3.4.6 交流の実践
3.4.6.1 神奈川県大和市立林間小学校
島崎 勇

1.参加に至る経緯
1995年以来KIDLINKのマネージャーであるアメリカ、デルマー小学校のパッティー先生との交流を続けてきた。そのパッティー先生と、本年、WWFAXプロジェクト'97"Drawing us closer together"と取り組むことにしていた。これが、アメリカ、ウルグァイ、ペルー、ブラジルそして日本の五カ国の共同プロジェクトとして発展していくことになった。
 国際教室の子ども達の多くがスペイン語圏からきている。彼らの母国との交流、またスペイン語との接触も可能ではないかと考え、この企画を展開することにした。

2.ねらい
 ・言葉の壁を乗り越える方法の一つとして「絵」を使った交流を進め、相互理解を深める。
 
・国際教室の日本語学習をKIDLINKの仲間に紹介していく。

3.テーマの選定
 子ども達は、「絵」で伝えたいことを表現し、普段使っている言葉を添える事でより一層の理解を得られるようにする。「絵」で伝える内容は、自己紹介から始まってその時々の学習の様子、暮らしの様子等とする。

4.交流状況(活動内容)
・日本語学習という観点
 あいさつの仕方とか自己紹介、ひらがなの練習等をKIDPIXというソフトを使ってまとめる。グラフィックの画面に、スペイン語・日本語そして絵で仕上げる。
 更に音声を録音する。このファイルを電子メールに添付して送る。
(例) ・二年国語「おてがみ」---日米の二年生同士で読み合う。二年生の音読もデータとして送る。
  ・三年自己紹介--絵とスペイン語とスペイン語で録音してまとめる。ボイスメールとして送る。
  ・四年「遠足」の作文---スペイン語と絵でまとめる。これは、ウルグアイ等スペイン語圏のKIDLINKの仲間を勇気づけたと言われた。
  ・言葉の壁に橋をかける「絵」を使った交流
   パッティー先生のホームページでは、
  
Self introduction from Delmar elementaryから始まって、
  
・「ぼくのねこがどこかにいっちゃった」
  
Drawings from Peru
  
Christmas drawings from Brazil
  
What do I like best about school?
と逐次紹介していってくれた。それに対して、日本の六年生の「ねこの絵」を送ったり、「運動会」の絵を送ったりした。その後、日本からもクリスマスの絵や誕生日のお祝いの絵とか「私が学校で好きな事」の絵を送った。
  
・スペイン語のボランティアのヘルプ
  
六年の女の子がクラスの友達にスペイン語でお手紙を書いた。まだ日本語で 書けなかったからだ。本校にはそのスペイン語の手紙を読める日本人は一人もいない。そこで、KIDLINKのスペイン語の仲間に翻訳の援助を求めた。そのお願いのメッセージを出した数時間後には、もうスペイン語から英語への翻訳文が届けられた。 おかげで、次の朝には日本語にして、そのクラスの友達に渡すことが出来た。こんなもマルチ言語サポートのKIDLINKのお陰であった。二学期には、更にデンマーク、アルゼンチン、ウルグアイからもスペイン語翻訳の援助を得る事ができた。
  
・その他
  ・一学期には、ブラジルからポルトガル語の教科書が国際郵便で送られてきた。
  
・二学期には、ウルグアイからスペイン語の教科書も届いた。お返しに、ブラジル、ウルグアイに日本の一年、二年の国語と算数の教科書を送った。
  
・パッティー先生のホームページでは、英語・スペイン語・日本語・ポルトガ ル語の一覧表が紹介してくれた。「月」の名前とか、「色」の名前、「数」等がそれぞれの言葉でどういうかまとめられている。これらはメールでお互いの国の言葉を教え合い、更に言葉を増やして「絵辞典」にしようという話も進めている。


5.インターネットの活用方法
 
国際教室にマッキントッシュを用意して日本語の勉強の一つとしての作文、絵、お手紙を書く事に利用した。それを電子メールに添付して送った。交流が進むにつれて、この「絵」に「声」も付けられるようになり、より直接的な交流を実現させていった。アメリカのデルマー小学校のパッティー先生のホームページで活動の一端が紹介されていった。

6.交流前後の教師、生徒などの意識の変化
 日本語が分からないという不安で最初は小さな声でしか、しゃべらなかった子ども達、スペイン語を取り入れた交流や学習をすすめる中で、少しずつ不安が取れていったのか、スペイン語でもいい、とにかく自分の言いたいことを発言するようになってきた。この安心感からか、日本語学習にも熱心になっていった。

