教育ネットワークの運用経験を積むことによって、各地域で運用・管理面でのノウハウが蓄積されてきたが、その半面では、「人材不足」という問題が依然として解決されないまま、利用者だけが増えている。
昨年と本年の最も大きな違いは、教育ネットワーク整備計画は年次計画として立てられるため、この1年で年次が進んだことによって、接続校数が確実に増加したことである。
そして、接続校数の増加に伴なう運営・管理の負担増は、2.2で述べた類型でいうと教育委員会主導でセンター集中型の教育ネットワーク整備を採用した地域で突出して表面化している。しかも、その負荷は限られた担当者に集中しているのが特徴である。
3つの地域を例にして、そのことを見ていきたい。
とにかく人の問題が一番大きい
O市教育情報ネットワークは昨年度も聞き取り調査の対象となったが、今年度、人員配置の異動がおこなわれた。しかし、兼任で教育ネットワーク全体の運営・管理を受け持つことになった担当指導主事は忙殺されている。
「とにかく大きな問題は人の問題です。私は専任ではなく、研究所の仕事だとか、指導主事の仕事だとか、このネットワークの仕事だとかを兼ねてやっていますので、結局いずれもが全部中途半端になっちゃっているということです。それぞれの仕事自体が、ある程度しっかりやらなくちゃならないものなんですけれども、それを結局、みんな兼ねてしまっている。
とくにネットワークの仕事は、目に見えない仕事のほうが多いんです。ほとんど目に見えない仕事になるので、たとば書類として残るとか、本としてできあがるものではない。目に見えない部分の仕事のボリュームのほうが多いので、非常にそこのところが難しいんです。
接続校数もどんどん増えていってるわけです。全部の中学・高校で年度内に校内LAN工事をして接続するわけですけれども、接続校数が増えるとともに、当然トラブルも増えていきます。活用の方法でも、たとえば中学校で生徒に自由に使わせていると、アダルト系サイトを見にいったとか、あるいはイジメじゃないですけれど他人をけなすようなメールを送ったとか、そういういろいろな問題もどんどん出てきている。
それらの問題とかトラブルを1日でも放っておくと、ネットワークが使えなくなったり、あるいは問題が大きくなってしまうので、その日のうちに対処しなくてはならないわけです。ところが、その日のうちに対処するのはすごく難しいんです。仕事がいろいろあって、こちらではスケジュールを立てて動いているわけで、突発的なことに対応するのがものすごく難しい。
そういうことで、とにかくトラブル対応と、それと日常的にやらなくてはならないメンテナンスだとか運用業務、それからその他の仕事、そられの時間的な切り分けが、ネットワークが広まるに連れて困難になっていくというのが現実です。とにかく人をちゃんとつけないと根本的な解決にならないと思います。だって、仕事の量が増えることは目に見えています。減らせないんですもの」
そして、担当指導主事の次の言葉も重要である。
「構築のときは、ある種のやっつけ仕事で、いつまでにこれをする、というふうにやっていけばできたことなんですけれども、むしろ運用負荷のほうが、そういう意味では構築よりも大きいですね」
人的措置は必要だが財政当局の理解が得られない
県下3カ所に接続拠点(NOCである教育センターとアクセスポイント2カ所)を設置し、情報教育ネットワークの整備を進めているP県は、接続校数の増加に伴ない、人的措置の必要性を痛感している地域のひとつである。
「接続している学校については、教育センターですべて対応をしていただいているわけで、校数が多くなってくるというのは、情報教育の活性化という意味ではいいですが、サポートなりメンテの関係にすれば、半面ものすごい負担がかかってくる。ネットワークというものは、今急速に進んできていて、状況変化があまりにも早いわけです。それにかかわっている人は理解できるんですが、かかわっていない人には理解しがたいところがたくさんあるわけです。だから学校をより多くつなぎなさいといっているんですが、そこでの人的措置なり、そういうところのサポートはなかなか難しい。その点は、うち(教育委員会)でもものすごく苦慮しているところなんです。
ただ、県内のどこにいる子供に対しても同じ教育、同じ情報が受けられるようになるためには、やっぱりつないでもらわないと始まりません。財政ではその辺を何とかサポートしていきたいと思っているんですが、その理解がまだ得られないというところが現状なんです。だから今のところ、みんなセンターに、サポートに関しては負荷がかかっている状況なんです」
また、次の言葉が印象的であった。
「行政はいつでもそうなんですが、とくに今のように不況で、財政状況が厳しいときに、あらかじめ見通して、将来に備えて予算を打っておくという発想はなかなか出てこないんですね。いってみたら、ラッセル車に客を乗せて走っているみたいなところがあります。あらかじめ全部雪を除けておいてから特急を走らせるのではなくて、雪をかき分けながら進んでいくという感じはあります。雪をかけ分けていったら岩が落ちていた、そこで止めて線路の上の岩を除ける仕事をして、また雪をかき分けながら進んでいく。そういうものかなと。」
仕事の分担をはっきりさせないと「人柱」になってしまう
Q県の教育センターの中で県内全学校を結んだ情報教育ネットワークを担当するセクションには技術職員である技師が7名配置され、そのうちの2人に研究主事2人を加えた計4人で教育ネットワークの運用にあたっている。研究主事は他の仕事も持っているが、仕事の実態は半分以上が情報教育ネットワーク専任の感覚だという。
このように人員構成に恵まれていても、なお運用・管理に伴なう仕事の定型化や切り分けをおこなって重複を避け、必要な業務は外注している。このことは非常に示唆的である。
「研究主事と技師の役割の分担をはっきりしていくのが大きなテーマなんです。いかに定型業務を定型化してしまうか、あるいは分散して外注するか。人柱になってはいけないので、きちんと切り分けていくということが、私の大事な仕事です」
