5.海外調査・シンポジウム等への参加
諸外国のネットワークを活用した国際交流の取り組みや活動状況の情報を収集すると同時に、100校プロジェクトの成果および新100校プロジェクトの活動状況を諸外国に対して情報発信して相互理解を深める。
海外調査・シンポジウム等への参加を通じて、ネットワークによる国際交流に関する国内外の活動状況、教育関連機関を調査し、今後、国際交流を開始しようとしている学校、教職員の他、海外の教育関連機関や教育活動をしている方々に情報提供する。
尚、 海外調査、国際会議・シンポジウム等への海外派遣に当たっては次ページの基準を設定した。
具体的に実施した海外調査および参加した国際会議は次のとおりである。
・I*EARN国際会議
100校プロジェクトを中心とした事業内容の紹介
・期間:平成9年7月6日(日)〜13日(日)
・場所:スペイン(メンレサ)
・オーストラリア ビクトリア州教育省主催国際会議及び教育機関訪問
100校プロジェクトの成果報告及び新100校プロジェクト事業説明
インターネットクラスルームの交流校の紹介依頼
・期間:平成9年8月7日(木)〜14日(木)
・場所:オーストラリア(メルボルン、シドニー)
・アジア太平洋地域教育シンポジウム
CECの概要および新100校プロジェクト事業説明
・期間:平成9年11月11日(火)〜13日(木)
・場所:フィリピン(マニラ)
・APNG(Asia
Pacific Networking Group)マニラ国際会議
新100校プロジェクトの活動状況及び日本発案のプロジェクト(アジア高校生インターネット交流プロジェクトなど)の活動状況報告
・期間:平成10年2月14日(土)〜16日(月)
・場所:フィリピン(マニラ)
・ESP'98カンファレンス
新100校プロジェクトの活動内容やMe and Mediaプロジェクトの成果報告
・期間:平成10年3月27日(金)〜30日(月)
・場所:デンマーク(コペンハーゲン)
別紙
海外調査、国際会議・シンポジウム等の海外派遣について
1.作成に当たって
国際交流の活動を円滑に進めるために、実際にネットワークを通して国際交流 を実践している(又は、実践しようとしている)教育関係者を海外調査や国際会議・シンポジウム等へ派遣するに当たっての判断基準を設ける。
2.基準内容
1)国際会議・学会等で発表ができること 4)事前に事務局、ワーキンググループで審査したもの。
・事前に計画を審査し、必要と認めたものに限る。
・原則として公募し、応募企画の中から選定する。
3.その他
1)報告書の作成等
・帰国後は1ヶ月以内にIPA及びCECに報告書を提出のこと。
・必要に応じて発表や原稿の作成(CECサークル等への投稿)を依頼することがある。
以 上
5.2.1.1 会議名称
第4回I*EARN国際会議 ”Cardener‘97”
5.2.1.2 開催場所及び開催期間
Callus、 Bages County、Catalonia、Spain
1997年7月6日 ー
7月12日
5.2.1.3 参加者
高木 洋子
(テレクラス・インターナショナル・ジャパン)
秋間 升
(情報処理振興事業協会)
5.2.1.4 主催者概要
主催者I*EARNは、International
Education And Recource Network の略称で、アイアーンと呼ぶ非営利教育ネットワークである。ソビエト科学アカデミーとニューヨーク州教育省がコーペンファミリー財団の支援を得て、モスコーとニューヨーク州の学校を対象に、1988年通信技術を使った国際間教育のパイオニアプロジェクトとして発足した。以後、10年間にわたって参加国・参加校は増加の一途を辿り、現在は40数カ国1500校に及ぶ世界的に発展したネットワークである。K−12教育を中心に「地球と人々の健康と福祉」をI*EARNの土台とし、そのプロジェクト数は、短期間のものを加えると年間80件を超え、全てのプロジェクトは、インターネットWorld
Wide Web(WWW)を通して展開している。
I*EARN決定機関は、アルゼンチン・ブルガリア・コーペンファミリーファンド・ラトビア・リスアニア・オランダ・イスラエル・ポーランド・ロシア・スロベニア・スペイン・アメリカの各I*EARNセンターであり、事務局長は
Ms.Rosy Aguila (アルゼンチンI*EARNセンター)である。
第1回国際会議が1994年アルゼンチンで開催されて以来、第2回メルボルン1995年、第3回ブダペスト1996年、そして1997年第4回国際会議がスペインはバルセローナの近く、カタロニア地方で、地元市民の協力を得て開催されたのである。(http://pangea.org/iearn/cardener97)今回は同時に初めてのI*EARNユースサミットも開かれた。1998年度第5回は、アメリカ合衆国テネシー州で開催予定である。
5.2.1.5 参加目的
第4回I*EARN国際会議に出席し、一週間にわたる会期を参加35ケ国200名を超える教師と共に暮らし、多くのワークショップに参加することによって、インターネットを利用した各プロジェクトを調査し、日本の100校・新100校プロジェクトを紹介し、また、諸外国参加者との情報交換・人脈作りをすることで、今後の国内K−12教育における多様なインターネット利用と、100校国際化への具体的且つ実現可能な情報を提供する。
5.2.1.6 会議の内容
第4回テーマ 'Cultural Diversity
and Global Community'には、35カ国からの教師がそれぞれ異なった文化と言語を持ちながらも、I*EARN
ファミリーとして地球的視野に立った教育コミュニテーを更に成長させるという国際会議の目的に沿って、会議の内容が企画された。
以下の報告は、前述の参加目的に従い、インターネット教育利用を主眼とした調査を中心に以下に述べる。
[参加国・参加者]
I*EARN国際会議
参加35カ国 参加
231名
I*EARN ユース
サミット 参加12カ国
参加 36名
[プログラム]
朝9時から午後5時まで7日間のプログラムは次の様に始められた。
第1日は、関係地域の市長・教育関係者・I*EARN代表者による開会式、マルチメデアツールPCとメデイア
リレーションによる教育変革の可能性を語ったDr.Tonucci講演、伝統的な催しで地元の歓迎、各国代表者による特別会議。
