくなるのではないかという考えからである。例え ば、掲示板だと一人の生徒が書き込んだメッセージにAという生徒が反応し2名 のメッセージのやり取りが掲載される。これを読んでいた他の生徒Bが、2人のやり取りに割って入り、関連メッセージを書くことができる。これがメールだと第三者にはメールの内容が見えないわけだから、あくまでも当事者同士だけのコミュニケーションとなるわけである。
  注:本プロジェクトの最初の企画会議では、この
EVメールとFランゲージはクラスの一つとしては考えられていなかった。しかしこのセクションはその後の企画会議などで設置されるようになったのではなく、それ以前の段階で、平成10年度のプロジェクト用として帝塚山のコンピュータクラブの生徒と教員(辻)が協力して掲示板を仮設しておいたものが、そのまま残り利用されることとなったのである。

A 教師と生徒のプロフィール
  参加国は、オーストラリア(フッツクレイ・セカンダリーカレッジ:日本語選択クラス)、韓国(新亭女子商業高等学校:英語クラブ)、日本の3カ国。参加校は、オーストラリア、韓国は各1校、国内の学校は、大阪信愛女学院(コンピュータクラブ)、帝塚山学院泉ヶ丘中高等学校(国際科2年生:英語、コンピュータクラブ)の2校。

B 交流の実際
  平成10年9月9日に本校の生徒10名余が英文で自己紹介を書き、その一ヶ月後の10月8日にオーストラリアの生徒11名が日本語の自己紹介を掲示板に書き込んだ。これは日本語を選択している生徒が日本語の勉強に書き込んだというもので、内容は簡単な自己紹介であった。これに対して日本の生徒が、オーストラリアの生徒に理解できるように簡単な日本語でメッセージを返すとともに、直接、英文でメールを送っていた。また、生徒によってはオーストラリアの生徒の簡単な日本語に対して、内容そのものに興味がもてないというものが現れたり、逆に、同じ構文を続けて書いている姿に「かわいい」と受け取る生徒がいた。
  このあたりは、日本の生徒の英文を読んだ英語圏の生徒の反応と似たものがあるようだ。

  韓国の生徒も英語は外国語であるから、内容のある文章を書くのはつらいのではないかと考えて、韓・日翻訳ソフトを使うことにした。韓国の生徒が掲示板に掲載した韓国語を翻訳ソフトを使って日本語に訳し、これを掲示板に掲載するという形をとった。ただし、これは韓国語での書き込みが6メッセージとそれほど多くなかったために、一時期利用したのみで終わった。その理由としては、韓国の生徒は、英語クラブの生徒で英語の勉強を目的として、本プロジェクトに参加しているためである。
  Vメールということで画像や音声、ビデオファイルなどを取り入れることをねらった掲示板であったが、この目的は余り活かされなかった。一つには、高岡商業のように当初、掲示板に画像を貼り付ける方法がわからなかったり、回線状況のためか、Guess Whatに見られるように韓国の生徒が一部画像しか張り込めなかったり、画像の張り込みや読みだしに時間がかかりすぎるという問題があったからである。

 ただ、画像については生徒の関心が高く、例えば、本校のコンピュータクラブの生徒(男子)の写真を見て、韓国の生徒が、すぐに反応を返していたし、別の生徒に写真を掲示板に掲載してほしいという女生徒(韓国)のメッセージも書き込まれていた。
 これは国内でも大阪府立旭高等学校の男子生徒のように、女子校の生徒の書き込みに強い関心を示すなど、他校・国の異性に対する興味が、写真掲載希望へとつながっている。相手の顔が見えないとメッセージに対してコメントを書く気にならないという面もあるようだ。
 ただ、写真については、逆に教師側が慎重になったという面がある。また、画像掲載については、それなりの技術と器材が必要となるので、生徒が自由に写真を掲載できなかった面もある。Vメールのセクションで掲載された写真画像やビデオファイルは、すべて辻が掲載したものである。

C 教師の果たす役割
  本セクションで教師の役割として重要なことは、掲示板の書き込み状況について、逐次、メーリングリストで参加者に知らせることである。掲示板は参加者が自由に見ることができるわけであるから、新しい書き込みがあったことなどメールで知らせる必要がないように思われるが、実際は、逆である。つまり掲示板は書き込みが多くないと、いつ新しいメッセージが書き込まれるかわからないため、掲示板にアクセスする頻度が少なくなる。
  メールの場合は、頻繁にアクセスされることが多いことや、自動的に、新着メールが読み出せる。また、掲示板は時間帯や国によってアクセスに時間がかかることが結構ある。そこで、掲示板の状況を逐次メールで流す必要があった。
  ただ、オーストラリアやハワイのように、生徒同士をマッチングさせて、個人メールの交換をさせたいという希望が多く、日本側の生徒の中にも掲示板で関心を持った相手に個人メールを送ることも多かった。この実態は、メール交換という、ある意味で「クラス外」あるいは「放課後」の活動のため、担当教員には把握できなかった。
  これまで見てきたように、相手の国の言語を学習させるとか、オンラインプロジェクトよりもE-MAIL交流を希望するとか、参加国・校の間で目的が意識が異なることがあり、コーディネートする教員としては、事前の理解を求める努力や、プロジェクトが進行している中で、調整をはかる必要がある。
 もちろん、掲示板そのものでも、新しい書き込みに対してレスポンスが無いようなら、教師の方で何かコメントを返すことで、書き込んだ生徒に孤立感を与えないように配慮することが必要である。
(本セクションのコーディネーターの辻は、31メッセージを掲載している。)

D 評価
  本掲示板は、実質3ヶ月間という短い期間をとってみても、かなりの数(121)の書き込みがあったし、一定のやりとりが見られた。内容については、掲示板の性格上、自己紹介的なものが多く、日本語や英語の学習のために文章を書いているというのが実態。言語学習の場としての掲示板という意味を持っていたといえる。
  これは、授業をする側からいえば、7.のランゲージのように、エッセーなどを書かせるのは時間がかかるため、その場で、つまり、授業時間内で完了させることができない。その点、自己紹介程度のやりとりは、その場でやらせることができるから、タイピングや簡単な外国語学習に利用できるというメリットがある。

 

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