学校内の担当者も同様に、校務分掌に定められた「兼任」の仕事として教育ネットワークを受け持っているのが現状である。
悪しき平等主義が弊害になって専任の担当を作れない(R市)
「たとえば、40人の教員がいる学校で教員が1人増えたとします。1人の持ち時数は20時間、そこへ教員が1人増えた。すると、その人をコンピュータ専任にして授業をまったく持たせない場合と、逆にその人にも20時間を持ってもらう場合の2通りがある.後者のほうは1人あたりにすれば0.5時間減るだけなんですよ。だけど、増えたはずの教員も20時間持たされてしまうから、もうコンピュータにかかわる仕事はできなくなる。
逆に、その人の授業時間をゼロにして、そのかわりみんなにいままで通り20時間持ってもらうと、1人あたり0.5時間ずつ増える計算ですが、そうすれば、その人は完全にコンピュータの専任でいられるわけです。つまり、教員の持ち時間数を0.5時間増やすか減らすかによって、1人が余分につくかつかないかぐらい違うわけです。
ちょっと昔までなら、1人の教員が1週間24時間の授業を持っていた。ところが、現在は20時間になっている。1人4時間の余裕ができているわけです。つまり、4時間×40人で160時間になりますから、8人分ぐらい教員が余分になっているんですが、授業時数を減らして薄めてしまえば同じになる。それが本当に学校の先生方のゆとり、あるいは子供たちのゆとりにつながるのかどうか。つまり、先生の持ち時間数を平等に1時間、2時間減らすことで学校にゆとりが生まれるのかどうかということです。
そういう方向でどんどん、どんどん平等に減らしていく限りは、どんなに授業時数を減らそうが、1人あたりにしてみれば1時間や2時間なんて、学校のゆとりにはつながらない。そこに問題があるような気がするんですよね。そんなことは教育委員会の立場でいってはいけないんでしょうけれども」
・ 教育ネットワーク整備の年次計画の中に、計画の進捗に伴なう人員の増員が盛り込まれていることは少ない。
・ 運用管理者の業務が切り分けられていないため、今後、利用者が増えてくるに伴って、「人柱」として犠牲になる危険性はますます高まっている。少なくとも専任の担当者を配置する必要がある。
・ 学校への人員加配も職員全体に均等に時間を分配して薄められるため、フリーな立場で情報教育に取り組むことのできる人材が現れない。
育ネットワークの運用管理は行政にとってはこれまで経験したことのなかった分野であるだけに、どこからどこまでが運用管理業務であるかの定義はなく、また仕事のボリュームも定量化されていない。このため担当者の機転に運営を頼っているのが現状である。
しかし多くの場合、特色ある教育ネットワークという外見がひとり歩きし、そのような担当者の負担が表に見えることは少ない。「他の地域からは私はまるで専任で担当しているように見られていますが、他の地域と同じ併任です。つらさも同じなんです」と打ち明ける言葉にそのことがよく表れている。
教育ネットワークの運用管理に人的な配慮がなされていないことに加え、たとえば次のような問題も生じている。業者による保守が型通りに処理され、実際には役に立っていないケースである。
料金に見合うサービスがないのでハードの保守契約をやめた(S市)
「これは業者によると思うんですけれども、『壊れたから来てください』と連絡すると、とりあえず来てくれることは来てくれるんですが、『これはソフトウエアの問題です。ハードウエアの故障じゃありませんから、ウチではどうにもなりません』と帰ってしまう。あるいは『うちはこんなソフトを入れていませんでした。これはうちの仕様と違うから保守できません』というので帰ってしまう。そういうようなことで、ほとんど何にもならなかったんです。
たしかにネットワーク化することによって複雑になっていますから、たとえば『インターネットにつながらないんですけれども』と呼ばれても、ハードウエア保守を結んでいるメーカーにしてもいい迷惑かもしれない。
ですから、ネットワークにつなぐために、新たな予算をプラスすることは非常に難しいこともあって、そこに関わるいろんな経費を捻出するために、保守料を削りました」
一方、学校内での「フリーな立場」というとき、2つの場合が考えられる。
@ ティームティーチングの加配のように「校内」でフリーな立場(小学校での担任や中学校での教科主任になっていない)
A 近くの学校(数校程度)のトラブルに対して、指導主事の補佐として緊急に対応できるような立場
このような人材を少なくとも拠点となる学校に配置することは焦眉の課題といえる。
教育ネットワークの利用者に求められるスキル(熟練)には次の2種類がある。
@ パソコンを使うスキル
A ネットワークを使うスキル
具体的にいうと、それぞれ「アプリケーションソフト(インターネットを含む)を操作するスキル」「障害が起きたときに問題を切り分けるスキル」といいかえることができる。
インターネットを利用できる人材の育成は、教育ネットワークの利用者研修として現在、全国ほとんどの自治体で実施されている。しかし、興味を持った利用者に対する研修だけでなく、興味を持たない(示さない)利用者をどうするかに視点を移し、そのための対策を打ち出した地域がすでに現れている。
初心者研修とパソコン整備による両面からの底上げ作戦
T県の正規の教員は事務職員などを合わせると約1万人である。県教育委員会の調査によると、そのうち4500人程度の先生がパソコンは「まったくできない」と回答した。
そこで、県教育委員会では「まったくできない」と答えた先生を対象に、3年計画で計3000人を対象にした初心者研修をおこなう。しかも、この研修と並行して、教育用ではなく校務用のパソコンを学校に配置し、日常的な利用を促進する計画である。
