2.4 運用のノウハウ

 教育ネットワークの運用の中で、各地域が最も頭を痛めているのは、教員の利用をどう促進するかであった。また、ネットワークシステムの保守管理について、今後教育ネットワークが本格稼働していったとき、教育センターだけでは対応しきれないと不安視する地域も少なくない。

2.4.1 不適切情報のフィルタリング

 教育ネットワークを整備するさい、最も不安の大きいのはインターネットにおいて教育に不適切な情報が垂れ流しされていることだが、有効なフィルタリングをほどこすことにより、端末機からのアクセスを制限することができる。

2.4.1.1 フィルタリング方式の分類とそれぞれの特徴

 フィルタリングは、2.2.3.1で見たように、サーバ型、端末型の2つに分けられる。サーバ型には次の2種類がある。

  「ホワイトリスト方式」
  「ブラックリスト方式」

 「ホワイトリスト方式」はリストに記載されたURLへのアクセスだけを許可するもので、「ブラックリスト方式」は反対にリストに記載されたURLへのアクセスだけを禁止する方式である。
 どちらもキャッシュサーバやプロキシサーバ上にリストを置き、端末機からのアクセス要求があると、リストと照合して、アクセスを許可/禁止する。
 そうしたサーバを設けるかどうかによって、教育ネットワーク全体のネットワーク構成も決まってくる。

2.4.1.2 問題点

 ホワイトリスト方式とブラックリスト方式は、ともに日常の更新作業が必要である。
アクセスを許可するにしても、禁止するにしても、更新するためにはそのWebページを教員自身がひとまず自分で見る必要がある。
 しかし、リストに掲載されたURLしかアクセスできないホワイトリスト方式を採用したところでは、生徒だけでなく教員もリストに記載されていない情報(たとえば性教育情報など)にアクセスすることができないため、リストに追加してほしい情報を入手できないという問題を抱えている。
 他方、ブラックリスト方式ではリストに記載されていない不適切情報へのアクセスは可能だが、ブラックリスト方式を採用した市でアクセスログを調べてみると、不適切情報へアクセスするのは教員がほとんどだったという。この市では同時に推奨サイトを集めたブックマークを配布することで、利用者にアクセス制限を意識させないようにしている。
 リストの更新は主査が専任で担当し、これまでに2万5000〜2万6000件の禁止リストを作成している。更新・運営については、

  「民間への依託」
  「他自治体の教育センターとの情報交換」
  「利用する教員からの情報提供」

 の3つの方法が考えられるが、「どこか1つにお任せというわけにいかない。情報を収集しながら、運営していくということをせざるを得ない」という。実際には利用者である学校の教員からの連絡で新たに禁止リストに掲載したり、また禁止リストから削除している。

・フィルタリングの実効性への疑問
 「有害情報に対するアクセス管理ということを考えますと、1か所に集中していくのは望ましいことは確かなんですが、では、それをやったら本当に規制が完全に100パーセントいくのかと、実際はイタチごっこの部分もあります。それからいわゆるイントラネット形式で束ねてインターネットに上げる形はB市にもD市にも同じ形で行われているのを実際に視察して承知しておりますが、いずれのところもセンターがその有害情報の発生源であるサイトを掌握して、管理していくということはもう破綻が来ている。実際は日常業務の中でそれはやっていられないという状況になっています。D市あたりは有害情報のサイトの情報を業者に委託しようとか、当初の計画等を変更しまして、そういうふうな動きも承知しております。確かに教育現場ですから、野放しということにはならないのだろう、規制は必要だろうと。ただ、それを教育関係者が直接その業務をやるという状況でもないだろう、時代でもないだろう。そういう有害情報があるということも含めて、インターネットの利用を生徒に指導していくのは、これからの情報化社会への対応として一番重要なことではないだろうかと、そういう観点に立ちまして、それから先ほど言った経済的な理由もございまして、今のような形式にしました」

2.4.2 利用者の教育

 教育ネットワークが稼働している地域では、利用者の教育・研修は教育センターで行われていることが多いが、ネットワークの利用を想定したカリキュラム作成が課題となっている。また研修講座の名称も問題となっている。

