折田 一人
前橋市総合教育プラザ
@ カテゴリ別の傾向
中学校の生徒用コンピュータをインターネットに接続する際に、教育上好ましくない情報に関してフィルタリングをかけるべきかどうかは議論の分かれるところである。
しかし、学校の図書館で購入する本や、授業で使用する教材や資料について、教育上好ましいかどうか選択して学校に導入するように、インターネットからの情報もある程度の選択は必要になると考えられる。従って、ここでは中学校におけるフィルタリングの規準とその範囲についてアンケート結果を基に考察を加えるものとする。
中学校1〜3年を対象区分に指定した回答が24件、学年を指定したものが12件あった。学年別にも集計したが、学年指定件数が少ないため、学年による顕著な差は見られなかった。むしろ回答者の考え方の差のほうが大きいことがわかった。以下、中学生(1〜3年)をひとまとめにして全体的な傾向について考察することにする。
ア 暴力
「残虐」「殺人」は禁止、「殺傷」は原則禁止が大多数を占めている。「争い」では原則許可と原則禁止、「なし」では許可、原則許可、原則禁止で回答が分かれている。また、「争い」で禁止と回答したものがいなかった。
通常は「争い(V1)」「なし(V0)」を許可するのが妥当であると思われる。授業の中で条件つきながら、「殺傷(V2)」まで緩和してもよいのではないか思われる。ただし、法に触れる行為を許可する際は十分な配慮が必要である。
ただし、戦争などの歴史的な事実に基づく記述についてまで制限を加えることは、学習の情報を妨げることになるので、歴史的な事実として有効なものや暴力や殺人について問題提起を含むものについては、別途許可するなどの工夫も必要と思われる。
イ セックス
回答者によって大きな意見の違いの見られるカテゴリである。「性行為」は大多数が禁止であるが、「性行為らしい描写」では禁止の方が原則禁止よりも多いものの、中学3年では52%、38%とその差が少なくなっている。「着衣のままの性的接触」では原則禁止、禁止で、「セクシャルなキス」では原則禁止がやや多いものの許可〜禁止で回答が分かれている。「なし」では禁止は少数(10%)となるが、許可〜原則禁止で意見が分かれている。一方、「着衣のままの性的接触」を許可とした回答は1人だけである。
通常は、「セクシャルなキス(S1)」「なし(S0)」を許可するのが妥当であると思われる。特定の授業の中で、条件つきながら「着衣のままの性的接触(S2)「性行為らしき描写(S3)」まで緩和してもよいのではないかと思われる。
また、避妊やエイズ教育など性教育の内容については、性行為の描写があった場合でも許可するなどの必要性があると思われる。
ウ ヌード
「性器の強調」「全裸」では禁止が大多数を占めているが、「部分的なヌード」からは意見が分かれてくる。「部分的なヌード」では原則禁止が禁止よりも少し多いがほぼ同数で、中学3年になると原則許可が17%になる。「露出的な服装」では原則許可と原則禁止が多く、許可が17%見られる一方禁止もほぼ同数見られる。「なし」では、45%が許可であるが、原則禁止も23%見られる。「なし」を禁止とする回答が少なく、「部分的なヌード」を許可とする回答も少ない。
通常は、「露出的な服装(N1)」「なし(N0)」を許可するのが妥当であると思われる。ただし、美術の作品の鑑賞など、特定の授業の中で、条件つきながら「部分的なヌード(N2)」まで緩和してもよいのではないかと思われる。
エ 言葉
このカテゴリでは、禁止とする回答が、中学3年で、「誹謗中傷」から69%、62%、45%、28%、21%と少なくはなっているが、「不快感を与えない」にも20%以上見られることが大きな特徴である。一方で許可とする回答は、中学3年で、「不快感を与えない」34%、「穏やかな悪口」24%、「悪口」10%となっている。特に、「穏やかな悪口」では、許可、原則許可、原則禁止、禁止がほぼ同数であり、回答者の考え方によって大きく左右されるところである。