「来年度、まったくできないと自負している先生方を対象に、1000人規模の研修を、これを受けたからには、もう触れないということがないような形で実施したいと思っているんです。これについては、県域が広いものですから県立学校の施設を使って、もちろん教育センターさんのご協力も仰ぎまして、県下いっせいに年次計画を立てて、とにかく県の教員で触れない人はいなくなるよう、まずは下の部分の底上げを図り、そしてもちろん上のほうのスキルアップもしていただくわけです。当然、2日程度の研修で、みなさんができるようになるとは思ってはいませんけれども、まずはそういう種を植える。
そして、学校環境も整備していきます。教育用パソコンの整備は計画的に実施しているところですが、教育用以外の学校の校務で使用できる校務用パソコンも、県立学校については2人に1台ということで、整備していきたいと考えております。
従来でしたら、研修を受けても学校に帰ればパソコンがありませんので、『パソコンを自前で買わなければならないのなら、私は必要ない』ということになっていましたけれども、学校で職務に使えるパソコンも同時に整備して、研修の成果をそのまま生かせるような、教員の働く職場の環境整備も考えております。使え使えといっても、目先にパソコンがなければ、指導という話にはなかなかなりにくいですよね。
まずはカイより始めよということで、先生方も日常的にそういう情報手段を活用している状況になれば、おのずと授業への活用も広がっていくんじゃないかなという気はします」
教育ネットワークの利用者は、目の前にあるパソコンだけでなく、同時にそのパソコンがつながったネットワークを利用している。利用者にとってネットワークをつねに意識している必要はなく、また意識しなければならないようでは利用の妨げになるが、いったんトラブルが生じたとき、パソコンのハードの問題か、アプリケーションソフトの問題か、それともネットワークの問題かといった切り分けを利用者がおこなうことができれば、ネットワーク全体の管理負担を分散することが可能である。
しかし、そうした「問題を切り分けられる人材」の育成は難しいという現状がある。
クライアント・サーバシステムの構築まで研修可能
U県教育研修所では、研修所が研修内容を計画した「一般研修」の講座数はさほど多くはない。というのも、教員グループや教員自身が企画する「自由研修」制度があるためである。研修所の指導主事に空き時間があるかぎり対応しており、夏休みなどはフル対応になる。
この自由研修では、OSのインストール研修もおこなっている。この場合は機器持参ということもある。
また、今後学校にインターネット用サーバを整備する場合のことを想定して、サーバ・クライアントシステム構築実習も可能な設備を持っている。具体的には、サーバ機1台、クライアント機2台を1セットとして、運営研修用のシステム12セットが用意されている。
ユニークなのは、サーバ機に内蔵されているハードディスクを無効にする装置(納入メーカとの共同特許)を取りつけ、外付けのハードディスクにどのようなOSでもインストールする実習を可能としている点である。当然、研修所のLANに接続させてマルチホームマシンの構築・運用研修も可能なように設計されている。
20人に研修して3人ぐらいの割合
V市では教育ネットワークを管理できる能力として、次の3点を到達目標に設定して、教員研修をおこなった。
@ WindowsNTサーバでファイルの管理ができる。
A FreeBSDサーバでユーザの登録・削除ができる。
B 突然ホームページを見ることができなくなったときに原因を切り分けられる。
このうち最も困難だったのは、Bのトラブルに対処する能力の育成だったという。担当指導主事は次のようにいう。
「やっぱり、トラブルを解決して、問題を切り分けて、ここに問題がありそうだと突き止められる能力を研修で身につけるのは難しかったんです。この通りにすればユーザ登録ができますよ、あるいはこういうふうにすれば、とりあえずつなげますよとか、そういうのは研修できたと思うんです。あるいはインターネットの利用といったことも研修できたと思うんですけれども、いわゆる管理者としての教育は難しい。育てるのが非常に難しかったですね。もちろん、できる人はできるようになりましたけれども、全員というわけにはいかない。
そうですね、レベル的にかなりの開きがあるんですが、たとえばネットワークがおかしいといったときに、自分である程度原因を究明していける人は、最初からそういうことに対して素養があったということもありますけれども、20人のうち3人ぐらいでした。約半分ぐらいの先生は、たとえばホームページを自分で作ってFTPしたり、ユーザ登録をしたり、そういうことはできます。だけど残りの半分というのは大げさかな、3分の1ぐらいの先生は、あんまり積極的にかかわらないという感じです。
ここの難しさというのは、1つはそれぞれの学校の先生がかならずしも校内でコンピュータを扱う立場にないことなんです。そういう人が研修に来ている。学校にはいろいろな校務分掌があって、仕事は外せないですから、『コンピュータ好きそうだ』という理由だけで選ばれて研修に出てくる。だから実際には授業にコンピュータを使ったことが全然ない人もいるんです。
それから、若い先生だと、校内でまだ影響力を持っていないですよね。コンピュータは詳しくても、他の先生を巻き込んで、ああしてください、こうしてくださいとは、立場的になかなかいいにくい。年輩の先生から、そんなことはやりたくないといわれれば、『はい、それまで』です。年齢的な問題というか、校内でのポジションというか、ある程度他の先生に影響を与えられるような位置にいないと、自分だけ動くというわけにもいかないわけです。
そういう意味で、これもシステム的なことだと思うんですけれども、各学校でコンピュータ研修に来ている人の位置づけを、もうちょっとはっきりさせなければいけないと思うんです」
・ パソコン利用研修やインターネット利用研修は多くの地域で実施されているが、ネットワークの利用をテーマにした研修がおこなわれている地域はきわめて少ない。
・ とくに問題を切り分けられる人材の育成が、利用者の増加に対応していない。
・ 管理の研修をおこなうためには「パソコン用アプリケーション利用」の研修設備とは違った工夫が必要である。