2.4.2.1 情報教育基礎研修講座

 文部省が標準カリキュラムを作成した情報教育基礎研修講座には、ネットワークの科目が含まれていない。このため教育ネットワークを稼働している地域では、情報教育基礎研修講座にネットワークの科目を含める、インターネット専門の研修講座を開設するなどの独自の対応がとられている。
 教育センターで研修講座の体制を組めない場合、第3セクターのソフトウェア開発会社に研修を依託している地域もあった。今後、民間会社への依託も考えられるが、外部依託を受けた会社が「教育的な研修の経験がない」ことを課題にあげている。
 ところで、利用者研修には「情報教育リーダー養成講座」「情報教育担当者養成講座」に見られるように、リーダー、担当者、管理者といった職名を連想させる名称がつけられていることが多い。このため研修講座が管理職に登用されるための1ステップのように理解され、学校から年功序列で受講者を選んで送り出したり、修了書をもらうためだけに受講する受講者が現れている。
 「研究生」など職名を連想させない名称を考える必要がある。
 また、ネットワークの利用技術の研修にとどまらず、教育ネットワークの本来の目的である教育への活用をはかるための研修はまだ見られない。今後の大きな課題である。

・研修の課題
 「たとえばある学校の先生がワープロソフトの使い方で行き詰まった。『じゃ、教育委員会に電話して聞いてくれ』というのでは、実際に教育委員会へ電話してくるかというと、電話してこない。いやになってやめちゃうのが普通だと思うんです。わからなかったときに身近に聞ける人をつくっておくというのが、基本的な組織としての研修体制のあり方なのかなと思っているんです。つまり学校の中に1つずつ核をつくって、その学校を5つ束ねた中にもう1つ、また核をつくっていくというように、それぞれの核の部分を確実に抑えていく研修組織をつくっていく、あるいは運用組織をつくっていくのが大きな課題でしょうね」
 「導入されたコンピュータをどう運用して全体に活用していくか、アプリケーションの部分で研修は全然してない。本当の意味でのアプリケーションですね。授業にどう使うかとか、情報教育を使ってどう進めていくかとか、そういった部分をしっかりやっていかないと、ただ単にネットワークの技術者養成講座になってしまう。今までは学校がつながっていないもんですから、つながってない学校の先生たちにいくらアプリケーションレベルの説明をしてもだめだから、それはこれからの課題ですよね。それがうまくできないと結局、『システムを作りました。だけど活用されませんでした』というので終わっちゃいますよね」

・研修を外部に依託
 「情報教育のリーダー養成研修会というのがあるんです。県内に数会場つくって、1週間の講座をやっています。教育センターでは全部引き受けられないので、第3セクタのソフトウエア開発会社に依託して、今年だったらWindows95の基本操作を1日半、それから自分たちが行って話す教育的な意義を半日、ネットワークが3日……3日のうち電子メールの研修が1日、全般的なことが1日、あとホームページ作成が1日……そんな概略的なことを提示して、『これでプランをつくってください』みたいな感じです。結局、自分たちが行く半日以外は教育的な側面をお願いするんだけど、どうしても入れにくいところがある。要するに、普段は教育的なことをやってないところですので、ネットワークを使うに関して、もっと学校でこんなこと考えてほしいとか、実際のインターネットでは教育的にはこんなことが行われているとか、そんな具体的に話をしてほしいんだけど、そういったところがなかなかしにくいですね。かといって自分たちも行って話す時間は半日しかない。それ以外の日はほかの研修でいっぱいなんです。とにかく手がまわらなくて、そこまでいかないという実態で、何とかならないかな、みたいなとこがあるんです」

2.4.2.2 協力者/組織による研究会

 外部の協力者/組織などが主催する研修会も有効活用する必要がある。
 その場合、教育委員会が研修会を後援するなどの方法がとられれば、研修会への参加にとどまらず、準備のための会合などへの出席も、出張扱いにできるため、教員たちが参加しやすい環境を作ることができる。


2.4.2.3 LAN管理者研修

 ネットワークの知識を持った人材を育成するために、LAN技術者研修を予定している地域もある。ネットワークの利用知識を平等に与えることも大切だが、ネットワークをさらに活用したいと願っている教員に、そのための技術を学ぶ機会を提供することも、今後は重要になってくると思われる。

2.4.3 利用の促進

 教育ネットワークを稼働させている地域では、利用者である教員にネットワークを利用するための動機づけをどう与えるかが課題になっている。そのための仕掛けの中ではメーリングリストの活用が目を引く。

