3.1.6 交流の実践

3.1.6.1 大阪府 帝塚山学院泉ケ丘中高等学校

辻 陽一

(1)参加に至る経緯
 平成7年共同利用企画「地域情報交換」プロジェクト、平成8年同「海を越え、言葉と心のキャッチボール」に参加し、国際科10期生(平成8年3月卒業)やコンピュータクラブの生徒を対象に環太平洋地域の高校交流を推進。同地域での交流を継続するためインターネットクラスルームプロジェクト参加を学校長に提案し、了承を得て、平成9年4月入学の国際科1年生76名を対象に実施することにした。

(2)ねらい
  国際科の英語の授業を中心に定期的な交流を行うとともに、国際科の他の教育活動や行事と有機的なつながりを持たせながら、生徒の英語学習への動機づけや学力の向上をはかるとともに、国際理解、情報教育を総合的に行う。

(3)テーマの選定
 インターネットクラスルームプロジェクトのテーマにしたがってプロジェクトを進めた。特に、本校は韓国クラスをコーディネートしていることや平成10年10月に韓国研修旅行を予定していることから「研修旅行準備」をテーマとする韓国との交流に重点を置いた。

(4)交流状況(活動内容)
 平成9年7月、国際科1年の学年行事「六甲英語合宿」に韓国の交流校から2名、ハワイの高校生3名を招待し、英語を学習するかたわら交流を深めた。事前にメールや画像ファイルを交換。同合宿中、ISDNを利用したテレビ会議システムを用いて、ハワイの高校生と、テレビ会議を実施。
 PCL教室が8月に完成し、10月から授業で利用開始。当初、タイピングやメールソフトやワープロなどコンピュータやインターネット操作に習熟させることに時間を取られた。国際科1年生76名全員に電子メールアカウントを発行するとともに、希望別に交流国を決め、メールグループに登録。週一回、英語の授業でメールを作成、送受信を行う。
 10月より、平成10年10月に研修旅行で訪問する韓国の2校と文通を開始。
 12月1日、ホームルームの時間を利用して、韓国の正義女子高等学校とISDNテレビ会議システムを用いて、「陶器山の歴史」について日韓共同学習を実施。
 12月初旬、インターネットクラスルームプロジェクト中間報告会議に参加した海外のコンピュータ教育担当教員を本校に招き同月20日実施予定の国際科英語スピーチコンテストの指導を受けるかたわら、交流国の学校をホームページを開きながら紹介してもらう。
 オーストラリアのフッツクレイ・シティカレッジのマークは、本校の生徒の写真ファイルをホームページに掲載しており、これを紹介した。
 また、スピーチコンテストの原稿を録画し、ビデオメールでオーストラリアや韓国に送る。 12月からハワイ、韓国とCU-SeeMeのテストを繰り返し、2月初めに韓国の新亭女子商業高等学校と交流。
 12月よりコンピュータクラブ(部員数30名)がウィンドウズのフロントページを用いて独自にサーバを立ち上げた(1月には、マッキントッシュ・OS8を用いて別にサーバとして利用)ことから、インターネットクラスルームプロジェクトの韓国ルームのページを同クラブのサーバに移設し、管理を依頼する予定で話を進めている。

 4月 海外交流・インターネットに関する意識調査

 7月 語学合宿にハワイ、韓国の生徒参加

 8月 PCL教室完成(50台、インターネット接続)

 9月 PCL教室、コンピュータクラブ、文化祭でネットワーク型ゲームのデモ

10月 PCL教室、国際科1年生、「情報リテラシーとE-MAIL」というタイトルで
    韓国研修旅行の事前活動として、韓国交流2校と「文通」開始

12月 日韓共同学習「陶器山の歴史」(ISDNテレビ会議システム)
    本プロジェクト参加校・国の教員ら5名、本校訪問、授業参加
    国際科英語スピーチコンテスト、スピーチをビデオメールで韓国・オーストラリアへ。
    CU-SeeMeのテスト、ハワイ、韓国と数回実施。
    コンピュータクラブ、クラブ専用のウェブサーバの管理、維持

 1月 CU-SeeMe、韓国と定期会議開始

(5)インターネットの活用方法
  電子メール(個人メール、メールグループ)、ウェブ検索、CU-SeeMe、ビデオメ ール。

(6)交流前後の教師、生徒などの意識の変化
  入学当初のアンケートで、インターネットを通じた海外との交流を希望する生徒が 90%弱いたが、12月実施のアンケートでは、インターネットには関心がある、が8割29名、授業でインターネットを利用しはじめてから関心が「一層深まった」生徒は11名、以前と同じように関心があるが13名と3分の2が関心を持ち、関心が薄れてきた生徒は二人だけであった。
 問題点としては、生徒が3分の1の生徒がメールの継続的な利用が難しいと感じており、相手の顔がわからないことを問題点としてあげた生徒も同程度いた。
 他に問題点として、タイピングに時間がかかること(5割17名)、英語を書くのが難しいこと(4割14名)などをあげている。
 インターネットでe-mailを利用するのは「楽しい」と回答した生徒が37名中31名と86%、「楽しくない」が2名、「何とも思わない」が4名で、メールの交換にはレスポンスに問題を感じながらも、意義を感じている。
 また、インターネットに関心があるかという項目では、29名が「ある」と答え、「ない」と答えたのは、2名である。(「わからない」が6名)
なおe-mailは英語の勉強にも役立つと回答した生徒が8割弱の28名。

(7)評価(効果・課題)
 効果としては、電子メールを始めとしてインターネットの各種サービスを使うことで、情報化社会への理解が深まるとともに、英語学習の必要性、国際理解に有効であるなど視野が広がったことがあげられる。ただ、テーマについて本格的な議論を行うまでには行かなかった。また、授業で利用できるようになるためには、情報機器の操作などは別途学習する時間を持たないと、一般教科の時間に食い込んでしまうことになる。
 メールを主体とした交流では、生徒のアンケートにもあるように相手の顔が見えないことや各校の事情から、スムーズなメールの交換が難しく、本校の生徒も返事が来ないためメールへの関心が薄れてきたような印象を受ける。
 バーチャルな世界では、本来、メールをやり取りする意義をしっかりと生徒に持たせないと、単に便利だからというだけでは、無目的・場当たり的、一時的なもので終わってしまう恐れがある。姉妹校提携をしている学校に一定期間メールを通じた交流を行った後で、訪問するとか、留学するから、事前学習として利用するなど、差し迫った目的がないと、生徒の関心が持続しない。そこに言葉の壁や本来の教科学習などの阻害要因が入ってくると、ストップしてしまう。
 インターネットクラスルームプロジェクトのように海外とメールを通じて意見交換を行うプロジェクトでは、教師だけではなく生徒の負担も大きくなることも、スムーズなプロジェクト進行の阻害要因となる。
 今回は英語の授業の中でプロジェクトに参加するという形をとったが、インターネットをカリキュラムに本格的に導入するには、インターネットそのものが回線速度など脆弱であることとは別に、インターネットが教科の中だけではなく、カリキュラム全体の中で、基礎・基本からネチケットや教科での利用方法など幅広い領域を分担して取り組む体制がないと本当の意味で、「使える」というところには行かない。
 インターネットのインフラだけではなく、学校体制やカリキュラム全体のインフラを整備しないと、健康な体にインターネットという異物を押し付けることになる恐れもあるのではないか。

