3.2.1.1 はじめに

 本稿では,100校プロジェクト参加校である葛尾中学校を基盤とし,あぶくま地域の学校間ネットワーク接続実証実験や地域展開を行う“あぶくま地域展開プロジェクト”の現状と課題等について報告する。葛尾中学校は阿武隈高地の中央部に位置するへき地小規模校である。文部省と通産省の支援を受けた「100校プロジェクト」への参加を契機として,ネットワーク環境を活用した教育実践に取り組んでいる。
 葛尾中学校では,平成7年6月にインターネットに接続するための機材や回線の導入がなされた。しかし,当初100校プロジェクトにより各学校に供与された器材はサーバ機1台とクライアントパソコン(PC)1台のみであり,教育実践でインターネットを積極的に活用するためには十分な環境ではなかった。また,機器が導入されてからしばらくの間,様々な要因によりトラブルが頻発したため,前期はインターネットの可能性や活用の方向の模索を行った。その後,学校外の人々(ボランティア)の協力を得て ネットワーク環境の構築や検討を行ってきた。基盤としてのネットワークシステムが安定してからは,さまざまな授業で積極的にインターネットを活用した実践を行い,これらの授業のコンテンツを公開している。
 これまでの実践は,主に学校内のWebサーバを用いた教室内での情報交換や,電子メールやインターネット上のWebページを用いた情報の検索と活用の様に,校内もしくは遠隔地との交流を基にしたものであった。しかし,インターネットの学校への普及が劇的な拡大を見せつつある現在,ネットワークを用いた地域内の学校間交流などの新しい視点や,ネットワーク管理者が不足する状況下でのネットワークシステムのあり方や運用方法を早急に検討する必要がある。
 そこで本稿では,これまでの葛尾中学校におけるネットワーク環境の構築・運用から得られた成果をもとに,学校内におけるネットワーク運用のあり方について考察をする。次に,多くの学校にインターネット接続環境が普及していくことを踏まえ,それを活用するための校内LANの構築・運用方法について考察を行い,地域内の学校間交流を基にした教育実践の試みを行うためのネットワーク環境の構築実験や学校間ネットワーク接続実証実験と“あぶくま地域展開プロジェクト”の現状と課題等について報告する。




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