7.評価(効果・課題)
 国際教室の本来の役割の第一は、日本語指導である。日本語が分からない子ども達に外国語としての日本語を指導する事にある。その際、彼らの母語の理解力を有効に活かす事が、彼らの日本語学習を促進し、更に母語保持にもつながるのではないか。
こういう課題に対して、KIDLINKの仲間との英語・スペイン語・日本語の交流を進めて行った。日本語が分からないからと最初小さい声でしか話さなかった子ども達が、日本語・スペイン語と気にせず話し始めている。この雰囲気のおかげで、子ども達は日本語学習においても互いに教え合い、助け合うようになっていった。
 ただ現状では、コンピュータの問題、回線の問題、カリキュラムの問題等色々あって日本の全ての国際教室が実践出来る訳ではないだろう。私たちの実践で得た産物を近隣の国際教室にも提供していき、今後とも協力関係を国内外に広げて行きたいと思っている。

3.4.6.2 神奈川県相模原市立東林小学校

坊野 博範

1.参加に至る経緯
 本校は、平成6年度から中国・無錫市・東林小学と姉妹校を結び、絵や書、作文、手紙などの交換を通して交流を進めてきた。平成8年には「こねっと・プラン」に参画し、1台のコンピュータでインターネットを活用できるようになった。
本校には「国際交流クラブ」が設置され、自分が興味ある国を調べたり、アメリカやカナダなどの国から本市の英語教育のために招聘したATを読んで話を聞いたり、一緒に遊んだりする活動をしてきた。このような活動を基盤にして海外の国との交流をよりいっそう進めるためにキッドプロジェクトの計画に応募した。

2.ねらい
 ・メール交換での読む、書く活動を通して英語の必要性を考えることができる。
 ・相手の国の生活・習慣などと自分の地域の生活・習慣とを比較して、お互いの文  化や歴史の違いを理解することができる。

3.テーマ   - E-Mailを活用した海外との交流

4.交流状況
 子ども達と話し合った結果、日本であまり知られていない国と交流をしてみようということになった。11月に学校紹介文を100Kid-tへ送り、Kidlinkへ掲載された。交流希望国はギリシャとスペインであったが、掲載後交流希望がないため同じヨーロッパのイタリア・イスラエルを選び、各校とコンタクトをとって交流を進めてきた。
1997年11月 100Kid-tへ学校紹介を載せる。
イタリアとの交流
1997年12月4日 イタリア北部の町Reggio Emilia(レジオ・エミリア)に住んでいる 英語のSilvia Palmia(シルビア・パルミア)先生から交流希望のメールが100Kid -tに掲載された。11から12歳の子ども達は、少し英語を話し、趣味や挨拶の言葉などペアになってメール交換をしたい。
12月16日 イタリアからのメールをクラブの子どもに紹介し、イタリアの学校と交 流することを決める。インターネットでレジオ・エミリアの町をみんなで探したり、イタリアの国のホームページへ入った。100Kid-tへ交流希望を出す。
1998年1月15日 イタリアの学校へ東林小学校の学校紹介と4年生から6年生まで の子どもが交流を希望していること、自己紹介文のメールを出す。
 1月27日 子どもが書いた自分の名前・学年・趣味を書いた自己紹介文のメールを出す。このメールが迷子になり届かなかった。
 2月11日 返事が全然こないので次のような内容で問い合わせのメールを出す。
      ・前のメールが届いたか。・交流希望があるか
 
    ・子ども達が待っているので返事を欲しい
 2月12日 次のような内容で返事が来る。
      ・前のメールは受け取っていない。 ・再送をお願いしたい。
      ・返事はできるだけ早くします。
 2月12日 迷子の誤りを書いて、子ども達のメッセージを再送する。
イスラエルとの交流
 1997年12月19日 イスラエルの南部Beer Sheva(ビアシェバ)で英語の先生をしている Mitzi Geffenさんから交流希望のメールが100Kid-tに載る。 
6年生の子ども達は日本の子ども達との交流をとても楽しみにしている。
 1998年1月12日 Netivey Am Schoolで学んでいる子ども達のメッセージが100Kid-tに載る。
 1月25日 100Kid-tへ交流希望のメールをだす。希望を島崎先生が相手に伝える。
 1月26日 Mitzi Geffen さんから自己紹介文と交流希望のメールが届く。
 1月27日 簡単な学校紹介と子ども達の自己紹介文をメールで出す。
 2月11日 返事が全然こないので次のような内容で問い合わせのメールを出す。
      ・前のメールが届いたか。  ・交流希望があるか
      ・子ども達が待っているので返事を欲しい。
 2月11日 問い合わせの返事が来る。学校のコンピュータがダウンしてメールを送  ることができなかった。日曜日に学校に行ってメールを送る。子ども達はメールを書くことに夢中になっています。