3.1.6.2 兵庫県立神戸商業高等学校

坂東 英敏

(1)参加にいたる経緯
 本校では3年前に100校プロジェクトに参加して以来インターネットを利用して国際交流を行い、昨年まではLIEP(地域情報交換プロジェクト)に参加してきた。今回はその発展的な形としての授業の可能性を探るためにこのプロジェクトに参加した。

(2)ねらい
 通年の授業の中でインターネットを利用する形をつくり、継続的な国際理解教育の手段として確立する。

(3)テーマの選定
 海外の参加校の状況、生徒の語学力、共同参加の可能な期間等から、2つのテーマを選定した。アメリカワシントン州Kennewick高校はESLクラスで、授業の中でワシントン州の歴史を扱うということで、『100年前の暮らし』を共同テーマに選び、ホームページの共同制作をすることにした。ハワイのPunahou高校は日本語上級クラスが日本の伝統的文化についての学習をしており、『日本の伝統的価値観』をテーマにE-mailによる交流を計画した。

(4)交流状況
 本校では3年生の課題研究を選択している2クラス(情報科12名・商業科15名)が、このプロジェクトに参加した。それぞれ週3時間と2時間の授業である。参加しているすべての生徒はそれぞれのIDをもっており、放課後等も自由にメールが使える環境にあった。
 このプロジェクトの始まりは、Kennewick高校Mrs. McRaynoldsとPunahou高校のMrs. Okawaがそれぞれ、昨年夏に来日された機会をとらえ、2学期を中心とした活動計画を相談したことである。
 『日本の伝統的価値観』については、9月から本校とハワイの双方合計約60名の生徒が自己紹介によるメールの交流から始め、12月にハワイの生徒が、まとめのレポートを提出するまでのあいだ、様々な質問(日本語での)に答えることを中心にした形で行われた。レポートは、Mrs.Okawaが設定した10の単語についてそのオリジナルの意味や、現在の社会でどのような意味を持つかを調べることが課題になっており、次のような質問が送られてきた。
「あなたはどんなときに義理を感じますか?」
「忠義とはどういうことですか?」
これらの質問は本校の生徒にとって大変答えるのが難しかったようである。その理由は質問された単語の多くが生徒の使わないものであったり、相手の日本語がスムーズなものでなかったことや、標準的な日本語を普段生徒が使用していないことなどが理由であった。知らない単語の意味を調べて、改めて日本の文化に気がつくようなことも多く、本校の生徒にとっても収穫の多いプロジェクトとなった。また、CU-SeeMeの場面ではスムーズな画像の受信が出来ないにもかかわらず、相手の生の顔や声、動きが伝わったことで、大変盛り上がった授業となり、その後の交流のエネールギーになった。
 『100年前の暮らし』については政治、経済、教育、娯楽、住居、衣服など8つのテーマ毎にグループに分けて担当の生徒を決めた。12月にMrs.McRraynoldsが再来日された時にアメリカ側の部分(右半分)が完成しているホームページのデータをzipディスクで持ってこられた。現在まで本校の生徒はその左側の部分をうめて完成させ、双方の学校のホームぺージからリンクさせる作業を進めている。情報を集める作業においては、アメリカ側では地域の博物館や図書館以外からも近隣の住民の所有する古い写真などが利用できたが、日本の場合100年前の写真は少なく、資料を集めるのに苦労した。この際、双方の生徒とも著作権をクリアするために様々な方面に連絡を取り、許可を求める作業の中で、多くのことを学んだ。また、Kennewick高校では教室で利用できるコンピュータが少なく、メールの交換は先生を通じて送受信されたため、あまり頻繁には出来なかった。

(5)インターネット活用の方法
 中心になったのは生徒が各人のアドレスを使って特定の相手とE-mailの交換をしたことであったが、プロジェクト参加者全員にむけてのメッセージを交換するためにメーリングリストもつくった。質問を全員に送ってその返事から一定の傾向をつかむときなどは便利ではないかと考えて作ったのだが、Punahou高校はメールのデータを各自のフロッピーで保存していたため第一回目のメッセージ返事だけでオーバーフローしてしまい、メーリングリストの利用は中断せざるをえなくなった。平均すると生徒は週1回ぐらいのペースでメッセージの交換をしていたことになる。
 Kennewick高校と共同でホームページを制作した。また、CU-SeeMeの利用も実験的に行ったが、ファイアーウォールの問題で経常的な利用の段階にはいたっていない。現在解決の方法を検討中である。

(6)交流前後の教師生徒などの意識の変化
 生徒は、初め未知の文化や相手に対するあこがれと、英語とコンピュータに対する不安を持っていた。交流が進むとコンピュータの問題はすぐになくなり、英語も相手の使う表現から学んで返信までにかかる時間がしだいに短くなった。また、相互に知り合うことで相違点と共通点が明確になり、各自がそれぞれの体験から異文化に対する理解を深めることに役立った。最初の段階では自己紹介の次に交換する内容がなく、生徒は自分が何をしたらよいか戸惑うが、前述の「テーマの選定」の2つのプロジェクトのテーマがきっかけとなってしだいに深い内容へと進んでいった。特に、相手のことが解ると次に自分はどういう人間であるか、日本はどんな特徴を持った国か、といったことを考えるようになり、様々な分野への学習のきっかけになった生徒も多い。
 教師は、授業の関係では商業の教師が英語を使うということで難しい問題があるが、英語の教師の間ではかなりE-mailの利用が進んだ。

(7)評価(効果・課題)
 これまで、海外の相手とメールの交換を続けてきたが今回初めて共通のテーマを設定した形になった。設定したテーマに限らず、インターネットの利用に関する知識や技術についても生徒の積極的な学習活動が見られた。また、生徒は合間を見てそれぞれの相手と自由な交流も続けていた。授業としてはテーマがあったおかげで計画的に進めることが出来たし個人の自由な発想による学習も出来たという結果になった。
 今回は一応オープンの形でどの学校でもこのアメリカのクラスルームに参加できる設定ではあったが、実際は難しかったのではないかと思われる。今後は参加校をオープンとするクラスルームの場合はより明確なテーマを設定しなければならないと考える。つまり、クラスルームの名前は授業の科目名のようなものを設定して、希望者が個別にそのクラスに参加するようにすれば一つのクラスをオープンという形で運営することが出来るかもしれない。また、その場合においてもそれぞれの生徒が利用できるインターネットの状況に差があると思われるので、それを考慮にいれることも必要になるであろう。

