石原 一彦 大津市立平野小学校
@ カテゴリ別の傾向
小学生を対象にしたレイティングのあり方をアンケートから読みとるために、対象学年として小学校を指定した回答者をそれぞれ低学年・中学年・高学年別に集計した。しかし、全項目にわたって低
中 高学年の間に有意な差がほとんどないことがわかった。これは、低・中・高学年とひとくくりにアンケートに答えた人が多く、回答者が低・中・高学年それぞれに差をつけなかったのが理由と思われる。ただ、全体的な傾向として、低学年は中・高学年に比べてより厳しい基準を求めている傾向が読みとれる。低学年の児童には自由な情報の提供より、与える情報を制限してでもなるべく安全で穏やかな情報を与えたいという教師の願いが込められているのかもしれない。以下、低・中・高学年を合わせたデータをもとに、カテゴリ別に分析することにする。
ア 暴力
暴力のカテゴリでは、「残虐」が80%以上が「禁止」でしかも「原則禁止」の約4倍となっている。「殺人」も「禁止」と「原則禁止」を合わせると90%を越えている。「殺傷」は「原則許可」が一番多く選ばれている。以下、「争い」と「なし」についても「原則許可」が一番多い。
イ
セックス
セックスのカテゴリでは「性行為」および「性交らしき描写」までが「禁止」「原則禁止」で80%を越えている。「なし」の場合でも一番多いのが「原則許可」になっている。
ウ
ヌード
ヌードのカテゴリでは「性器の強調」は「禁止」が60〜70%で、「原則禁止」の倍から3倍程度ある。「部分的なヌード」でも「禁止」「原則禁止」が半数を越えている。「なし」のばあいでも一番多いのは「原則許可」である。
エ
言葉
言葉のカテゴリでは「誹謗中傷」「わいせつ表現」までが「禁止」「原則禁止」で90%近くになっている。その反面、「不快感を与えない言葉」では「許可」「原則許可」が60%程度までになっている。
オ
その他
その他では「反社会的」「違法」「公序良俗に反する」までが「禁止」「原則禁止」で70%程度である。「要注意」や「なし」などでも一番多いのが「原則許可」である。
カ
見解
その他の事項に関する見解に関しては小学校の場合でも全体の集計と同じような傾向になっている。政治や私的嗜好など個人の思想や信条に関わる内容については制限を加えるべきでないと考えているようである。その逆に、反社会的な内容についてはより厳しい制限が求められている。社会問題となっている援助交際や犯罪に関する情報は多くの回答者が制限を加えるべきだと考えている。また、従来からある国民的課題の差別事象に関しても厳しく情報を制限するべきだという考えが読みとれる。
A 推奨教育用フィルタリング・レベルの作成・提案
図1.2-9に示したように、閲覧情報の制限は利用する児童の環境によって大きく異なるのである。例えば、職員室に1台の端末があり、主に教師が利用するような環境では、閲覧情報の制限などは必要ないと言っていい。なぜならその場合は、教師が情報をあらかじめ取捨選択して「教育上見せたくない情報」を事前に遮断しているからである。また、数台の端末をコンピュータ室などで利用させる場合でも、あらかじめ作成された校内サーバ内のデータやリンク集だけであれば「教育上見せたくない情報」をブロックするは必要はない。あらかじめ「教育上見せたくない情報」が除去されているからである。
レイティングが必要となるのは、児童が自由に利用できる端末が十分あり、教師が不在の場面でも自由に端末を使う環境が整っている場合に加えて、児童が全文検索システム(サーチエンジン)を自由に駆使したり、URLを正確に記入できるスキルが育っている場合である。具体的にいえば、端末数が多すぎて児童の閲覧している情報を教師が管理できないほどコンピュータを有している学校であるとか、普通教室に情報端末が設置してあり、休み時間でも児童が自由に端末を利用できる学校に限られているということである。
それでは、アンケートの結果から各カテゴリ別に推奨教育用フィルタリング・レベルを考察する。
ア 授業中(サーチエンジンを使わない場合)
(ア) 暴力
V4 残虐 →「禁止(4)」
V3 殺人 →「原則禁止(3)」
V2 殺傷 →「原則禁止(3)」
V1 争い →「原則許可(2)」
V0 なし →「原則許可(2)」
(イ) セックス
S4 性行為 →「禁止(4)」
S3 性行為らしき描写 →「原則禁止(3)」
S2 着衣のままの性的接触 →「原則禁止(3)」
S1 セクシャルなキス →「原則禁止(3)」
S0 なし →「原則許可(2)」
(ウ) ヌード
N4 性器の強調 →「禁止(4)」
N3 全裸 →「原則禁止(3)」
N2 部分的ヌード →「原則禁止(3)」
N1 露出的な服装 →「原則許可(2)」
N0 なし →「原則許可(2)」
(エ) 言葉
L4 誹謗中傷 →「禁止(4)」
L3 わいせつ表現 →「原則禁止(3)」
L2 悪口 →「原則禁止(3)」
L1 穏やかな悪口 →「原則許可(2)」
L0 不快感を与えない →「原則許可(2)」
(オ) その他
E4 反社会的 →「原則禁止(3)」
E3 違法 →「原則禁止(3)」
E2 公序良俗に反する →「原則禁止(3)」
E1 要注意 →「原則許可(2)」
E0 なし →「原則許可(2)」
イ 授業中にサーチエンジンを使う場合、児童が休み時間などに自由に使う場合
(ア) 暴力
V4 残虐 →「禁止(4)」
V3 殺人 →「原則禁止(3)」
V2 殺傷 →「原則禁止(3)」
V1 争い →「原則禁止(3)」
V0 なし →「原則許可(2)」
(イ) セックス
S4 性行為 →「禁止(4)」
S3 性行為らしき描写 →「原則禁止(3)」
S2 着衣のままの性的接触 →「原則禁止(3)」
S1 セクシャルなキス →「原則禁止(3)」
S0 なし →「原則許可(2)」
(ウ) ヌード
N4 性器の強調 →「禁止(4)」
N3 全裸 →「原則禁止(3)」
N2 部分的ヌード →「原則禁止(3)」
N1 露出的な服装 →「原則禁止(3)」
N0 なし →「原則許可(2)」
(エ) 言葉
L4 誹謗中傷 →「禁止(4)」
L3 わいせつ表現 →「原則禁止(3)」
L2 悪口 →「原則禁止(3)」
L1 穏やかな悪口 →「原則禁止(3)」
L0 不快感を与えない →「原則許可(2)」
(オ) その他
E4 反社会的 →「原則禁止(3)」
E3 違法 →「原則禁止(3)」
E2 公序良俗に反する →「原則禁止(3)」
E1 要注意 →「原則禁止(3)」
E0 なし →「原則許可(2)」