5.インターネットの活用方法
 ISDNの回線に1台のコンピュータが接続されている。まもなくルータを設置して子ども達もインターネットにアクセスできるようにする予定である。相手校の詳しい地図やその国の特徴的なものを瞬時に検索することができ、興味を持って取り組むことができる。デジカメを使って画像の取り込み、メール添付などを行うことによって相手をより理解することができる。

6.交流前後の意識の変
 相手が決まることで子ども達はその国に興味を持ち積極的に調べるようになった。メールを送った後はいつくるのかと心待ちにしている状態である。しかし、メールを使った交流が浅いため大きな意識の変化は見られないが、目が海外に向いていっていることは確かである。

7.成果と課題
 成果・交流相手国、学校の教科、学習内容などに興味を持ち、インターネットや資料を使って積極的に調べていくようになった。
   ・メールを期待して待つ経験から、相手の事を考えるようになった。
 課題・はじめに相手校の先生とコンタクトを十分にとることが必要である。

3.4.6.3 静岡県清水国際中学・高等学校

井柳 強

「国際交流自己研修の場としてのKIDLINK」

 

1.参加に至る経緯

 本校の100校プロジェクト、新100校プロジェクトへの参加は、他校の参加形態とは異なった独自の形をとっている。

(1)供与の機器を中学生が全員参加する、週1時間の正課クラブ活動「地球クラブ」での利用だけに絞ってインターネットを活用している。
(2)ここでは、通信メディアを利用して世界の子どもたちと国際共同作業をどのよ  うに展開するかがメインテーマになっている。
(3)「地球クラブ」の活動は、郵便手紙から始まり、スライド、ビデテープ交換、国際ファックス通信、パソコン通信、インターネット利用にいたる10年の歴史を持っている。

2.ねらい
 本校の新100学校プロジェクト重点企画「 KIDLINK」への参加の動機は、上記のような活動を展開するために、各種プロジェクトの国際共同作業相手を探すことが目的であった。世界規模の子どもたちのネットワークである KIDLINK に参加すれば交流相手を容易にみつけることができるのではないかという発想からであった。

3.テーマの選定
 KIDLINK に生徒を個人参加を参加させる前に、私がこのネットワークがどのようなもであるかを知り、教育利用の可能性を探るために教師が個人で参加できるKIDLINLIRC に登録した。設定テーマは「IRCによる生徒のための国際共同作業企画」であった。

4.活動内容
(1)KID IRC への登録方法
   1)http://www.kidlink.org/IRC/ に接続 KIDLINK IRC HOMEPAGE
   2)ここを読んで Register for KIDLINK IRC via WWW をクリック
     KIDLINK IRC Adult Registration へ
   3)What is your full name? を入力  4)School and City を入力
   5)Primary E-Mail Address を入力  6)Secondary E-Mail Addresses を入力(なければ省略)
   7)
Postal Mail AddressTelephone / Faxを入力。
   9)Country name を選択入力 10)以下は無記入、そのままにした。
  11)最後の submit をクリック
 1週間くらいして KIDLINK IRC Registoration という文書がメールで届いた。
 
IDとパスワード、接続方法が送られてくる。

(2)接続ソフト
 Telnet から irc-1 kidlink.org へ接続、チャットに入る方法と mIRC というShare Wear のソフトをダウンロードして利用する方法がある。mIRC は利用しやすく便利な機能がついている。これは Yahoo USA からキーワード「mirc」と入力するといくつかのFTPサイトにこのソフトが置かれていることがわかる。

(3)このチャットチャンネルでのコミュニケーション
 チャットでの会話を他に引用し、後でトラブルの原因になることを防止するために
切り張りや、ログファイルが取れないようになっている。Telnet から入ったときは、1画面ごとに切り取り、これをファイルに落とすことは可能だと思う。下記の記録は、どのようなチャットがこのチャンネルでなされているかを参考にするために再構成したもので実際の交信とは異なる。

(4)<mIRC 設定>
S:いま、ソフトはなにを使っているのか。Telnet か、それとも、mIRC か?
私:Telnet から接続している。mIRCを組み込んであるが設定がわからない。
S:指示通りにやってみないか。簡単だ! 最初の画面で mIRC をクリック
私:mIRC SETUP がわからない!
S: Description ----- Kidlink IRC Server ------ irc-1.kidlink.org
  
