3.2.6 交流の実践

(1)参加に至る経緯
  名古屋市立西陵商業高等学校、南山国際高等学校など100校プロジェクトの中で環境を整え授業と連動させて参加した学校をはじめ、三重県立菰野高校、三重県立名張高校など教師の端末を活用して参加しクラブとして参加した学校など様々である。
クラブといっても学校行事の中に計画を取り込み全校生徒との交流を持った。
またこの交流はschoolnet.or.jpのネットワークに支えられ実現した。
主な学校別に参加の経緯を次に述べる。

西陵商業高校
 100校プロジェクトに参加。昨年度共同利用企画「アジア高校生インターネット交流プロジェクト」幹事校。CECより貸与されたSUNサーバーと64kの専用線を活用し、生徒一人一人にアカウントを発行している。昨年度はダンス部の歓迎会、シンポジウムへの参加など意欲的に取り組んだ。今年度はエネルギー問題に取り組みプレゼンテーションをおこなった。また授業(国際理解)と連動させてこの企画に取り組んだ。

南山国際高校
 100校プロジェクト参加校。海外からの帰国子女が多いこともあって、昨年度の企画では通訳、司会と運営に中心的な役割を果たした。今年度は韓国語での通訳を担当。さらには英語の通訳も各国の参加者に一人ずつ付き対応した。今年度より64kの接続となりインターネット活用にさらに力を入れつつある。

滝高校
 本企画で6校のネットワークの管理運営を行った。技術的にも東海地域のサポートを担当した。シンポジウム成功に向けて英語版レジメの作成などに取り組んだ。昨年のネパールからの生徒たちは同校の文化祭に参加し、アジアへの関心を高めている。今年度のシンポジウムの議長を務めた。

淑徳高校
昨年より参加、ホームページの作成など担当した。ISDN回線からインターネットに接続し、経費は教員が負担するという環境であった。環境問題などに興味を持ちこの企画に参加した。

愛知県立小牧高校
 昨年度ネパール一行が同校を訪れ、大歓迎を受けた。昨年に引き続き英語クラブが中心となって参加した。
 公害問題を担当し、調査研究をインターネットを通して行い当日発表した。
 
担当教諭は生徒メーリングリストのスーパーバイザーとして生徒のきめ細かい指導に当った。

三重県立菰野高校
  校内に韓国語クラブを持ち、アジアへの関心は高い、ISDN回線を使い、インターネットに接続している。ISDNからインターネットに接続し、生徒のメールアカウントを発行している。その活動は三重県で先進的活動として注目を浴びている。大阪でのk―12国際会議で本プロジェクトの発表を行った。

三重県立名張高校
 インターナショナル・コミュニケーションクラブが中心となり、先生の端末一つで活動に参加した。関西空港への出迎え、さらには三重に向かう途中、公衆電話から電子メールで逐次報告を入れるなどプロジェクト推進に大きく貢献した。
担当教諭は数百にものぼる電子メールを全て印刷コピーをとり、生徒に手渡した。
恵まれない環境でありながらマンパワーで参加、プロジェクト推進にがんばった。

中村高校
  エネルギー問題に取り組み、生徒も昨年に続き、参加した。教員側は総務など全体の統括を行った。

名古屋市立緑高校
  教員の端末からインターネットに接続し、電子メールなど教員が配布するという形で参加した。懇親会手配などフェース to フェースの参加に貢献した。生徒もメーリングリストに積極的に参加した。

名古屋市立名東高校
  在日韓国人の生徒が在学し、この企画に主体的に参加した。また父兄も懇親会のお菓子を手作りし、参加するなど全体での取り組みが見られた。
また英語クラブはシンポジウムのレジメを英文に直すなど英語面で大きな働きをした。

名古屋女子大学中学高等学校
  ホームステイの企画運営に加え英語アンケートの制作などに貢献した。国際交流を授業に役立てようとこの企画に積極的に取り組んできた。

三重大学付属中学
  中学生でありながらメーリングリストを読み、インターネットを使ったプロジェクトに積極的に参加した。英語学習の一環として英語科と連携をとり参加。
  シンポジウム当日にはプレゼント贈呈役をつとめ、見事な英語スピーチを行った。高校生との連携をよくとった。

四日市商業高校
  英語インターアクト部が中心となり本企画に参加した。英語の活用、インターネット利用、国際交流を目的とした。三重地域での交流会学校行事への参加を企画した。

そのほかにも岡崎城西高校、名古屋大谷高校などクラブ、担当クラスの生徒が積極的にメーリングリスト、シンポジウムに参加した。

東海地域以外の参加
広島基町高校
  英語クラブ、クラスの生徒が参加した。日本国内の他校の生徒との交流、さらには英語を使ったアジアとの交流を目指した。生徒会との連携を試みたが今回は主体的な参加は得られなかった。

鈴張小学校(100校プロジェクト参加校)
 
主に広島でのシンポジウムの担当に当った。シンポジウムで、各国からのインターネット利用について、日本の印象についてなど意見を得た。

京田辺市教育委員会
  京田辺市は全国的にも有名な教育機関内ネットワークを構築している。ネットワークの教育利用に対して、コンテンツ、さらにはネットワーク上での技術的指導を行った。また京都地区ので交流会では通訳の手配、ホテルの手配、海外からの参加者全体でのシンポジウムを企画運営した。

