(2)教育委員会所管の市立学校園及び教育研究機関における情報教育システムの電子計算機処理及び電子計算機の結合について(個人情報保護審議会への諮問の本文)

1.概要

 最近の急速な情報化の進展に伴い、学校教育においてもパーソナルコンピュータに代表される最新の情報処理機器の積極的導入が進む中、平成87月に公表された「中央教育審議会 第一次答申」等にも述べられているように、将来の高度情報化社会に対応できる人材育成の必要性が重要視されつつある。また、文部省としても、こうした状況を踏まえ、義務教育諸学校等に多数の情報処理機器を導入し、これらの情報処理機器を活用した教育を積極的に推進するよう各種の施策を展開している。更に、現在では、インターネットに代表されるパソコン通信の利用が、学校教育におけるコミュニケーションの多様化・充実のために必要であるとの認識も高まっている。

 教育分野では、職業教育を通じた産業教育基盤の充実のため、プログラミングや会計処理、実習データ処理、CADCAMComputer Aided DesignComputer Aided Manufacturing)等の学習を主たる目的として、全国的には、商業・工業高等学校等において早くから情報処理システムが導入され、教育活動に利用されている。

 しかし、職業教育だけでなく、あらゆる教育の場での情報処理機器の利用が必要になってきており、既存のワードプロセッサ等により作成された教育研究資料などを、これらの情報処理機器を利用して、積極的に学習活動や教育・研究活動に活用したいとの機運も高まっている。

 そこで、大阪市教育委員会として、平成8年度後半(11月を目処)からの5カ年計画で、全ての小・中・高等学校及び養護教育諸学校に対して、小学校では児童2人で1台、中学校、高等学校、養護教育諸学校では児童・生徒1人に1台のパソコンを利用した情報教育が実施できるような環境整備に着手するとともに、教育センターを中核とした教育ネットワークを構築し、更に、この教育センターを経由して、インターネットに代表されるパソコン通信用ネットワークにも接続し、広く、幼稚園園児、小学校児童、中学校・高等学校生徒、養護教育諸学校児童・生徒、専修学校学生等(以下、「生徒等」という)の教育活動並びに教職員研修、研究活動に活用できるよう、環境整備を積極的に推進して行くこととする。

2.現状と問題点

 現在、大阪市立の商業高等学校、工業高等学校では専門教科の「情報処理」「情報技術基礎」等の学習指導のため、中学校では技術・家庭科の情報基礎の学習指導のため、小学校においては児童が情報処理機器に直接「触れ、慣れ、親しむ」機会を提供するために、小規模ながらもパーソナルコンピュータの導入を順次行ってきたところである。

 こうした状況の中、大阪市教育委員会としても、本格的に情報教育の推進を図るべく、平成8年度後半からの5カ年計画により、小学校、中学校、高等学校、養護教育諸学校において情報教育用コンピュータの整備を充実し、高速デジタル回線による「学校間ネットワーク」の構築を図ることとなった。

 具体的には、各学校と教育センター、教育委員会事務局をネットワーク化するとともに、教育センターを中継としてインターネットに代表されるパソコン通信への参加を行い、情報教育の一環として、生徒等が直接各学校においてパソコン通信を行える環境を構築するものである。

 そのためには、取り扱う情報として、情報教育目的を達成するために必要な個人情報が想定されることから、その保護安全対策を講じる必要がある。

 情報処理機器の利用やネットワーク環境の活用による教育・研究活動は、これからの情報教育推進のためには必要不可欠であり、パソコン通信の利用についても、今後の情報化の進展の中では、避けて通れないものであるとの認識から、情報教育システムの充実を図るものである。

3.システムの内容

(1)処理内容

 情報教育システムの内容としては、生徒等や教職員の教育・研究活動に役立てるための情報収集や、インターネットに代表されるパソコン通信を利用した情報発信(提供)が中心であり、情報教育カリキュラムの中で、生徒等各自が情報処理機器を直接操作し、情報処理を行う。

 特に、パソコン通信を利用した情報発信(提供)のためには、「ホームページ」と呼ばれる成果物の作成が必要であり、この中に、情報教育の持つ無限の可能性に対して興味を持たせるために、生徒等自らが創意工夫を凝らした情報を搭載することを考えており、また、情報収集を通じて、より広い視野からの情報教育に役立つシステムを構築する。

(2)処理状況

 情報教育カリキュラムを通じて、パソコン通信を利用した情報収集・情報発信等を行うが、処理状況については、今後は当該カリキュラムの運用に関連して、頻繁になることが想定される。