3.1.6.3 神戸市立赤塚山高等学校

桝井 伸司
http://www.kobe-school.net/school/ 

(1)参加に至る経緯

今年度、3年生の英語選択ライティングクラス(7名×2クラス)では次のような段階を設定し、授業を実施した。
1.コンピュータ操作に慣れる 
2.ライティングの基礎としてのブレーンストーミングを使って自分の意見を整理し、膨らませていく 
3.ブレーンストーミングを使ってトピック別ライティングをさせる
4.トピック別ライティングを基にしたホームページの作成 
上記1ではフロッピーを使い、教師との疑似メール交換をしたり、生徒間でのメーリングリストを作ったりしたが、そのメールによるコミュニケーションを実際の海外の生徒たちとの交流に試してみようと、このプロジェクトに応募した。

(2)ねらい
 生徒が世界の中で自らを見つめ、自発的に情報を収集、判別し、消化したのちに自己の意見を発信していく態度を身につけていくこと、をねらいとした。

(3)テーマの選定
 トピックライティングテーマとしては、School Life, After School Life, Dream Home, Important things for Me を選んだ。オーストラリアの交流校からはSchool Life, News などのトピックで書かれたメールが届いた。

(4)交流状況(活動内容)
[ 1 ] Basic Skill
 1学期はBasic Skillとして1)コンピュータ操作に慣れさせること、2)ブレーンストーミングを使って自分の意見を整理し、膨らませていく、ということから始めた。具体的には、1)としてメールによるコミュニケーションに慣れさせるために、各自のフロッピーに教師へのメッセージ等を入力、それに対して次の時間までに教師が添削したり、返事のメッセージを入力しておく、という疑似メール交換を行った。2)としては、あるテーマから連想する様々な語句を図に記入させ、それを基に短文を書かせ、さらにそれをパラグラフに発展させていく練習をさせた。
[ 2 ] Using email
 疑似メールに慣れてきたところで、生徒それぞれにメールアドレスを持たせることにした。生徒のコンピュータはインターネットに接続していないので、教師用のコンピュータからWWWを使って電子メールを読み書きすることが出来るサービスを利用した。このサービスというのは、WWWにさえアクセスできればその画面上からメールの授受ができ、しかもフリーで登録できるものである。現在このようなサービスを行っているサイトとしては、http://www.netaddress.com/ などがある。好きな名前でメールアドレスが取得でき、物理的には世界中どこからでも、自分のコンピュータを持っていくこと無しにメールの授受が出来、そのアドレスが恒久的に使うことが出来る、という利点がある。このアドレスを生徒に取得させ、さらに私個人で持っているサイトのメール転送を利用してメーリングリストを作り、そのアドレス宛てのメールは生徒全員が読むことが出来るようにしている。
[ 3 ] Topics
 次にブレーンストーミング→パラグラフ作成という方法を使って Dream Home, School life 等のトピックについて文章を書かせ、完成した文章をWeb上のBBS for Students に掲載した。このBBSというのはWebのブラウザー上から文章を書き込めば、それがその場でインターネット上に出版されるというものである。出版された文章の読者がその文章に対して感想を書くこともでき、その感想もその場でインターネット上に出版される。具体的には、生徒は打ち込んだ自分のフロッピーを教師用パソコンに入れ、そこから自分のファイルを呼び出して、WWWブラウザー上で貼り付ける作業を行った。
[Pages about Japan]
 2学期になり上記のトピックライティングの実践として日本についてのホームページ作成を実施した。グループごとにフリーのホームページサービス(http://www.tripod.com/)のアカウントを取得し、「日本についてのクイズ」、「お守りについて」、「たまごごはんについて」、「日本のアニメ」「日本のいろいろ」など生徒自身が考えたテーマについて画像を交えたページを掲載した。
[ ICP−AU(Internet Classroom Project-Australia) ]
  10月よりオーストラリアでも授業が始まり、メールによる交流が始まった。ICPでは基本的にメーリングリスト(以下ML)を利用した交流を基本としている。オーストラリアの交流校の1つであるPresbyterian Ladies' College(以下PLC)は最初の段階ではMLでなく、クラス対クラス交流を希望してきた。結果としてMLで広く他校にもテーマ別意見交流を提案しつつ、同時にPLCとの学校間交流を続ける形をとった。個人対個人のメール交流では相手に依存する度合いが高く、相手からメールがこないと授業が出来ない、という状況が生じる。それを避けるために「個人メッセージ+トピックライティング」という形式をとった。海外の学校の多くは個人メールの交換を望む場合が多い。この形式をとると、たとえメールがこない場合があってもテーマに沿って英文を書く事が出来るし、ML宛てに送ると、同じ国の他校のメッセージも読むことが出来るので、自分の英文を考える際にも参考となる。また、メールに画像を添付して送ることで相手をより近い存在として感じることが出来る。PLCは韓国、インドネシア、台湾、ベトナムなど様々な国から生徒が集まってきており、彼らが送ってきた自己紹介のメールには、彼らが初めてオーストラリアに来た時の体験談が書かれていた。個人宛てのメッセージと共に、School Life、Newsなどのトピックでメール交換を実施した。ICP−AUのMLでもNewsについてのメール投稿があり、ICP−AU参加校のFootscray City Secondary College、岐阜県海津北高校からもメッセージが送られている。

( 5 )インターネットの活用方法
 インターネット接続環境は、LL教室からダイヤルアップ(28k)、職員室からはISDNによる接続。パソコン台数は、生徒用:7台(DOS、テキスト入力用)、教師用(Windows、Webアクセス、メール送信用):1台。94年よりホームページを立ち上げている。(神戸市教育委員会のインターネット利用規定に基づき、現在正式ホームページは作成中)

( 6 )交流前後の教師、生徒などの意識の変化
 本実践を通じて生徒たちはインターネットを媒体に世界中に自分の意見を送ることが出来る機会を与えられた時、今までなかった積極性を見せた。自分の書いた物を読んでくれる読者の存在が彼らの学習意欲を高めているように思われる。英作文なんて難しい、と逃げ腰だった生徒も辞書を片手に必死になって取り組んでいたようだった。また、教師も「教え込む」ことから「アドバイスし補助していく」立場への変容を感じた。それぞれが違う文化的背景を持っている人達と直接、意見交換をすることのできるこのインターネットを授業に取り入れることは生徒たちにとって、そして教師にとっても非常に教育的な事だと感じた。

( 7 )評価(効果・課題)
 ライティングクラスの年間計画の1部として見た時に、この交流活動はほぼ狙いどおりの役割を果たしたが、ML、掲示板を主としたクラスルームプロジェクトという観点からみると、実際の交流の期間が短く、実施までの参加校の教師間の打ち合わせも十分ではなかったように思われる。共通のテーマ、各参加校のプロジェクト参加のねらいなども、もう少しはっきりさせる必要があったようである。しかし、行き交う生徒のメールや授業での生徒の取り組みをみると、このプロジェクト参加には大きな意味があったことを確信できる。今後は、より周到な準備をし、さらに大規模なプロジェクトになっていくことが期待できる。