第2日・3日・5日・6日は、朝会・連絡・前日プログラムのビデオによる記録放映など全体会議から始り、各日、午前の部・午後の部に分かれて、45プロジェクトの実践発表と新企画・指導など多岐にわたる7分科会が、会場となった地元小学校の各教室で催された。特別企画としてオーストラリアI*EARNセンターとCU-SeeMeテレビ会議でオーストラリアプロジェクトの紹介、I*EARN
Youth Summit 参加生徒達との合同会議、Mr.Daniel Reves(Argentina
コーデネーター)講演。
第4日はバルセローナ バスツアーであった。特にI*EARN
Spiritを語るダニエルの講演は聴衆を魅了し、帰国後まもなく飛行機事故で亡くなったという知らせに、参加者全員を結ぶE-Mail交信では悲痛な言葉が飛び交った。
第7日閉会式前夜は、地元伝統爆竹まつり ”Correfoc”にカタロニア人と化して、翌日にはまた世界各地の教育現場へと戻っていく参加者が互いに、また地元教師・市民とも別れを惜しんだ。
[内容(発表形式など)]
全てのプロジェクトは、 インターネットI*EARN(http://www.iearn.org/iearn/)のコンファレンスとテーマ別プロジェクト上で展開される。コンファレンスは、iearn.ideas(Formal
Projects ideas),iearn.teachers(Facu-lty
Lounge), iearn.youth(Meeting
place for students), iearn.practice,iearn.mentors
(read access only)の部屋があり、テーマ別プロジェクトは環境・科学部門、社会・人間部門、文学・芸術部門、言語・他部門に、22のプロジェクトが稼働している。iearn.ideas
やiearn.teachersで練られた新企画が、独自のプロジェクト名をつけてテーマ別へ移行するケースが多い。このようなI*EARN仕組みの中で実施される多国籍プロジェクトの発表であるので、発表者も多国籍で、使用言語は英語・スペイン語・カタロニ語が同時に使われ、そのどれもが自国語でない報告者(高木)にとっては、かなり厳しい環境であった。個々の分科会内容は、実施完了報告と成果発表、大型プロジェクトの継続内容、新プロジェクト発表が、生徒達の参加作品・PC・OHP等を使って行われ、その後、根掘り葉掘りの熱心な質疑応答があり、ブレイク・昼食時・夕食時・自由時間のホテルロビーでも引き続き検討される姿が多かった。このように額を合わせての打ち合わせが、その後、インターネット上でプロジェクトをスムーズに進める大きな要因であると思われる。
5.2.1.7 発表内容
参加した分科会から、次の4つの発表内容を報告したい。
1. Teddy Bear Project
2. Holocause/Genocide Project
3. I:EARN Global Art Project " A Sense of
Family"
4. I*EARN teacher professional development/Training
materials
まず"Exchange Teddy Bear Around the World" という呼びかけで始まったTeddy
Bear Projectは、人気があって継続しているプロジェクトの一つである。
Bob Carter (Aus.)とCharly
Bullock (USA)が、多くの生徒達の手による
Teddy Bear 日記と実際に使われたいくつかのTeddy Bear
を持参しての分科会で、対象は小学生から18才位まで。現在ヨーロッパ・アフリカ・ロシア・アメリカ・オーストラリアの78クラスの参加がある。
海外のクラスを訪問したTeddy Bear日記が、インターネットを使って届けられるプロセスは下記のホームページを参考にされたい。
http://www.peg.apc.org/~ahocking/teddybear.html)
次に、更に多くの国の参加があるのが Holocause/Genocide
Projectである。まず発表者の一人 Honey Ker(USA)によって、彼女のクラスでこのプロジェクトと取り組むきっかけとなった
reading material ”Identity and Conformity”が配られ、それを共に読む事から分科会は始まった。人間同士の殺戮について事実を知り互いの権利を尊重することを学ぶこのプロジェクトは、HGP
Gopherで資料を探しiearn.hgp 会議室で討論される。毎年6月に、ハードコピー
"An End of Intolerance" が発行される。
http://www.igc.apc.org/iearn/hgp/
次に I:EARN Global Art Project " A Sense
of Family" は、実に楽しい絵画が、作成者のコメントと共に載せられている。
http://www.vpds.wsu.edu/i*earn/mosic.html
最後にI*EARN teacher professional development/Training
materialsに関しては、オーストラリア/アルゼンチンから発表があった。"No,but...people"
trainingを中心に設定された教師トレーニングは、インターネットやI*EARN研修にかなりの時間がとられている。
一方、日本100校・新100校プロジェクトの紹介は、分科会での発表と、報告者による2度のビデオ撮り(I*EARNキャンペーン用とPublication
Services Inc.の依頼)、または100校パンフレット・CD−ROM配布により行われた。
5.2.1.8 成果・感想・提案
現地での感触はI*EARN参加校の日本への関心度が高く、各プロジェクト参加への打診があった。最大の成果は、日本の教師が自由にI*EARN国際職員室に出入りしてプロジェクトの打ち合わせができる環境を作るために、機会を捕らえては接触し語らってできた人脈である。私的な興味で参加した1996年度国際会議で得た人脈に、この会期中の出会いを加えて"
I*EARN CONNECTIONS"リストを作成した。 "People
First, Technology Second"を合い言葉にI*EARNの世界は、Technologyや機器が学校に入ればいい教育が出来ると錯覚しそうなTechnology優先の社会にあって、人の教育の本質を正面から取り組んでいると見える。
