3.3.1.3 地域ネットワークの必要性

(1)日田インターネットの会の誕生

 前述のように、日田地域のインターネットを取り巻く状況は厳しく、接続ポイント、インターネットに対する知識や活用面での低さなどの問題により他地域に比べると非常に遅れていた。平成8年4月19日「日田インターネット利用を話す会」と題し、すでに、この地域でインターネットを活用している者、また、今後活用していこうとする者が集まった。日田林工高からも、100校プロジェクトの一環として、また、地域のインターネットの拠点の役割として参加した。この会では、各自のインターネットへの取り組みを発表し「インターネットによる商用・教育・趣味的な活用は無限の可能性を秘めており、今後、更に学習会を続けよう。」という決議を行った。日田林工高として、日田林工高施設の見学利用、研修の場および講師の提供、日田地区ユーザーに対するメーリングリストの提供を約束した。平成8年5月より日田林工高のサーバにメーリングリストを設定(hita-net@hitarinko-hs.hita.oita.jp)した。なお、メンバーは当初30名程度のものであった。このメーリングリストの活用によりインターネットに関する技術やマナーの向上や情報交換をすることによって、現在の日田地域でのインターネットの問題点が明らかになってきた。そして、このメーリングリストのメンバーを中心に問題を解決していくには組織的な動きが必要であることが再確認され「日田インターネットの会設立準備会」を設立することにした。そして並行して積極的にメンバーの拡大を図ることにした。商工観光・教育・医療福祉・趣味的な活用等各分野から代表を選出して方向性を見いだすことにした。そして、組織としての活動として、NTT大分より講師を招き、アクセスポイントのひとつとして今後期待されるであろう「OCNセミナー」を開催した。セミナー終了後、参加者約60名で「日田インターネットの会」設立を進めることを確認した。そしてメーリングリスト上およびオフラインでの準備会を5回開催し、平成9年5月31日、「日田インターネットの会」設立総会を迎えることになった。当日は大分県知事代理として大分県企画部企画調整課情報化推進室室長、各市町村代表、コアラ事務局長、地元プロバイダ、NTT等の出席を頂き100名を越す参加者があった。

 会の目的を「日田市郡及びその周辺地域におけるインターネット(広義にはコンピュータ通信全般を含む)の振興、研究、実践を通じ会員の親睦とそのレベルの向上を図る事を目的とする。」(会則2条)とした。

   (http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/kaisoku.html
 主な活動内容として(会則4条)は下記のとおりである
  a.会員相互の親睦、交流に関する事項
  b.インターネットの研究、実践及び提言、啓蒙に関する事項
  c.その他、第2条の目的達成に必要な事項

具体的な活動として

 a.初心者のためのインターネット講習会の開催(日田林工高校と共催)
 平成9年8月3日日田林工高の施設を利用して講習会が開催され100名以上の参加者があった。参加者のほとんどがダイヤルアップ接続であることから日田林工高のLAN施設の他にNTTの協力でダイヤルアップ8回線を確保した。講師は日田林工高の職員および会員で行った。      テキストについては

       http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/inet/index.htm
    講習会の状況は
      http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/inet/event_08.html

  b.市内小中高等学校との連携と教員および児童生徒のための講習会開催

     日田市小中高情報処理連絡会との連携して日田市内小中学校教員に対してはホームページ作成講座を実施、会員の中から小中学校の教員が中心に講師となり実施する。日田市小中学校公式ホームページ作成の足がかりとなる。

     (http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/ht0002.htm

     今年度中に、児童生徒対象に「インターネットってこんなことができる」と題しての講習会の開催を予定している。

  c.インターネット接続および技術支援出張サービス

     個人ユーザーは、最初の接続設定時においてのトラブルが多いことから要請があれば自宅まで出張サービスする体制を整えている。また、会員の突発的なハードおよびソフト面でのトラブルも対応できるようにしている。

  d.隣接地域ネットワークとの交流

     近隣の地域ネットワークとして「小国郷ネットワーク」、「諭吉の里ネットワーク」、「ぶんごインターネット」などがあるが積極的に交流を進めている。今年度については熊本県の「小国郷ネットワーク」と積極的に交流を行った。研修会等においての講師の派遣も行っている。              (http://210.145.55.195/~msa/u-net/inet.html)  