3.1.6.4 四条畷北高等学校

西野 和典、小野寺順子
松田 緑、吉浦 潤次

(1)参加に至る経緯およびねらい
 本校では100校プロジェクト開始以前より、パソコン通信のCompuServeを利用し、米国ジョージア州の高校と初めて電子メールによる交流を行った。このときの生徒たちの感動や英語で電子メールを書き、受け取ったメールを辞書を片手に読む、熱心な姿勢は今でも覚えている。その時から、限られた条件の中でも毎年何回かは電子メールによる国際交流を行ってきた。100校プロジェクトに名乗りをあげ、西野氏が分厚い報告書をまとめて提出したもののどういうわけか選に漏れてしまった。
 しかし、電子メールによる交流は、教師の個人的アカウントによって、一本のろうそくの火を絶やさぬがごとき努力によって細々と今なお続けられている。
 現在、四条畷北高校にはLAN教室があるが、置かれているコンピュータはPC-98のRXが48台である。これをWINDOWSなどインターネットの可能な機種に換えてもらうには、大阪府の財政難から考えると、1年に1、2校の割合で導入してもらっても、府立学校数約190校から考えると、あと50〜100年は待たなければならないことになる。
 何故電子メールやインターネットにこだわるのか。理由は簡単である。国境を越えて色々な人との交流ができるからである。地球の裏側の人と電子メールで生活を語り、世界の問題を語れるなら、地球が抱えている大きな課題である環境問題も共に協力しあって解決への道を探ることもできるだろうということである。
 とりあえず、本校では生徒たちに外国の高校生との交流を体験させ、国際交流への第一歩を踏み出させることをねらいとしている。

(2)テーマの選定
 今回のカナダST. MARGARET SCHOOLとの交流は1学期3年生ORAL COMMUNICATIONのクラス(松田緑担当)、2学期1年生のホームルーム・クラス(小野寺順子担当)の2クラスで行った。
  それぞれ、2、3回のメールのやりとりであり、自己紹介、関心分野の話など、特に限定することなく自由に交流させた。
 電子メールでは、生徒は「自分がもらったメール」ということでの喜びが大きいようで、すぐにグループで、例えば環境問題について意見をまとめて交流するという所までは行くことができない。そうしたテーマに取り組むためには、やはり長期間に亙っての取り組みが必要となる。また、設備の問題もある。

(3)交流の状況
 1)1学期ORAL COMMUNICATION Bの授業での交流:担当 松田 緑
<取り組み内容>
 3年生25名
 全員、自己紹介のメールを送る。内、20名分相手側から返事が来る。一人で複数のメールをもらった者もあった。内容的にユニークなものにその傾向がある。
  こちら側から返事を書いたのは11名。日本文と英文を両方書いて来させ、添削して教員がタイプ打ちしてメールで送る。
 自分で清書して送るというのではないので、本人が書いたという自覚が希薄である。一応相手側、こちら側の通信も印刷して渡してやる。
 5、6名の者が何回かやりとりをし、途中夏休みをはさんで(その間手紙のやりとりをしていた子もいる)2月現在、コンタクトを取っている者もいる。
 休み中にシールや写真交換をした子もおり、家族で応援して母親がハンテンをプレゼントした生徒もいる。うち1名向こうに留学している日本人の女の子と英語でE-MAILの交換をした。

<感想>
 複数回メールを交換した者は書く内容も結構考えておもしろいものになっているし、英語も相手のものを拝借して書いたりするので担当教師が直す部分は少なくなってきている。
 本校の生徒は英語を書くのは苦手な子が多いので、返事がすぐ来るのは嬉しいが、読んでまた、英語で書くというのは、かなりしんどい作業である。
 英語は得意ではないが、メールのやりとりが楽しいと思っている子、何とか相手とコミュニケートしたいと思っている子の方が長続きした。
<これからの問題点>
  ○生徒全員がタイプを打てることが望ましい。
 ○英語を書く訓練がもっと必要。
  1年間メール交換をやれば、何とか形がついてくる。
 ○添削等の関係で少人数、又はALTとの協力指導が必要。
 ○最初は自己紹介でいいが、後、自分が何を聞きたいか、考える習慣作りが必要。
 ○構えず、気楽に返事(英語)を書く雰囲気作り。

2)2学期HOMEROOM CLASSでの交流:小野寺順子担当
<取り組み内容>
 10月から1年3組のホームルームクラスで、カナダの高校とメール交換をすることになりました。木曜日のHR で自己紹介のメールを書かせ、32人分をBruceさんに送りました。それからぼちぼちメールが届きはじめ、適宜SHRで生徒に渡し、返事を書かせました。生徒のメールはすべて担当者(担任)がタイプし、カナダの各生徒のメールアドレスに送りました。
 生徒の中には6〜7回もメールを交換した生徒もいます。 <生徒の感想>
 メール交換を始めてみて思うのは、教科書とは違う英語で、新鮮で楽しめることで す。最初は続くかなと不安でしたが、けっこう続いてうれしいです。Eメールを続けていくと、色々な発見があったり、相手と共通の部分をみつけるたびに、ますます始めたときよりも書くことが多くなって楽しいです。英語は苦手だけど、これを始めることによってまた新しい英語に出会えた様な気がします。外国に、そんな Eメール友達ができてうれしかった。
<担当者の反省>
○良かった点
*生徒にEメールを使ってコミニュケーションできるという体験をさせられる。
*英語で自己表現させる勉強になる。
*授業ではないので、評価する必要がなく、また、毎日のSHRでタイムリーにメールを渡したり、返事を書く相談にのったりできる。
○反省すべき点
*数人の生徒だけしか、情報教室で実際メールを送るシーンを見せられなかった。
*担当者がタイプ等をすべて行ない、担当者のメールアドレスから送信するという状態なので、かなりしんどい。
*カナダの生徒達は、担当者のメールアドレスに送ってくるのだが、生徒名でなく担当者の名前宛てに送ってくるケースが多く、混乱した。

(4)インターネットの活用方法 環境 他のメディアとの関係 
 本校にはLAN教室があるが、前述の通りインターネットに接続できるコンピュータはない。97年の3月に、管理職のはからいで、マッキントッシュが一台インターネット用に使えるようにと設置された。メールの送受は学校で行うときはこのマックを使用する。アカウントは教師個人のものを使用。
 98年2月初旬、大阪府教育センターがサーバーを置き、全府立学校にインターネット用端末機(FMV)を1台置いた。LAN教室に置いて生徒にホームページなど見せたかったが、何故か職員室に設置された。
 授業といえば、今のところは英語の授業の一環として電子メールの交換を行っている。

(5)交流前後の教師、生徒などの意識の変化
 ここ1年の間に、職員室のインターネット人口は急速に増加している。4年前パソコン通信からスタートした電子メールの交流の成果を、決して一教科内のこと、あるいは閉ざされた趣味的集団のこととしてではなく、広く職員に紹介し、また、教師の研修にもインターネットは活用できるということを紹介するなどしてきた。
  その結果、今では、国語科で2名、理科で3名、英語科5名、社会科2名、司書1名、数学2名、事務室3名が現在個人的に活用し、今なお増えつつある。