住む国も教育環境も、風習・文化・個性も異なった教師が、三々五々集まって額を寄せ合い討議している様子は、国際職員室の雰囲気で、その熱気は関わっているプロジェクトをいかに大事に工夫を重ねて進めているかの証のようだ。しかし今年の出席者の一覧表を見ても分かるように、日本を含めてアジアからの出席数は7名で、アジアの風をI*EARNへ吹き込むプロジェクトはない。
今後はI*EARNとの距離をどう縮めるかがポイントである。100校が容易にI*EARN情報を得られ、他国の提案プロジェクトに自由に参加し、こちらのプロジェクトを提案して参加校を募る、或いはプロジェクトを進める上での打ち合わせや討議に参加する意識と環境を作ることが必要である。
そこで、JAPAN I*EARN
Centerを開設し、定期的に発信されるNews Flashや機関紙"Interactive"などを日本語版を添えて100校へ発信、各プロジェクトの説明と参加の支援、第5回I*EARN国際会議への参加準備・100校ニュースを逆に発信等の活動が、新100校国際化にダイナミックな動きをもたらす鍵の一つとなるであろう。
5.2.2 オセアニア
5.2.2.1 会議名称
ビクトリア州教育主催国際会議参加
5.2.2.2 開催場所及び開催期間
1997年8月10日〜13日
5.2.2.3 参加者(同行者)
斎藤 安俊
(財)コンピュータ教育開発センター
辻 陽一
手塚山学院泉ヶ丘中高等学校教諭
5.2.2.4 主催者概要
オーストラリアのビクトリア州教育省英才教育課
ビクトリア州の教育省の中に「英才教育」課ができたのは、1992年に政権が当時の労働党から現在の政権党に変わってから。その進め方を検討するため、専門家の意見を聞きながら調査・提案書作成の後、政策立案して具体化を始めた。英才教育推進については、以前から公平を欠くのではないかという議論もあったが、優秀な生徒を十分に伸ばせていないという認識が高まり、英才教育課設置の頃には、あまり反対はなかった。
教育省のSchool Programs Divisionは、27名。うち、英才教育課は、その中の1セクションで、職員5名。
5.2.2.5 参加目的
ビクトリア州教育省主催の国際会議に参加し、CECの97年度重点企画「インターネットクラスルームプロジェクト」について発表し協力者を得るとともに、オーストラリアの教育事情を視察。
5.2.2.6 会議の内容
場所: ヒルトン・オンザパーク(メルボルン)
本会議の正式名は、Australian International Conference
for Gifted Studentsで、95年に続いて第二回。参加者600名。別に高校生の参加は300名(うち、150人は海外9カ国からの参加。日本からは2校。高校生の参加費は、航空運賃のみ自費で、宿泊費・食費など他はすべて主催者が負担。
(1) 海外からの参加国
日本、ラトビア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、南アフリカ、合衆国、ベトナム、キプロス、
なお、日本から他にe-mailだけの参加校として、広島大学附属福山中高等学校と帝塚山学院泉ケ丘中高等学校があり、このメールも会議での発表のシナリオに組込まれていた。
(2) 参加高校生の活動について
高校生参加者は10日からの本会議の数日前に現地に集合し、合宿を通じて本会議でのシナリオを討議。実際には、主催者側が事前に行っていた高校生のe-mailの内容をもとに、シナリオをある程度準備していた。また、日本側参加者の中に英語の面で苦しい生徒がいたので、急遽、筆者が通訳をかってでた。
本会議では、開会式で各グループがそのテーマについて話した事を、要約したものを、演劇やパフォーマンス風にデモンストレーションを行い、11日の分科会では、シナリオに基づいて、模擬ディベートを行った。
(3) 基調講演その他について
基調講演では、カナダのケベック大学のフランソワ・ガニヤン教授(Francoys Gagne)は、GiftedとTalentedの言葉の違いについて詳しく説明。Talentedは、彼の言葉ではパフォーマンス、努力の結果を意味し、Giftedは、生得の才能を意味する。生得の才能があっても努力しなければTalentedにはなれない、などと用語の定義を明確にすることを話す。
ニューサウスウェイルズ大学のキャサリン・ホウクマン(Katherine Hoekman)は、学習における動機つまり、やる気の問題を扱っていて、これを高校に入ると学習意欲を失う傾向があるが、これを、どうすれば繋ぎ止めることができるか、話す。
会議の合間に色々な参加者と話しをしたが、以下、教育省のブルース・キロとの話しを報告する。
5.2.2.7 発表内容
パワーポイントを用いて、自己紹介(プロフィール)、学校紹介、インターネットクラスルームプロジェクト、日本のインターネット教育事情について報告。30分。参加者約20名。
5.2.2.8 他の訪問先
(1) ニューサウスウェイルズ教育省訪問
訪問日:8月8日午後1時から2時間
場所: 同教育省
NSW(ニューサウスウェイルズ州)の教育事情とインターネットクラスルームプロジェクトへの協力依頼。
テレクラスインターナショナルジャパン代表から紹介を受けたPatricia Gardは、国際交流担当であるがインターネットを使った交流については管轄外。そこでDavid
Jaffrayを紹介していただいた。彼らによれば、州内の公立校2000校(うち、高校は約400校余)は、昨年から今年にかけて、すべてインターネット接続され
ている。その多くは、ダイヤルアップ接続で、サーバを持っているところは、ほとんどないという。日本と国際交流をしている学校は半数に達し、オーストラリアの学校の絶対数が少ないため、日本からの需要に応えることが難しくなってきている。、現在、日本との交流では、短期留学などが主で、全体として、インターネットを利用した交流は、まだ、始まったばかりと言える。
インターネットクラスルームプロジェクトについては、適切なコーディネーター、参加校の紹介には応じる。
(2) シドニー・イングリッシュ・ランゲージセンター訪問(以後セルク)
訪問日:8月9日午後4時から2時間
場所: セルクオーストラリア内
訪問者:荒木和広 セルク
オーストラリア代表取締役社長