Port -------6667 Group 空白のまま Passward xxxxxxxxxxxx
  
Full name ----- Tsutomu Iyanagi E-mail Address -----------
  Alternative -------/nick
  (Loca Info, Options,Idented, Firweil の設定はこの紙面では省略した。)
私: すべて設定完了! 1時間のおつきあいありがとう!
S:いよいよ接続だ!
 1)起動 2)はじめの画面で mIRC か右上のx印クリック
 3)Connect to IRC saver をクリック 4)mIRC Channels Foldar 画面が開く
 5)ここで Description で指定した「Kidrink」を入力して OK をクリック
私:つながった! ありがとう!!
S:おめでとう!
(5)<DDC の利用方法>
K:あなたの学校のホームページは?
私:ここです。(省略)私たちの生徒の歌が置いてあります。ぜひ、聞いて。
K:いま、接続してみるからちょっと待って?
K:これ、先週、KIDLINKのMLで知って、ダウンロード。本校の音楽の先生に渡してあります。
私:ありがとう。ぜひ、あなたの学校の生徒のコーラスをお聞きしたいです。
  ところで、先生の学校とどんな交流が可能か?
K:いま、Paint Brush でお絵かきの練習をしている。絵の交換は?
私:はい! 本校の生徒は Handkerchief design Project を希望しています。
K:それは、どんなプロジェクト? ハンカチーフってスカーフのこと?
私:正方形の画面右下に私たちの絵を、左上の半分にあなた方の絵を描く。
  2人で協力して、1枚のハンカチーフのデザインをする。
K:おもしろそうね。でもどうやって、画像ファイルの交換をする。
S:こんにちは? mIRC DDC 機能を利用すれば簡単だよ。
私:DDC の操作方法がわからない。 K:私にも教えて!
S:DDC」の操作方法だ。なにか、小さなJPGファイルを用意して。
私:準備完了。 K:準備できたわ。
S:1)画面左のフレームの送る相手のニックネームのところををフラッシュ。
  2)mIRC の上段「DDC」アイコンクリック。   3)SEND を選択。
  4)パソコンの送信ファイルの置いてあるあるディレクトリーを指定。  
  5)送信ファイル名をフラッシュ。 6)送信。
私:準備するから、Sさんのファイルを先にこちらに転送してください。
私:受信成功! S:機種は? 私:Win!
Z:おめでとう! いま、あなたの学校のホームぺージをみたところです。
  私たちも昨年は、綿の栽培をした。あなた方は、今年もしますか?
私:はい! 一緒にしませんか? できれば共同で。
Z:ぜひ、共同で栽培しよう。 こちらの何校かに声を掛けてみます。
私:日本とアメリカの国際共同作業で綿の栽培。期待しています。
Z:井柳さん、KIDRINK IRC Music Project 参加のMIDファイルを転送します
  うまく、受信・再生できるかテストしてみて。
私:このチャット内容を私のレポートに載せたいので了承をお願いしたい。

---------------------------------------------------------------------------

Dear Tsutomu,

Of course you can use my name and my school (Richmond Consolidated School)

for your report. Your idea of communicating through pictures is great!!

The only problem is....we are on winter break this week. We will return to

school next Monday, February 23rd. I will have the kids work on their

pictures that week so you must be patient!

Your friend, Kathy

)

for your report. Your idea of communicating through pictures is great!!

The only problem is....we are on winter break this week. We will return to

school next Monday, February 23rd. I will have the kids work on their

pictures that week so you must be patient!

Your friend, Kathy

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(注)この例のような、了承を参加者から得たことは異例である。チャットが他のメディアと異なり短時間で友だちになれるのもIRCのよいところかもしれない。

5.インターネットの活用方法
 KIDLINK に参加して日が浅く、このレポートは、生徒の国際共同作業相手を探し、相手と計画を立案するだけの段階で終わってしまった。教師間だけの交流であったがチャットを利用した国際交流を私自身がまず、体験することによってこれをどのように利用するか考える良い機会となった。

6.いま進行中の国際共同作業
 (1)KIDLINK上で紹介された、フランスのパリ、ノートルダムにある美術 学校と郷土の伝説「羽衣物語」のHTML共同編集
 (2)クリスマスツリーの国際共同装飾
 (3)IRC画像交流による「ハンカチーフの共同デザイン」
 (4)KIDLINK IRC MUSIC PROJECT 参加。生徒の創作曲の紹介
 (5)日本発の国際共同作業提案、「KIDLINK JAPAN MUSIC CONCERT
    2月17日現在、林間小学校、出雲中学校、清水国際中学が参加。  
 (6)KIDLINK IRC チームスッタッフと音声ファイル送受信研究実験。
 (7)Cotton Project などの国際共同作業などの立案作業