通常は「穏やかな悪口(L1))」「不快感を与えない(L0)」を許可するのが妥当であると思われるが、「不快感を与えない」を絶対禁止とする意見が若干あることも考慮する必要がある。特定の授業の中で、条件つきながら「悪口(L2)」「わいせつ表現(L3)」まで緩和してもよいのではないかと思われる。
ただし、言葉に関するフィルタリングは、表現の自由とも密接な関わりをもつものであり、表現の方法として暴力的な表現がなされる場合もあるので、十分な注意が必要であると思われる。
オ その他
「反社会的」は禁止が多い。「違法」では中学校の集計では禁止のほうが原則禁止より多く、特に中学3年では51%、27%である。「公序良俗に反する」では原則禁止が、「要注意」では原則許可が多い。また、「要注意」を禁止とする意見はなかった。通常は「要注意(E1)」「なし(E0)」を許可するのが妥当ではないかと思われる。特定の授業の中で条件つきながら「公序良俗に反する(E2)」まで緩和してもよいのではないかと思われる。やはり、学校のなかでは「違法行為(E3)」を許可するのはおかしいのではないだろうか。
ただし、公序良俗に反するという基準は曖昧であるため、基準について再考する必要があると思われる。
カ 見解
対象が中学校に限定した集計と全体集計とほぼ傾向は同じである。80%を越えるものは多い順に、チャイルドポルノ(97%)、援助交際、悪(89%)、ハッカー行為(81%)で、60%を越えるものは順に、偏見・差別、犯罪(78%)、交際・恋人(75%)、カルト(69%)、チャット一般(67%)、ギャンブル(61%)である。逆に15%以下の回答として、順に私的嗜好、政治(0%)、一般的宗教(6%)、自衛隊・機動隊(8%)、避妊(14%)である。
全体的に違法行為や法律にふれる行為につながるものについては排除する傾向が強い。また、表現の自由や思想・信教、政治については排除していない。ゲームやギャンブル、ショッピング等については排除意見が少ない。すなわち、排除よりもむしろ指導が大切との意見が多いようである。
また、特に掲示板やチャットは情報の流入という面と、個人情報の流出という問題をあわせもつため、別途のフィルタリング等の制限が必要であると思われる。
A 推奨教育用フィルタリング・レベルの作成・提案
中学校の中で、生徒がインターネットを使う場面は大きく二つであると考えられる。ひとつは、休み時間や放課後などに生徒が自由に使う場面、すなわち先生の直接指導していない場面での利用である。もうひとつは、総合的学習の時間等で生徒が課題解決の道具として使う場面である。この場合には、生徒のテーマにより選択肢が分かれてくるので、いくつかの場合わけが当然必要となってくる。この2点について考えてみた。
この値の以下のものは見せてよい。例えば、V2(殺傷)ではV1、V0は見せてよい。
ア 生徒が自由に使う場面(直接先生の指導がない)
中学1〜3年・自由時間 暴力 V0
自由度なし セックス S0
ヌード N0
言葉 L0
その他 E0
中学1〜2年・自由時間 暴力 V1
セックス S0
ヌード N0
言葉 L0
その他 E1
中学3年・自由時間 暴力 V1
セックス S1
ヌード N1
言葉 L0
その他 E1
イ 課題追求学習等(先生の指導)
中学1〜2年 暴力 V1
セックス S1
ヌード N1
言葉 L0
その他 E1
中学3年 暴力 V2
セックス S2
ヌード N2
言葉 L1
その他 E2
ウ 課題追求学習(先生の指導強い)
中学1〜3年 暴力 V2
セックス S2
ヌード N2
言葉 L2
その他 E2
中学1〜3年・社会公民系 暴力 V3
セックス S2
ヌード N2
言葉 L2
その他 E3
中学1〜3年・保体系 暴力 V2
セックス S3
ヌード N3
言葉 L2
その他 E2
中学3年・先生指導最強 暴力 V3
セックス S3
ヌード N3
言葉 L3
その他 E3