(6)評価(課題、効果)
  E-MAILの交流は、単なる英語という言語の学習だけでなく、人間と人間の交流が大きなウエイトをしめてくる。外国語学習が目的でなくなり、まさに内容の交流が目的となり、外国語が手段化され、ここに外国語学習の意味が強化されるという現象がある。
 英語の力に差はあっても、交流することから始めれば、今までの積み木を積み上げるような学習でないといけないという硬直した考え方ではなく、いろんなアプローチがあるということが見えてくるのではないかと思う。 本校では、来年度(98)から1年生が情報1単位必修となる。これを機に、全員がメールを書くという体験をさせたい。

3.1.6.5 名古屋市立西陵商業高等学校

影戸 誠

(1)参加に至る経緯
 本校では英語活用能力の不足を補う日本語混在の国際交流に実践を重ねてきた。今まで、アメリカハバーフォード大学日本語教師、小池先生のクラスと交流を行ってきたが、今回このプロジェクトに参加することにより、さらに他地域も加え、相互に適切な負荷と、語学学習者としての共感を得られるような実践を目指すこととなった。
  今回で交流のあり方、方法を確認し今後はオーストラリア、韓国など日本語に関心の深い地域をまきこみ展開していきたい。

(2)ねらい

・アメリカ人に対するステレオタイプ的な見方是正させていく
・第2外国語である英語、日本語をリアルタイムの交信の中で扱い、学習者としての共感を得させる
・交流の中で自分の生活を見直す視点を把握させていく
・共同製作「Webマガジン」を通してネットワーク上でのコラボレーション(協力)と責任について学習させる。
・CU-SeeMeなどの新しいインターネットリテラシーを獲得させる    

(3)テーマの決定
 「それぞれの学校でチームを作り、WEB上に共同マガジンを作製する。」
電子メールなどを通して意見交換しテーマを決定した。
この段階では教師側がインターネット環境を考慮に入れ、実施可能なテーマを絞り込ませた。生徒側の意見では印刷して配布するということまで膨らんだが、交流期間と力量をみて、教師側が上記テーマに絞り込ませた。

(4)活動内容

電子メールでエッセイを送る
     ↓
一時間の中で自分のテーマにあったエッセイを1つ書かせ、メーリングリストに投稿させる。エッセイの基本的な書き方については事前に指導しておく。
エッセイに対する感想を送る
     ↓
相手側からもエッセイがやってくる。これに対して感想を送らせる。
意見交換(CU-SeeMe・web-Chat)
     ↓
相手の姿が見えないとどうしても意欲的に取り組めないもの。月に2回程度CU-SeeMeによって音声と画像によるリアルタイムのコミュニケーションを取り入れ、プロジェクトへの参加意欲を高めた。
webマガジンの作製
それぞれのエッセイをWeb上に掲載し一つのマガジンを創り上げた。

(5)インターネットの活用方法
電子メールのやりとりだけでなく、日本語でのメーリングリスト、さらには教師間のメーリングリストをたて、交流を深めた。
  この方法により、授業の中でも取り組むことが可能となった。すべての生徒が感想を書くための相手側のエッセイを毎時間手にすることが出来た。その他にもCU-SeeMe,Cooltalkなどのリアルタイムコミュニケーションのツールも活用した。
  今回の実践で新しく取り入れたものとして教師間のリアルタイムチャットがある。
 教師側は授業時間の交流の主体ではなく、支援者の位置でこのプロジェクトに参加した。しかしこの種のプロジェクトにおいて教員間の人間関係は心臓部となる。
  教員の打ち合わせは主に電子メールで行った。毎日のように打ち合わせを行い授業に備えてきた。多いときには一日に20通ものメールが飛び交った。さらに3地点での交流であるため1週間に一度,リアルタイムのweb-chat(ハワイ大学に設置)を活用し、打ち合わせを行った。アメリカ東海岸夜9:00――ハワイ午後4:00――日本翌日午前11:00という時間となった。それぞれに予定を会わせ取り組んできたがコーディネーターの熱意がプロジェクト成功の鍵となる。 (6)交流前後の教師、生徒などの意識の変化

・生徒の意識の変化
  人間と人間が対するとき、そこにはそれぞれの生活と文化の交流が起こる。何気なく聞いていた「アメリカ」「日系人社会」などの言葉が、交流相手の顔と歴史によって生きた情報として一人一人の生徒の中に入ってくる。
・生徒のエッセイに対する意見
  私は、あなたの文章を読んで驚きました。日系人の人達がそんなところで苦労していたとは気づかなかったので「なるほど!」と思いました。
見た感じが日本人と変わらなかったらやっぱり、「何で日本語を正しく使えてないのかな−」と思ってしまいそうです。
だけど、今回あなたの文章を読んでそういう悩みを持っている人もいることを教えられたのでこれからは気をつけて見ていこうと思います。
・生徒の変容
 お互い第二外国語を学習する立場から、懸命に日本語・英語を操ろうとする相互の姿は共感を持ち、励ますあう結果となっている。

(7)評価

・なんと言ってもコーディネータのとの人間関係が重要、なるべく日常的なやりとりを確保すべきである。 ・画像やCU-SeeMeを活用することにより、動機が高まる、いろんなツールを試してみてよかった。 ・最後に何か共同の作品を残すことで、次の生徒のイメージづくりに役立つ。

3.1.6.6 富山県立高岡商業高等学校

正木 由美

(1)参加に至る経緯
 本校が文部省のマルチメディア国際交流推進研究指定校と富山県情報ネットワーク利用開発事業指定校に選ばれ、学校に直接インターネットに接続した10台のコンピュータが導入された。その際、富山県で以前から北アイルランドと交流されている成瀬先生のプロジェクトと、本校が今年初めて学校訪問をすることになったの韓国の事前研修の一環として、帝塚山学院のホームページの中の、辻先生作成の韓国との交流を利用させていただくことになった。

(2)ねらい

・英語を実際に活用すること。
・ 国際理解を深めること(生徒が世界を身近に感じること)
・韓国への修学旅行の事前研修となること。

(3)テーマの選定

・北アイルランドの高校生とのメール交換
・近隣諸国、姉妹校のある国について情報収集をし、ポスターを作成
・韓国の高校生とのメール交換及びCU-SeeMeを通しての修学旅行訪問国の理解

(4)交流状況(活動内容)
 昨年度は週2時間のOCA(Oral Communication A(授業科目))を2展開し、一時間をEmail交換にあて、北アイルランドの高校生に対して、学校生活についての質問などをした。質問内容は「クラブ活動」「時間割」「校則」等であった。返事には、学校に持ってきてはいけない物の中に修正液があり、我が校より校則が厳しいのではという声も聞かれた。
 本年度は、同じようにOCAを2展開した20人ずつのクラスで、近隣のアジア諸国について情報収集し、ポスターを作成した。ここでは主に、ネット検索を利用した。
 韓国への修学旅行の事前研修の一環として、メール交換やCU-SeeMeを行った。