(参考)
平成851日現在の大阪市立学校園の現況
・幼  椎  園
61園
園 児 数
5,763人
教育職員数
346人
・小  学  校
297校
児 童 数
133,710人
教育職員数
6,587人
・中  学  校
129校
生 徒 数
5,998人
教育職員数
4,071人
・高 等 学 校
25校
生 徒 数
17,696人
教育職員数
1,492人
・養護教育諸学校
10校
児童・生徒数
1,271人
教育職員数
835人
・専 修 学 校
1校
学 生 数
80人
教育職員数
7人
(デザイン教育研究所)          
合   計 523校園   224,518人   13,338人
   
教育研究機関  ・大阪市教育センター     職員数は上記に含まれる。
          ・大阪市立幼児教育センター  職員数は上記に含まれる。

 

(3)システム構成
   全パソコン数 13000台(予定)
(内訳) 小学校
6500
  中学校
5400
  高等学校(専修学校含む)
1000
  養護教育諸学校
80
  教育センター
20



(4)処理場所
 教育委員会所管の市立学校園及び教育研究機関(教育センター、幼児教育センター)のパソコン教室(情報教育室)並びに職員室等。
 なお、職員室等については、原則として厳重な管理可能な場所に設置する。

(5)実施時期
 平成8年度後半(11月以降)予定

(6)その他
 システムの操作については、直営で行う。
 具体的には、機器の抹作は教職員及び生徒等が直接行うとともに、パソコン通信を利用して収集した情報(データ)についても、学校長の責任において管理する。
 また、生徒等に関する情報の取り扱いの是非については本人の承諾を得るとともに、基本的には保護者にも教育活動報告などの機会を利用して、定期的に通知・了解を求めるものとする。

4.個人情報の処理範囲
(1)処理する項目
@生徒等に関わる項目
・氏名、肖像(顔写真等)、性別、学年、学科
・活動記録(制作作品、調査研究成果、クラブ活動、生徒会活動等)
・その他生徒等の教育に関わる情報
A情報教育に関わる項目
・講演・講座・催し等の講師名、役職名、役職の経歴、薯作物等
・情報提供者からの提供内容
(2)処理する項目の選別
@発信情報
・パソコン通信を利用して発信する情報の選別については、当該情報提供者(生徒等)の同意に基づく情報といえども、当該個人のプライバシー侵害を防ぐため、各学校に設置する校長を委員長とする「情報教育委員会(仮称)」において、発信の可否を検討し、発信した情報については、速やかに各学校に通知し、今後の選別の参考とする。
A受信情報
・パソコン通信を利用して受信する情報の選別については、当該受信情報が多種多様ではあるものの、上記の「情報教育委員会(仮称)」において情報教育の目的・必要性に照らして、受信後のコンピュータによる記録・編集等についての適否を検討するとともに、速やかに各学校に通知し、今後の選別の参考とする。
5.電子計算機の結合先
 パソコン通信を利用して個人情報を処理する際の電子計算機の結合は、インターネット等に代表される一般的な「情報ネットワーク」に対して行うものとする。
 なお、新たなネットワークの利用については、当該ネットワークの社会的役割を「情報教育委員会(仮称)」等で十分検討した上で、その是非を決定する。

 

6.個人情報の保護安全対策
 個人情報保護・データセキュリティ対策については、「大阪市個人情報保護条例」及び「大阪市電子計算機処理データ保護管理規程」に基づくとともに、技術面・運用面において、次のように措置する。
(1)技術面での保護安全対策
 基本的には、本システムで処理する個人情報等は、本人同意に基づき、パソコン通信を利用して公表することを前提としたいわゆる「オープン情報」であるが、各種のネットワーク上で実際に公開(公表)するまでの情報についても、管理・監督する教職員の認証番号(IDコード)、暗証符号(パスワード)を入力しなければ繰作不能な取り扱いとする。
 また、外部からの不正アクセス防止対策としては、ホストコンピュータから独立した外部ネットワーク接続用サーバーを設置するとともに、パソコン通信による情報の発信に際しても、直接各学校から行うのではなく、教育センターに設置した「外部公開用サーバー」を中継して、ネットワークに接続するシステムとする。
 なお、大阪市の「学校間ネットワーク」の構築は専用線を使って行う。

 

(2)運用面での保護安全対策
 本システムで取り扱う情報については、
@発信情報については、当該本人からの収集が原則
A受信情報については、たとえその受信が当該情報発信者の了解の上であるとはいえ、その取り扱いの適否を検討した上で、記録・編集をおこなう
B原則として、毎年度当初に情報は廃棄する
こととする。

 さらに、生徒等が情報を処理しようとする場合には、必ず教職員の管理下で行うようにし、生徒等が直接情報を発信する事の無いようにするとともに、パソコン設置場所及び記憶媒体の管理についての手引書等を作成して、これらの管理を徹底する。
 なお、教聴貝や生徒等に対しては、人権教育についての研修等を実施するとともに、個人情報の保護並びに情報モラルについての研修等も実施する。



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