7.効果と課題
(1)チャット用ソフト mIRC は、単なるチャットソフトではなくチャット中に音楽・画像ファイルの容易な送受信機能があり交流内容を豊かにする。
(2)リアルタイムであり、交流計画の立案、意見交換などが迅速に展開できる。
(3)KIDLINK IRC Worldwide のネットワークであり。世界規模のプロジェクトを展開したり支援を受けることができそうである。
(4)参加者の英語力に合わせてチャットしてもらえる雰囲気があり、英語についてはあまり難しく考えなくても楽しめる。ここでは先生、生徒が仲良くチャット していて微笑ましい。
(5)チャットによくでてくる先生方は、KIDLINK を支えるコーディネーターが多く、交流・技術支援、交流相手紹介、役に立つ情報提供などを受けることができる。
(6)IRCによる交流は、話し合いの中で意見をまとめたり、他を受けいれつつ、自己主張する国際性を身につけることになり教師自身が変わる。私には中学生程度の語彙しかないが、楽しいコミュニケーションができ、英語を使うことが楽しくなった。
(7)最後に,mIRCには、世界の300近い IRC サイトが登録されていて自由に入り込むことができるファイルデータがついている。これらは、チャット特有の英語ができないとコミュニケーションが難しい。
(8)これらは、KIDLINK IRC とは、別世界であり。非教育的な内容がチャットされているところも多く、利用については生徒指導が必要となる。
(9)「井の中の蛙、世界を知らず」で失敗を繰り返しているが、教師自身が国際人になるためのよい研修の場だと感じた。ここに参加するについて指導・助言をいただきました、島崎先生には厚くお礼申し上げます。

3.4.6.4 静岡県韮山町立韮山中学校

内藤 淳

1.参加にいたる経緯
これまで、英語の授業において、E-mailによる海外の学校との交流は何度か行ってきた。それなりの成果は挙げられたとは思うが、問題点も多くあった。特に、ある生徒には返事が来て、ある生徒には来ないというケースが何度もあったのがもっとも残念だった。英語を「使って楽しい、コミュニケーションの道具」と感じてもらうためには、返事が来ることが何より重要である。そこで考えたのがIRCである。即座に返事の来るIRCであれば、生徒は英語がコミュニケーションの手段であることを実感してくれるだろう。KIDLINKIRCであれば、同年代のパートナーも見つけやすく、安心してチャットもできる。そこで、KIDIRCに参加することにした。

2.ねらい
 ・楽しいコミュニケーションの道具として英語を使う。
 ・チャットによって、リアルタイムで会話することにより、海外のパートナーに対する親近感を高める。

3.テーマの選定
 IRCの場合、相手のメッセージに対してその場ですぐに英文を考えなければならないため、あまり難しい内容は適さない。よって、自己紹介で始まって、自分の町、家族といった身近なものを題材とした。

4.交流状況(活動内容)
 1. KIDLINKに生徒200名弱の「4つの質問の答え」を登録した。
 2..KIDLINK-IRCCOORDINATIONのメーリングリストに、交流相手を募集するメールを送った。アメリカ、カナダ、スウェーデンなどいくつかの学校から申し出があったが、時差の関係で、アメリカ西部時間帯の2校と交流することになった。
  3.
1回目のチャットを行う。1時間目の授業に当たった3年2組が、アメリカのオレゴン州のDays Creek小学校のJoe先生のクラスと交流した。クラスを6つのグループに分け、各グループが7〜8分ずつチャットした。KIDIRC#FRIENDSというチャンネルで行うつもりだったが、自宅から個人で接続している子どもたちなどもいた、#KIDLINKというチャンネルで行った。そのため、Days Creekだけとの交流という形にならずに、やや混乱した。時間の短さもあって、内容的な深まりはなかったが、簡単な会話はすることができた。また、メールでも交流を行っていくことが決まった。
 4. 韮山中3年2組全員の自己紹介の文をメールで送った。
 5. Days Creek(5年生)から返事が来た。これで、個々の生徒のパートナーが決まった。次回はそのパートナー同志でチャットを行うことになった。
 6.2回目のチャットを行った。アメリカの時間に合わせて朝7時から行うことを生徒に知らせて希望者を募った。希望のあった8名の名前を予めJoe先生に伝え、パートナー同志のチャットをすることができた。交換したメールの内容についての会話なども見られ、前回より多少は内容も深まったと思われる。
 7. 韮山中から2通目のメールを出した。現在、返事を待っている。