(5)インターネットの活用方法(プロジェクトの一環として参加した。)
 (具体例−1)北アイルランドとの交流
本校では、昨年から北アイルランドとの交流プロジェクトに参加している。
・メール交換
・ネット検索による、ホームページの活用(ヒントとなるページのアドレスを提示し、 調べる項目などを設定し、グループ毎に自分の調べている国について情報収集をし、調べた内容を模造紙にまとめて発表。オーラルコミュニケーションということで、ALTとのティームティーチングで、生徒への指示は極力英語を用いた。)
・北アイルランドとのプロジェクトの中で、富山大学の大学院生の協力で作られたアンケートの入力・集計を行うホームページを利用し、2国間の生徒の比較
・また、そのアンケートの集計結果を見て、2カ国の参加校の生徒が自由に意見を入力できるチャットルームを利用した。現在、100件以上の書き込みがある。

 (具体例−2)ASEAN諸国のポスター作成
・主に、ネット検索を利用。

本年度、2学期には、ASEAN諸国と北アイルランド、姉妹校のあるアメリカのインディアナ州(ALTの出身州でもある)について、2〜3人のグループ単位で情報収集をした。ASEANの国の中には、3月に初めての海外旅行で訪問する韓国も含まれている。ALTが工夫を凝らしたポスターの見本を作って紹介してくれ たので、生徒のポスターもインターネットから取り込んだ写真などを取り込んだ、個性のあるものとなった。最後の発表と質疑応答をグループ毎に行った。授業中の使用言語を英語に限定し、生徒の言語の運用を評価の一部に加えた。

 (具体例−3)修学旅行先の韓国の高校生との交流。
・韓国の高校生に個人的にメールを送ったり、帝塚山学院の辻先生の作られた、韓国の生徒とのメール交換のページを利用した。
・CU-SeeMeによる、修学旅行先の韓国の高校生との交流。簡単な会話を通じて、実際に相手の顔を見ながら話をした。中には、照れたりしながら話している者もいた。感想の中には、「人の表情などいろいろなことが分かり、行くのがますます楽しみになった。英語をもっと話せたらいいなあ。」という声もあった。    

(6)交流前後の教師、生徒などの意識の変化
 英語を目的として勉強するのではなく、何かを知りたいから英語を道具として使うという活動になると、生徒たちは知らぬ間にたくさんの質問をし、学んでいくのだと分かった。

(7) 評価(効果・課題)

  1.  インフォメーションギャップを伴った生徒同士のコミュニケーションである。
     学校生活や学校祭の話題に対してもペアワークで、クラスメートと会話練習するよりも実際に外国の高校生と意見交換する方が興味がもてると思う。実際にインフォメーションギャップがあり、話そう、知りたいという動機づけがあることは、一つの大切な要素だと思う。
  2.  生徒一人ひとりとの交流が増えたことである。クラスの形態においてはグループワークにした。教師2人に対して生徒全体という形のときより、生徒はALTにもよく質問をする。コンピュータの間を歩き回っているとき、個々の生徒と話す機会が多くなった。
    私も生徒一人ひとりとの距離感が近くなったような感じがする。
  3.  講義形式に比べ、生徒の主体性が必要とされるので受け身の時よりは、やりがいがあるのではないかと思う。情報は与えられるのではなく、自分たちで探すという形を取った。実際にはテキストと違い、ホームページ上では知らない単語や難しすぎる表現もでてくる。実際にextra-curriculumが課外活動でクラブのことだと分からずに、戸惑っていたグループもあった。レベルを特定できないという難点はあったが、自分たちで探すということで協力しながら活動に取り組んでくれたと思う。課題としては、まだまだ始めたばかりで機械の操作、トラブルがあったときの解消法など分からないことも多く、また、時間のロスも大きい。より効果的な利用法とそれに慣れること、また、クラスのサイズに合った活用法など、今後もいろいろな方々に助けていただきながら、勉強していかなければならないと思う。

3.1.6.7 岐阜県立海津北高等学校

林 孝美

(1)参加に至る経緯
  本校では100校プロジェクト参加時より、自己紹介や身近な出来事等のメール交換を実施してきた。しかし、更なる国際交流を深めた内容で生徒が自ら動きのあ る授業展開にしていきたいと考え、また、同じネット上のクラスということで新しい授業展開が発見でき、生徒に何かを感じ取らせていきたいと考えこの企画に応募した。

(2)ねらい
  同じ空間での交流ということで、更に生徒自ら主体的・探究的・継続的な学習に努め最終的には「考える力」を育成していきたいと考えている。国際交流を一つの発展(展開)の場として、様々な事柄に対し意見を出し合い、各学校で話し合い、 異国の同じ年代の人達の意見に対し、共感したり疑問を持ったりと、お互いの意識の差の有無を実感し、情報発信に向けその表現能力と適切な判断力育成を図る。
 具体的にはある共通テーマを設け、そのテーマに沿った情報収集・活用・まとめ及びまとめたものを発信していくなどして、物事を深く考察する姿勢を身に付けさせ、自分の意見をしっかり持ち、偏りのない考える姿勢を育成していく点にも重点を置いて指導していく。

(3)テーマの選定
 「物事を深く掘り下げ、問いつめ、相手の意見に耳を傾け考察していく姿勢及び幅広い視野に立って物事を捉える力を身につけさせる。」
  お互いの身近な事柄から専門分野まで興味関心を高め、あらゆる角度に立った発想の転換や考察をしていく。また、問題意識への向上を図りながら、知識教養の学習だけではなく、他国の生徒との国際理解及び思いやり等の内面的な成長へと発展させていきたい。  

(4)交流状況(活動内容)

@本校における取り組み


A 内 容
 ・情報の発信「自己紹介・日本文化紹介・日本語学習」
 各自自己紹介や長野オリンピック等について情報を発信した。その後、日本をより詳しく知ってほしいという気持ちから日本文化について、各自1テーマを設けテーマごとに、情報を収集させホームページを制作した。例えば、祝日・日本の文化、習慣等についてである。また、日本語を少しでも理解してもらうために、日常生活をテーマにローマ字をベースに制作した。ビデオ編集もしたが、画像が重く再検討・再編集を試みている。
 http://www.kaizukita-hs.hirata.gifu.jp/jyouhoukenkyuu/eigo/eigo-e.htm
メールの返事を作るにあたり呼びかけたことは、一方的な話題ではなく必ず相手のメール内容に触れ、それから自分の内容を入力するように指導した。
また、当初は添削も行っていたが現在では添削は行っていない。
 ・情報収集・活用・発信
   「テーマに沿った同年代の人達の考え・思い・本音を交換する」
 (目 的)
  テーマに沿った同年代の人達の考え・思い・本音を出し合い、異国間の共通理解につとめ、物事を深く考察していく姿勢や問題(課題)解決のための情報収集及び情報活用能力の育成等に繋げていく。
 (内 容)
  経済面と社会面からテーマを選定した。
   テーマ:自国経済をどう評価しますか。
       今の経済で安心ですか。
       今後情報化産業がどのように発展すると思いますか。
       心はどこにあると思いますか。
       勉強は何のためにすると思いますかなどである。
  http://www.kaizukita-hs.hirata.gifu.jp/jyouhoukenkyuu/eigo/kouryu1.html