荒木氏は、近畿ニッポンツーリスト、公文教育研究所勤務を経て、86年に現在の学校の経営権を得る。生徒数300名(うち2割は日本人。他はヨーロッパやアジア人)。語学学校からスタートし、そのマネジメントに必要なコンピュータ業務を独立させ、コンピュータ会社(従業員4名。日本人)を設立。そのノウハウを活かして、学校では「インターネット英語」講座を開設。また、オーストラリアの新聞社と提携して、主要記事を翻訳し、インターネットを使って日本に配信している。Jnetというホームページを開設して、オーストラリア関係の各種情報を提供している。また、旅行会社も併設。
子どもたちの交流の場をインターネット上で作ることも企画しており、インターネットクラスルームプロジェクトなどと協力できる面があれば、協力したいとの意向。
高木洋子氏がテレビ会議をオーストラリア側に依頼したとき、その日程が土曜日だったので、オーストラリアの学校の協力を得られない、そこで、荒木氏の協力を得たことから両者のコンタクトができたわけであるが、今後、一般の学校では成立できない企画などがたてられた場合にも、協力を依頼できる可能性がある。
(3) 教育省のBruce Kiloh
Assistant General Manager, Program Support Branch,
School Programs Division, Department of Education
訪問日:8月12日午前11時から30分
場所: ヒルトン・オンザパーク
会見の内容は、前述の主催者概要参照。
(4) フッツクレイ・シティー・セカンダリーカレッジ(以下フッツクレイ)
訪問日:8月12日午前12時から1時30分。
場所: 同校内。
Footscray City Secondary College Kinnear Street. Footscray
3011
校長 Bernie Mcmahon 副校長
Mary Bluer
情報教育コーディネーター Mark Nugent(Information
Service Coordinator)
フッツクレイ校は、日本の高校生のために国際会議に日本語通訳として参加を要請された松宮美歩氏を通じて紹介された。多様な国の移民の子弟が通い、オーストラリアの学校の中でも、多様性が目立っていること、そのため文化の多様性を受容し、大学進学に必要な単位であるVCE(Victorian
Certificate of Education)も他校に見られないほど、多く用意していること、マルチメディアの利用を重視しており、コンピュータの数など充実していることなどから、訪問することにした。
この高校は、現在、生徒数が1400だが、今年中に近隣の小規模校(300名)を吸収。このための予算が今年度、特別に4000万円。それ以後、数年にわたり、2000万円が充当される予定で、コンピュータを多数導入する。
現在、コンピュータ教室が6教室あり、2教室がインターネットと接続されている。
インターネットクラスルームプロジェクトへの参加については、担当者も校長、副校長、いずれも大変乗り気である。近いうちに128kbpsのISDN回線を引く予定である。
学校は、移民により人種のるつぼという観があるとのことで、それぞれの移民の文化や言葉を受容している。国としても以前は同化政策をとっていたが、最近は、移民が持ち込んだ多様な文化を受け入れることで、生活が多様で豊かになると考えているとのこと。
インターネットクラスルームプロジェクトのテーマとしては、multi-culturalismを取り上げることで意見が一致した。
5.2.2.9 成果、感想、提案
今回のオーストラリア訪問の目的の一つであるインターネットクラスルームプロジェクトのオーストラリア側コーディネーターとコンタクトをつけることに関してはオーストラリア教育省や他の方々の尽力により、ほぼ、出張の目的は達した。
また、オーストラリアとのインターネットを用いた教育活動・交流を考えるにあたって考慮しなくてはいけない点(日本との国際交流が進んでいること、英才教育との関係、インターネットの普及度)についても、ある程度、理解が深まった。
インターネットクラスルームプロジェクトは、カリキュラムの中にどのように取り入れるかを一つの柱としているが、日本の全体として、固定化されたカリキュラムの中に、インターネットのように学校の壁を越える弾力的な情報サービスとどのように折り合っていけるのか、つまり、学校のシステムをそのままにして、まったくベースの異なるシステムを導入していくことができるのか、このあたり、難しい課題を担っている。その意味でも、オーストラリアの「英才教育」に見られるダイナミックな教育システムの今後が注目されよう。
5.2.3.1 会議名称
Sixth SEAMEO INNOTECH International Conference
(アジア太平洋地域教育シンポジウム)
5.2.3.2 開催場所及び開催期間
平成9年11月11日〜13日 フィリピン・マニラ、マニラ・ホテル
5.2.3.3 参加者
田中 教男 (財)コンピュータ教育開発センター 業務部
鈴木 信幸 (財)コンピュータ教育開発センター
研究開発室
出席者:教員、教育関係者、企業関係者等
27ヶ国、634名
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5.2.3.4 主催者概要 5.2.3.5 参加目的 5.2.3.6 会議内容 5.2.3.7 発表内容
:Southeast
Asian Ministers of Education Organization (SEAMEO)
Regional Center for Educational Innovation and Technology
(INNOTECH)
(URL:http://emailhost.ait.ac.th/Asia/seameo/innoabwt.html)
SEAMEO (東南アジア文部大臣機構)
1965年東南アジア地域の教育、科学、文化の地域協力を発展させるため、東南アジア地域の国々の文部大臣が集まり組織された国際機関。本部はタイのバンコクにある。
現在、理数科教育、職業技術教育など研修センターが3つ、高等教育研究、農業研究、医療研究センターなど9つ、全部で12センター(Regional
Center)がある。
INNOTECH (教育革新・工学地域センター)
東南アジア文部大臣機構の勧告により、東南アジア地域の教員等が教育工学を通じた研究と研修を実施するセンターの一つとして設立され、フィリピン大学構内にある。