パソコンが使える人材はもちろんだが、利用者が増加してくると、ますます必要になってくるのは、トラブルが起きたときに問題をある程度切り分けて、トラブルの内容を的確に伝えることができる人材である。そのような人材の育成について配慮している地域はほとんど見られないが、教育ネットワークの運用・管理担当者はその必要性を強く意識している。
研修制度のあり方をはじめ、カリキュラム、設備などを大幅に見直すことによって、人材難を少しでも解消していくことが望まれる。
日常的なサポートをおこなう上で、電話やメールで相談できるヘルプデスクがさまざまな形で活用されている。ヘルプデスクを設置していない地域でも、教育センターや教育委員会内にヘルプデスクに代わる相談窓口がある場合が多い。
利用が進んで相談も市町村に分散(W県)
「最近は利用も広がって、市町村に教育研究所があるんですが、教育研究所の人が市町村単位の学校さんをまわって、接続の設定や指導をしてくれる。また、県内に教育事務所が3つあるんですけれども、それぞれの教育事務所に情報担当の指導主事がいるんです。そこが窓口になって管内の学校さんのお世話をしてくれたりすることもあります。だから、全部が全部、教育センターに問い合わせなくても、まわれるような感じにはなりつつあります。学校現場から直接教育センターに問い合わせることは、あるにはありますけれども、以前ほどない。教育研究所も、市は全部あるんですけれども、町村の場合、ないところもありますので」
メーリングリストを利用(X県)
「ヘルプデスクのメーリングリストには12、13人ぐらい参加しています。私どもの職員、それから教育委員会の総務課、指導課、情報処理教育センター、教育センターですね。
学校には事務職の管理担当者と教員の情報教育担当者を置いていて、トラブルがあると管理担当者から企画課のヘルプデスクにメールで連絡があります。回線が使用不能になった場合はファックスで。それを受けて、SI業者を入れて、考えられるところをやって、どっちから調べていくかという問題の切り分けをします。
学校独自でサーバを立ち上げたいといった場合もヘルプデスクに来ていただいて、私どもで対応できないことは、県が委託しているSI業者に相談をする。できるだけ、いろんな使い方をしてほしいものですからね。
相談を受けるのは2名で、そこから行かせる人間はまた別ですから。そのとき、そのときに応じてです。とりあえず、第一次に相談を受ける者は2名ということです」
電話で受け付けた相談をメーリングリストで対応(Y市)
「研究会がヘルプデスク的な役割を果たす頻度は、最近は少なくなっています。使うほうが要領をわかってきていますので、少なくなっています。
教育委員会に事務局があって、2人いるものですから、ここは庶務課なんですけれども、庶務課の担当のところが多かったですね。以前、設定にまわったのが庶務課の職員でしたので、その関係からも、学校からのトラブルについてはここへ電話連絡があります。
事務局のメンバーがここにいるからというより、学校はそれをきちんと意識してないですよ。少なくともX市立の小中学校は意識していません。だから、教育委員会のやっているものだという受け止めでいます。
そして研究会事務局のメーリングリストがありますので、『トラブルについてはメーリングリストへどうぞ』という案内になっていますから、たとえばトラブルについての問い合わせ、あるいは質問がきたときには、これについては誰々さんが答えてくださいという話をメーリングリストの中でして、その人に回答するなり、行ってお話を聞くなりしています」
トラブルが発生しないようにするための工夫もさまざまにおこなわれている。
設定を変更させないソフトで障害対応を楽にする(Z市)
「ひとつは各学校で専用のソフトを使って、それぞれの学校のハードディスクの内容を全部ファイル化しておいて、障害が起こったら、それで書き戻してしまう。ああだこうだとやるよりは、書き戻したほうが早い。そうして書き戻してしまって、ハードウエアの故障であれば、代替してもらう形ですね。そういうふうに、とにかく取り替えサービスみたいな形にしてしまう。そういうことで、ひとつは障害対応を楽にしようとしています。
また、障害そのものを起こらなくするために、設定を変更できないようにするソフトを入れて、環境が変わらないようにする。これでずいぶんとクライアントの設定によるトラブルだとか、あるいはクライアントが壊れたときの交換など、修理に関しては楽になったんですよ。
あとひとつは、日常の管理をなるべく自動化しようということで、とくに各学校のミラーリングだとか、あるいは検索ですよね。検索システムへのキーワード、抽出といったものは自動的に動かす形にして、なるべくとにかく省力化しようということで、省力化しています」
共通するトラブルは事務連絡で流す(A県)
「接続直後のトラブル相談はすごかったですね。共通のもの、繰り返しクエスチョン的なものはすぐに事務連絡で、次々に流しました。1校から来て、これは全部の学校に使えるなと思ったものは、もうすぐに流しました。メーリングリストとメールまで確定できない学校もありましたので、紙でも流しました。教育委員会からの学校向けのボックスがありまして、郵送システムがありますので、それも使って、各校の担当者宛てに次々に流しました」
活用の相談には簡単なリンク集を作って対応(B県)
「まずは『つながらない』というか『つなぐための設定をどうしたらいいか』という相談です。それから、ダイヤルアップとか、メール、ウェブとかをどう設定したらいいかという。あと、最近多いのは『ホームページを作った。それをアップするのにFTPをどういうふうに使ったらいいか』とか『授業で使いたいんだけど、こういった情報はないのか』という問い合わせですね。場合によっては、こちらで簡単なリンク集をつくってあげて、『こういった情報がありますよ』と提供したときもあります」
・顔の見える相談窓口としてヘルプデスクが必要である。
