昨年は、主婦のグループに翻訳を依頼してみようとか、学生に頼もうとか、色々に考えられた。実際に交流が始まっていない段階での事とて、難しい問題であった。
結局、大学院生に頼む事になって、いくつかの翻訳が依頼され、交流に役立てる事が出来た。
この翻訳支援体制作りは、今後、日本の小学校が海外の学校との交流を希望するようになってくると、どうしても避けられない課題になっていく。機械翻訳の話も無いではないが、それを使ったとしても、最後には人間の手を経ないと言葉の壁に橋をかける事はできないのではないだろうか。
本年の新しい取り組みとして、実際にインターネットで活躍している高校と生徒とタイアップして、翻訳がスムースに行くかどうかの取り組みを始めてみた。
私がハワイの子どもの英語の翻訳をお願いしたら、即「日本語」になって返ってきた。だから、次の日には、学校で子どもたちに英語のメッセージに日本語訳をつけて、紹介する事ができた。翻訳をまとめてくれた先生は、インターネットでの海外交流の草分け時代から活躍している先生なので、何の不安もなかったが、一般的には、言葉だけで、翻訳する事は、難しい課題である。やはり、何らかの予備知識が必要であるだろうし、翻訳を依頼する学校も資料などを添付して翻訳のお願いをしなくては、せっかくの翻訳も生かされない時も出てくると思われる。
一方で翻訳に回る学校にとっても、単に言葉を翻訳しただけで、自分のやった事がどんな結果をもたらしたのかについて、何の情報も受け取らないとしたら、さみしいだろう。実際には、その一つひとつをわざわざ報告するのも難しい。
翻訳に関して、一番良いのは、交流している学校の先生が直接出来てしまうことだ。それなら、、わざわざ翻訳を依頼することもない。しかし、実際には、小学校で翻訳を必要としない学校は少ないであろう。やはり、翻訳の支援があって、初めて海外の学校との交流も可能となる。
年代の近い層間の翻訳、つまり高校生グループによる翻訳は、心を相手に伝えることを考えれば、ある程度評価できるのではないだろうか。
また、翻訳を実践した側の報告にもあるように翻訳の受け渡しを明確にし、その翻訳の内容を依頼した、された側で相互確認することが以後の翻訳作業に大いに役立つと考えられる。
また、翻訳の返送期限を設定することも依頼した方として後のスケジュール調整に有効であるとの報告も出ている。
人名地名などの固有名詞については著名なものと地方特有のものがあり、このあたり、依頼する側として一考を要すると思う。
また、低学年の原文は平仮名が多く、人名など判別が難しい。
翻訳を依頼した方が修正するか、事前に登録メンバーのリストを交換しておくと翻訳に戸惑うことが少ないと思われる。
また、翻訳は依頼の順に輪番制で行うのではなく固定したグループ間の翻訳のやり取りが有効であることは実証されたと考える。
どこかのプロジェクトのように、高校と小学校とか、中学校と小学校とがペアを組んで共同でプロジェクトに参加するようにしておけば、その同じグループ内で翻訳作業が進む事になる。そうした場合、プロジェクトの課題内容をどんなものにするのか、別の問題も出てきてしまう。
また、地域によっては、保護者の中から翻訳ボランティアを募り、うまくいっているケースも報告されている。しかしそのボランティアが電子メールが使えず、子どもを通してのメッセージの移動となると、それだけで時間がかかってしまい、スムースに流れなくなる。
結論的には、「翻訳は必要である。が、しかし、実際にどんな風にやれば、うまくいくか、まだ誰にも分かっていない」と言えるのだ。
更に、今後深く翻訳支援体制のあり方について研究を深める必要性を感じる。
今回、プロジェクト二年目であるが、翻訳チームを驚かす量のメッセージの行き来は残念ながらなかった。せっかくの翻訳チームである。もっと活用して欲しかった。
一部には、KIDLINKのオフィシャルな案内文の日本語訳があれば助かるという声もあった。しかし、翻訳の基本を、「子どもたちの交換するメッセージ」という事で二年前に始めたので、遠慮もあり、実際には、KIDLINKの文書の翻訳はされなかった。
今後は、こう言ったプロジェクトの案内文、また逐次流される情報の翻訳も必要になってくる。と同時に、子どもたちのメッセージの翻訳に関しては、現場の教員に対する何らかの研究会で少しずつ学習の機会を増やしていくのもいいと思う。