日本は1976年に、その建物をはじめ施設・設備等を無償援助するとともに、JICAを通じて定期的に短期専門家を派遣して、研修カリキュラムの充実と施設・設備等の整備及び人的支援を行っている。
(1)国際会議に出席し、CECの事業概要を紹介する。特に、100校プロジェク トの成果、新100校プロジェクトの事業計画を説明し、CECのPRをする。
(2)同会議において、他国のネットワーク状況を調査し、出席者と意見交換をする。
(3)他の教育関連機関を訪問し、CECの事業を説明し訪問先と意見交換をし、イ ンターネットの実施状況等を調査する。
日程
11/11(火)
AM:オープニング・セレモニー
ラモス大統領の基調講演。
PM:全員出席のセッションで、事例発表3、パネル討論1で構成。
11/12(水)
AM:全員出席のセッションで、事例発表3、パネル討論1で構成。
PM:6つの分科会による事例発表。
3:45〜5:30
が日本のプレゼンテーションに割り当てられた。
11/13(木)
AM:6つの分科会による事例発表。
PM:全員出席のセッションで、事例発表3で構成されている。
クローズィング・セレモニー
プレゼンテーションの内容は、遠隔教育、生涯学習、マルチメディア/コースウェアによる教材開発が多かった。インターネット関係は3つで、ラジオ、ビデオ、テレビ等を使用した教育が主のようであった。
尚、3日間を通して展示コーナーを設けてあり、13 社が出展していた。
(1)CECプレゼンテーション 第2日 3:45〜4:30
1)100校プロジェクト
2)100校プロジェクト(フェーズII)
・重点企画
・国際化
・地域展開
・高度化
・自主企画
3)普及啓発事業
4)ソフトウェア・ライブラリ、他
質疑応答
(1) ライブラリのソフトには、英語版がどの位あるのか。
(2) CECは、フィリピンに何をもたらしてくれるのか。
尚、CECパンフレット(英語版)を持参し、CECプレゼンに出席の約 60人、その他CECに興味を持った出席者、挨拶を交わした出席者、主催者側スタッフ等に配布した。
(2)ラモス大統領の基調講演 第1日 午前
マルチメディアやインターネットといった新しい情報技術は、情報にアクセスできる人だけの特別な階級を作ってしまう。インフォメーションの普及、CD−ROM、サテライトTV、インターネット等の新しい手段へのアクセスに依存する、インフォメーション社会が出来上がることはどうやら確からしい。
劇的にグローバルな変化が起こっていることは否定できないので、教育の世界でも学習方法や、教育計画を再考していかなくてはならない。この技術の進歩は10数年前には考えられなかった教育環境を作り出した。学習は地理的境界を越え、学校のキャンバスの中だけではなくなった。我々は知識を何処にいても、何時でも、家にいても、職場でも、レクリェーション施設にいても、町中でも得ることができる。それ故我々は最新技術の通信施設を取得しなければならない。
そのためにすべきは、第一に高密度の、高速回線を国内のみならず、アメリカ、日本、香港、シンガポールと接続する。第二は通信の自由化。第三に競争力のある通信事業への構造改革である。フィリピンではマニラのクラーク、セブ島のマクタンにインターネット・サービス事業、通信事業、衛星産業の拠点を作る計画がある。
(3)スマート・スクール−教育の組織的再構築−
第2日 午前
Dr.Siti
Hawa Ahmad (Director,Schools
Division,Ministry of Eduction,Malaysia)
MSC(Multimedia Super Corridor)計画の基幹アプリケーションの1つにスマートスクールがある。マレーシア政府は、最先端の技術とMSCのインフラの急速な展開で、インターネットや通信衛星等を利用した教育システムを学校に導入する。
マレーシア・スマート・スクールは、情報時代の子供を作るために、教育方法、学校管理を組織的に再構築する学校制度である。その最大の特徴は、小中学校に国際的な最高の教育を施す学問環境を作ることである。1999年までに、90のパイロットスクールを核として、教育の理念、教材、技能及び技術を広めたい。
2050年には、我々の寿命は82歳になる。このことは国民はより長い間教育の機会を増やすことになり、生涯学習の基本的な枠組みを考えていかなければならない。
・ | 電子マネーやクレジットカード、身分証明書のIDカード等を1枚のカードに一元化した多目的カード・政府への申請手続き等を電子化した電子行政 |
・ | 分散する工場を遠隔操作で一元管理するバーチャル工場の導入 ・インターネットや通信衛星等を利用した教育システムを導入したスマートスクール |
(1) 国立フィリピン大学 11/13(木)午前
・ISMED (Institute
for Science & Mathematics Education Development:フィリピン
大学理数科研修センター)
訪問
1) 理数科教員の研修と教科書のプロトタイプ作りを主な事業としている。
JICA が建物、設備等の整備及び人的支援を行っている。
2) 情報基礎といったコンピュータ教育は、コンピュータの普及状況からして、未だカリキュラムにないとのことであった。インターネットのホームページは作成中で、年内にオープン予定とのことであった。
5.2.4.1 会議名称
APNGマニラ会議98
5.2.4.2 開催場所及び開催期間
場所: マニラ シャングリラ ホテル
期間: 平成10年2月16日から2月21日まで
5.2.4.3 参加者
影戸 誠(名古屋市立西陵商業高校 CEC国際化ワーキンググループ委員)
5.2.4.4 主催者概要
APNG(Asia Pacific
Networking Group):アジア環太平洋地域のネットワーク推進を、教育部門、発展途上国支援、ネットワーク技術の部門に分かれ推進している。今年で4年目となる団体で初代会長は、前東京大学教授 石田晴久氏。
日本側メンバーには慶応大学 村井 純氏、早稲田大学 後藤滋樹氏などが名前を連ねる。CECのワーキンググループ委員、東京大学助教授 中山 雅也氏は本会議のコーディネーターでもある。
APRICOT(Asia Pacific
Regional Internet Conference on Operating Technologies):アジ