   今後は、近隣の地域ネットワークとの関係を深めるためにメーリングリスト連合を設立しようとの動きもある。

  e.地域へのインターネットの啓蒙活動

     本地域においてはインターネットに対しての関心が薄いことから、啓蒙活動および会員の拡大をおこなっている。

  f.インターネット利用についての情報交換

     メーリングリストを使い、お互いの情報交換を行うようにしている。また、

    平成10年2月25日インターネット利用についての公開シンポジュームを開催。商工観光・教育・医療福祉・趣味的な利用等各分野からの事例が報告され今後の展望を模索した。

 g.日田林工高校のサーバ管理支援

   技術的に高いレベルを持った会員が多く、日田林工高サーバの有効的な活用方法アドバイスおよびトラブル発生時においての復旧支援もある。サーバについてはメーリングリストやホームページの設置などにより日田林工高のサーバというより、地域の中のサーバで親しまれている。校内のLAN工事についてもボランティアの手で行われている。  

 日田インターネットの会の設立(平成9年6月1日)後、それまでの簡易的なメーリングリストから、fml2.1を利用した本格的なメーリングリストを設定し積極的な交流がなされるようになった。カウント数は平成9年6月より3000通を越えている。特にメーリングリストの運営規則は作らないで、会員の交流の中で自然と「きまり」が生まれるようにした。初心者にとっては、このメーリングリストにより技術支援を受けるということよりもインターネット上のマナーを学ぶことができると非常に好評である。運営管理については、日田林工高職員が行いメーリングリスト上の舵取りの面での支援も行っている。この、メーリングリストは下記のことを目的とした。

  a.技術的な支援

     初心者にとっては、インターネットやパソコンに関するソフト、ハード面に関する質問が多い。これらの質問が自由に投稿され誰かが必ず解答するような雰囲気づくりを常時心がけている。

  b.インターネット上のマナーについての論議をする場

     前述のように、メーリングリストには運営上の決まりは定めていない。

    自由な発言より、参加者自身が自然とルールをつくるようなメーリングリストを目指している。また、ネチケットを討論する上で最もふさわしい場所である。

  c.インターネットの各方面での高度利用を論議する場

 会のメンバーは、中高生、医師、自営業者、民間企業、公務員、教師等様々である。これらの職種の異なった者同士が自由に自分の立場で発言し、それぞれの接点や利点等を見出している。日田林工高の生徒も数人メーリングリストに加入しているが非常に教育効果は大きい。

  d.地域と学校(教育)の接点としての場

   教育現場と地域との接点は、ほとんどなかったがメーリングリストの利用を通して外からの情報交換が生まれ地域での学校の役割や生徒と地域の接点が生まれ教育効果が高まった。

  e.地域情報を流す 

     会のメンバーは日田地区の住民だけではなく、日田地域出身で国外(カナダ2名)や関東、関西方面の方も数多く参加していることから各地の季節ごとのリアルタイムの情報が入ることから生きた教材として使用が可能である。

  f.地域(住民)からの教育現場への教材提供

住民からの「平和教育教材」「地域への提言」「時事問題」等を提供して頂くことができる。これにより地域との関係を大切にしながら教材、授業の展開が可能となった。

  g.事務連絡

  h.会員間の親睦を深める

(2)100校プロジェクト校と地域とのかかわり

 平成7年5月に日田林工高にインターネットが導入された当時は、インターネットユーザーは少なく、もちろん、学校現場においては県内で接続されている学校はほとんどなかった。当然ながら、100校プロジェクト校としてインターネットを地域の学校にいかに広め、また、地域の特性に応じた教材としてどのように展開していけばよいかということを模索した。したがって、積極的に教育現場や地域に対して日田林工高の施設を開放することにした。

 a.メーリングリストで広がる地域の輪

  現在、日田林工高のサーバーには5つのメーリングリストを下記のとおり設定している。

hita-net@hitarinko-hs.hita.oita.jp

   日田インターネットの会の会員用のメーリングリストで参加人数は151名。

  会員以外からの書き込みはできないようになっている。

tegonin@hitarinko-hs.hiat.oita.jp

   日田インターネットの会の世話人会用のメーリングリストである。会の方向性や運営は、このメーリングリストを用いて行っている。

edu-oita@hitarinko-hs.hita.oita.jp

   県内の教育関係者のメーリングリストで現在35名が加入している。県内の教育現場でインターネットを利用している教師が主である。県内の教育現場におけ  るインターネットの利用やこれからの方向性等が積極的に論議されている。

  rinko-net@hitarinko-hs.hita.oita.jp

校内のアカウント者全員が加入しているメーリングリストで事務連絡等に主として用いている。

test-ml@hitarinko-hs.hita.oita.jp

校内外での研修用に作られたメーリングリストで、研修会用のIDも設定している。

 b.Webサイトの提供

 平成7年にインターネットが導入されて以来、直ちに近隣の市町村のホームページを作成することになった。各市町村長宛にホームページ作成の意義と理解、および作成資料の依頼をした。全ての近隣の市町村(1市2町3村)より資料が送られてきた。

