【資料2】中学校における実践事例

E-mailを使った海外の学校との交流

広島市立古田中学校 西川和子

1 はじめに

 2年前に,3年生を対象として電子メールを使った海外の学校との交流を行った。交流相手は,Heinemann Keypals(http://www.reedbooks.com.au/heinemann/global/global1.html)のWebページから,同年齢で英語を使っての交流を生徒にさせたいと希望している先生を捜した。まず,相手方の生徒の自己紹介メールを送ってもらい,それを生徒たちに配布した。本校では,廊下に張り出したポスターで交流希望者を募集した。2学期からスタートした交流は,本校の生徒が卒業してしまった3月で終了してしまった。
 彼らから交流の楽しさを聞いていた1年生たちも交流に参加することを強く希望していたが,まだ自分で英文を読み書くことが難しかったため,2年生に進級するまで待たせていた。

 

2 交流の実際

 2年生英語の教科書(New Horizon English Course 2)のUnit 4で,電子メールを使ったやりとりが扱われている。また,夏にそれまで本校に勤務していたAETがロンドンに帰国し,彼女と私が頻繁にメールで近況報告を行いながら,それを生徒に伝えていた。家庭で電子メールを使った経験のない生徒たちも,「相手に手紙が届くのは,どのくらい速いのか」という疑問をもつなど興味を持っていた。授業中に「海外にkeypalを探そうと思うが,交流をやってみたい人がいるか?」と呼びかけたところ,そのクラスはもちろん,話を聞きつけたよそのクラスや他学年からも交流を希望する生徒が集まった。
 ふたたびHeinemann KeypalsのWebページを利用し,アメリカ合衆国ミネソタ州のBrowns Valley Middle Schoolの8年生15グループと交流を開始することにした。2・3年生の女子15グループ(2人で協力しながら交流したグループが6グループある)がこの交流に参加することになった。
 本校には,生徒用のインターネット接続可能なコンピュータがない。そのため交流は,相手からのメールを教師がプリントアウトして渡し,生徒は返事を紙に書いてきて提出しそれを教師がコンピュータに入力し送るという方法をとっている。電子メールの即時性は味わえるが,自らキーボードを操作する喜びを味わうことができない。また,教師がキー入力する際に,どうしても文法チェックをして間違いを直したくなってしまうが,誤解を受けそうな表現でない限り,そのまま送るようにしている。相手から来た返事を見て,「あぁ,こんな言い方をする方がいいんだな」と理解することがいい学習になるからである。
 Browns Valley Middle Schoolでは,週に一回メールチェックをする時間があるようで,土曜日の朝にメールが届いていることが多い。本校生徒が2週間以上返事を出していなかったら,「早く書いて持っておいでよ」と声をかけてくれる。また,あまり長い間相手から返事がこない場合も,向こうの先生に相談しているようである。
 メールの交換は自己紹介から始まった。興味があるスポーツ,音楽などについての紹介が多かった。しかし向こうの学校ではアメリカンフットボールが盛んなのに,こちら側はスポーツに興味のない女の子が多くて,この話題は長く続かなかった。「広島がどこにあるか,知ってるのかな?」とか,「クリスマスには何を食べるんだろうね」などと,話題にできそうなことのヒントを与えている。また,「相手の質問には必ず答えた上で,最低1つは質問を出すこと」という条件を与えて返事を書きやすいメールを書くように指導している。

 

3 成果と課題

 教科書で電子メールに関することを学習してすぐ始めたので,興味を持つ生徒が多かった。また,相手に伝えようと自分たちの文化(正月にどんなものを食べるか,感謝祭に対応する祭があるかどうか,など)を見直すことができたようである。相手からのメール中のスペリングミスを見つけて,自分の英語に自信を持った生徒も多い。
 一方,生徒が使用できるコンピュータがないため,すべて教師の手を通さなければならなかった。キー入力の負担がすべて教師にかかったため,けっこうな時間をさかなければならなかった。生徒の手元にはお互いの手紙のプリントアウトをファイルしたものしか残っていないため「家でコンピュータを使う人は,フロッピーディスクに保存して持ってきてくれてもいいよ」と呼びかけたが,家で自分だけで家のコンピュータを操作することは難しかったようだ。学校のコンピュータを使うことができれば,その場で指導することもできただろうが,コンピュータ室を利用させるためには教師がつかなければならず,その時間の確保が難しかった。それにコンピュータ室を使ってもその場から送信ができないのではインターネットを使っているという醍醐味を味わえないことは大きな問題だ。

 

4 生徒の感想

   相手の家のこと,趣味,行事の過ごし方など,いろいろなことを教えあえるので,毎回楽しみにしています。英語の使い方が違うのに驚いたけれど,勉強になるのでいいと思います。

   自分の書きたいことを英語で表現することがすごく難しいと思う。でも,相手からのメールを読むのはすごくおもしろい。だから,これからも続けていきたいと思う。

   私は,返事が届いたときのうれしさと返事を待っているときのドキドキ感,それから,自分たちの手紙を書き上げたときの充実感が大好きです。書きたいことがうまく英語にできなかったり,難しい英語の意味が分からないときは,すごく苦しいけど,なんていうか,外国にお友達がいるというだけでうれしくてたまりません。いつか,アンジーとナターシャにあいたいな。


 

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