5.インターネットの活用方法
 コンピュータ室まで電話回線を引いてあり、学校がNIFTYと契約しているため、ダイアルアップ接続が可能である。しかし今回は、教師個人のアカウントとパスワードでKIDIRCに登録してあるため、教師個人が契約しているプロバイダから接続した。
(プロバイダには、学校で接続して生徒に使わせる許可をいただいている)生徒用のWINDOWS3.1パソコン40台はインターネットにつながっていないため、WIN95の教師用機で行った。教師用にWIN3.1機がもう1台あり、その画面は生徒機に送れるが、95機はできない。2回目のチャットは、事務室のFAX用回線を使い、そこから電話線を別室まで引いて、そこに8名の生徒を集めて、教師個人所有のMACBook機で行った。メールについては、英語の授業のときにコンピュータ室で生徒が各自3.1機で入力して自分のFDに保存し、それを教師がまとめて自宅で送っている。

6.交流前後の教師、生徒などの意識の変化
 これまでも生徒たちは、メールによる海外との交流を行ってきており、コンピュータを使うことには慣れており、インターネットを使えばそういうことができるということも理解していた。そんな彼らが今回のIRCによる交流で新たに感じることができたのは、海外の自分のパートナーを、自分の伝えたいことを伝えることのできる相手としてより強く意識できるようになった、ということであろう。まだ数回しか行っていないので、リアルタイムで実際につながっているということに対して、まず驚きを示す生徒が多い。これまでメールでは、「何を書こうかな」と考えてしまっていた生徒が、この「つながっている」という感覚によって、自分のことを伝えようとする気持ちが強く出てくることが期待できそうである。自分から朝7時からのIRCに参加した生徒を見てそう思った。

7.評価(効果・課題)
 効果については、前の6.の中で述べたので、ここでは課題を挙げておきたい。
 1番の問題は、時間と人数である。今回はグループに分けるという形で行ったわけだが、クラスの40人が50分の授業内でチャットに参加するというのは実際には不可能である。希望者が授業外で行うという形もよいが、できれば多くの生徒に参加させたい。また、短時間で会話の内容を深めるために、予め話題を決めておくなどの工夫も必要だろう。さらに、IRCだけでなく、音声や映像を伴った交流ができると、生徒の意欲を高めることが可能であろう。

3.4.6.5 山口県阿東町立生雲中学校

御幡 正章

1.参加に至る経緯
 本校では平成7年4月から国際理解教育の一環として2週間に一度実施される正 課クラブのなかに通信クラブを設置した。平成7年度はIECCを通じてアメリカのニューヨーク州にある中学校1校・小学校1校と電子メールを用いた交流を実践してきた。年度末の反省点としては、スムーズな交流を行う上で、本校生徒にとっては中学生からの長文を読むことや英文を書くことが障害となったことが挙げられる。平成8年度に通信クラブを設置するにあたって上記の件についてよい解決方法を模索していたところ、パソコン通信を通じて島崎先生より「KIDLINKへの参加」プロジェクトを紹介していただき参加することにした。

2.ねらい
 海外校との通信を通して国際理解を深め、海外の異文化に接することで自分やふるさとをみつめなおす。

3.テーマの選定
  @インターネットを利用し海外の情報を得る操作技術の向上を図る。
  A自己を表現するための文書・画像・音声作成技術の向上を図る。
  B海外に情報を発信するための資料探しを行う。

4.交流状況

 期 日 交 流 状 況
4月〜9月 基礎技術の収得。国内校(熊本県西合志中学校)との交流。
本校ホームページ海外向け資料の充実を図る。島崎先生との連絡。
ハワイ・フィンランドの中学生と短期間の交流。
1010

1011


1017
1021
1025
1026
10
31
1118
1205
12
14
1216
1月10

スウェーデンの小学校が日本の学校との交流を求めているメー
て人数や期間が適当であり申し込む。
了解の返事があり。行数を6行程度ということや以下の計画案を
する。(1自己紹介 2質問の交換 3音声または画像の交換
    4お別れの挨拶)
相手を決め自己紹介文に簡単な質問をつけて送信。
返信が届き生徒に手渡す。返事の作成と送信。
KiDLINK参加校及び翻訳支援グループによる会議。
KIDLEADERに登録。MLが流れてくるのを確認。
秋というテーマで生徒が画像を作成し簡単なコメントを加えて送信。
KiDLINK4つの質問の回答を島崎先生に送付。
音声メールが届き生徒達が大変喜ぶ。
クリスマスカードの作成と送信。
感想を担当の先生よりいただく。
日本語の発音を教えて欲しいという依頼のメールが届く。