2.4.3.1 メーリングリストの活用

 メーリングリストとは、メーリングリスト宛に出したメールがメーリングリストの参加者全員に配信される仕組みをいう。時間に縛られず、会議室のような感覚で利用できるうえ、参加者数に制限がなく、内容も外に漏れない。メーリングリストはUNIXの基本機能(/etc/aliasesで送信先を定義するだけ)で利用できるが、メールサーバ上で専用のソフトを使用すると便利である。
 教育ネットワークの稼働と同時に利用者が参加するメーリングリストを開設した地域は多く、お知らせの供覧や質問・回答など多目的に利用されている。
 中でもA県はメーリングリストを使った「インターネット通信講座」をおこなっている。市町村立の小・中学校を含め県内の全公立学校を接続したこの県では、教育ネットワークの稼働と同時に全校を対象にしたメーリングリストを開設。ボランティアの教員約20人が「電子メールの使い方」「ホームページの使い方」に始まって「ホームページの作り方」など、A4用紙に印刷すると1ページほどのハウツー集を週に5回、流している。
 これは、毎日メールを開くことの習慣化を狙いにした仕掛けの1つで、この結果、インターネットの利用は促進され、Web上でアンケート調査を行なったところ、小学校数百校のうち約50%という高い回答率を示した。なお、この「インターネット通信講座」は、Web上でも公開される予定である。

・インターネット通信講座
 「(教育ネットワークを)無理に使わせるのではなく、いかに学校が使えるようにするか、無理がないようにするか、主体的にやるかということを、主眼においている。この通信講座も全部に送るが、学校にこれを使えとはいわない。ただ、毎日使わないとたまりますよ、といっている」

2.4.3.2 ブックマークの共通化

 Webページの閲覧はインターネット利用の入り口であり、利用者にとっても敷居は低い。
 Webページを閲覧するためのブラウザソフトのブックマークを校種別に教育センターで作成し、納入時に業者に設定させている地域がある。
 また、教育センターや教育委員会のページを利用者が最初に開くページに設定し、そこにリンク集の形で推奨のWebページのリストを集めている地域もある。
 いずれも、利用者にとってはWebページを利用するための案内ガイドとなっており、内容がさらに充実されていくことを期待したい。


2.4.3.3 地域への開放

 子供の教育を地域(父母)に理解してもらう場として、地域を対象にしたコンピュータ教育をおこなっている地域がある。
 また、地域への開放ではないが、A研究会では、新聞社などの取材の機会を逆用し、教員の利用の動機づけに利用している。

・取材の応対を機械的に割り振る
 「そのうちにインターネットブームがだんだん世間で騒がれるようになって、取材がたくさん来るようになったんです。取材は(職員室の)机の順番に全部受けてもらう、ということを何となく暗黙の了解としてしまったんです。『来週、A新聞が来るから、誰々先生の授業で受けよう』とか『B新聞が来るから、月曜日の授業、お願いね』という感じで、機械的に割り振っていたんです。やはり誰でもうれしい部分もあると思うんですね。そういうところを作戦的にくすぐりながら、1回まず試しに授業で使ってもらう、ということを仕組んでいったんです。それが1巡したころには、大体ネットワークのほうもサーバを入れ替えて安定してきて、先生方も(取材を受けるために)最初の突破口で使って、『大してむずかしくないよね』っていうことになって、少しずつそれが定着してきたんです」

2.4.4 運用規定

 教育ネットワークの利用にあたっては、個人情報の保護、不適切情報の排除などに配慮した運用規定を各地域ごとに設けている。

2.4.4.1 運用規定

 個人情報保護審議会の答申を得て教育ネットワーク「にぎわいねっと」を運用する大阪市では、答申の内容に従って『情報教育と情報倫理』『「情報教育」の手引き』という2冊の小冊子を作成し、全学校に配布している。この中では、生徒などの個人情報を公表するさいの事前同意手続きなどを定めたガイドライン(「大阪市情報教育ネットワーク」利用規定)のほか、「大阪市立学校教育用コンピュータの使用に伴う安全衛生指針」を定め、生徒や教員の健康管理にも配慮していることが目を引く。
運用規定の例として、大阪市の「大阪市立学校教育用コンピュータの使用に伴う安全衛生指針」を章末の資料編に参考資料として載せる

2.4.4.2 生徒の利用

 児童・生徒だけの利用を認めるかどうかについては、原則として「教師の指導下で」という規定を設けている地域が多く、児童・生徒が利用できる時間は授業、クラブ活動などに制限されている。
 「先生の道具から生徒の道具へ」というテーマは大きな流れであって、昼休みや放課後なども生徒に開放されていくことが予想される。しかし「有害なWebページへアクセス」「勝手にオンラインショッピング」などの問題点もすでに発生している。
 フィルタリングをかけて不適切情報を排除したり、ネットワーク上のエチケットである「ネチケット」を教えることはもちろんだが、小学校から高校まで幅広い年齢層に対し、一律に利用規定を設けるのではなく、児童・生徒の成長に応じた規定を考える必要がある。