(2)ねらい
  日本とアジア地域は歴史的にも密接な関係にあり、経済関係も深い。しかしながら教育の分野では教科書、テレビ等の限定された情報しか生徒に伝わっていない。
  例えば韓国。日韓併合、従軍慰安婦等々のテーマしか生徒に伝わらない。
もし日常的な交流が可能になれば、高校生活での共通点、将来の夢、多くの「語り」そこに生まれるであろう インターネットという「日常性」に支えられて次の様な目標を設定した。
文化面
・交流を深め、異文化を比較することによって、お互いに国の良さを把握する
経済の発展段階の違いの中から、何を残し何を解決していくかを高校生の視点から検討する
相互に第二言語である国際言語英語を活用し、これからの国際社会の中でのコミュニケーションのあり方を探る
相互連携の中で解決すべき事柄、環境問題、エネルギー問題にも積極的に取り組み、その活動を全世界にwebを通して発信していく
インターネット活用
電子メール、メーリングリストの教育場面での適切な活用方法を探る
CU-SeeMeなどのインターネットの特性を活かしたリアルタイムコミュニケーションツールを活用し、交流での働きを検討する
アジア地域は時差がほとんどないことから、その特性を活かし、インターネット定例職員会議などの実験を行う。
各国のインターネット環境を調査し、技術支援を行う。
各国の教育機関と連絡をとり、情報交換を行う。
国際会議等で日本のインターネットの教育利用を発表し、アジア交流への支援を依頼する
連携
各国日本大使館に定期的に状況報告を行い、日本のインターネット利用状況を知らせるとともに、交流への理解と協力を求める。

(3)テーマの選定
バーチャルとしてのインターネット
インターネットはバーチャルな世界である。それ故、電子メール、webからの発信等は効果的、なおかつ効率的にコミュニケーションできる。これらは英語を使う場が十分に提供されていない日本の高校生にとって必要な場面である。しかしながらこれらの活動もゴールの設定がなければその活動は鈍ってしまう。
そこでこのプロジェクトでは日本で自分たちの設定したテーマでシンポジウムを行うという目標を設定し、生徒に取り組ませた。
リアルステージとしてのシンポジウム
  シンポジウムの計画は主に日本側とCECの協力の下、推進された。海外からの参加のため、宿泊さらには食事の手配、移動の手配、出迎えなど、予想外の労力を必要とした。
しかし、バーチャル上でしか話し合えなかった生徒、先生と直接会い、時間をともにすることは英語情報だけでなく、その国を語る存在そのものとして生徒を揺さぶることとなる。
国内のネットワーク
 シンポジウムは名古屋だけでなく、広島、京都でも計画した。このことからインターネットを使った交流、打ち合わせが国内でも必要であり、相互の連絡にとって効果的なツール、方法がテーマとなった。
共同授業としての貿易シミュレーション
  バーチャル、さらにはリアルステージとしてシンポジウムを体験した生徒たち(主
に商業高校間)によって授業としてのアジア交流を発展させた。
  CU-SeeMewebページを活用した共同授業である。このようにプロジェクトをさらに部分的に発展させることも重要であろう。日本側は進学校、職業高校、公立、私立と異種の学校が参加した。2学期は進学校にとってはその準備のための大切な時間である。取り組める学校でこのプロジェクトを継続させた。

(4)交流状況
 1)基本的な展開
メーリングリストーー交流――日本でのシンポジウムーーさらなる交流、共同授業
 2)海外からの参加
ネパール ホーリーガーデンハイスクール 
韓国  ソウル女子商業高校
タイ  以前から交流のあった留学生
 3)実際の活動
テーマ決定
電子メール、メーリングリストを活用し、テーマとして「環境問題」「エネルギー」などが決定した。
英語の活用
シンポジウム(広島・名古屋)などでは使用言語として英語を設定した。「欧米の英語」と比較して省略形の少ない英語は生徒のとって分かりやすいものであった。
また、国際交流を考えていくとき、アジア圏においては相互に「外国語」であり英語に対して共通の「負担感」を持つ。このことにより積極的に活用しようとする態度を期待した。
事実生徒の英語版メーリングリストでは、つたないながらも積極的な英語の交流が実現しつつある。
シンポジュウムの内容
それぞれの学校、国に関する紹介、環境問題などそれぞれの国の現状について報告、討論。より理解を深めるために発表原稿は英文レジメを作成した。
また英語の理解を深めるため、映像資料、コンピュータ活用のプレゼンテーションを行った。
名古屋でのスケジュール

14:00       集合・準備
(以後司会: 滝高校)
14:30〜14:34 歓迎の言葉(影戸 誠)
14:35〜14:50 各国自己紹介(各国約4分)
14:50〜15:20 公害病について(小牧)
14:50〜15:10 各国発表(各国5分)
15:10〜15:20 質疑応答
15:20〜15:50 エネルギー問題について
(西陵・中村)
15:20〜15:40 各国発表(各国5分)
15:40〜15:50 質疑応答
15:50〜16:20 環境問題について(滝)
15:50〜16:10 各国発表(各国5分)
16:10〜16:20 質疑応答
16:20〜16:25 記念品贈呈式
         三重大学付属中学の生徒も参加
16:25〜16:30 ご講評(南山大学後藤先生)
16:30       解散 ―――>交流会へ

このようなプログラムで行われた。

この日まで各校の高校生は西陵商業高校、あるいは会場(プラネット)に足を運び、運営方法、さらにリハーサルにと準備を重ねてきた。一週間前に当日を想定して全く同じ流れを設定し、問題点を取り出した。
英語への理解を深めるため、英語版のパンフレットを作る、カメラ係、コンピュータ係、司会、カンバッチ(胸に付ける円形のバッチ)係などその働きを確認。各国、それぞれの国の状況を「英語」という第2言語を使い、話し合っていった。
確かに難しい内容もあったが、生徒の手による、準備、レジメ作成・・「成しえた」達成感はいつまでも実体験となって生徒を支えてくれることと思う。
・ 生徒の声

Hi, all friends.

I am having a good time in this travel. I have to say it first, sorry.

"Thank you for your kindness."

We had face to face meeting this time, before, we met only moniter. It's

my glory. It was very good experiences. Also I want to continue

communication by anything. I can't forget all of you. Never, never..And I

am missing you very much. Well, let's make our friendship forever.