現場の教員は障害が起きても切り分けができない。このため、障害対応窓口ではなく、相談窓口としてのヘルプデスクが設けられている。こうした手厚い人的サポートは活用の敷居を下げる効果をもたらしているが、半面、サポートする側の負担は増えている。
教育ネットワークに複数の学校が同じ条件で接続されても、必ず活用の度合いに濃淡が生まれる。その原因はさまざまである。
5カ月でそろそろ濃淡(C県)
「いい話ばかりをして、問題点をいうと、5カ月経ってきたらそろそろ濃淡が出てくるんですよね。やはりそこの学校の担当者の力というんでしょうか、たとえば熱意のある工業高校みたいにすごく一生懸命なところと、あまり一生懸命ではないところとの温度差が出てきていますよ。学校間の濃淡は、結局、何をやっても最後はそこに行くんですよ。ですから、基本研修と意識改革みたいなところですね」
関心の度合いの違い(D市)
「なるべく学校に負担をかけないよう、たとえばホームページの作成についても全部業者委託なんです。委託業者にお願いしています。学校としては書類だけを出せば委託業者が全部作成してくれますので、学校自身がやるということはないんです。年4回更新する契約にしているんです。ところが、何回も更新している学校もあれば、4月に新しいものを作って、それをしばらくずっと置いている学校もあるというふうに、関心の度合いが違ってきています」
手綱の引き締め方・ゆるめ方(E県)
「ネットワーク運用規定、ホームページ公開規定、ネットワーク運用規定を設けましたが、あくまでも年度ごとの規定にして、走りながら考えて修正していきながら、4年がかりくらいで詰めようと思っています。結局、ガッチリやると簡単なんですが、面白いものができない。面白いものをさせて、フリーにすればするほどリスクが高くなる。その手綱の引き方と緩め方だろうと思っています」
何をやっていいのかわからない(F市)
「一番学校が困るのは、インターネットを引いたところで、何をやっていいのかわからない。意外にそうですよ。うちの学校も引いたときに、コンピュータに熱心な人でも『インターネットはどうやって使うんですか』と質問したくらいですから。『こういうことができるじゃないですか』という発想がない。すごくコンピュータに強い教員ですら、そうでした」
台数が足りない(G市)
「学校に1、2台しかないから、授業のローテーションが組みにくいこともありますし、やっぱり子供もリアルタイムでほしいわけです。一回経験をしますとハマってしまいますから、『順番に』といっても、なかなかその通りにはいかない。複数台入っているところでは、3人に1台、あるいは4人に1台になりますから、そこで結構効率よく学習できるわけです。ですから逆にいえば、いいものを得たのに不便さを感じるといいますか、そういったことで学校の先生方の中に不満が出てきている」
活用方法の例を提示する(H県)
「学校に突然、『何をやりたいの?』と言っても、何がなんだかわからないというところもありましたので、こちらのほうで『こういう使い方ができますよ』というガイドライン、活用方法例を見せて、企画書をあげてもらった。そうしたら、こちらのほうで示した以上に結構おもしろい、さまざまなな企画があがってきました」
・ 一斉導入しても、必ず学校によって活用の度合いに温度差が生じる。それに対し、教育委員会は「何とかしたい」と考えている。
・ 教員の側には「どう使えばいいのか」という疑問の声も根強く、この疑問に対して具体的な活用例などを提示していく必要がある。
学校ごとの活用の温度差は必ず現れてくるものである。それに対し、活用の底上げを図るためにさまざまな工夫が見られる。
しかし、多くの場合、「活用」を判定する尺度じたいががあいまいである。教育ネットワーク整備という投資に見合う効果としての「活用」をとらえるのではなく、情報リテラシーの向上という観点から「活用」の尺度を整理する必要がありそうである。
電子メールアドレスの割り当て方は、次の4つの方法がとられている。
・ 個人に割り当てる
・ パソコンに割り当てる
・ 職務(たとえば校長、教頭、教務など)に割り当てる
・ 共用のメールアドレスを使いまわしする
教員のメールアドレスは教育センターなどで発行している場合がほとんどであるが、児童・生徒用のメールアドレスは各学校で発行している場合が多い。これは、
・ センターは直接生徒を指導することができない
・ パスワードの管理(忘れた場合の対処)の手間がかかりすぎる
・ メール管理用のディスク容量が膨大になり、バックアップの手間もかかる
ことが理由とされている。
児童・生徒については学校のサーバで発行する(I県)
「児童、生徒については、教育ネットワークとしては発行しません。もし児童、生徒が使う場合は、担当する先生のメールアドレスを使ってくださいということと、ただし書きで、もし学校がメールサーバを設置して、学校でメールを管理できるのであったら、教育ネットのサブドメインを発行するので、そちらのほうで管理して使ってくださいというふうになっています。具体的には、専用線接続でつながっている学校さんについては、もうすでにサブドメインを付けて、学校でメールサーバを管理して運用が始まっています」
全生徒にアカウントを発行(J県)
「県では全生徒分のメールアカウントを用意させていただきまして、学校の担当者までお配りしております。あとは学校の判断で、現場の判断によって配布されるということで、現在の配布状況については、各学校によってまちまちといいますか、配り終えているところもあれば、配る前に教職員から研修していきたいというところもあります。全生徒数は4万2000人ぐらいです。予備も含めて、全部で5万くらいのメールアドレスを用意したと思います」
1校につき3アドレスで試験運用(K市)
「メールのアドレスは基本的には1校に3つです。ISDNでつながっているパソコンに1つ、VODでつながっているパソコンに1つ、あとは研究部会員の先生の連絡用に1つ、基本的にはその3つです」
1学校に50個(L県)
「生徒の分は小学校で40〜50個と決めてあるんです。それ以上は、各学校でサーバを立ち上げてくれということです」
教職員全員に発行しても利用できる環境がない(M県)