111


1
14
118

119
122

130


2月 5日
今後の予定

12月のクリスマスカードの返事が生徒宛に届いていないことで
質問を行った。これは、計画外と考えていたというお詫びのメールをだいた。スウェーデン語の音声ファイルを依頼した。
日本語の挨拶を生徒達が録音しホームページで紹介。
交流校より感謝と生徒達によるスウェーデン語の音声ファイルが
届いた。スウェーデン語のページを作成してホームページに付加した。
KiDLINKよりアメリカの中学校の紹介。連絡をとった。
アメリカの中学校より担当の先生がホームページの感想と交流を
するメールが届いた。
スウェーデン宛に近況報告と簡単な質問を作成し送付する。また個別に簡単な
声ルを送付した。
自己紹介を作成し、アメリカの中学校へ送付した
アメリカの中学校より打ち合わせのメールが届く。
スウェーデンの小学校とはお別れの挨拶を交換して終了する予定。アメリカの中学校とは自己紹介の交換及び質問の交換をして終了の予定。


5.インターネットの活用法
 パソコン環境は、校内LANにより各学年の教室に1台、コンピュータ室に簡易サーバーがありPPP接続を行っている。音声や生徒の画像はビデオカメラを渡して録画・録音を行わせ、あとでコンピュータ処理を行った。他には交流先のホームぺージや国の情報の閲覧を行い理解を深め関心を高めるために利用した。

6.交流前後の教師・生徒などの意識の変化
 生徒の感想「私は英語が苦手なので国内の中学生と通信するほうがいいと思っていたけど、音声メールが届いてからすごく親しみがわいて身近に感じるようになりました。すぐに返事がこないことが少し残念だけど、自分も英文を作成するのに時間がかかるから仕方がないと思います。」
 海外交流を疑問視していらした先生方にも学校だよりで内容の紹介をしたりして理 解がいただけるようになった。

7.評価(効果・課題)
 語学力が壁という状況は変わらなかったが日本語やスウェーデン語の交換を通し て個人的な親密度が高まった。また少しではあるがスウェーデンに関する知識も深めることができた。自分やふるさとに関しても紹介する中で生徒もいろいろ考えることができて有意義だった。しかし、相手校が直接通信できる環境にあり本校が一度集めて送信するという差が交流先の生徒の意欲を失わせる場合もあることを指摘されたことは今後活動を進めるうえで改善したいことの1つである。また生徒自身がKIDLINKで自由に意見交換する環境にないことも今後の課題と考える。

3.4.7 まとめ

 では、この報告書に収録された、実践事例から得られた多くの知見を整理することによって、このKIDLINKプロジェクトの課題と成果について整理したい。

 

3.4.7.1 インターネットを利用した国際交流の課題

 これまで数回にわたり行われてきたこのKIDLINKの研究会議によって、インターネットを利用した国際交流の教育的課題は、次のような5点であることが明らかになってきた。

 (1)共同学習を通した相互理解と相互啓発の促進
 まず第一のねらいは、国境を越えて異なる文化に住む子どもたち同士の共同学習を通して、相互理解と相互啓発を促進することである。たとえば、挨拶の仕方、食べ物、食べ方のマナー、学校生活、人々の暮らし、気候、特徴ある動植物、地域の文化的行事等、様々な側面からの共通点と相違点を理解することによって、他者を知り、思いやり、尊重し、そして助け合う気持ちを持つようになって欲しいのである。

 (2)子どもたちのネットワークづくり
 そのような共同での学習が進んでくると、国境を越えていながらも、子どもたちの間に友情や共感的な心情が生まれてくる。つまり、学校の中だけでなく、世界中の学校に友達を持つことによって、友情のネットワークを世界中に張り巡らすことができるようになることを期待したいのである。

 (3)自己理解の促進
 相互理解が行われるということは、新しい観点から振り返って自己の特殊性を見直すことによって、自己理解が深まることが期待される。自分が普段何気なくやっていたことが、実は国境を越えると日本だけでやっていることが分かったり、日本人が大切だと思っていることが海外ではそうでなかったりというように、多くの発見を通して世界の中での自己の位置づけを客観的にとらえることができるのである。

 (4)実践的な英語力の獲得
 以上のようなコミュニケーションは、やはり国際交流の場面では、英語が重要な手段になってくる。もちろん新100校プロジェクトでは、特に小学生を対象として英語の力に依存しなくてすむような翻訳支援システムの運用研究を行っているわけであるが、中学生以上では、時間をかければ英語メールでの交流は十分可能である。特に英語圏以外の友達と話をするときには、お互いに英語は外国語であるために、深い内容での交流は難しいが、気後れすることなく自由な会話を楽しむことができる。

 (5)国際交流のための新しいメディアミックスのあり方
 このような4つの課題を実現するためには、コミュニケーションを一つのチャンネルに限定することなく、ビデオ会議、インターネット、ビデオレター等を組み合わせて活用すること、つまりコミュニケーションのための新しいメディアミックスが必要になってくる。また、電子メールの送受信、ホームページ制作、ビデオ会議、リアルタイムチャット等のインターネットが持つ多様な機能を組み合わせることも国境を越えた相互理解には効果的であろう。
 では、次に以上のような課題がどれほど今年度のプロジェクトにおいて達成されたのかをその運用成果から検討することにしよう。