Have a good night. Moon Yun-seung

 ・彼の名前はKuldeep
「ハジメマシテ。ワタシノナマエハKuldeepデス。アタナノナマエハナンデスカ?」
こんな彼は、私に大事な事を教えてくれた。前ばかりを見つめ、新しい物ばかりを追い求めるのも大事なことだが、後ろを振り返り、省みるのも大事なことであるのだ、ということを...其の人は、伝統を重んじ、それを拒否すること無く素直に受け入れていた。現代の日本人に欠けていることを彼は当り前のようにして持っており、またそれを育んでいた。

4)授業内での展開
この機会を活用して西陵商業高校とソウル女子商業高校ではインターネットを通した貿易の授業を展開した。
 WWW上に仮想商店街を設置し、インターネット上から商品の閲覧、注文ができるようにした。
(関連URL http://202.249.160.2/kageto/trade/trade.htm
さらに商品の見本などCU-SeeMeを使って提示しあい、インターネットの機能についても理解させた。
現在、2校で実施し、基本形が確定した段階でグループ対グループの共同授業として確定していく。
ソウル女子商業高校は昨年秋、韓国中央日報の紹介で訪問した。このときアジア高校生交流の企画(CEC共同利用企画)を、持ち込み今年度日本に来てもらった。
これと平行して双方が商業高校であることからバーチャルシュミレーションを進めていった。(来年度は土岐商業、杵島商業なども仲間として全国展開の予定)
・インターネットツール
web上から注文の出来る形とした。
また商品の打ち合わせなど、CU-SeeMeを活用した。
・教員同士の打ち合わせ
主に電子メールを多用した。これまでに100通のメールがやりとりされたが、欧
米と違いわかり易い英語であり、負担感の無い連絡となった。
電話も時々使用したが、結局は電子メールで行われた。
・交流の形態
  日本側 2人一組で商店を作る。各商店は独立採算性を取る。 
  
それぞれの商店はホームページを持ち、商品の特徴など宣伝を行う
  注文ページなどを設置し、その注文書が電子メールとして送られてくる。
  取引の流れは次のようになる。   自己紹介 企業紹介―> 取引協定書―>  商品の説明 ―> 注文 ―> 保 険 税関 ――> 為替手形の作成―> 決済
・貿易書式(webからダウンロードできる)の例
  Agreement on General Terms and Conditions Of Business Between Seiryo

  Co.,Inc.,the buyer, and Seoul Co.,Ltd.,the seller the business shall be 

  conducted on the following terms and conditions:

 ・Business :  All  business shall be done between the Buyer and the

  Seller on a Principals to Principals  basis.

  to the catalog.

 ・ Price : Prices are to be quoted in U.S.dollers.

生徒の反応
生徒にとっての韓国は、従軍慰安婦問題など、常に新聞情報からのものが主であった。
直接交流することによって、サッカーの話題など、幅広く話し合われた。アジア高校生交流で3名の生徒が本校を訪問したことから、親しみをもって交流に望むこととなった。
生徒の要求と教師側の要求
生徒の要求 コンピュータが使いたい
      英語が使ってみたい  
      インターネットが使ってみたい
      いろんな情報を見てみたい
教師の要求 コンピュータリテラシーを高めたい
      英語を遣わせ「通じたという喜び」を味あわせたい
      授業を変えたい
これら双方の要求がインターネットを活用した授業では実現している。
また西陵商業高校において貿易実践に参加した生徒アンケートも授業開始前と後では韓国に対する理解と好感度か大きく変化した。 
・理解  4――>8  好感度 5―――>9
「参加して初めて韓国のことを身近に考えるようになりました。いつでもCU-SeeMeであうことができるので、本当に隣の県にムーンちゃん(韓国)がいるようなきがします。」という生徒の声にもあるように、プロジェクト参加の体験の大きく意識を変えるといえる。

 関連URL
http://202.249.160.2/asia/
http://202.249.160.2/asia
http://202.249.160.2/kageto/trade/trade.htm
安田女子大 広島での交流レポート
http://next1.yasuda-u.ac.jp/cranes97/index-sjis.html

 

(5)インターネットの活用方法
・メールアドレスとメーリングリスト
 生徒の活動については インターネット利用環境に学校間格差が見られるが、各学校での努力とschoolnet.or.jpでの接続校以外の生徒へのアドレス発行により、15校中12校が生徒の個人アドレスを用意して、生徒が電子メールを直接利用する機会を提供することができた。電子メールの利用経験についても学校間格差があったが、大半の生徒ははじめてであり、電子メールを複数の人を対象とした交流、連絡の道具として利用する経験となったと思われる。日本語と英語の生徒の2つのメーリングリストを並列して活用したことが新しい展開だった。
・生徒にとってのインターネット
生徒自身はメールでの情報交換をどうみているのであろう。生徒へのアンケートからその状況を探ってみる。
<電子メールによる情報交換>
設問7asia-sasia-eの文は読みましたか。
1 全部読んだ
2 ほとんど読んだ
3 半分くらい読んだ
4 あまり読めなかった
5 ほとんど読めなかった