 資料をもとに生徒の手で市町村ごとのホームページを作成した。当時は市町村ごとのホームページは少なくマスコミが取り上げたこともあって、膨大なアクセス数があった。ホームページ作成の技法は、もちろんのことであるが郷土を見つめなおす意味で貴重な教材となった。現在では、各市町村独自でホームページを立ち上げているが、「生徒の目からみた郷土」ということで日田林工高独自のホームページも立ち上げている。

 日田インターネットの会ホームページについては日田林工高に設置し、管理については会員がリモート管理している。(http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/)

c.地域展開における教育効果

 日田林工高、新100校プロジェクト自主企画の内、3企画について地域との関連を持たせる企画を展開させた。また、日田インターネットの会メーリングリストで紹介された「私の戦争体験記」(5回シリーズ)を教材にした、小学校での平和教育の実践もおこなわれた。

 ・「小さな質問箱」の設置

 日田林工高は職業系の高校であることからインターネットが導入されて以来、数多くの専門的内容についての質問が小中学校および地域から電子メールで送られてきた。今年度の100校プロジェクト自主企画の一環として日田林工高のホームページに「小さな質問箱」を設定して外部からの色々な素朴な質問に対して「小さな質問箱」と題したページを設置しすることにした。そして地域にも「小さな質問箱」を開放することにした。

   (http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/kikaku/q-box.html)

 ・「課題研究共同研究」

 「課題研究」については科目の設置以来、生徒の興味関心も高く、年々充実したものになり実績を上げている。この「課題研究」を複数の学校で同一のテーマを設定し、

その目標達成のためにネットワーク環境を用い、現在行っている学校の枠を越えた、より質の高い研究を行うことを目的とした。また、インターネットを利用して、情報の収集をおこなうことは意義深いことと思われる。「課題研究共同研究」と題したページを設置した。(http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/kikaku/kadai/kadai-m.html)

 そして、地域にも課題研究共同研究を呼びかけた。地域での職業系高校のあり方などが問われる中、地域と密接な関係を持ち「開かれた学校」のイメージを持って頂き、なんらかの形で地域へ貢献を考えることにした。また、地場産業や地域とのつながりを考えるうえで重要な接点であると思われる。地域からは、建築科の課題研究「豆田町の町並み」に対しての意見(古い町並みとバリアフリー)が寄せられた。

 ・「進路指導における利用」

 現在、進路指導において生徒が企業、進学先を選択する材料としては、求人票、求人情報誌、リクルート等が発行する学校案内、また、教員からの情報によって進路を決定しているのが現状である。したがって、生徒自らが積極的に情報を入手しようとしても限界があり、企業および進学情報について限られた材料より判断し進路を決定している状況にある。近年、企業、大学、専門学校等は積極的にホームページを立ち上げているところが多く、そのコンテンツについても企業紹介や求人情報、学校案内、入学案内等非常に充実されたものが多く、進路決定の材料となる貴重な情報であると思われる。これらの情報をサーチエンジン等で検索し情報を入手することによって進路決定の材料、また、受験対策の資料収集としてインターネットの利用は効果的であると思われる。また、高校生においては、進路先への接点は教師を通じて行っていたが、電子メール、掲示板の利用によって生徒から積極的にコンタクトをとることができるようになった。就職内定後についも、さらに内定企業の情報を入手させることにした。これについては、詳しい業務内容、景気の状態、新しい取り組み、新製品情報等就職後、すぐに役立つ最新の情報を入手させることにした。これにより、企業へ対する理解と企業就職への意欲が生まれると思われる。また、地元企業においても積極的にインターネットを通じての交流を行うことにした。

 ・メーリングリストの内容を教材に

 日田インターネットのメーリングリストには様々な情報が流れてくる。その中に「私の戦争体験談」と題して5回シリーズで投稿した日田市の浦塚政子(元小学校教諭)さんのメールがあった。それを日田市立小山小学校では平和教育授業の教材として使い、事前の現地取材も含めて、ホームページにし、それを見せながら、平和授業を行った。子どもたちは、初めて耳にする戦争体験の話に真剣に聞いていた。地域教材の掘り起こしということからも、このメーリングリストの内容を教材にすることに関して有意義だったと思う。また、このホームページの情報発信による、他校からの反響も大きかった。