「電子メールですけれども、電子メールは、今までも各学校ひとつずつ、組織名義、学校名義のアドレスを発行していましたけれども、今年度から教職員に対してのアドレス発行が始まっています。いちおう目安としては教職員全員に発行したいんですけれども、いきなり全部に発行しても、なかなか利用できる環境がないだろうということで、定期的に募集しまして、申し込んでもらったらアドレスを発行するというふうになっています。今年度、5回ぐらいの申込期間をつくりまして、今のところ1200名ほど発行しています。教職員は約1万人おりますので、10%強、メールアドレスを使ってもらっていることになります」
県域で異動するのでセンターで発行(N県)
「教員は県域で異動していますので、地域ごとの姿勢が違っていたり、不便になるということは確かですよね。アカウントそのものがないところへ行く場合もある。だから先生全員にメールアカウントを出しています。メールアドレスは番号なんですけれども、それにエイリアスを付けてあるんです。1万人以上のエイリアスにしてあるだけなんです。しかし、実際に使っているのは1万人いきませんよ。尻叩きまくって、やっと3000人です」
スキルをつけてもらうために希望者に発行(O県)
「すべての教員がインターネットを生徒に活用させる指導力をつけていく助走期間でもあるわけです。まずは教職員自身の利用のスキルをつける。まだ全然やったことない人も体験から入れるようにということで、学校代表IDだけではなくて、希望する教職員ひとりひとりに電子メールのIDを発行しています」
1校1つあれば十分(P市)
「1校にメールアドレスを1つしか出していないのは、学校という組織はもともとそれほど細分化されていないんです。一見分かれているように見えますけれども、基本的には1つ。誰かに届けばいいんです。だから、その辺は全然問題にならないですね。個人で別のプロバイダーと契約したメールアドレスを使っている先生もいるでしょうが、学校から送るときは公務ですから、学校のIDを使って送っているはずです。相手に届けばいいだけだから。私的なものもあるかもしれませんが、そんな秘密性のあるものがあるはずがない。逆にいうと、そんなもののやり取りはおかしい」
・ 教員へのメールアカウント発行は積極的におこなわれているが、公務中に学校のパソコンを使ってメールをやり取りできるかは、私用と公用の線引きが難しいため、自治体によって異なっている。
・ 教員による自宅からのメールチェックは、セキュリティホールになる危険性がある。
児童・生徒個人にメールアドレスを与えるかどうかはさまざまな意見があるが、教員のメールの取り扱いについても同様である。とくに公務中のメールのやり取りは、電話料金がかかることもあって規制される傾向が見られる。
現在は、教育ネットワークの運用面から判断されているが、今後、校務の情報化が進んでいく中で、教員のメールの取り扱いについての基準づくりが必要であろう。
教育にふさわしくない情報を排除するためのコンテンツのフィルタリングには、ブラックリスト方式とホワイトリスト方式の2種類があるが、ブラックリスト方式を採用する自治体が増えている。しかし、フィルタリングを重視して運用している地域は少ない。
キリがない(Q県)
「ポジティブリストにはアイドルのホームページは入れていませんので、子どもたちがアイドルのホームページを見たいと思っても出てこない、という声はよく聞きます。有害だとは思いませんけれども、あえてポジティブリストにアイドルのホームページは入れていません。
入り口のところで子どもたちが興味を持って、サーチエンジンの使い方だとか、ホームページというのはこんなにいろいろあるんだよということを見せるのは、別にアイドルのホームページであってもかまわないと思うんですけれども、それはキリがありませんからね。プロ野球の選手から何から、いっぱいホームページがありますので。ですから、そういうときにはネガティブリストに切り替えてもらうことにしています。とくに有害なものは別として、通常のアイドルのホームページにはアクセス制限をかけていませんから」
イタチごっこ状態(R県)
「スクールパック自体がフィルタリングを持っているんです。詳細に制限できます。ただ、苦労している点は、どこがよくてどこが悪いというのはイタチごっこ状態にあることです。
ワイルドカードが使えますので、大きく網をかけることも、細かく網をかけていくこともできるんです。キツくするときは、大きくかけてしまうんです。たとえば『アダルト』の文字が入ったサイトはダメだとか、Xが3つあればダメというように。ホワイトリストもブラックリストも、両方使えます。ダメなサイトも許せるサイトも、そして優先順位も付けることができるんですが、それを組み立てる情報自体が大変なんです」
心の鍵と機械の鍵(S県)
「いまは機械の鍵のかけ方の議論が先行しているんですが、やっぱり心の鍵と機械の鍵です。心の指導ばかりで、機械的にはいらないというのも暴論だと思います。技術的にフィルタリングしていれば、生徒には何もしなくてもいいというのも暴論だと思うし、かえって育たないと思います。情報論理が育たないと思います。ですから、その両方をクロスしながらやっていきたい。ただ完成までにはいたっていません。永遠に続くんだろうと思います」
・ 採用はしたものの、フィルタリング技術そのものが未成熟であるため、あまり重視して運用していない自治体が多い。
・ EDドメイン名によってコントロールが可能になるという誤解が見られる。
・ コンテンツフィルターにはトラフィックを軽減する効果がある。
・ コンテンツフィルターのソフトメーカ等が契約ユーザに対してアクセスコントロールリストの更新サービスをおこなっている。しかし、このリストの内容を学校現場で確認できないという問題がある。アクセスリストにミスがあれば、教育的価値があるサイトが利用できないことにすら気がつかないことがありうるという危険性の認識は、学校現場まで行き渡っているとはいいがたい。