 選定理由としては、日本の学生は他国の学生に比べ経済に対しての関心が薄く危機管理がないと言われている。そこで、実際に他国の生徒は自国に対してどれだけ関心を持ち生活しているのかを尋ね、日本の学生がどれだけ経済に対して意識が薄いのかを実感させ、今後、少しでも母国経済に対して関心を持ってもらいたくこのテーマを選んだ。また、21世紀を背負っていくのは現代の学生であり更なる期待も含めてである。勿論、期待応答としては日本より海外の学生の方が経済に対して関心が高いことを期待していた。結果として、本校の生徒もよくニュースや新聞に目を通していることが分かり、経済への関心が高いことが分かった。やはり、アメリカの生徒は母国経済に対して関心が高く、ほとんどの生徒が「安心・強い」と答えたのに対して、本校の生徒は「心配・不安」という意見がほとんどであった。後者のテーマについては、同じ学生としてどのような意識で日常生活を暮らしているのかを交流させたくこのテーマを選んだ。
 (成 果)
  本校からの問いかけ(テーマ)に対してFredrika Bremer Hich School、    Kennewick High Schoolから返信があった。その時生徒たちは、自分たちが発言した内容が世界を駆け巡り意見が返ってきたことに対して大変感動していた。勿論、返信内容を生徒全員に配り、それぞれの意見に対して考え方をまとめさせた。生徒達は、単なる賛成反対だけではなく、その理由なども含めて生徒自身の考えとして発表することができた。他国間ということで興味関心が高いということもあるが、相手の意見に対して積極的に対応することができた。
  http://www.kaizukita-hs.hirata.gifu.jp/jyouhoukenkyuu/eigo/kouryu1.html  
 今回のテーマ後、Fredrika Bremer High School から、別テーマが投げかけられ、生徒・担当教師も喜びで一杯であった。ここで、国際交流の取り組みに対して一歩進展があったと思われる。
   ※Fredrika Bremer High School のテーマは以下の通りである。
   What kind of Bio diversity do you have in your nationalparks, why do you think that specific area became a nationalpark? How does the public look at your parks/reservations.

(5)インターネットの活用方法

・環 境
 音声帯域3.4kMH専用線及び28800bpsモデムで接続しており、校内LAN(本館・情報処理棟・家庭科棟)を整備し、普通教科から専門教科の全教科において活用している。しかし、接続台数の増加に伴い現状の回線では、動画・音声等のやり取りをするのに支障を来たしているのが問題点である。

・他のメディアとの関係
 新聞やTVからのメディアも非常に効果的ではあるが、インターネットを活 用することにより自らが主体的に物事を捉え、「情報」に対する見方が多面的に捉えることができると考えられる。また、現代の若者はコンピュータ等に触れる機会が多く、コンピュータ等を通しての情報吸収の方が受け入れやすいのかもしれない。

(6)交流前後の教師、生徒などの意識の変化
  教師、生徒も、従来の教室という壁を乗り越え同一ネット上の教室により、今までに容易に体験出来なかった海外からの意見や考えを引き出すことができ、他国の人達の考えや本音という、生きた教材を活用することができた。このことにより、授業や物事に対する考え方が深まり、更に、その活動の中から表現能力や文章作成能力が高まった。

(7)評 価
  海外を身近に感じ、国や習慣が異なっていても同年代としての価値観や考え方に共感したり、相手の意見に対し耳を傾けていく姿勢が身に付いた。今後も更に共通テーマで継続的に取り組み、一層の交流校の輪を広げ共に生徒の思考力を培い、幅広い視野での発想や展開に取り組んでいきたい。
 当初は、どのように交流を展開していこうか戸惑いもあったのも事実である。英語から日本語への対応はまだ良かったが、日本語から英語への翻訳には時間がかかりなかなか交流先と継続的に取り組んでいくことが出来なかった。また、長文で返信があったりするとやはり英語に対しての抵抗感を持ってしまった。実際に生徒が取り組んだ期間は半年ぐらいであり現在進行中である。来年度においても継続的に実施していくつもりである。この企画を通して教師側として大切なことは、待っていては何も変化は生じない。常に相手校に対し担当教師が率先してメールを送るなどして、共通理解と認識の上で生徒の意識を高め合っていくことが大切であると感じた。

3.1.6.8 岡山県立岡山芳泉高等学校
沼本 竜哉

(1)参加に至る経緯
 100校プロジェクトに参加して以来,本校では各教科でのインターネット活用を検討してきたが,英語科の取り組みの一つとして電子メールによる国際交流を企画した。もともと本校では土曜日を通常の授業日と完全に分けて位置づけており,2年生では土曜日活用講座としてライティングの分野と関連させて電子メールによる国際交流講座を企画した。

(2)ねらい
  海外の学生とのメール交換を通して,自国や他国・他民族の文化の相違点・共通点の発見及び,その背景の探求を行わせる。その結果として,各々の文化の良さを理解させ,相互理解のための判断力を身につけさせる。
 英語をメール交換の手段とすることにより,英語学習に対する意欲と英語による自己表現力の向上を目指す。 メール交換のためのマナー・操作手順を学び,情報化に対応できる基本的な態度を身につけさせる。
 グループ学習の導入により,協力して操作・テーマ学習に臨む環境を作る。
 英語表現力と意欲を高める。

(3)テーマの選定
 最初は自己紹介からスタートし,自己紹介の次からは日本の生活・文化・社会問題を紹介し,相手国との相違点・共通点・その背景の探求へとテーマを深めていく。

(4) 交流状況(活動内容)
  アメリカ・サンノゼ市のシルバー・クリーク・ハイスクールとの協力が開始前に決まり,全生徒のメール交換相手を見つけられた。一部の生徒はこの他の相手とのメール交換も希望して始めている。

@ プリントを見ながらグループ員(2−5人)の英文を一つにまとめる。操作方法・手順及びその他の指示を聞く。希望者はテーマに合った写真を用意する。相手からのメール送信が遅い場合の対応についても指示をする。
A 自分の分担したトピックについて入力する。(必要ならばグループで相談しながら)前時に決めているグループテーマ(日本の生活・文化・学校生活など)各自の担当トピック(住まい・校則など)について英文にする際,教員はできるだけ質問に応じる。
B グループのほかのメンバーに,入力した内容を送信する。
C グループ員から受信した内容をまとめて各自,自分のメールを完成させる。季節の挨拶,休暇中連絡できない旨の断りを入れることなどをアドバイスする。
D アメリカの相手に送信する。

(5)インターネットの活用方法
・生徒が授業時間内や空き時間にメールを送れるクライアントが5台程度あり,完成できた生徒から順にメール送信を行っている。またそれぞれのテーマについての情報収集にもインターネットを活用している。