ア環太平洋地域のネットワークの推進を図る団体。各国の地域情報、さらには法律、技術開発などの部門をもつ。
5.2.4.5 参加目的
・ 日本の代表的なプロジェクト 100校プロジェクトの紹介(組織、サポート体制、小学校・中学校の代表的な実践例、日本の2003年までのインターネット
動向について)
・ フィリピン教育ネットワークの現状調査
5.2.4.6 会議の内容
参加者:ホワイトハウス情報担当官 アメリカ フランス 日本 中国 韓国 台湾 シンガポール フィリピン ドイツ デンマーク ハワイ ニュージーランド オーストラリア その他 APNG APRICOT 合計 約1、000名
日本側 | 後藤滋樹早稲田大学教授 中山雅也東京大学助教授 太田東京工業大学助教授 |
海外 | 台湾教育省情報局 シンガポール大学 フィリピン新聞記者 その他 |
問 | スムーズに進んでいるようだがその中でも問題は何か |
答 | 100校プロジェクトがトップダウンによってもたらされたものではなく、現場の実践者の学校が選ばれたこと、相談コーナー「窓口」(インターネット上での)の設置が効果的であったこと、さらに取り組みが地域ネットのサポートにより、問題が克服されていったことも成功の大きな要因。 また活用事例発表会の全国展開により、その活動が全国的に知れ渡ったこともインターネットの教育利用普及に役だった。 |
5.2.4.8 他の訪問先
(1)政府機関 Center for Educational Technology(CET),
Cet@webquest.com
教育文化省の建物の中にある政府機関
面談 担当部長 Angelito部長
施設の概要
フィリピンにおけるマルチメディア教育、コンピュータ教育、ネットワーク教育の推進を図る組織、教員研修の他、モデルとしてプレゼンテーションルームを持つ。
プレゼンテーションルームに案内されたが、マッキントッシュなどのコンピュータ機器が2台、インターネットに接続した機器が1台あった。
教育ソフトなどもある程度そろえてあったが、こんなことが将来可能という意味であろう。というのもフィリピンにおいてはこの建物があるマニラにおいても、大学間系のネットワークは完備したものの、高校以下においては予算的処置がなされないままである。
地方の情報系カレッジではまだ386マシーンでハードディスクの無いまま、授業を行っている。
会談内容
全国を16の地域に分けまず教育事務所の接続を1996年から開始
予算の問題から遅々として進まず
パイロットプロジェクトとして10の学校を選定、予算化
技術的にもプロジェクトの面からも日本のCECにサポートして欲しいとのこと
参考資料:
フィリピンの学制
小学校 6―12歳 13―16、17歳 小学校6年 中高校4年 その後4年生の大学へ
(2)台湾ネットワーク・インフォーメンション・センター
台湾 シン博士との会談
台湾の状況
接続状況は日本より進んでいる
小学校レベルーー10パーセント
中学校レベルーー20パーセント
高校レベルーーー40パーセント
さらに1998年度の終わりまでには中学校以上は全てインターネットに接続するとのことだった。30クラスに対し1つのコンピュータ教室を設置を推進しているとのこと。 引き続きアジア交流プロジェクトのサポートを行うとのコメントを得た。
・発表後韓国の代表者であるキムナル・チョン氏と会談
この夏に韓国で開かれる会議「スクールネット」での100校プロジェクトの紹介について話し合う。
その後以下のようなメールを得た。
>At
11:17
98/03/03
+0900, Okhwa Lee wrote:
>> Dear Makoto kageto,
>>
>> We decided to include that presentation on the first day. The conference
>>is two full day long one (July 15 & 16) and your talk will be allocated on
>>the first day afternoon session.
>> We are very interested in your 100 school activities and would like to
>>know the follow up projects.
APNG会議参加によって韓国ソウルで行われる教育国際大会に日本の100校プロジェクトを紹介する機会をえた。
5.2.4.9 成果、感想
インターネットの教育利用は海外との交流、グローバルな展開を可能とする。国内の整備は文部省の施策に見られるように2003年に向けて大きく前進することが期待できる。
しかしながら国際化はやはりインターネットの教育利用においてまた立ち後れている。
生徒が海外との交流を希望したとしても、日本側窓口、海外側窓口、キーパーソンの確保がなければ実現不可能である。
このような国際会議に出席することによって、各国の事情に通じた人との情報交換は重要である。
今後も担当者を積極的に海外の国際会議に派遣されることを要望する。その情報はインターネットを通して多くの実践者に伝えられるのだから・・・。
5.2.5.1 会議名称
European School Project Conference '98
5.2.5.2 開催場所および開催期間
デンマーク、コペンハーゲン Royal Danish School of Educational Studies
1998年3月27日−30日
5.2.5.3 参加者
美馬 のゆり (川村学園女子大学)
Hillel Weintraub (同志社国際中学・高等学校)
5.2.5.4 主催者概要
European School Project(ESP)は、ネットワークを利用した新しい学習方法を、ヨーロッパ各国が協力して実践的にたちあげようというボランティアベースの組織である。主に小学校から大学までの教員が中心となり、活動している。年1回の国際会議をヨーロッパで開いている。1987年に第1回を開催し、今回は12回目にあたる。
目標は、教育改革と国際理解教育の2点である。教育改革の必要性と同時に、ヨーロッパ諸国間の協力体制を築くための国際理解協力の必要性から、ヨーロッパ各国からリーダーが集まり、このプロジェクトは始まった。今回は、20カ国から120名の参加があった。参加国はスウェーデンなどの北欧やドイツ、デンマーク、オランダなどの中欧、ロシアを始めスロバキア、エストニア、スロベニアなどの旧東欧ブロックが多く、フランスやスペインなど南欧やイギリスからの参加は少なかった。ヨーロッパ以外の参加国は、米国、カナダ、日本であった。