3.4.7.2 インターネットを利用した国際交流の教育的有効性

 まず上記の5つの課題についての達成度を検討したい。やはり国際交流は、相手校探しから始って、挨拶と自己紹介、交流内容の打ち合わせという段階を初対面の相手と行わなければならないので、どうしても時間がかかってしまう。時には、サーバーがダウンしたり、メールが迷子になったりしてコミュニケーションが中断してしまうこともある。そのため、このKIDLINKプロジェクト全体では、ようやく学校間交流が活発化し始めたという状況であるのも致し方ない。
 第一の相互理解については、全体的にはまだ交流が始ったばかりで深まりがみられるまでには至っていないが、これからの展開が十分期待される。たとえば、「メールを期待して待つ経験から、相手の事を考えるようになった」という報告や、相手校の国の特徴をインターネットで調べてみようという意欲が高まったり、また、KIDLINKの大きな特徴であるマルチ言語サポート環境を活用することによって子どもたちの間で「お互いに教えあい、助け合うようになっていった」という報告も寄せられた。さらに、「海外の自分のパートナーを、自分の伝えたいことを伝えることのできる相手としてより強く意識できるようになってきた」ということも初期の段階では大切な成果である。
 第二のネットワークづくりについてもまだ立上がりの段階であるが、それでも、スウェーデンとの交流では、「音声メールが届いてからすごく親しみがわいて身近に感じるようになりました」という子どもたちの意識の変化も見られるようになっている。また、スペイン語と日本語の間のコミュニケーションのために、その仲立ちとしてスペイン語を英語に翻訳してくれるボランティアをKIDLINKで見つけることができたという成果も上がっている。少しずつ友情のネットワークが広がっているようである。また、IRCとよばれるKIDLINK上のチャット機能を用いたコミュニケーションでは、リアルタイムでの対話が可能になるということで、子どもたちがお互いに親近感を持つようになってきた。今後の、交流の進展が楽しみである。
 第三と第四の課題については、これからの実践に期待するところが大きい。
 最後に第五番目の課題については、インターネットの複合利用が徐々に進んで、効果が上がっているようである。たとえば、スウェーデンとの国際交流を行っている学校では、普段のコミュニケーションは電子メールで行っているが、マルチメディア通信が必要になったときに、たとえば日本語の挨拶の音声をホームページから発信している。また、日本語について海外の子どもたちに教えてあげるというプロジェクトでは、電子メールに、挨拶、自己紹介、ひらがな文字等を書いた画像ファイルや音声ファイルを添付して、より分かりやすい交流をめざしている。こうしたマルチメディア通信は、子ども同士の交流に実感を与えたり、親近感を増したり、その結果学習意欲の高揚へとつながっていることがわかった。
 以上のような課題別の研究成果とインターネットの教育利用の有効性を検討してきたが、これ以外に大きな成果としてあげられるのは教師の研修による自己変容である。インターネットを国際交流のために使うとなると、KIDLINKのシステムの理解、チャット機能の操作、国際リアルタイムチャットでの英語によるコミュニケーション、単元案の構想と計画、コンピュータのシステム管理、そして国際交流のテーマとしてふさわしい教材の研究等、多くの面からの自己学習が教師に求められてくる。また、このKIDLINKプロジェクトでは、参加校の教師のためのMLが作られていて、そこでの相手校の紹介、技術的な支援、バーチャル職員会議など、いろいろな協力関係が活発化してきた。こうした実践の過程における教師の学びそのものが、本プロジェクトの現時点での最大の効果といってよいだろう。

3.4.7.3 国際交流におけるインターネット活用方法の考察

 最後に、インターネット活用に関わる留意点と今後の課題を簡潔に整理しておきたい。
 まず、インターネットの教育利用を円滑に行うための留意点として次の6点が、このKIDLINKプロジェクトの実践を通して明らかになってきた。
1)他の教師への啓蒙を行う
2)不達メールへ迅速に対応する
3)メールは個人利用を基本にする
4)クラブ活動での実践を核にする
5)有志の生徒に交流を率先させる
6)共通テーマと共通教材を選定する
 国際交流は、まだまだカリキュラムにどう位置づければよいのかということはまだ十分明らかにされていない。また、交流相手が遠くにいて同じ文化や生活習慣を共有していないために、スムーズな交流が進むようになるまでの準備に時間がかかる。そのため、このような6点が重要になってくるのである。
 これからは、先に整理した課題を達成するために、子どもたちの共同制作や共同作業を中心にした交流が展開していくことを期待したい。


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