@クラスの狙いと特色
本BBSを作った経緯はVメールの項で述べた。目的は生徒にテーマに従って英文を書かせ、これを掲示板で掲載し、海外からコメントや反応をもらうということであった。Vメールでは自己紹介や気軽な話題について話し合うことが主たる目的であったが、もう少し、突っ込んだ内容を海外の生徒とシェアすることで、異文化や認識のギャップについて理解を深めたいということで、ランゲージを開設した。
A 教師と生徒のプロフィール
本掲示板に掲載された253編の英文は、韓国からのコメント1をのぞいて、すべて国際科2年生を中心とした帝塚山学院泉ヶ丘中高等学校の生徒によるものである。
したがって海外からコメントをもらい、相互理解を深めるという目的は、まだ果たされていない。ただ、このように掲示板で公開することで、いつでも海外との意見交換ができる体制は整ったといえる。
掲載された生徒の英文の内容は、学校のある堺市紹介から、家族・友人やペットなどの人間関係や将来の夢、精神的な悩み、韓国研修旅行を含む海外体験など学校行事と関連したもの、ボランティア活動や読書などの社会活動や趣味、環境ホルモンや脳死など他教科の課題を取り上げたもの、季節・植物・流れ星など自然をテーマにしたものなど多岐にわたる。
本校国際科は、行事が多く、インターネットを利用した英語教育以外に、国際理解や国語表現などで課題追求型の学習が行われている。英米人講師による英会話の授業でもグループで寸劇を作ることが求められる。このため図書館を使った調べ学習が盛んであるが、最近ではインターネットを利用した資料収集が盛んになってきている。
国語表現で自分たちが設定した「北朝鮮」や「従軍慰安婦」についての学習には、インターネットが役立ったという。国語表現担当教諭によれば、インターネットは、それぞれ立場を明確にしている個人やグループが自説を説いているので、何が問題なのか、対立点は何かなど、論点がはっきりしている点が生徒が利用する場合にメリットになるという。
B 交流の実際
生徒の英文に対するレスポンスとしては、韓国の新亭女子商業高等学校の生徒1名の書き込みがあったが、これは、内容に対するコメントではなく、挨拶程度のものであった。したがって、これまでのところ、掲示板に明示された反応は無かったが、これはまったく読まれていないということではないようだ。
1月に州教育省の視察団の一員としてオーストラリアから来日し、本校を訪問されたフッツクレイ・セカンダリーカレッジのAndrew Parker氏によれば、ランゲージは読んだとのことであった。生徒の一人が大阪府高校生英語スピーチコンテストに出場するためランゲージに書き込んだ英文原稿を練習していたところAndrew
Parker氏が、これは読んだことがあると話していた。
また、生徒が生育歴と自分の内面を分析して書いたSo Many Men, So Many Mindsをアメリカのオンラインプロジェクト実施団体I*earnに送ったところ、プロジェクトの責任者からプロジェクトの目的にかなうエッセーだと大変喜ばれた。
C 教師の果たす役割
これについては、A「教師と生徒のプロフィール」でも触れた。英文エッセーを書くためには、大きく分けて、テーマの選択、資料収集、英文作成というステップを踏まなくてはいけないが、それぞれの過程で他教科の教員の協力を得たり、インターネットを利用したり、英語教師の英文チェックを経るなど、色々な協力関係が必要となってくる。また、実体験をともなわないと文章が書きづらいが、研修旅行や行事で多様な経験をする中で本校の国際科の生徒は、書く材料には事欠かないという利点がある。
海外の生徒からの反応を得るために教師がなすべきことは多い。内容を整理・精選して、海外の生徒が読みやすい環境を提供したり、画像や写真・音声を加えて、魅力あるページにする以外に、海外の教員と連絡を密にして、協力を得るように努力するなども大事な仕事である。
D 評価
掲示板そのものの評価については、すでに述べたことで十分であろう。ただ、生徒側から考えると、かなりの量の英文を考え、書き、タイプするという一連の作業は、相当な労力を要するものであった。そういう意味から、いわゆるコンピュータリテラシーは、英文エッセーを書くという作業を通じて、高まったといえる。