選択肢 1 2 3 4 5
15.8 31.6 31.6 15.8 5.2

日本人生徒の情報交換用メーリングリストasia-sは、企画開始から約2ヶ月間で200以上、外国人生徒を含めた英語用メーリングリストasia-eでは、約100通のメールが交換された。
それぞれのスキルと学校での環境によって生徒の回答は異なっているように思われる。
・教員のサポート
また生徒が直接個人アドレスを持たない学校でも、先生の指導で個人アドレスを持つ学校の生徒と同様またはそれ以上の参加、活躍が見られた。ただし、メールをプリントして生徒に配布し、生徒の文を代理入力代理送信した先生にとって、メールの数が多かったため、非常に負担が大きかった。直接生徒が電子メールを利用できる環境の整備が重要であり、今後とも課題となるであろう。学校によって、参加人数は異なるが、メーリングリストで交流するプロジェクトの適正な参加人数の検討も必要だったと思われる。
・英語メーリングリス
asia-eの方は、外国生徒の環境が整わない面があることが予想されたため、あらかじめ、代表生徒が各学校からのメールをまとめて一つのメールにして送ることにしたが、それでも一斉に自己紹介が出された時期は、全部の英文メールに目を通すのはどの生徒にとっても教員にとっても大変だったと思われる。
・ホームページの活用
主として指導者側でこの交流自体のホームページを整備し、事前に海外ゲストの写真を見られるようにし、ホームページでasia-eの過去のメールを一覧として見られるようにした。スケジュールもHyperScheduleというアプリケーションで公開し、ホームページへのアクセスの認証によって内部向け情報と公開情報の区別をし利用できるようにした。生徒のホームページ利用や、CU-SeeMe等他のインターネットのツールの利用は全体では進まなかった。
しかし、商業高校間での貿易シミュレーションにおいては成果を得た。
・メーリングリストの働き
 今回のプロジェクトでは生徒も指導者側にとってもメーリングリストが重要な役割を果たした。生徒の活動を指導者側もモニターして指導に役立てるという複数のメーリングリストの階層構造が、このプロジェクトの電子メール利用の特徴だった。

(6)交流前後の教員、生徒の意識の変化
  我々は本プロジェクトがこれからのプロジェクトの参考となるよう教員、さらには生徒に対してアンケートを実施した。

. <教員に対するアンケート結果>
【1】 あなたの学校の生徒は何人参加しましたか(合計118)(回答15校--以下 * 印)  最大30、
【2】 その中で、プロジェクトにしっかり参加した生徒は何人ですか。(合計53) *
【3】 シンポジウム出席人数 (合計84) *
【4】 懇親会出席人数 (合計52)*
【5】 参加した生徒たちは、どのような立場で参加していますか。*   
 1個人有志(8校)
 2ある部活動の部員(部名
:製作部、PC-club・ハングル愛好会、英語インターアクト部、ICC[インターナショナル・コミュニケーション・クラブ]、物理部、自然科学部、インターネットサークル、英語部−2校)
【6】 あなたの学校のインターネット、電子メール利用環境を教えてください。