(6)交流前後の教師、生徒などの意識の変化
 自分宛のメール受信時の生徒の喜びは,この講座を大変活気づけており,一週間を通して課外(昼休み・放課後)も自発的に活動している。各自のペースで学習が続けられている。

(7)評価(効果・課題)
  入力時,英語表現に関する質問が積極的に寄せられるようになり,英語学習への意欲の高まりが見られる。電子メールのやりとりにも慣れ,教員へのメール送信も続いている。

操作やグループテーマについても友人間での助け合いが多く見られるようになった。

(講座終了後のアンケートより)
外国に友達ができたー!と思うと嬉しくなった。いろいろ話ができて楽しかった。
メールが来た時の感動は忘れられない。生きた英語や生活文化にふれられた。
学校で習っている英語を,文通に応用できたのがすごくよかった。
パソコンにも慣れ,インターネットを使いこなせるようになった。
考え方の違いに改めて驚いた。また,同じものに感銘できたこともよかった。
英語力がついた。テストで英作文の点が前より取れるようになった。
相手がローマ字で日本語を表現しているが,こちらから見れば文章に多少間違いがあるのがわかるように,こちらの文章も相手から見れば怪しげな英文に見えるだろうということがわかり参考になった。
パソコンの数を増やしてほしい。
 講座に対する生徒の反応は期待した以上だった。来年度もぜひ継続していきたいが,機材の不足はメール発信時の混雑を引き起こし,生徒は順番待ちをしながらメールを送っている状況である。この点が改善されれば,より一層の効果が期待できるのではないかと思う。

3.1.7 まとめ

木原 俊行
岡山大学教育工学センター

3.1.7.1インターネットを利用した国際交流の教育的有効性
 インターネットによる情報交換には,
1)多対多のコミュニケーションが可能,
2)簡便なので活動が継続しやすい,
3)映像が扱えるしリアルタイムでのやりとりも可能なので,活動にリアリティが伴う,という特徴がある
 これを活かすことによって,本インターネットクラスルームプロジェクトでは,
国際理解教育や情報教育などの総合的な学習のモデルケースを提案することができた。また,外国語学習の刷新を実現した。以下,プロジェクトを進める中で明らかになった,インターネットによる国際交流の教育的有効性を列挙してみる。
(1)国際人感覚の育成
 大阪府立四条畷北高等学校では,平成9年10月から高校1年生のホームルームで,カナダの高校とメール交換を展開した。わずかな期間の間に6〜7回もメールを交換した生徒がいるが,彼らは交流を通じて,外国の生徒と自分たちの共通点を発見することができた。
 この取り組みに示されるように,インターネットを用いて国際交流を継続的に展開し,国際共同プロジェクトを推進することは,高等学校の生徒たちに国際人としての資質を形成するための第一歩となった。

(2)生きて働く情報活用能力の育成
 国際交流の過程において,生徒たちは,諸外国の生徒たちとの対話を楽しむようになる。その喜びは,彼らのコンピュータやインターネットへの親近性を高めているし,活用スキルを高めている。外国の生徒との対話を実現するという目的とその手段としての情報機器の活用が一体となった,「生きて働く情報活用能力」の育成が実現した。

(3)外国語学習に対する意欲の向上
 「読者の存在が子どもの意欲を高めた」,「英語が得意ではないがメールのやりとりが楽しいと思っている子,なんとか相手とコミュニケートしたいと思っている子は,活動が長続きした」などの実践者のコメントに代表されるが,インターネットによる国際交流は生徒の外国語学習に対する意欲の向上にも,大きく貢献した。

3.1.7.2 国際交流におけるインターネット活用方法の工夫

 今回のプロジェクトでは,上記のような成果を産み出すために,個々の教師が,インターネットを利用する上で,様々な工夫をこうじた。特に次の3点が重要であると思われる。
(1)交流テーマの工夫
 国際交流活動においては,いかなるテーマで相手と情報交換をするかは決定的な意味を持つ。今回のプロジェクトでは,それは,大きくは4つに分かれた。「互いの紹介」「時事問題」「世界的に共通するテーマ」「共同作業・研究」,である。
 対象学年や交流目的などによって,交流テーマは変わるべきである。相手校の状況やインターネット利用環境にも大きく規定されよう。教師がそれらを総合的に判断し,交流のテーマを設定することが大切である。

(2)コミュニケーションサポートシステム
 実際の交流活動では,言語の壁をどう乗り越えるかという問題が教師の前に立ちふさがる。一般に,日本の生徒は英語でのコミュニケーションに慣れていない。英語を母国語ないしは第一言語とする外国の生徒に比べて,圧倒的に不利な状況にある。プロジェクト各校の教師たちは,この問題を,ALTの活用,翻訳ソフトの活用,先輩の文書例をモデルとして提示する,といった手法で,解決していた。

(3)交流継続の仕組み
 交流活動を継続するための手段を持つことも大切である。相手校は異なるカリキュラムで実践を展開している。インターネット利用環境も違う。それらの違いによって,情報交換が滞る(返信メールが届かないなど)ことがあるが,これをどう乗り切るかについて,各校とも方略を開発していた。「メール交換活動では,個人メッセージの作成に加えて,全員でひとつのトピックについて検討する場面を設ける」「電子メール(個人メール,メールグループ),CU-SeeMe,WWW検索,ビデオメール,などを組み合わせて活用する」などは,その代表例である。

3.1.7.3 インターネットを利用した国際交流の課題

 インターネットによる国際交流をさらに充実させるためには,次のような問題点を克服しなければならない。
 まず,交流校の教師同士のコミュニケーションをどう保障するか,が大きな問題である。これが十分でないと,交流が停滞する。交流を継続するために,愛知県立西陵商業高等学校では,交流校の教師と定期的に「職員会議」を開催している。こうしたアイデアや方法を開発・蓄積しなければならない。また,交流校の教師間のコミュニケーションを外部から支えるコーディネーションシステムを確立する必要もあろう。
 次に,相手校が見つからないことも早急に解決すべきである。一般には,国際交流を希望しても,そう簡単には相手は見つからない。今回のプロジェクトでは,交流相手の開拓は,個々の教師の個人的な努力や交友関係に依存していた。今後は,交流を希望する学校が増えるだろうから,交流相手との出会いをサポートする仕組みが整えられる必要がある。これが充実すれば,現状では,2校間にとどまっている交流が多校間のダイナミックなコミュニケーションに発展すると思われる。
 さらに,設備やシステムの充実だけでなく,学校体制やカリキュラムの刷新も本気で考えねばなるまい。インターネットによる国際交流は,様々な教科・科目と接点を持ちうる。にもかかわらず,現状では,各実践校とも,小数の教科・科目でしか利用されていない。インターネットによる国際交流を学校の教育活動に根づかせるためには,その受け皿,特に総合的な学習のカリキュラムやこれを指導する教育体制を確立しなければならないだろう。

 

 


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