宇佐美東男 愛媛県立新居浜工業高等学校
1年・2年・3年生を一括対象として、アンケート回答数(延べ人数)は101人であった。
以下の分析は、最も多く選択されたレベルを1番目の言葉として表現し、パーセント表現は2番目の言葉のレベルと合わせた割合である。
@ カテゴリ別の傾向
ア
暴力
(ア)
残虐な場面の描写については禁止と原則禁止が90%を越えている。無回答は0%である。
(イ)
殺人場面の描写では禁止と原則禁止で70%を越えているが、原則許可も約18%ある。無回答は1%であった。
(ウ)
殺傷は原則禁止が50%を越え、原則許可が約24%である。禁止は約18%と少ない。無回答は1%であった。
(エ)
争いは原則許可と原則禁止がほぼ同率で、合わせて70%を越している。許可も約18%となっている。無回答は4%である。
イ セックス
(ア)
性行為の場面描写は、禁止および原則禁止を合わせて82%を越している。原則許可についても約13%である。無回答は2%であった。
(イ)
性行為らしき描写は、原則禁止と禁止を合わせて約64%を越している。原則許可については約23%である。無回答は2%である。
(ウ)
着衣のままの性的接触行為の描写は原則禁止と禁止で50%を越しているが、原則許可と許可も合計で47%を越している。無回答は2%である。
(エ)
セクシャルなキスの描写では、許可と原則許可を合わせて57%を越している。また原則禁止と禁止を合わせて約41%である。無回答は1%であった。
ウ ヌード
(ア)
性器の強調を描写した場面では、禁止と原則禁止を合わせて88%である。原則許可は8%と少ない。無回答は2%である。
(イ)
全裸を描写した場面は禁止と原則禁止が均衡しており、合わせて65%を越している。原則許可も約24%である。無回答は1%であった。
(ウ)
部分的ヌードの描写では、原則禁止と禁止を合わせて51%を越している。原則許可と許可を合わせると44%を越している。無回答は4%であった。
(エ)
露出的な服装では、原則許可と許可を合わせて63%を越している。原則禁止と禁止を合わせると30%を越している。無回答は6%である。
エ 言葉
(ア)
誹謗中傷では、禁止と原則禁止を合わせて72%を越している。原則許可も約15%である。無回答は4%であった。
(イ)
猥褻表現は原則禁止と禁止を合わせると74%を越す。原則許可は約15%である。無回答は3%である。
(ウ)
悪口は原則禁止と原則許可を合わせると61%を越す。また、禁止も約23%である。無回答は4%であった。
(エ)
穏やかな悪口は、原則許可が約32%、許可と原則禁止がそれぞれ約25%で均衡しており、禁止も約15%である。無回答は4%である。
オ その他
(ア)
反社会的な描写は、禁止と原則禁止を合わせて67%を越している。原則許可は約17%である。無回答は6%であった。
(イ)
違法行為の描写は、原則禁止が最も多く、約45%である。原則許可を合わせると65%を越す。また、禁止は約19%である。無回答は6%である。
(ウ)
公序良俗に反するものの描写は、原則禁止と原則許可を合わせると70%を越す。禁止は約16%である。無回答は5%である。
(エ)
要注意については、許可と原則許可を合わせて約58%、原則許可は約25%である。無回答は13%であった。
カ その他の事項に対する見解
チャイルドポルノは国際的にも注目されており、強くレイティングの対象にすべきであると考えられているようだ。援助交際や交際・恋人、チャット、ハッカー行為などは時代を反映しているような感じを受ける。ギャンブル、犯罪、偏見・差別等にもレイティングは必要と考えられている。また、通信販売等についてもレイティングの対象となる場合があると考えてよさそうである。これらについては、新たなレイティング基準のカテゴリとして整理し、位置付けが必要と思われる。
