3.インターネットを利用した国際交流に関する企画

3.1 インターネットクラスルーム

3.1.1 目的

 本プロジェクトは、CECが窓口となって、アメリカ、オセアニア等環太平洋を中心とした海外の教育関連機関および学校と連携し、ネットワーク上にインターネットクラスルームを設定し、それぞれの学校が抱えている問題、日常的な話題の交換や共通の話題について英語による交流を進め、教育的効果や問題、および技術課題やその対応策を明らかにしていく。

3.1.2 インターネットクラスルームの概要

 本プロジェクトでは、環太平洋地域5カ国(日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ)の高等学校(日本8校、海外8校)アメリカの2大学が参加して、メールグループによる討議、ホームページ掲載、CU-SeeMeによるビデオ会議、ビデオメールによる情報交換などインターネットの各種サービスを利用して、設定されたテーマについて議論を進めた。
 各国別のクラスルームを設置し、日本側と当該国にそれぞれコーディネータを置き、それぞれのクラスルームの運営を実施し、本プロジェクト参加校は、希望するクラスルームに加わり、活動に参加した。メールグループでのやり取りをホームページ上に公開する方法も試みられた。

 テーマとして、韓国ルームは「修学旅行の事前準備学習」、オーストラリア「多文化主義」、アメリカ「100年前の暮らし」「ハワイに残る日本文化」、カナダ「身の回りの環境」を設定した。
 8月、オーストラリアのビクトリア州で開催された高校生英才教育国際会議に本プロジェクトのコーディネータの一人である帝塚山学院泉ケ丘中高等学校の辻陽一教諭が参加し、同国のインターネット利用状況を調査するとともに、本プロジェクト参加校の調整を行った。また、この間、CECの支援のもと、メーリングリストのWEB化など、技術面での整備も行った。
 参加校が決定し、実質的にプロジェクトの実践がスタートしたのは、10月のことであった。
 本プロジェクト参加校は、生徒個々に対するメールアカウントの発行の有無、授業形態(課題学習、英作文、英語、情報処理、ホームルーム)、校種(商業科、国際科、普通科、工業科)、学年など参加形態の違いを持ちながら、本プロジェクトに参加して、共同学習に携わった。本プロジェクトは、5つのクラスルームに各参加校が、複数参加しそれぞれの生徒の環境の違いや特色を出しながら、クラス運営を行うことを目的としたが、一対一のディスカッションに終わるところも見られた。
 プロジェクトは、最初、メーリングリストを立ち上げ、自己紹介・学校紹介からスタートしたが、メーリングリストより、生徒間で一対一のE-MAILを希望する学校が現われたり、公開用メーリングリストと非公開用メーリングリストを分けた場合、両者の区別と利用にあたって、参加者の間で戸惑いや混乱が見られた。
 生徒が作成した絵や写真等の画像ファイルを交換したり、一定の情報交換のあと、相互の顔を見ることで、議論を深めたいという動きが起こり、従来からCU-SeeMeを利用していた西陵商業高等学校以外にも、神戸商業高等学校や帝塚山学院泉ケ丘中高等学校では、ハワイや韓国とCU-SeeMeの接続テストを繰り返すようになった。帝塚山では、Enhanced CU-SeeMeと専用ボード、ISDN128kbps用高速ボードを購入し、平成10年2月には、音声・画像・動きなど完成度の高い通信が可能となった。
 交流の中身に関しては、これまで実施されたアンケートやE-MAIL交換などから、従来の教育環境では得られない情報交換ができた。例えば、10月に実施したアンケートで「自分の国の嫌いなところ」として、オーストラリアの生徒は「気候」をあげ、韓国の生徒は、「教育制度」、日本の生徒は「日本人」を挙げた生徒が多かったが、オーストラリアの生徒の自己紹介文の中に見られる多様な移民・民族の違いなど、それぞれの国や考え方の違いが、浮き彫りになってきた。
 本プロジェクトを進める中で、例えば、神戸市などに見られるホームページ掲載と個人情報保護条例の問題や、100年前の神戸市の風物を撮った写真をめぐる著作権問題など、今後、インターネットの教育利用を進める中で考慮すべき事柄も明らかにされた。
 本プロジェクトの目的の一つに英語学習への効果が挙げられているが、多くの学校では、英語学習の必要性を生徒が認識しながらも、英語を母国語とする学校と日本のように外国語として学習している国の間で、対等な議論が進められるのか、疑問視する生徒もあった。
 いずれにしても、設定されたテーマについて議論が十分深められたとは言えない面があるが、多様な環境・背景にある学校が、各クラスルームに集まって、インターネットの各種サービスを利用しながら、共同学習できた意義は大きい。

 

3.1.3 企画の実施

 企画の実施に際しては、提案のあった幹事校の責任者および国際化WGの委員を中心として「インターネットクラスルーム」研究グループを設置し、企画の円滑な推進と運営を図るため数回の会議を開催した。

「インターネットクラスルーム」研究グループ委員名簿(敬称略:順不同)

区分

氏名

所属

主査

田中 博之

大阪教育大学 教育学教室 助教授

副主査

木原 俊行 

岡山大学 教育工学センター 講師 

委員

辻  陽一

帝塚山学院泉ヶ丘中・高等学校 教諭

委員

坂東 英敏

神戸商業高等学校 教諭

委員

西野 和典

四条畷北高等学校 教諭

委員

桝井 伸司

赤塚山高等学校 教諭

 

3.1.4 参加校の決定

 CECのホームページに本企画の主旨を公開し関連のメーリングリストに情報を流すと共に、広く一般公開した。特に本企画は日本発案型として、100校以外の学校へも広く参加を呼びかけ、以下の8校を参加校とした。

@ 帝塚山学院泉ヶ丘中・高等学校

A 名古屋市立西陵商業高等学校

B 兵庫県立神戸商業高等学校

C 神戸市立赤塚山高等学校

D 大阪府立四条畷北高等学校

E 富山県立高岡商業高等学校

F 岐阜県立海津北高等学校

G 岡山県立岡山芳泉高等学校

3.1.5 参加校への支援

 企画の円滑な実施のため参加校に対し情報提供や技術支援を行った。

技術支援

・交流状況を参加校が確認できる電子掲示板作成のサポート

・メーリングリスト作成/運用支援

・サーバーの環境整備支援

情報提供

・メーリングリスト活用による情報提供

・事前準備会議による参加予定校の状況確認

・研究グループ会議による情報の提供と共有化

・国内海外の参加校による中間確認会議の開催


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