b.「山梨の地質」のWeb教材化
田富南小学校
志村祐二
・はじめに
平成元年に小学校学習指導要領の改訂が行なわれ,従来の学習指導要領の改善の具体的事項の一つとして,「学習の対象とする自然の事物・現象については,地域の実情に即し,地域の自然を生かした指導が行なわれるよう内容の示し方を改める」ことが示された。それにそって,「C
地球と宇宙(2)」では「地層や岩石などを観察し,土地をつくっている物の特徴や土地のでき方を調べることができるようにする」が掲げられている。
地学における科学の方法の習得には指導書にも「地学的領域の学習を総合的にとらえさせるために,郷土の地質を調査したり,地質に関する資料をもとにして,地域の地史を組み立てることも有効である。」とあるように,身近な自然の事実から問題を把握し,具体的なデータを収集・処理することによって,一般的の地学事実に対する仮説を発想していく探求の過程が重要であり,郷土教材は自然の正しい認識にかかせないものの一つである。また児童・生徒は身近な自然の観察によって,地学的現象に深い興味や関心を持ち,積極的に反応し,さらに自分たちの生活と関連させながら,価値づけや主体化へと発展させていくことが可能であると考える。
・Web化の意義
教師は教材については地域教材を活用して,観察や実習をさせる指導が重要であることを認識し,日々努力しようと心がけている。しかし,自分自身を考えても実際には,以下のような問題から教科書教材の扱いが中心になりがちで,市販のスライドやビデオなどの活用ですましてしまうことが多く,足元の郷土教材を活用し,実践する回数は少ない。
○問題点
@日々の多忙から教材研究をする時間が十分とれない。
A学校の近くに野外観察に適した場所なかったり,あっても地学事象を理解させるための典型的となり得る十分な素材が極めて少ない。
B近くに野外観察する場所があっても,実施する時間がなかなかとれない。
C郷土教材に関する情報を得る手段がない,またはあっても知らない。
今回Web化にあたっては特に問題点AやCの項に関わって作成してみた。特に各地のボーリング掘削資料などは,すぐに教材として使えるものではないかと考えている。Web化の対象としては児童・生徒をはじめ,広く一般社会人までを考えに入れ構成してみた。広く浅い情報ではあるが,特に情報を発信するだけでなく,見てくれた人たちからの新たな情報の提供も期待し,これからの情報交換の場となったり,交流の機会となるこを期待している。
・ウェッブページの構成
この指導について指導書では
○子ども一人一人に自由に地面の下の様子を想像させ(地下10m〜20mの深さ),予想図を書かかせるとともに,各自の予想を大事にし,以後の観察活動へ意欲を高める。
○学校などのボーリング資料があったら提示して,地面の下をつくっているものを具体的に見せ,どのようなものがどの深さあたりにあるかを知り,スケールの大きさを実感させる。
○できれば学校だけでなく近くの資料も提示し,大地のつくりを推論させる資料としたい。
などと解説されており,教科書にも実際にボーリング掘削作業をする写真や,サンプルの写真,解説が掲載されている。
・ボーリング資料の活用の利点と問題点
「大地のつくり」を学習する場合,露頭での観察が中心になるが,その学習者と自分たちの立っている地面の下とは結びつきにくいものである。その点ボーリング資料やデータでは実際に地下の様子を知ることができので理解しやすいと考えられる。したがってこの課題に迫るためには,まず自分たちの校庭を掘らせ,実際にはとてもそんなに深くは掘れないことを実感させたうえで,
学校にサンプル資料があればそれを見せ,触れさせる事で,自分たちの力で掘ることができなかった地下深くのものに触れられることに感動するとともに,課題解決にも結びつくと考える。
しかし,現実問題ボーリング資料が学校に保管されていることは少なく,管轄の
教育委員会に保管されていることが多い。したがってこの資料を活用するためには,教育委員会で借用することになり,ましてや地層の広がりまで実感させるためには学校の資料1本ではなく,その付近のデータをも何本か提示し,つなげていく必要がある。実際に数本のサンプル,またはデータを手に入れるにはそれなりの時間と労力が必要とされる。
・活用方法
@本ウェッブページに掲載されているボーリングデータのサンプル位置をウェッブページ上の地図から確認する。
A必要な地点のデータ(柱状図)を開き,必要な枚数分プリントアウトする。
B各地点の柱状図を横に二次元的に同質の地層でつなぎ,地層断面図を書く。
Cつくった地層断面図をもとに,地層の重なりや広がり,土地のできかた(水の働きでできた地層か火山活動によってできた地層か)について話し合う。
・指導上の注意
ボーリング業者の報告をもとに作られたデータは「レキ混じり砂質シルト」など
というように土質が細分化されているため,児童・生徒には理解しにくい。そこで指導する際はあらかじめ,「小石」「砂」「粘土」などというような粗い分類で色分けするように指導した方が理解しやすい。またサンプルを採取した場所の標高までは今回表示されていないので,丘陵地などでは基準の高さが違うこともあり,同質の地層でつなげて出来上がった断面図が単純に実際の深さのところに存在するとは言い切れない場合もあるので注意する。
5・おわりに
本ウェッブページを公開したあと多くの方々から質問が届き,改めて情報発信の責任の重さを感じている。例をあげれば,
○以前から化石の採集をしたいと思っていました。化石のページからすると早川町が多いようですが自由に採取してもいいのですか。また簡単に行けるところですか。(山梨・男性)
○化石採取教室のようなものがあったら教えてください。(山梨・男性)
○ページの情報を参考にして今日黒平から水晶を拾ってきました(中略)何やら鉱物が身近に感じてきました。更にいいものを探したいと思います。(長野・女性)
○今,社会の勉強で伝統工芸について調べています。(中略)水晶細工の置物をつくっている人の苦労や工夫を知りたいので,教えてください。(山梨・小学生)
○台湾の黄大一教授より「日本で鉱物切手の発行を」と強い要請がありました。私は国際的にも認められた和名がついている鉱物として乙女鉱山産の「日本式双晶」を考えています。その実現に向けて貴会の検討,働きかけをお願いしたと思います。(静岡・男性)