ブラックリスト方式でもホワイトリスト方式でもリストに掲載するサイト数は膨大な数にのぼること、さらに何を載せて何を載せないかという基準が難しいことなどから、何らかのフィルタリングを必要としている学校現場の要望に応えられるような有効なフィルタリング技術はまだ登場していない。
また、EDドメインによって、コントロールが可能になるという声も根強くあるが、それは誤解である。
実際には、アンケート調査結果にも見られるように、設定していない地域も多く、その場合、教員などの目の届くところで使わせることなどの方法で対応している。
なお、コンテンツフィルタリングは、学校にふさわしくない情報の排除という目的だけでなく、不要なトラフィックをインターネット上に流さないという効果を持っていることにも配慮すべきである。
教育ネットワークにおけるセキュリティには、次のような階層構造がある。
・ インターネット
・ 教育ネットワーク
・ 学校内ネットワーク
・ 教職員用ネットワーク
これらの境界をどう分けるかによって、それぞれに合わせた仕組みが必要である。
生徒用と教職員用(T県)
「公開系と行政系に分けていて、生徒が使うのは必ず公開系です。これはグローバルアドレスを振っていますので、直にインターネットに出ていきます。教職員が使う行政系はプライベートアドレス、県のイントラネットを経由して出ていきます。教職員から生徒セグメントへはいけますけれども、生徒セグメントからは教職員のセグメントへは入れない措置を講じています」
学校内と学校外(U町)
「それぞれの学校はサブドメインを持っているんですけれども、具体的には教育委員会で外向きのものは全部管理されていて、外とのやり取りは教育委員会のサーバを通じている形をとっているんです。外向きについては、この形のほうが安心なんだろうと思います、セキュリティを考えたときに。ただ、内側は学校内の問題なので、学校内で管理してもらわないといけない。同じ学校だといっても、Aという学校とBという学校では、それぞれ学校内のプライバシーがあると思いますので、それもオープンにするわけにはいかないだろう。それぞれの学校が守っていかなきゃならないものもあるし、町の学校と山の学校は同じではない。ですから、管理の部分では二本立てが必要だと思いますし、今もそういう形をとっていますし、これからもその形で行くだろうと思います」
わざとネットワークにつながない(V県)
「学校ではファイルサーバ機能を、完全にネットワークから切り離しています。ネットワークを分けてしまっているところもありますけれども、口酸っぱくいっているのは、『先生は考えずにスタンドアローンで使ってください』ということです。学年ごとに成績管理処理用パソコンがありますから最低3台あり、それらでファイル共有しますが、教育ネットワークには乗せていません。問題が起きるから、乗せない」
・ ダイヤルアップ接続ではあまり意識されていないが、ネットワークの各階層を分けるためのセキュリティが必要である。
・ とくに学校内の教職員用と生徒用のネットワークセキュリティについては考慮はされているが、実施されている地域は少ない。
校内LANが整備された学校では、LANの便利さを知った教員が自分のノートパソコンを不用意にLANに接続することがある。すると、成績処理データが入ったそのノートパソコンのハードディスクの中身が校内の他のパソコンから見られているのに、肝心の教員は見られていることに気づかない、という問題が現実に起きている。
こうした事故を防ぐためには、個人データを記録したパソコンはLANにつながないか、あるいは教職員用のネットワークを独立させておく必要がある。
しかし、それよりも先に、中途半端にLANを理解している教職員に対し、そのような危険性があることを正しく啓蒙することのほうが重要である。
活用が進むと、パソコン教室以外の部屋での利用が必要になる。「学校接続」から「学級接続」への展開は、文部省の最終報告にも盛り込まれたが、そのための予算化はほとんどされておらず、教員が自前で配線を拡張する学校が増えている。
県立学校は校内4カ所に配線(W県)
「県立学校の79校全部、校内4カ所ということで、事務室、職員室、図書館あるいは顧問ルーム、そして情報教室を配線しました。それで4カ所だろうと思ったんですが、工業高校とか商業高校は職員室がたくさんあるのが誤算でした」
市町村立の小中学校の校内LANも県費で1/2を補助(X県)
「小中学校につきましては、昨年度からやっていますけれども、県から2分の1の補助をしまして、校内LANを設置してくださいと、去年約20校、今年度も約20校、整備が始まっています。高等学校につきましては、校内LANと専用線接続とをセットにして整備をしていっています」
パソコン教室と職員室を配線(Y市)
「中学校の校内LANの配線費用は市の予算です。校内LANといっても、中学校の場合は職員室まで行っていますけれども、その近くにサーバを置いて、職員室の中はすぐにLANを敷けますよね。あとはコンピュータ室まで引っ張っていく。コンピュータ室の中はLANになっていますので、同様に40台の端末がみんな出るという状況です。中学校はそんな状況かな」
町の予算を使わず教職員がボランティアで作業(Z町)
「校舎が改築になることがわかっている学校は、先生方が線を張って、それで全部のネットワークを作ってしまう。予算は町から出るんですが、少しでも抑えたいという気持ちなんです。どっちみち業者に頼んで何10万もかけても、翌年にはすべて壊してしまうのだから、そのお金がもったいないので、『勉強になるから、自分たちでやる』ということで、その分の金を別のほうにまわしてもらったほうがいい。予算も抑えられますし、トータルで考えたときに、これだけの予算ですむということであれば入る可能性も高いし、予算が通る可能性も高くなりますから、それはひとつの策なんですけれども。
そのあとでも、学校の授業でコンピュータを移動して、線を入れなきゃならないというところは、『いいよ、業者を頼まなくても。こっちで引くから』と、天井裏にもぐってやる。自分たちにできることはやってしまう。本来的にいいかどうかは別として、ですが」