キ まとめ
暴力については、禁止という強い意思を感じられ、高校生も中学生対象も大筋では変わらないようである。セックス、ヌードについては、知識・経験が増え、判断力が高いと解釈して、高校生のフィルタリング・レベルは全体にゆるやかになっている。言葉、その他についても同じ様な傾向が見られる。
調査結果は回答者に教育関係者が多いこともあって、学校運営上の意識も影響しているのではないかと思われる。この調査は今後さらに、幅広い分野の方々を調査対象に選び、発展させる必要があると思われる。
全体に回答結果は常識的な線がでていると解釈できるが、高校生自身を対象に調査することも意義があると考えられる。
A 教育用フィルタリング・レベル(案)の作成・提案
高等学校では、教科別レイティングが必要であるとの意見があり、調査対象を各教科担当者にも広げたい。例えば、保健体育での性教育や家庭科での出産・育児、芸術科でのデッサン指導、その他の授業など、それぞれによってレイティングは違ってくるはずである。このため教科別のプロファイルが必要と思われる。
従って、今回の調査で得られたデータを基に作成するフィルタリング・レベル案は、高校全般もしくは生徒の自主活動領域を対象とする。
ア 全般もしくは生徒自主活動における分野別フィルタリング・レベル案
暴力
V4 残虐・・・・・・・・・・・・・「禁止(4)」
V3 殺人・・・・・・・・・・・・・「禁止(4)」
V2 殺傷・・・・・・・・・・・・・「原則禁止(3)」
V1 争い・・・・・・・・・・・・・「原則許可(2)」
V0 なし・・・・・・・・・・・・・「許可(1)」
セックス
S4 性行為・・・・・・・・・・・・「禁止(4)」
S3 性行為らしき描写・・・・・・・「原則禁止(3)」
S2 着衣のままの性的接触行為・・・「原則禁止(3)」
S1 セクシャルなキス・・・・・・・「原則許可(2)」
S0 なし・・・・・・・・・・・・・「許可(1)」
ヌード
N4 性器の強調・・・・・・・・・・「禁止(4)」
N3 全裸・・・・・・・・・・・・・「原則禁止(3)」
N2 部分的なヌード・・・・・・・・「原則禁止(3)」
N1 露出的な服装・・・・・・・・・「原則許可(2)」
N0 なし・・・・・・・・・・・・・「許可(1)」
言葉
L4 誹謗中傷・・・・・・・・・・・「原則禁止(3)」
L3 わいせつ表現・・・・・・・・・「原則禁止(3)」
L2 悪口・・・・・・・・・・・・・「原則禁止(3)」
L1 穏やかな悪口・・・・・・・・・「原則許可(2)」
L0 なし・・・・・・・・・・・・・「許可(1)」
その他
E4 反社会的・・・・・・・・・・・「原則禁止(3)」
E3 違法・・・・・・・・・・・・・「原則禁止(3)」
E2 公序良俗に反する・・・・・・・「原則禁止(3)」
E1 要注意・・・・・・・・・・・・「原則許可(2)」
E0 なし・・・・・・・・・・・・・「許可(1)」
イ まとめ
インターネットの利用分野として、教科指導や特別活動、その他の活動など幅広い場面がある。これらの活動場面に応じたフィルタリング・レベルがあると考えられる。教科別はもちろんのこと、指導教師、指導人数によっても変わると思われる。
また、大切なことはインターネットを利用する事前指導として、情報モラルに関する学習をどれだけするかによってもレイティングの必要性は変わるはずである。このようなことを総合的に考慮して、フィルタリング・レベルのプロファイルを作成することが大切である。
高校生では、教師側でレイティングするだけでなく、生徒も自発的にレイティングを選択できるシステムあるいはプロファイルも必要かと思われる。
今後、教科別プロファイルを作成することを目標に、さらに多くの調査を実施し、推奨フィルタリング・レベルを作成し、教育現場でのレイティング設定作業の効率化と普及に取り組む必要がある。