 

(3)大分県教育ネットワーク

 「大分県教育ネットワーク」は県内の小中高等学校のインターネットの普及啓蒙と技術支援および教員間の交流を目的に設立した(edu-oita@hitarinko-hs.hita.oita.jp)教育ネットワークである。現在、小中高等校、教育委員会、一般(何らかの形で教育に関係する者)、また県外の方も含めて、35名で運営している。発信数は、平成9年6月から平成10年2月25日現在700通を越えている。運営にあたっては、日田市立小山小学校教諭 川秀徳氏を中心におこなっている。県内にはインターネットが接続されている学校は少ないが、個人的に取り組んでいる教師は多い。個人で教育現場にインターネットを展開する場合、困難にぶつかることが多ことから、お互いの情報交換の場を設けた。また、できるだけ県内のインターネットを実践している学校等の情報を集め、それを広める意味で、平成9年6月大分県学校ホームページ集を作成した。

http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/oitaed.htm
http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/oedtop.htm

 このネットワークを運営していくために、下記の点に留意して取り組むことにした。

a.教育に役立つ情報の発信(存在価値を高める。)

  できるだけ多くの情報から、必要と思われる情報を精選し、運営の立場として有 用な情報のみを選択して流している。情報は、新鮮なものほどよいので、この情報 収集と提供が大変である。

b.技術面、ソフト面での支援

  インターネットとの接続、操作方法、ソフトの利用については誰でも一度は経験する壁である。これらに対する質問を気軽な気持ちで発信できる雰囲気作りをした。

 また、質問に対してはできるだけ、丁寧に回答し不明な点は他のメーリングリストに質問するなどしてサポートしてきた。

c.参加者の発言を促進する。

  会員の発言にはなるべくコメントをつけることや、有効な情報を流すこと。発言内容は、教育的なものでなくてもかまわないようにして、自由な発言での交流をねらっている。

d.学校ホームページの登録の拡大

  できるだけ多くの仲間を増やし、お互いの情報を交換することは教育現場においては最も重要なことである。したがって、ホームページを発信している方を積極的に探し出しリンクのお願いをしていった。

e.教育関係者への広報活動

  この教育ネットワークについての広報活動を積極的におこなった。また、研究発表等で、その成果を発表した、夏の大分大学でのPCカンファレンスにおいて、このメーリングリストのことを発表した。                      http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/pchapyo.htm 

 

f.共同企画等への協力

  学校間の共同企画へ積極的に取り組んだ。大分県立緒方工業高校の環境調査等の合同調査等に協力した。今後は、県内で研究テーマを決定し「県内版100校プロジェクト」を行いたいと思っている。

(4)日田教育ネットワーク小中高連絡会

 日田市内の小中学校で組織されている視聴覚研究会(情報教育担当)と高等学校との情報交換、研修の場として設立されたものである。日田地区では小中学校の情報処理に関する事項については視聴覚研究会が主体的に動いている。従来、小中学校と高校の情報処理関係でのつながりがなかったことが設立のきっかけとなった。今後の活動として「こねっと校」の日田南部中学校と日田三隈高校で進路指導に関するインターネットによるテレビ会議システムを使った交流が行われ、日田林工高とも交流が予定されている。また、積極的に研修がおこなわれている。

平成8年11月19日 花月小学校 スーパーYUKIを使った算数5年の授業
     http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/NEWS1.HTM
日田市の小学校に統合ソフトとして整備されているソフトの研修を兼ねて行った。

平成9年5月21日 小山小学校 JAVASCRIPTを使ったゴミ問題クイズによる社 会3年の授業 http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/gomi9.htm

平成9年7月1日 三和小学校 JAVASCRIPTを使ったゴミ問題クイズによる社会3年の授業 http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/miwac.htm

平成9年8月29日 日田市教育センター コンピュータ研修会
  http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/cken.htm

平成9年12月15日 日田市教育センター ホームページ作成講座

平成9年12月に日田市視聴覚主任会でのホームページ作成講座を開催した。この講座の目的は「日田市小中学校公式ホームページ集」を作成することが目的である。(http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/ht002.htm)平成10年4月に公開予定であるが、児童生徒の個人保護条例問題もあり慎重に進めている。教育活動の場面については、児童生徒の活動の様子が画像として紹介されている方が感動することから公開ができるように進めている。




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