年次計画では先に延びるのでネットデイ(A市)
「小学校はどういう形態で教育用コンピュータを使っていけばいいのかということで、中学校と同じようにコンピュータ室に集中型でいいのかというところがあります。ちょっと実験的にやりたいという学校がありまして、そこについてはネットデイの形式で、保護者のボランティアを募って配線作業をする。そうやって全教室にLAN配線をした学校が2校。まだ、普通教室まで全部完了していないけれども、特別教室等、ある程度結んであるところが1校。これから全教室を対象にしようという学校が4校あります。
30校ありますから、年次計画で進めていくと4年先まで延びていってしまう。どこの学校も何とか早くということで、工事関係のある部分をボランティアを募ってやっているわけです。経費の軽減ができるというメリットもあります。
LAN配線工事を全部工事業者さんに任せれば、それは予算化できる。ですが、そうするとすべての工事経費になりますから、非常に高くなります。サーバ関係を除いても、工事費は平均で200万円ぐらいかかるんです」
予算化は無理(B県)
「じつは配線工事費を含めていろいろと予算項目を挙げたんです。でも全部カット、カットです。それはもうしようがない。群馬県に『インターネットつなぎ隊』というボランティアがありますでしょ。あれに似た組織を、工業高校を中心に組もうかな、と」
・ 校内配線のための予算化はほとんどおこなわれていない。
・ 自主的に校内配線を拡張する自治体が増えている。
・ ボランティアの支援を得ることは今後の方向として重要である。
・ ボランティア活動を利用することの意味を、「安価な工事業者」と財政当局に勘違いさせてしまう可能性が多分にある。
教育ネットワーク整備にとって次のステップである校内LANの整備(教室への配線拡張)については、行政当局主導型、ボランティア団体主導型の2つのパターンでは、ごく自然に目標にとり込まれているのに対し、教育委員会主導型ではそこまでの予算が認められている地域はきわめて少ない。
それに対し、校内LANの整備に対するボランティアの支援が数多く見られるが、財政当局は一方的にボランティアを「安価な工事業者」と見るのではなく、双方が支援しあえるような協力体制が構築されることが望ましい。
インターネットサーバには運用のログが記録される。そこで、運用ログを次のような目的で活用している地域が見られた。
・ 異常のチェック
・ ランニングコストの算出
・ 通話料の積算
異常のチェック(C市)
「Radius(ダイヤルアップ接続認証サーバ)のログを加工したやつを毎日、電子メールで教育研究所に送っています。そうすると、学校側の異常発生しているログとか、夜間、人がいないときに使われているんじゃないかとか、そういうものがチェックできて、かつ1カ月の電話料金が積算いくらになっているかも、利用状況もログを見ていてわかるんですよ、増えているなというのが。異常でなければいいということで、確認だけはしているんです」
ランニングコスト算出の根拠(D県)
「ログを見たいという要望も出しているんですけれども、教育だけではなくて、いろんな組織がつながっていることもあると思うんですけれども、なかなかログの提供は難しいというふうにいわれました。困っているんですけれども。ただ、私どももこれを管理するためには当然ランニングコストを財政と交渉しなければなりませんから、稼働の状況については当然、入手しなければならないデータです。今は移行して数カ月の段階ですので、なかなか知事部局との調整も進んでいないんですけれども、いずれはそういうことになるでしょうね」
通話料を積算(E市)
「最初に積算の根拠というか、市の予算が必要なものですから、ダイヤルアップですけれども、実験をしたときに取ったログをもとにして、だいたい月1万円ぐらいあれば何とかというので動いて、それをもとに予算設計してもらいました。『いくらなんだ?』といわれても、わからないわけです」
・ インターネット運用経験のある地域では、ルータの誤発呼をチェックするために運用ログをとっている。ダイヤルアップ接続でもログをとっているところがある。
・ 運用ログが教育活動の資料となりうることに気がついている自治体は少ない。
運用ログはインターネット運用経験のある地域で異常のチェック、メンテナンスコストの算出などに利用されているが、運用ログそのものはほとんど公開されていない。
たとえばカリキュラム(時間割)とクロスして運用ログの分析をおこなうことで、教科別の利用頻度をはじめ、新しいインターネット活用の可能性をさぐることもできる。各地域のインターネット運用経験の蓄積によって、すでに統計上のバラつきを打ち消せるほどのデータが集積されていることを考えると、運用ログの活用を図るべきである。
最後に、本年度の面談調査の対象となった12地域のうち、2地域で情報インフラの「地域格差」が見られたことを報告しておきたい。ISDN回線が引けない、競争するサービスがないなどの格差である。これらは早急に解消されるべきである。
ISDNが引けないところがあり機会均等にならない(F町)
「NTTにはかなり申し入れをしているんですけれども、40戸ぐらいの集落がISDNを引けないんです。今のところ計画はないということで、断られているんです。
今使っているのはダイヤルアップで、9600bpsいけばいいところなんです。それではメールは飛ばせるんですが、Webを見ることは不可能なので。ですから、その分についてはテレビを使って、衛星を使ってという要望をしているんです」
競争するサービスがない(G県)
「5年のリースにしてくれないとペイできないと彼らはいっていますけれども、いちおう単年度ごとですから。安いところが出れば、そこに変えます。ただ、似たようなものがヒットしましたから。ODNとかDIONとか、さまざまななところから出ているんですが、G県へのサービスはまだないんです。だから、独占的な形にはなっているんですが、安いところがあればいつでも乗り換えるとは言っています」