2.5.4.翻訳依頼校の報告

2.5.4.1.林間小学校                                島崎 

 1998年8月4日午後1時、私は東京駅の新幹線の上りホームに立っていた。ハワイのアイエア中学の一行が京都から到着するのを待っていたのだ。彼らは毎年、ハワイのある書店の招きで日本にやってきていた。福島県の信陵中学と姉妹校になっていて、そこを訪問するのが目的であった。
 アイエア中学のアイリーン先生と出会ったのが、またまたKIDLINKの仲間であるパッティー先生のハワイでのセミナーであった。パッティー先生が7月、ハワイの教員用セミナーでインターネットの教育活用をKIDLINKの紹介を通して担当していた。そこで、ハワイの先生達がインターネットの勉強をし、メールの出し方などを実地に研修していたのだ。その折り、何人かのハワイの先生達ともメール交換するようになっていた。それが縁で、今回の日本旅行で「ぜひ会おう」という事になっていたのだった。
 今回、翻訳チームに翻訳をお願いしたのは、そのハワイのアイエア中学の子どもたちの自己紹介のメールであった。日本の子どもに返事を書いてもらう関係で、正確な翻訳をしてもらった。その翻訳の日本語と、林間小学校の子どもの返事を、画像として添付してハワイに送った。彼らにとっても日本語を日本語のまま読むことは、学習の一つである。
  「KIDLINKへの参加」プロジェクトも今年は二年目であった。単なるメール交換だけでなく、交流を深めたいと思っていた。そこで、交流の中心をKIDLINKの掲示板に据え、取り組む事にした。そのため、翻訳依頼したのは、それ以前の物であった。
 1998年7月、まず英語の掲示板が動き出した。KIDPROJの「言葉の壁に橋をかけよう」というプロジェクトのためである。英語の掲示板が動き出してしばらくしてから日本語の掲示板も動き出した。それが1998年10月19日の事であった。
 今回は、この掲示板で、毎日の気温のデータを交換したり、カブトガニについての学習を共同でやったりした。1999年の2月になってからは、新しい話題として、「これが私の住んでいる家」という取り組みが始まっている。

翻訳依頼の問題点
1. 交流の輪に入っていなくて、単に英語だけの翻訳はなかなか難しい。依頼する方も、翻訳にとっての助けとなる情報を添付すればよいのだが、現実問題としては、それも難しい。
2. 翻訳チームとは別に、KIDLINKの英語と日本語の掲示板に橋をかけるべく、自分で翻訳も始めてしまった。それは、上に書いた「交流に参加して、内側から翻訳をする事の必要性」を確かめるためでもあった。ほんとうに、「英語が分からないと海外の学校との交流ができないのだろうか」という疑問も残っていた。幸いにして、KIDLINKの掲示板では、一枚の絵や写真を有効に活かしてメッセージを書くことができる。例えば、bunk bedという言葉があった。Vernetteは、それを絵に書いて紹介してくれた。bunk bedの意味が分からなくても、絵を見て「二段ベッド」と分かるだろう。それなら、日本の子ども達にとっても馴染みのものなのだ。

3. KIDLINKのオフィシャルな文書の翻訳もぜひ必要であった。せっかく興味を持って、KIDLINKの活動に参加しようと思っていても、文書が英語しかないと、そこで止まってしまう。しかし、この場合にも、KIDLINKについての実践を通した全体的な知識がない事には、実際問題、訳す事もできない。

 

 この二年間の支援・協力によって日本国内でのKIDLINKの活動が少しずつ動き出してきた。今後は、更に多くの日本の学校にも参加してもらえるよう、研究を続けて行きたいと思っている。 

 

2.5.4.2.   福井大学教育学部附属小学校              宇野秀夫

1 翻訳支援体制に参加するきっかけ

 本校では、気軽にインターネットにアクセスできる環境が整ってきている。このことは、インターネットの世界を通して、国際理解教育に踏み出すことができる環境にあるということである。しかし、本校の場合、英語に堪能なスタッフが少なく、インターネットを活用した国際交流を十分に深めることができなかった。そんな折り、事務局より翻訳支援体制への参加のお誘いがあった。国際理解教育は、今の子供達にとってさけて通れない重要な課題であり、本校の目指す子供像である「心豊かに生きる子の育成」に重要な役割を担うと考え、Kidlink projectへ思い切って参加することとした。
 2年生という低学年での参加である。インターネットの活用など、情報教育に十分な関心・技能をもった取り組みをしていた学年であること、発達段階として情報教育を生かした国際理解教育がどこまで可能かを探る試みをしてみたいこと、この2つのために参加することとした。

2 翻訳依頼の報告

  9月初旬 Wilskin public schoolの子供達に、自己紹介や学校紹介をするE-mailの翻訳依頼
 10月初旬 Attica elementary schoolの子供達に、交流呼びかけをするE-mailの翻訳依頼
   1月中旬 Delmear elementary schoolの子供達に、昔の遊びを紹介するE-mailの翻訳依頼

3 翻訳依頼を振り返って

 翻訳依頼のE-mailを出すことで、子供達が日本語でつくったメッセージを、翻訳グループの方々が英語に翻訳して下さった。これまでは、英語のE-mailが迷い込んでも、日本語に訳することができずに、そのままにして、読み捨てていることが多かった。また、日本語を英訳することができずに、E-mailを出せず、交流が途切れてしまうといったこともあった。翻訳支援体制を組んでいただけたことは、語学に十分な力を持っていなくても、国際交流に参加できるといった可能性を拓いてくれたと考えられる。また、実践する者としても強い希望を持つことができた。事実、子供達も翻訳依頼をしてE-mailを出すことで、翻訳の不思議さや面白さを感じとっている。
 国際交流はタイムリーな交流である。そのため、今後はE-mailをタイムリーに出したり、受け取ったりできるようになると、より深まった交流につながっていくのではないかと考えている。また、翻訳して頂く相手の方とE-mailのやりとりなどを通して、支援していただく方々を尊重する気持ちを育てていくようにしたいと考えている。

 

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