(15校中)  
1 先生が受信、プリントして生徒に見せ、先生が代理入力し送信:3校  
2 先生が送信受信、フロッピーに入れて生徒にコンピュータ上で見せ、生徒が入力:1校
3 学校でダイアルアップPPP接続できるコンピュータ1台を生徒が利用した:0校
4 学校先生の携帯電話、ノートパソコンを利用した: 0校
5 学校はISDNLAN間接続されていて生徒が使えるコンピュータがある: 7校
       台数 40台,3台,2台,7台,10台,5台
6 学校は専用線接続で生徒が使えるコンピューターがある: 3校
(A校--生徒が使えるのは1台。そのため、生徒はフロッピーにメールを落とし、286DOSマシンでメールを書いて、Winマシンから、メールを送った。 )    
(B校--40台)(C校--34台)
【7】 生徒の電子メールアドレスは (15校中)     
1 先生の個人アドレスを利用した   2校
2 学校のアドレスを利用した    1校
3 生徒が個人で持っているアドレスを利用した 0校  
 学校で生徒のアドレスを発行した 4校 schoolnet.or.jp の接続校 -- 5校
5 schoolnet.or.jp のアドレスを利用した 3校 schoolnet.or.jp の接続校以外)
【8】 生徒の参加において、問題点は何がありましたか?
・職員会議などを通したので、特に問題はなかった。   
・引率費用
・コンピューターの使用環境が悪いので、広く参加を呼びかけることができなかったが、参加そのものについては問題はなかった。   
・広島では今年が初めての企画なので、生徒自身がこの企画をあまり理解できていなくて、積極的な参加が難しかった
・生徒の参加人数が多すぎたと思われる。一度に受信するメールが30通以上もあることもあり、生徒の処理能力をはるかに越えていた。
・フロッピーで個人のメールの管理をしていたが、メールの量が多く、メールのソフトエラーもかなりあり、フロッピーでの管理の限界を感じた。
・自由にメールを読み書きできる生徒と、初心者との間でギャップがあり、メールに慣れていない生徒はついていけない部分があった。
・先生がついていないとコンピュータが使えない点(先生がなかなかつけなかったため
【9】 生徒の電子メール利用の指導上の問題点は何がありましたか(複数回答可)*    
1 コンピューターが足りない 5校    
2 コンピューター利用の時間制限があり十分に生徒が活用できなかった 6校    
3 これまで生徒にコンピューター利用の経験が無く、指導に時間がかかった 7校  
4 学校から送信受信できず、自宅での送信受信が負担だった 1校    
【10】 あなたの学校のシンポジウム参加の生徒の役割は何がありましたか?
その役割の遂行の上で、よかった点、困難点、問題点をお書きください。
・プレゼント贈呈係を生徒は大変よろこんでいました。
 挨拶をした生徒も部長がびびっているのを見て、「私やりたい」と申し出た経緯があります。
・四日市喘息についての補足発表。結局英訳をすべて英語の先生に頼ってしまった。
・質問が一つと、カメラの係:その役割のため参加の意識が高まり、自分たちの会議だという自覚作りに結びつき、よかった。 困難点:人2役はちょっときつかった。
・公害病発表係 良かった点:生徒が精力的に資料を集め、積極的に活動に参加したこと。                
  公害病について深く知ることができたこと。 英語を使う機会が持てたこと。
・通訳として役割を果たした。 韓国の生徒のプレゼンテーションの内容が予定していたものと違うこと(学校紹介)もあってその点が少し手間取っていたようである。しかしその後の懇親会などでは非常に仲良くなることができた。
【11】 ホームステイや学校訪問など滞在の受け入れ、お世話を引き受けた方は、滞在中の海外の生徒と直接対応した生徒について、気がついたことを書いてください。
(先生のご自宅で)
・アジアからは学べる
・子供たちも欧米人に対するような精神的な壁が少ない
・19日、韓国の生徒たちが予定を変えてしまったのでがっかりしていた。20日に一緒にバーベキューをして大いに楽しんだ。それなりに英語の単語を並べて話していた。
(学校訪問や食事、送迎などを担当して)
・私の予想以上に、ネパールの生徒とよく話していた。
・運営面については、日程のきつさがあった。もう少し、ゆったりした日程にして、のんびりしてもよかった。あれもこれもと詰め込みすぎました。
交流面では、やはり語学力不足を痛感しました。  
(先生宅と生徒宅に滞在した)
・生徒は英語での苦労をしきりに言っていた。 
・ネパールの生徒は礼儀正しく、よく勉強した(特にロヒニは朝からも)。
・食事は、宗教がどうのこうのと大変そうな感じがあったが、実際はアジア人だからか私らと好みが似ており、好き嫌いも少なく、アメリカの子供を泊めたときより、楽に思えた。(生徒宅に滞在)
(生徒の家に韓国の生徒3人を泊めました。)
やはり寝食を共にするのは意義があった。とても仲良くなれた。暑い中あちこちに連れ回して、疲労させてしまったと反省している。自由時間も設定した方が良かった。(ショッピングなど)
【12】 プロジェクト全体の「生徒」の活動を見たり、指導して、気がついたこと、生徒が変化したことがあれば書いてください。
・何か自分が「すごい」ことをしたんだ!という感じはつかめたのではないか?
また、同じ高校生でもすごい生徒がいるんだということを感じ、よい意味での刺激になったのではないか?
・交流後、生徒がネパールに行きたいとメーリングリストに流していることが全てだと思います。・自分たちが壁の中に封じ込められていることに気づいてしまう。
・中心になっている他校の生徒の英語力や環境問題への取り組みに感心していた。
元々高校生フェスティバルで他校の生徒とよく交流している子たちだがまた別の交流ができて良かった。
・本校の生徒に限って言えば、こちらから指示したことはきちんとできたが、一歩進んで自分からというところまで行かなかった。けれども、まあよくやった方でしょう。
・積極的に互いに良い影響を受けながら励まし合ってやっていたと思いました。
とりわけ、議長さんの子は偉かったな、と感動しました。
・生徒が、このように活発に交流をする機会が、管理的な日本の学校では、与えられていないのではないか。積極的に海外の人との交流を求める気持ちを伸ばすことができてよかった。
・直接交流は、日本の生徒がとても喜びました。それまで電子メールなどおっくうだった生徒が、パソコンにさわってみようと思い始めました。
【14】 インターネットを生徒が利用する機会として、今回のプロジェクトは校内で役に立ちましたか。また具体的にどのような点か、またその理由を書いてください。
・どちらとも言えない 1校
・役に立たなかった  1校
・私の1台のパソコンではMLでの情報を処理できず生徒に流しきれなかった。 
・役に立った 11校
・課題が無いとネットサーフィンをしているだけに終わるので、具体的な交流の企画を生徒に与えることができた。
・生徒へのメールアドレス発行にあたって、認められやすい理由で生徒が日常的にメールを使える環境が整った
・他の教員の同意を得やすい  
・関心が深まった程度だがこれからの指導をしっかりしたい
・今まで教員のみしか使えなかった本校のインターネット使用をなしくずし的に生徒に使わせられたこと。今後さらになしくずしていきたい。
・生徒にやる気を起こさせた。学校内でのインターネットの利用は一部の者の物ではなく、英語科での利用も単なる趣味ではなく教育的利用だとの認識が職員の間に深まったと期待してる。
・今後の説得にも有効な資料ができた。
・特に、平和公園などで直接交流した生徒は、今後電子メールで交流したいという「やる気」が起きたようだ。
・生徒が職員室で送信受信している場面を見て、他の職員が生徒も電子メールを使えるという認識を持った
・授業ベースの活動を促進する効果があった
・今回参加した生徒が後輩の指導にあたってくれることを信じて。
・生徒が積極的に電子メールを使い、自分の意見を述べる機会が増えたこと
【15】 この交流の課題を書いてください。
・中心になってやっていただいている先生の負担が非常に大きい。また、金銭面でのやりくりが大変なので、これをどうするか?
・自校の生徒のフォローやサポートに教員は徹することができるように、企画全体のアクティビティ負荷を如何に分散するか。
・もっと準備段階(電子メールでの交流・シンポジウムの準備)に時間をかけることと、シンポジウムの内容をもっと日常的な事にする事が大切ではないかと思う。
・昨年、南山でやったような集会(インターネット利用の研修と生徒会交流についてのオフラインミーティング)もあると交流が深まっていいと思う
・財政面(これだけ大きな企画になると、もう少し財政面をきちんとする必要があるのでは?)
・日常的交流(せっかく生まれた生徒どおしの交流の目をつぶすのは残念。できれば、日常的な交流を続けることができたらと思う。MLの運営などは大変でしょうが。)
・今回の会議の内容については正直言って英語でやりとりするには難しすぎる、ちょっと無理があった。生徒たちが翻訳をかって出たが、当日の3日前位に 翻訳の依頼があり、その語彙(高速増殖炉、対放射性物質、環境負荷の低減化、、、etc.)、 内容の難しさと時間の無さであまりお役に立てず残念だった。決まった以上は、ということで先生方も頑張って指導されたことと思うが、もっと生徒達だけでもやっていける内容にすべきではないかと実感した。ただ、結果を見て言えることは、生徒たちが想像以上によくプロジェクトに取り組んで社会問題に目を向け、立派にやりとげたと思う。
・東海地区限定のプロジェクトの方が良いと思う。
・ゲストたちの行動予定もあらかじめ連絡してもらっていないと困る。招聘した側としては旅行中の安全面でも困ったことだったと思った。
・まさかのときの計画も必要です。台風では本当にこまりました。あれで飛行機が飛ばなかったときの対策はまったくなかったのです。非常時の対応を考えるというのはとても大事だとおもうのです。
・携帯電話が必須。スタッフには集合時間に遅れるときでも、携帯電話で連絡がとれれば事故ではないことがわかったり、次善の策を計画できて便利。
・全体を通じて他の地域との連携という意味で、全体を把握して行動する担当者が必要だった。台風など、予期せぬ事態の対応が、各地に任せるというのでは、企画としては不十分だ。
・生徒、先生の予定、進行、海外との連絡など、役割分担がはっきりしていず、全体を見て時期にあった指示をする役割が十分果たされず混乱の原因となった。全体の会計、活動の指示、海外との連絡の3つを明確にして実行することが重要。
さまざまな学校があり、その中で一つのプロジェクトを運営していくのは、とてもその調整が大変であることを認識しました。