5.2.5.5 参加目的
ESPに参加することにより、ヨーロッパにおけるインターネットを利用した教育の現状を調査し、ヨーロッパ地域との共同授業の提案の可能性を模索する。また、オランダ、デンマークの教育関連機関を訪問し、教育におけるネットワーク利用状況の情報を収集する。さらに、ESPにおいてCECおよび新100校プロジェクトの紹介と、ESPの活動の一部として行っている重点企画「Me
and Media Projectの展開」の成果発表を行う。
1998年7月に開催するCEC主催の国際シンポジウムの紹介と参加案内も行う。
5.2.5.6 会議の内容
カンファレンスは、正式には27日の夕方から開催校の責任者の挨拶で始まった。
ESPの役員であり、日本の代表者は、今回のカンファレンス及びESPの組織に関する話し合いのため、27日午前中からの役員会議に出席した。20カ国からの代表が、この午前中の役員会議に出席した。
初日2番目のスピーチは、デンマークの文部省の高等教育部部長であるYih-Jeou Wang氏であった。デンマーク政府のInformation
and Communication Technology (ICT) に関する話であった。この話から、デンマークは日本の関係省庁で話し合われているような状況とは異なり、国家政策レベルではICTに関して特に何も行われていないことが明らかになった。
3番目のスピーチは、ESP設立者のひとりであるHenk Sligte氏であった。Sligte氏は、ESPの歴史と理念について、そしてまた教師がともに今年度の実践を評価し、来年度のプロジェクトを構想するための年に1度のface-to-faceの会議の重要性について語った。
ESPに関する情報については、
http://www.esp.educ.uva.nlを参照。
翌3月28日の朝は、スウェーデンの文部省のStellan Ranebo氏の話であった。
Ranebo氏は、すでに存在している様々なネットワークを統合することを試みているEuropean Schoolnet
(EUN) の中心人物のひとりである。実際このネットワークは、「ネットワークのネットワーク」と呼ばれている。EUNの目的は、各国の社会的、経済的変化に合うよう学校の改革を実行するために、ICTのリーダーたちを支援すること、それらの学校の教師を支援すること、生徒がネットワークやプロジェクトを利用する道筋を与えることである。EUNは、EU諸国に焦点を当てているにも関わらず、バルト諸国や中欧、東欧諸国にも門戸を開いている。さらにRanebo氏は、世界中と連絡をとり、受け入れ始めていることを特に日本、米国、カナダを例にあげ、話を終えた。EUNが主導して進めようとしていることをさらに強化するために、それらの様々な国々の代表が集まる会議を今年後半にとりあえずブリュッセルで計画している。
Ranebo氏の話の終了後、この会議の計画の詳細についてたずねたところ、まだ話せる状況ではないと語った。
EUNに関する情報については、http://www.eun.orgを参照。
次に筆者が、CECの100校プロジェクト、特に国際化グループの活動について話した。今年度様々なプロジェクトがそのグループが実行したことを紹介し、また、今年7月1日、2日東京で開催する国際シンポジウムについて話した。さらに、文化的、教育的発展のためのICTの価値についてもコメントした。話の終了後、休憩時間、昼食や夕食の時など、各国の参加者が日本に関する情報や連携の可能性についてたずねてきた。これは発表当日のみならず、学会開催期間中にわたって質問を受けたことから、この様なカンファレンスで発表することの重要性を再認識した。
最後の基調講演は、オランダのUniversity of TwenteのBetty Collis教授であった。Collis教授は、この15年間ICTの分野において世界の主導者であり、1980年代初頭にUniversity
of Oregonで設立されたInternational Council for Technology in Education (ICTE) 教育における技術のための国際評議会の初期からのメンバーのひとりである。Collis教授は、University
of Twenteにおける教師になる大学生のための自分のプロジェクトに関して話した。Germany National Research Centerで開発されたBasic
Support for Cooperative Work (BSCW) とよばれる分散化された作業場で使用するツールを利用している(注) 。
Collis教授の発表については、
http://www.to.utwente.nl./user/ism/Collis/presents/ESP/index.htm
参照。
(注)Collis教授によって最初に発表された「分散化された作業場で使用するツール」に関する考え方は、このあとの様々な発表で登場した。BSCWは、ある種の電子掲示板システム、あるいはチャット部屋、ビデオ会議システムを越える試みのようであり、それはすでに始められている。このシステムとその説明については、
http://bscw.gmd.de/ を参照。
この会議で聞いた限り、このシステムが将来の教育プロジェクトに利用できる可能性があるので、今後もう少し調査する計画である。
この日の午後は、この1年間ESPの学校によって行われてきた様々なプロジェクトの発表が並行して行われた。そのうちのひとつである中等教育に焦点を当てたグループでは、(Me
and Mediaの展開)の発表と、その他のCECの支援によって行われている国際プロジェクトの発表を行った。
またこの日は、以前から行われているプロジェクトの継続についてや、新しいプロジェクトの開始について、これからの1年間の計画について、教師同士で話し合いが持たれた。この話し合いは、カンファレンスの時間や、非公式に夜にも行われた。
5.2.5.7 教育関連機関訪問
会議の前後に教育関連機関を訪問・調査したのでこれについても報告する。
(3月25日)
アムステルダム大学のHenk Sligte氏によって用意されたスケジュールにしたがって、3月25日にアムステルダムでの教育関連機関訪問を行った。朝一番の訪問先は、dr.
