3年目を迎えた共同観測プロジェクトは、1998年10月1日から1月間、広島・香川・神奈川・山形の4つの小学校の5年生と、熊本・宮崎・京都・静岡・新潟の5つの県のお天気ボランティアが参加して行われた。お天気ボランティアとはプロジェクトの趣旨に賛同して下さった方々で、教育関係者に限らず学生や一般社会人の方も含まれている。
「お天気は、西から東へかわってくる。天気を予報したければ、西の地域の
天気がわかればいいんだ!」
天気の学習の基本は観測にあり、それぞれの地域で子供達は実際に観測を行い新聞の気象データなどから天気の変わり方の規則性を見い出し天気予報をするというのが、従来の一般的な学習方法であった。本プロジェクトでは、観測したデータを電子メールを使い交換し、交換したデータを分析したり、リアルタイムでおくられている「ひまわり画像」と参加各地の天気を比べることにより、天気の変化の規則性を見い出し天気予報をする。
共同観測期間は10月中を予定していたが、共同観測の児童への意識づけを含め7日までは自己紹介期間、21日までは参加校での観測、31日までをまとめの期間として設定した。観測は「天気」「気温」「風向」「雲の種類や色」「体感や雲の動き」ついて行った。観測時刻は12時〜13時を基本として、観測結果はメーリングリスト(tenki@cec.or.jp)を使い、参加者に送付された。
宮崎県宮崎市 10月15日 昨日の夜は星がキレイでした♡(流れ星もみました) |
林間小学校10月15日 今日風がすごくふいていた。 5年1組が観測しました |
山形市立東小学校 観測時刻 1:30 |
メーリングリストでデータを交換する他に、自分達で観測したデータが簡単な操作でWebに載せることのできる仕組を使い、共同で観測データの一覧表をつくる作業も行った。実際の天気を予想する学習においては、気象衛星「ひまわり」から毎時おくられてくる画像とあわせて、それらのデータは利用された。
図3 図4
昨年度までの共同観測でもデータはWeb化していたが、担当者の手作業によるもので、大きな負担となっていた。そこで今年度は企画の実施の中で自動生成できるWebの仕組みを開発していただいた。その仕組により、子供達は自分の手でWebを作成することができるようになり、自分達の学習と言う意識をより深くもつことができるようになったと思われる。実際に山形県東小学校の児童が観察以上に喜んでいたのが、Web上での入力であった。担当の教師からは「(子供達は)簡単な操作だけで一覧表になるのですから感激していました。毎日昼休みに観察してすぐ入力しましたが、その時間には当番以外の子も集まってきて次の日の予想までしていたようです。」との報告がされている。
本年度新しく取り入れたことでは「お天気ボランティア」の導入がある。天気の共同学習を行う時には、さまざまな地域のデータがあった方が天気の変化の規則性を考える時に効果が高まることが予想される。共同観測でもとめる第一の目的は、共通基盤にたって観測したータであるので、データの提供者は小学生でなくても共同観測は成り立つ。そこで、学校参加がなかった地域の方には「お天気ボランティア」として参加して頂くことにした。参加して頂いた方からは観測終了後に、
・・・・お蔭様で「お天気共同観測」もインターネットという素晴らしい情報機器のお陰で参加させて頂けました。「お天気共同観測」ですが、本当に楽しいものでした。童心に戻り、今迄気にしていなかった気温や風向き、雲の種類などを気にするようになりました。また子供時代に親から聞いた「弥彦山が曇ると雨」の言い伝えなど、いろいろな昔も思い出させて頂きました。このような自然を通しての情報交換は子供達だけではなく私にとっても楽しいものでした。・・・・・
との感想を頂いた。「お天気ボランティア」の方がたからおくられて来た観測データの中で特に子供にとって有効な情報だと思われるものには、気象に関する諺や体感を表現した部分があげられる。子供の観察では気がつかない内容が記されていることから、観測の視点を与えられ学習に対する大きな刺激になったと思われる。以下にメールの内容の一部を紹介する。
Date: Sat、 3 Oct 1998 22:54:37 +0900 (JST) きのうより、空が少し白っぽい。まわりの山にもやがかかって見えます。 南のほうに、高積雲(ひつじ雲)が見えます。 |
Date: Sun、 4 Oct 1998 16:48:17 +0900 (JST) 雲の種類:積雲、高積雲、巻雲、巻積雲。すっかり秋空です。 気づき: きんもくせいの香りがきもちいいです。 |
昨年末に出された、次期指導要領では「総合的な学習の時間」が設置されるようになった。学習活動を行うに当たっての配慮事項として『
(2) グループ学習や異年齢集団による学習などの多様な学習形態、地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となって指導に当たるなどの指導体制、地域の教材や学習環境の積極的な活用などについて工夫すること』と記されているが、お天気の共同観測は学校の枠を超えた学習であり、地域をも超えた人々との協力で学習が成立している。時に応じて語られる地域のようすが、ある時は自分の地域と同様であり、またある時は異なる内容であることから、児童は自分の住む地域を見直すとともに、他の地域への理解を深めていくことになる。これから研究がすすめられていく「総合的な学習」の中でも、「お天気共同観測」のような学習は有効であると考えている。
報告の最後に、授業後に児童が書いたものを紹介する。
「みなさんと勉強ができてたのしかった」「みんなでたくさんのことをやったのがよかった」「天気のことをいろいろ教えてくれたので天気のことがすこしわかりました。」「ほかの学校の天気を知って、天気の予想とか、ここの県はもうこんなに寒いとか、まだあたたかいなどわかり、やくにたつのでよかったです」「いっしょに天気のよそうをしてくれてありがとう。ごくろうさまでした。おじさん、おばさん、ありがとうございました。」
「これでおわかれかもしれないけれど、またこんな共同目的なことでいっしょに勉強できたら共にがんばりましょう」