3.3.1.2 大分における地域ネットワークの実態

(1) 日田地域における情報化の現状

 大分県内および日田地区の情報化を語るとき「豊の国ネットワーク」を必ずあげなければならない。1985年5月に「地域情報市民公社(RIU)構想」などのビジョンを掲げ、パソコン通信局「コアラ」大分市内に発足した。当初は1回線の手作りBBSシステムであった。1986年からは、大分県からの補助もあり4回線の疑似電子会議システムを運転開始した。この頃から「データベース、コミュニケーション、通信コントロール」のサブシステムで構成したトータルシステムとなった。1989年からは、パソコン通信局コアラを通じて県内のデータベース(統計、生涯教育、図書館など施設)と接続が可能になった「豊の国ネット」が構築された。そして各市町村間を結ぶパケット通信をベースにした情報道路インフラとしての骨格システムが完成されていった。このシステムは県内12個所にアクセスポイントを設置し、県内全ての各市町村から県内のデータベースに、どこからでも同一料金でアクセス可能となった。また、このころから一般ユーザーも爆発的に増加してきた。そして日田地域においてもネットワークが芽生え始めてきた。また、この頃NTTピノキオスクールが日田市に誘致され、パソコン通信局BBS「ピノキオネット」が構築され日田地区における草の根的パソコン通信が確立されていった。あとで、このネットが大きく日田地域のインターネットの普及啓蒙に大きく関わってきている。1996年からコアラはインターネット型地域情報ハイウェイ(RII)実験システムを構築し、県庁内LAN、学校、企業、商店街と光ファイバーで結んだ。県内のインターネット環境は1997年から「豊の国ネットワーク」がOCNエコノミーを利用し、県内12のアクセスポイントを設置することにより実現され、日田地域からも3分10円のインターネット接続が可能となった。また、日田市がOCNエコノミーサービスのエリアとなったため、個人ユーザーや企業がOCNエコノミー接続を開始している。特に地域でのプロバイダを目指す「hita.or.jp」や民間企業「oda.co.jp」、あるいは個人ユーザーのレベルでドメインの取得が行われている。日田地域では「豊の国ネットワーク」へのインターネット接続が3分10円で済むようになったため、個人での接続が増加し、日田市内の回線数が8回線のため夜間を中心に過密状態にある。 より、快適な環境を求めるユーザーは、大分市、福岡市、久留米市へ接続していることからユーザーにとっての非常に負担が大きい。日田市内の教育現場においても「こねっと校」は福岡市へ接続しているのが現状である。今後、この地域の教育現場でのインターネットの普及を進めていく場合、接続先は非常な問題となってくるものと思われる。

(2) 教育現場におけるインターネットの状況

 現在、大分県における教育現場におけるインタネットの接続状況は100校プロジェクト指定校2校、こねっとプラン指定校(小学校6校、中学校6校、高等学校8校)計20校、マルチメディア国際交流推進指定校(2校)、その他私立高等学校4校、大分大学教育学部付属中学校、その他県立高等学校数校程度である。また、へき地学校高度情報通信整備の活用として離島と衛星通信(N−STAR)交信した事業が実施されている。現在のところ接続校が少ないため、授業の中でインターネットを位置づけ展開している学校は極めて少なく、100校プロジェクト校2校、こねっとプラン校数校および私立高等学校の4校、個人的にIDを取得して熱心に活動されている先生方数名程度に過ぎない状況にある。そのため、県教育センターでは構内LANを構築し教員の研修に努めている。平成9年度より「情報通信ネットワーク拠点の整備」として教育センターを中心とした情報の拠点整備が始まろうとしている。

 日田地域の教育現場おける接続は、こねっと校(小中高各1校、計3校)とOCNエコノミーで接続した私立高等学校1校、「豊の国ネットワーク」を通じたPPP接続による私立高等学校1校、CATVを利用した地域内イントラネットを構築した大山町(小学校3校、中学校1校)に過ぎない。

(3)大分県における地域ネットワークの現状

 前述の「豊の国ネットワーク」を中心とする「コアラ」は、単なるプロバイダとしてではなく様々な地域情報をホームページ上に揚げ地域密着型の地域コミュニケーションを展開しようとしている。その他に地域ネットワークとして展開され独自の運用がなされ、強い行政指導のもとに設立された「諭吉の里ネット」である。この地域ネットワークは本地域の地域ネットワーク形成において参考になるものとしてとりあげたい。

 中津市(人口約7万人)を中心とした「諭吉の里ネット:http://www.yukichi.ne.jp/」は、「地域ネットワークにおけるコミュニティの発展」を願い、中津市が中津市内及び近郊をエリアとしてサービスを平成9年7月より提供しているものである。これは、中津市と労働省と民間企業の合同出資で経営されている「中津コンピュータカレッジ」にサーバを設置し運営にあたっている。サービス内容として(1) 中津市役所からの情報提供、(2) 地域情報提供 、(3) 地域ネットニュース(電子会議室)、(4) インターネット接続サービス(端末型ダイヤルアップIP接続による電子メール、個人ホームページ、メーリングリスト、ウェッブカウンタ(Web Counter)およびCGIなどの提供)などである。上位への接続はOCNエコノミーで接続し、アナログ、またはデジタル(ISDN同期64kbps)のダイアルアップの接続受け口を23回線分設置している。来年度からは1.5Mbpsの上位への接続と接続受け口を46回線に拡張することになっている。料金は固定料金制(中津市民1000円/月)である。当初、会員数50名程度ということでスタートしたが半年で500名を越え、予算面での運営状況は極めて良好である。現在590名(平成10年2月現在)の会員が参加している。商工観光課が運営していることから中津市教育委員会との連携が薄く、現在、教育利用(学校との接続)の具体的な案は計画されていないようであるが将来的には接続されるということである。




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