4.3.2 社会背景と新たな社会参加としてのコミュニケーション

 100校プロジェクトにおける特殊教育の実践研究で繰り返し言われてきたのは、障害のある子供たちにとって、広域ネットワークを教育活動に取り入れたときのもっとも大きな教育的意義は、社会とのつながりができることであり、積極的な情報発信による「社会参加」が拡大することであった。
 専門的な対応の必要性により学校種別、学級形態が異なるためと、障害ゆえに移動やアクティブな活動が困難であることが多いというやむを得ざる事情(handicap)が、社会の障害児理解の乏しさとも相まって、障害児の社会参加を阻んできた。しかし、今後のインクルードされた社会構造を考えたとき、可能な限りの手だてを用いて障害児の社会との接点を豊かにしておく必要がある。
 インターネットの世界はもとより、参加しているすべての人々の相互責任によって、情報の共有化と相互支援によって成り立っている。そこに障害のある子供たちも参加していくということは、限られた周辺の人からの援助だけでなく、社会のあらゆる立場の人々からの情報提供や支援を受けられる可能性があるということである。しかも、多様なアクセシビリティの技術的、人的な支援方策を講じることによって、障害による不利を補って情報を自分のペースで随意の時間に収集したり発信したりすることができる。つまり、電話やテレビではリアルタイムで話すことや情報を読みとることができなくても、インターネットならば個々の障害による不利を埋めてくれる可能性が高い。
 また反面ネットワーク上では障害の有無は自分から主張しなければ相手にはわからないためかえって平等で責任のある参加姿勢を求められる。何かと保護される主体になりがちな障害児にとって、自分のネットワーク上の行動に責任を持つという経験は重要である。
 このようにインターネット上で社会参加していくためには、自分の考えを正しく表現したり、相手の考えや気持ちを的確に読みとったりという、いわゆるコミュニケーション能力(スキル)が必要である。よって、ここでは、まずコミュニケーションとしてのネットワーク利用に焦点を絞りたい。

 

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