2.4.4.3 メールの取扱い

 児童・生徒へメールアドレスを配布するかどうかは、メールサーバの維持・管理の問題もあって、ほとんどの地域で消極的な方法がとられている。その理由としてあげられるのは、

  「学校がメールの具体的な利用法をまだ見通せていない」
  「生徒への機械的なアドレス付与は個人名が特定される恐れがある」
  「メールサーバの管理をしきれない」
  「メールは個人情報であるため、学校が管理すべきでない」

 などである。

 児童・生徒のメール利用に積極的な地域でも、すべての利用者アカウントの管理を教育センターで一括して管理することは難しいとして、学校にメールサーバを置き、児童・生徒へメールアドレスを配布するかどうかの判断は学校長に任せている。
 各学校に配布するメールアドレスの数を制限し、そのかわり児童・生徒には学校内だけに通用するメールアドレスを生徒全員に発行している地域もある。

・メールアカウントを制限
 「学校教育用のネットワークだということで、そこで違いを設けているんです。大学の先生がインターネット、ネットワークのことを簡単に言うけれども、2つあるというのを意識してないんです。高校用のネットワークはいわゆる大学の先生の意識しているようなネットワーク、ところが小・中が主体のこちら側はあくまで学校教育用のネットワーク。いろんな有害的なこと、また危険から守るということに、教育委員会が噛んで責任を持つ。考え方がそこで根本的に違ういうことですね。大学の先生はほとんど意識せずにパッと言うけれども、世の中には2つあるんですよと、ネットワークというのは」

2.4.5 保守管理

 システムの保守管理の大変さは、あまり認識されていない。保守管理という業務が不可欠であるということ自体への理解が乏しい。このためトラブルが生じた場合、保守管理が十分ではないことに原因を求めるのではなく、いきなり「ネットワークは難しい」という発想へ短絡する傾向がある。

2.4.5.1 センター設備の保守管理

 教育センター設備の保守管理は、教育センター職員と機器の納入業者によって行われる。このため保守管理を想定した人員の配置が必要になる。
 接続校からのトラブルの連絡も教育センターに入ることが多く、トラブルを切り分けて対処しなければならない。B市では、複数校で同じトラブルが生じていれば、アクセスログの点検をおこない、1校だけのトラブルであれば、その学校への納入業者に連絡するようにしている。
 トラブルの内容では、回線がつながらないトラブルはほとんどなく、教育センターと学校とをLAN型ダイヤルアップ接続している地域では、逆に回線がつながりっぱなしになるというトラブルが多発している。原因が特定されていないため、B市では夜中に自動的にシャットダウンさせ、サーバとルータの電源を切ることでトラブルを回避している。
 C市でも回線がつながりっぱなしになるトラブルが発生したが、利用者の1人がユーティリティソフトと一緒にネットワークの接続状況監視機能をインストールしていたため、外部と接続しつづけていたことがわかり、その機能を使わないようにすることで改善した。

・回線がつながりっぱなしになる
 「当初の設定のときに、業者さんが全部学校側のシステム構築をされて、センターと接続試験を全部されています。こちらも接続試験のチェック項目をお渡しして、結果をもらっているんです。正常に稼働しましたということを。ですから接続できないというエラーでなくて、接続しっぱなしというエラーが多く、その原因がなかなか特定できないのがトラブルの一番大きいところです。学校の先生にトラブル対応してくれというのは不可能ですので、業者さんに『インターネットサーバが落ちると、同時にルータも電源落ちるようにしてください』とお願いして、タイマーで夜中の午前0時にオートでシャットダウンできるように作り込んでいただいております。だから少なくとも何らかの事情でルータ等が誤動作して、つながりっぱなしになったとしても、夜中の12時にはサーバが自動的にシャットダウンして、ルータも同時に電源が落ちてしまう。何昼夜にもわたる接続しっぱなしというのは回避できるような仕組みにはしてあるわけです」