Riijk Kramer Schoolであった。この小学校は、CIAOプロジェクトに参加する学校のひとつで、インターネット経由でアムステルダムの周囲の他の学校と接続されている。現在、CIAOプロジェクトに参加する学校は、小学校だけである。6つの学校はJAVAが動いているSunコンピュータがプロジェクトにより購入され、使用されている。基本的にこれらのコンピュータは、1カ所のサーバー上にあるプログラムが起動されているので、いわゆる「ネットワーク・コンピュータ」である。この学校の校長とコンピュータ・コーディネータが校内を案内し、ひとつのクラスがコンピュータを使ったり、他のCIAOプロジェクトの学校の子どもと電子メールを使ってコミュニケートしているところを見学することができた。
CIAOプロジェクトに関する情報は、http://www.edu/amsterdam.nl参照。
次にthe Esprit Schoolgroup - Mondrianを訪問した。この中等学校は、トルコからの移民が大部分を占めている地域にある。この学校の生徒は、ほとんどがトルコ系の家系の子孫であり、オランダ社会の中での自分たちの位置づけについて問題を抱えている。そのような状況の中、ICTは生徒を動機付け、教育に参加させることを助け、有用な言語や技術を開発する方法のひとつである。以前はドイツ語の教師であったこの学校のICTプログラムのリーダーは、生徒のために彼が制作した様々な教材を見せてくれた。生徒たちが、友人や以前通っていた学校の中学校にいる生徒たちと電子メールをやりとりしている授業を見学した。
この日の午後は、the newMetropolis Center for Science & Technologyを訪問した。この科学館は、関西新空港をデザインした有名なイタリアの建築家であるRenza
Pianoによって設計され、半年前にできあがったばかりである。館内をざっと見学し、教育担当官と話す機会を得た。彼によれば、ここでは訪問者に議論や協力や活動的な参加を起こさせるように、展示をデザインしているとした。「協力」や「参加」の概念は、新しい教室環境で、ICTにおいてだけではなく、すべての教室においても重要な特徴となっている。
この日の最終訪問先は、アンネ・フランク財団であった。ここではマルチメディアのディレクターであるdrs. Wouter
van der Sluis氏と話をすることができた。彼はアンネ・フランクの生涯に関する様々な映像を監修・制作した人物で、現在はアンネ・フランクに関するCD-ROMの制作責任者である。マルチメディア教材をデザインする際必要な、様々な教育的配慮に関して議論した。アンネ・フランク財団は、基本的に教育的非営利団体であることから、ここでの議論は営利を目的としない教材開発の話であり、結果的にこの訪問はとても有意義なものとなった。
(3月30日)
この日はRungsted Gymnasiumを訪れた。この学校は公立の中等学校で、コペンハーゲンから北へ車で30分のところに位置している。われわれは、校長であるLeo
Bresson氏の車で海岸沿いに学校へ向かった。学校自体が、建築的にも教育的にも興味深いデザインとなっている。
この学校は、デンマークの中でも先進的な教育をしていると評判の学校のひとつである。ネットワークやコンピュータは、音楽、芸術、語学、科学、社会などを含む、カリキュラムのすべての領域に広がって利用されているようにみえた。さらに教員用の空間は、教員同士がコンビビアルなコミュニケーションを持つことができるようデザインされており、この学校のデザインから教育理念を感じとることができる。
5.2.5.8 まとめと提案
(ESP)
ESPのスタイルであるコンヴィヴィアルな(自立共生的な)雰囲気が、カンファレンスの特徴となっている。このカンファレンスは、構造化された、形式的な方法で教師たちが一堂に会すための時間を提供するというよりむしろ、非公式に集まり、アイデアや経験を交換する場として配慮されたデザインとなっている。これは食事時間や、時には30分もある長いコーヒーブレイク、そして飲んだり、ダンスをしたり、音楽を聴いたりといった非公式な夜の集会などでも行われた。実際、すべての参加者が一つの同じホテルに滞在したことは、教師たちが朝食時や、レセプションを行う場所で深夜話ができたという意味で、とても重要な意味を持つ。ある晩は、参加者によって劇が上演され、社交ダンスのための音楽をバンドが演奏し、デンマークのフォークダンスも紹介され、全員が参加した。一緒に活動するこれらの時間は、正式な講義や構造化された経験で達成されることを越え、文化間や個人間の交流の機会を提供するという意味で、価値あるものとなっている。
(教育関連機関訪問)
今回の教育関連機関の訪問から、ヨーロッパにおける教育の方向は、学校においても、科学館やアンネ・フランク財団のような教育関連機関においても、オープンで、協調的で、世界へ向かって、環境を考慮しているなど、理念的には進んでいるように見える。しかしながら実践では、日本の標準的な教室とヨーロッパの標準的な教室では、ICTの利用に関してはほとんど変わりがないことが判明した。
(さいごに)
ここで、the newMetropolis Center for Science & Technologyの"You're
the Greatest Wonder of All"と題されたガイドパンフレットからの言葉を紹介する。
「...the newMetropolisプロジェクトは、人類の表現としての人間の活動、科学、技術、芸術の中心であることを約束する。
newMetropolisは、出会い、おしゃべりし、ざっと見渡し、太陽の光のもとでコーヒーを飲む場所である。遊び、そして学ぶ場所である。家族や友人と探索し、新しいアイデアや経験を分かち合う場所である。...
訪問者は、新しい能力、新しい技能や深い理解を持って、ここを出ていかなければならない。newMetropolisでは、訪問者は単なる受け手ではなく、知識を創造する活動的な参加者である。...訪問者は、すべての感覚を引き出すような経験や、未来の科学と技術の関係を作り出すことを助けるような経験における刺激的で豊かな環境の探求者である。」(1997年6月、newMetropolis、James
Bradburne著) 科学館とその訪問者についてここに書かれたことは、学校と学習者に置き換えることができる。ここでの学習者とは、生徒だけではなく、教師をも含む。われわれはこの感覚を日本に持ち帰ってきた。そしてこのような学習環境を日本の中で作り出していく努力をしていこうと考えている。
現在、日本の学校が海外の学校と交流を開始しようと考えても、交流の相手先を探すのが困難であり、また海外の学校が日本の学校と交流を希望しようとする場合も同様である。双方ともに、交流を行おうとしても窓口機関がなく、海外および日本へのアプローチが困難な状況にある。これらを解決すべく、窓口をCECに開設し、双方の橋渡しの役割を果たしたい。
その手始めとして国内外の教育関連機関、国内外のネットワーク利用した国際交流プロジェクトを組織して活動している団体・組織、国内外の組織で教育に参考となるような団体・組織を調査して、調査した結果を学校で使えるリンク集として、財団法人コンピュータ教育開発センターのホームページ、http://www.cec.or.jp/CEC、に載せることを計画した。
今回の調査では、学校で使えそうなホームページをサーチエンジンを利用して調査を行った。その中から抜き出し、関連機関・団体・組織にリンクを貼る許可願いを送付し、許可を取った。そこで次に、Web上に貼り付けた。
国内の教育関連機関、海外の教育関連機関、国内のネットワークプロジェクト、海外のネットワークプロジェクトの4つに分け、機関名・プロジェクト名とURLを並べて貼った。URLの下には、2行程度の注釈を付け利用者に分かり易いようにした。 全部で207機関をリンクしたが、許可願い送付数は、メールアドレスが不明のものや、ホームページに記載されていたメールアドレスが間違っていたものなどがあり、170通に留まった。返答数は59通で、掲載拒否はなかった。
もとより、時間的制約、予算の制約等があるため、十分なものとはなり得なかったが、情報の収集、調査を続け、また利用者からのコメント、要望を取り入れさらに内容の充実を行い、定期的に更新していきたい。