○生徒の意識の変化
このプロジェクトの始めと、国際シンポジウム後に実施したアンケート調査結果より、参加生徒の意識とその変化について考察する。 [事前アンケート調査]
〈インターネットへの関心〉
設問1 インターネットに関心がありますか。
  大変ある 少しある 余りない 全然ない
割合(%) 54.8 39.7 4.1 1.4

設問3 インターネットを利用して、どのようなことがしたいですか。(2つ選択)
(1) 他の地域や世界の情報を見たい
(2) 外国や他の地域と電子メールを使って情報交換をしたい
(3) テレビ電話の機能を使い、他の地域の人と話したい
(4) 文字や情報を使い、世界に向け、情報を発信したい
(5) 外国や他の地域と共同作業をしたい
(6) その他
選択肢 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
割合% 57.5 58.9 17.8 17.8 23.3 6.8
選択肢 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
割合% 57.5 58.9 17.8 17.8 23.3 6.8

<外国への興味>
設問8 世界の中であなたが一番興味がある地域はどこですか。
(1) アジア (2) 西欧 (3) 東欧 (4) 北米
(5) 南米 (6) オセアニア (7) アフリカ (8) 北極・南極 (9) その他
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
12.3 28.8 6.8 17.8 1.4 9.6 8.2 12.3 2.7
記述式で尋ねたアジア、そして、各国に対するイメージについて、以下のように答えている。

<アジアに対するイメージ>
@ アジアが持つ独特の文化、価値観に対する興味、感嘆
例. 西洋の価値観では測りきれない、人間と自然が一体化して発達した文化と精神
A 今後の発展が期待される地域
例.今後世界中に大きな影響力を与える地域、パワフル、エネルギッシュ

<アジア人が日本に対して抱いているであろうと想像されるイメージ>
精神的に貧困な経済大国日本に対する反感
例.エコノミカル・アニマル、残虐行為を行った国、厭味な金持ち

<韓国に対するイメージ>
@ 日本と韓国の間に残る溝
例.戦争中残虐行為を日本がした国、反日主義、
A 隣国としてのイメージ
例.一番近い国、日本人と似ている、キムチ
B 経済大国としてイメージ
例.アジアで一番の工業国、光ファイバーが普及し、日本よりも進んでいる、金権政治

<ネパールに対するイメージ>
自然と発展途上国のイメージ
例.エベレスト、自然が美しい、未発展、

<タイに対するイメージ>
数年前に輸入されたタイ米の印象が強い。それ以外のことは、あまり知らない。

<日本でどうしても体験してほしいこと>
日本の日常生活
例.箸を使う、カラオケ、日本料理の調理

[事後アンケート調査]
<インターネットへの関心>
68.4%の生徒がインターネットへの関心が高まったと答えている。

<コンピュータ・リテラシー>
参加生徒は、国内、国外の生徒とテーマに沿った意見交換を進める中で、電子メールの送受信、WWW上の情報検索、さらには、ホームページの作成までもできるようになった。

<今後のインターネット利用>
「インターネットを利用してこれからどのようなことがしたいですか」という設問に対して、約80%の生徒が「外国や他の地域と電子メールを使い情報交換をしたい」と答えている。

<各国への関心度の変化>

  大変増した 少し増し あまり 全然
ネパール 26.3 63.2 10.5 0
31.6 47.4 21.0 0
5.3 68.4 26.3 0
10.5 31.6 52.6 5.3


懇親会、ホームスティ等で、外国の生徒や先生と交流を持った生徒ほど、相手国に興味を強く持ったようだ。生徒は、シンポジウムを契機に、参加国に様々な関心を持つようになった。

<テーマへの関心度の変化>
設問16公害病、エネルギー問題、環境問題への関心が高まりましたか。

選択肢 大変増した 少し増した あまり 全然
31.6 52.6 15.8 0

高度成長期に、人命と環境を犠牲にして産業発展を優先した企業とそれを黙認した国家に対して、生徒は鋭い非難の視線を投げかけていた。

<英語を学ぶ第一の目的>
(1) 学校で学習すべき教科だから
(2) 就職試験や入学試験で必要だから
(3) 外国人とコミュニケーションを図りたいから
(4) 英語自体に興味・関心があるから
(5) 教養を高めるため
(6) 「国際人」になりたいから
(7) 世界中の情報を収集したいから
(8) 海外旅行へ行って困らないように
(9) その他

  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
事前 18.1 12.5 26.4 2.8 4.2 13.9 8.3 8.3 5.6
事後 10.5 10.5 47.4 0 0 10.5 5.3 5.3 10.6

