4.7 誰にも使いやすいコミュニケーションツール開発の指針

4.7.1 期待される教育的効果

 コミュニケーションスキルを豊かにし、さまざまなコミュニティに積極的に参加できるようになることは、重複障害児や知的障害のある子供にとって、社会参加・自立を図る上で今後の大切な素養(スキル)である。
 どうしても交流範囲が狭まったり、自分から積極的に自己主張をしていくことを抑えられてしまいがちな障害児にとって、広域にわたる人々とのふれあいと意見交流は学習の機会を広げ、実践的にコミュニケーションスキルを身につけていくためには重要な学習場面といえる。
 こうした学習は、家庭生活や学校生活だけではどうしても時間、空間的な制約があって広がりに欠ける。また多くの交流学習は行事的な一時だけの交流場面になりがちなため、コミュニケーションスキルとして定着させていくには不足である。
 そこで、インターネットをはじめとする広域ネットワークを利用した遠隔コミュニケーションを教育活動に取り入れ、その随時性を生かして年間をとおした学習として教育課程に位置づけることが有効であるが、同時に関連教科・領域とうまく総合化し、個に応じて学習展開を図る必要がある。
 こうすることにより、リアルタイムな通信メディア(電話など)では関われない子供でも、さまざまなアクセシビリティ機器を介してコミュニケーションを行うこともできる。
 これらの結果、次にあげるような教育効果が期待できる。

    情報の読みとり、判断、加工、発信という情報処理とコミュニケーションの基本的な流れを実践的に身につけ、情報リテラシーとコミュニケーションスキルを身につけることが期待される。

    他者との関わり方、エチケット、相手への思いやりなどといった情意面の学習を実践的に行うことができ、学校や家庭生活だけでは学習し得ない広がりの中で身につけることが期待される。

    一連の学習の中で、社会性、積極的な自己表現や自己決定力など、人として「生きる力」にあたる重要な素養を身につけることが期待される。

 

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