2.4.5.2 接続校設備の保守管理

 学校に設置する接続用設備の保守管理は、納入業者がサポートする形が多い。B市では「トラブルの連絡があった場合、24時間以内に何らかのレスポンスを返す」ことを条件に含めて、入札をおこなった。また、プリンタの紙詰まりなど日常起こりうるトラブルへの対処法をまとめた運用マニュアルの作成を納入業者に義務づけ、機器の納入時に一緒に納入させている。
 納入業者によるサポートで問題になるのは信頼性だが、年次計画による整備の場合、納入業者は次年度以降の受注を考えるため、サポートの手を抜くことはない。とはいえ、1業者がカバーする学校が合計で100校を超える場合、1つの設定変更でもすべての学校でおこなうためには時間がかかるという問題が生じている。


2.4.5.3 リモートメンテナンス

 「電話でメンテナンス」というと、多くの人は電話で指示を受ける電話相談を思い浮かべるが、UNIXサーバであれば電話回線を使って、教育センターからでも学校のサーバにログインし、メンテナンスをおこなうことが可能である。ホームページを登録するさい、FTPを使ってWWWサーバにファイルを転送することもリモートメンテナンスの一種といえる。
 この「電話を使ったリモートメンテナンス」は学校側の負担を軽減させる方法の1つとして考慮に入れられていないのが実情である。なお、サーバにWindowsNTを使った場合、リモートメンテナンスをおこなうことはきわめて難しくなる。
 専門技術者を含めたボランティアが教育ネットワーク整備を進める地域では、インターネット接続校への技術支援を有効に進めるため、学校にはUNIXサーバを置き、技術支援組織などからのリモートメンテナンスを可能にしている。
 また、県内の全公立学校を結んだ教育ネットワーク整備を進めるB県では、WindowsNTサーバを入れている学校がほとんどだが、県北部の村の学校にはUNIXサーバを置き、教育センターからリモートメンテナンスできるようにしている。
 ネットワークサーバといえばWindowsNTと思い込まれているが、UNIXも選択肢の1つに含めることが必要である。

・僻地校のメンテナンス
 「県の一番北の村の中学校にパソコンがあるんです。パーティションを切って、FreeBSD(無料で配布されているパソコン用UNIX)を入れて、サーバにしているんですよ。『何かあったら僕がリモートで入って直してあげる』ということにしています。そこは車で2時間ぐらいかかるでしょうね。業者なんかめったに来てくれない。校内のネットワークとしてはNTサーバはあるんですけど、NTサーバじゃおおごとですからね。インターネットで出ていくにはそのBSDを使っています」

・NTかUNIXか
 「(キャッシュサーバを)最初はNTで検討したんです。ネットスケープのプロキシだったら学校は無料で使えるとかっていうので、ああでもないこうでもないとやったんだけど、結局、まともに動かずじまいで、マイクロソフトプロキシも検討したんですけど、これはお金がかかる。あとはおっしゃられたように、NTで動かすと、とにかくリモートでメンテができない。いろいろ動かしたあげく、不安定なんで、こうなったらUNIXを置いて、ブラックボックスにして、『基本的には触らなくて結構ですから置いといてください。すべてのメンテナンスは教育センター側から一括して行いますよ、リモートで』というふうにすればいいんじゃないかと考えた」

2.4.6 トラフィックの問題

2.4.6.1 トラフィックへの配慮

 教育ネットワークを稼働している地域では、ネットワークのトラフィックについて配慮し、キャッシュサーバ(プロキシサーバ)を設置しているところが多い。
 サーバの設置基準(2.3.2.2参照)にも関連するが、教育ネットワークがインターネットと接続するバックボーン回線はおおむね太くはない(128Kbps程度)。このため教育ネットワークに多くの学校の端末パソコンが接続されると、回線が混雑し、インターネットを利用する授業時間の大半をアクセスの待ち時間に費やすなどのトラブルが発生する。
 トラフィックを緩和するためにはキャッシュサーバが有効で、キャッシュサーバを多段に構えてトラフィックの分散をはかっている地域もある。
 端末機の台数が少ない場合は問題ないが、今後、増えることが予想される場合、端末台数と回線速度とのバランスを考えて、キャッシュサーバ(プロキシサーバ)を設置することにより、ネットワーク負荷を軽減する必要が生じてくる。
 また、外部にWebページを公開するためのWWWサーバも、ミラーサーバを設けることが望ましい。Webページへのアクセスが殺到した場合、サーバの負担が大きくなり、外部からのアクセスが遅くなるだけでなく、ネットワーク内部からの利用にも不具合をきたすことになる。





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