<音声英語の理解度>
今回のシンポジウムでは英語を使用言語とした。予め困難が予想できたので、発表内容、質問については、メーリングリスト上に英語と日本語で流すように発表者、質問者に依頼した。また、シンポジウム当日用に、発表内容やキーワードとその翻訳を纏めた冊子を準備してもらった。しかし、訛りの強い英語に生徒は苦戦気味だった。以下にアンケート調査の結果を示す。
(1) 完璧に分かった (2) ほとんど分かった(3) 概略は分かった(4)ほとんど分からなかった(5) 全然分からなかった

  (1) (2) (3) (4) (5)
発表内容 0% 5.2% 47.4% 47.4% 0%
質疑応答 0% 10.5% 21.0% 68.5% 0%

会議での苦労のせいか、約80%の生徒が「もっと英語を勉強しようと思った」と答えている。「今後一番身につけたい英語力は?」という質問には63.2%の生徒が「聞く力」と答えている。

<顔を合わせた交流と電子メールでの交流>
 「電子メールでは、相手が実在するという実感がつかめない。」一方、「電子メールの方が落ち着いて答えられる。」また、「臨場感というのか、表情や身振りから伝わること、あるいは手紙ですら筆跡や紙の感じから伝わることは普段考えているよりも多いと思う。」以上のように、感想の中には日常生活を再評価する声や、顔を合わせた交流の方がいかに情報交換量が多いかを指摘する声もあった。人と人との交流の基本は、直接顔を合わせた交流にあると思うが、国際交流の初歩段階においては、互いに緊張感を和らげ、言葉の翻訳に時間が取れる電子メールによる交流が適当に思われる。

<電子メールの長所と短所>
長所:早く安く大量に送れる。保存性。距離が気にならない。
   大勢に一斉に情報を伝達。
短所:相手の正体が分からない。
   読まないとたまって、読みきれなくなる。

<四カ国の人の共通点と相違点>
共通点:環境に対する考え方。同じ音楽を聞いている点。同じ人間であること。
相違点:間の取り方、気の配り方、英語の訛り

直接国際交流を体験して、生徒達は当初溝を感じたり、無関心であった国の生徒に、相違点よりはむしろ自分達とさして変わらぬ姿を見出したようだ。

(7)評価と問題点
 動き出すと壮大なプロジェクトであることを実感させられるものであった。
教員は日々の授業とともにこのプロジェクトを推進し、生徒は部活動、受験勉強と平行して取り組むこととなった。
確かに手間と時間、想像を絶する労力が個々の教師、生徒にかかったがその結果は満足のいくものであった。
事前の交流
インターネットが生徒の身近なものになったといっても各学校が十分な環境を揃えていたわけではない。しかしながら刻々と伝えられる情報はインターネットの持つ速さを表現し、他校の生徒からのメール、海外からのメールは確かに相手とともに共同でプロジェクトを推進している自覚を持つこととなった。
 さらにシンポジウムに向けてのカンバッチなどの準備は生徒にとっては楽しいものであり。他校生徒と取り組めたことは国内生徒にとって「確かな」共同作業の場を持てたこととなると思う。
・シンポジウム
 シンポジウムの運営も、各学校がそれぞれの場で活動したことで、参加意識も高まったようである。海外ゲストとの交流は、直接ゲストと過ごす時間を持てた生徒には強い印象を与えているようである。人間関係においては、電子メールだけの交流では得られないものが、直接会うことにより得られることがこのプロジェクトをやってみて分かった。また、シンポジウムを共同で実施した経験から、日本の生徒同士の交流も深まった。
電子メールの交流というインターネットの機能を駆使したことから、このような結論を得ることができた。インターネットでの交流が直接会うことや、継続的な交流に重要な役割を果たすことになった。
英語の活用
 昨年に続いて海外ゲストと接した生徒について、英語で話そうとする態度に大きな変化があって、積極的だったというコメントもあり、昨年の活動がコミュニケーションに対する動機を高めており、一度限りの企画でなく、昨年の経験に基づき、今年の企画が充実したと言える。
 また全体として、アンケート13回答中11校がこのプロジェクトがインターネットの生徒利用の機会として「役立った」と回答され、このプロジェクトの果たした意義が現れている。
・問題点
シンポジウムの計画、事前打ち合わせ会、リハーサルの実施は議長役の生徒とasia-sのアドバイザーの働きにより、生徒主体で行われた。asia-eを用いてアンケート、原稿の事前提出、英語の用語集作り、レジメの準備とよく対応したが、日常の学校の英語学習での語彙や経験とシンポジウムで英語で発表するのとはかなり開きがあり、目標としては、やや高すぎて、限られた準備時間でこなすのが精いっぱいで負担が大きかった感もある。
・教員側の問題
 大人の側の運営については、海外ゲストの招聘のプロセス、ゲストの滞在のマネジメントなど各方面での問題点、課題が残る。
 海外ゲストの招待については、全体のプロジェクトの中で、どの国のゲストを何のために招待するのか、という部分の議論や目的で、弱さが見られた。またビザの発給について、招待状の送付、ゲストのビザ取得、渡航費についてのゲストとの話し合いの各面で、国によっても方法が異なり、困難な点があった。余裕のある日程で招聘の計画を立てる必要があった。
・3地点での受け入れ
 今回、東海、広島、京都の三地点での共同プロジェクトだったが、まずゲストの招待ありきとなり、日程と予算の両面で、もっとはっきりした計画が必要だった。
ゲストは日本で何をしたいのか、日本側は、シンポジウム以外の場面ではゲストと一緒に何をしたいのか、お客さんを迎え、一緒に過ごすことと、インターネットを利用した国際交流の可能性を受け入れ校で示すこと以外の両方の期待やニーズを理解し合うことがもっと必要だった。またゲスト滞在中の宿泊など細かい点について、全体を見て、継続して同行したり、連絡をする立場の人が必要だったという反省が見られ、各地でのとまどいが見られた。

3.2.7 まとめ

本プロジェクトは昨年のプロジェクトに続き、さらにアジアの他の国である韓国、日本在住のタイ出身の生徒を巻き込み、生徒達自身によって企画・運営された。
生徒達はメーリングリストで活き活きと発言し、環境問題など高度なテーマについて、シンポジウムを目標に数か月間の準備を行なった。期間中には、日本語、英語でのメーリングリストでそれぞれ相当な数のメッセージが交換された。
シンポジウムは海外の参加者を招き開催され、生徒による当日の司会進行とプレゼンテーションは、ともに素晴らしいものであった。半日だけだったために、議論の時間が十分にとれなかった点が少々残念であるが、ゲストと日本の生徒が交互に同一テーマについて資料をもとに、各国での状況報告、課題の発表を行ない意見交換を行なった。この点ではインターネットの機能を活用し、交流を深めたことは評価できる。

 

3.2.7.1 インターネットを利用した国際交流の教育的有効性

国際的なプロジェクト
学校でのインターネット利用が進んできたが、本来の教室の壁を越えた利用しかも国際的なプロジェクトを実施することは生徒と先生にとって大変なことである。生徒側は、何人かの牽引力となる生徒の頑張りで、メーリングリストでの発言にも常に活気があり、色々な締め切りに苦しむとともに、日頃つき合いが少ない近隣の生徒、海外の生徒との交流を楽しんだことと思う。

この春休みに実際に現地を訪れる計画を持つ生徒まで現れている。これらの事柄を見てみるとただ単に交流しただけでなく、若い高校生の心を揺さぶるものがこの交流にはあったように思えてならない。
国際言語としての英語

英語でコミュニケーションすることに気おくれしていた生徒であるが、このプロジェクトによって使う「場」を与えられたことになる。アンケート調査からもわかるように英語学習の目的の第一が受験、必修であるという理由から海外の人とのコミュニケーションのためにという項目に移動している。
 2年目の交流であることから、滝高校の生徒のようにこの日に向けて1年間準備をしてきた生徒もいる。目標を得て学習をする主体的な態度をもたらすこととなった。
技術の相互学習
インターネットの世界に遊ぶには端末を操作しなくてはならない。電子メールの送り方、返信の仕方など生徒は学び会うことによってその技術を獲得していった。
さらにバーチャルだけでなく、シンポジウムの機会があったことから、技術的に疎い生徒も企画準備等の中で自らの能力を発揮できた。
 生徒だけでなく教員間にもこのような相互学習があった。また同じ企画を生徒、教員ともに運営することから、連帯感、相互理解を得ることができた。
・外国機関との連携
 ネパールなど日本人入国は厳しいしさがある。カトマンズの日本大使館にたいし書類を送付しプロジェクトのないようを伝えた。今年が2年目であることから審査はスムーズであったが、このような活動は在外機関に国内のあたらしい動きを伝えるだけでなく、在外日本人学校との交流の可能性も大きく膨らませることとなっている。

3.2.7.2 国際交流におけるインターネット活用方法の工夫

メーリングリストの設置
生徒・教師がプロジェクトの役割を相互に把握し、効率的に運営するためにメーリングリストを分割した。生徒だけのメーリングリスト、英語のメーリングリスト、さらには教師だけのメーリングリスト。この分割によって話し合いが有機的に持たれた。また生徒用メーリングリストにスーパーバイザー(教師)を置き、教育的配慮を行うと同時に、生徒主体という意味から他の教員は発言できないシステムとした。

国内のネットワークを活用

実践内容からもわかるようにこの企画は名古屋地域だけではなく、広島、京田辺市(京都)と連携してシンポジウムを開催した。 国内の3地点が送り出しと、出迎え、さらには予算の構成などインターネットの機能をフルに使って対応した。これらの国内ネットワークもともにプロジェクトを推進する中で成長していったように思う。
プロジェクトの構成(バーチャルとリアル)
この企画はインターネットのバーチャル性とシンポジウム開催というリアル性の複合されたものである。シンポジウムという一過性のものが、インターネットというネット網に支えられその体験が理解の元となって現在も交流は続いている。
このように考えると「手応え」と「継続性」を与えてくれるこの企画内容は今後の発展型学習として十分パイロットケースになりうるものである。

3.2.7.3 インターネットを利用した国際交流の課題

・昨年度との比較において 
昨年度のネパールプロジェクト(共同利用企画)では、ややお祭り的盛り上がりで一気に乗り切った感があるが、今年度は参加人数、規模が多くなったため、大人が関わる部分の企画調整の準備が遅れがちであった。また、筆者自身を含めプロジェクトのサポートを行なう先生や関係者がインターネット普及の中で一層多忙となり、悲鳴を上げていると言う状態があり、適切に情報が伝達されないことによる行き違いなどもあった。
相手校の選定
ネパール、タイ、韓国ともすべて参加した先生方の努力による。ネパールに3回もパソコンを持参して学校を訪れ、現地で接続の手伝いをし、交流の趣旨を伝えるという段階を経て今回の企画は実現している。
このように考えるとCECがこの種の企画の窓口として、海外教育関連機関と連携して、相互に交流先の情報を提供し合うような機能が実現できれば喜ばしい。
・電子メールのもたらす影の部分
 電子メールは便利であるが、通信量が増え、仕事が無限に増殖してゆく可能性がある。できると思って始めたが、処理が追い付かない場合がある。
・来年度に向けて
以上のように、問題もあり、来年度もできるかと問われれば、わからないというのが現状の答になるかもしれないが、この経験を積んだ生徒や先生が個別に、あるいは別のグループで実施する際にはこれらの課題を解決できるものと信じる。
とにかく今回で燃えつきることがないように先生方には、ちょっと休憩してから、今後も頑張ってもらいたい。



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