評価シートにより各学校の評価実験責任者を対象に以下の4つの内容について調査した。
・教育用レイティング仕様の基準について
・レイティング情報提供サービスの仕様
・フィルタリングソフトの仕様
・全般に対する課題事項
各項目とも以下の5段階評価とした。
1:不満足
2:やや満足
3:中立
4:やや満足
5:満足
調査回答は12件あり、各調査項目ではその評価平均を表示し、次に評価シートに記述された課題事項をまとめ、最後に分析を示した。
(1) 教育用レイティング基準の仕様
[カテゴリの必要性、妥当性]
ヌード | 必要度 | 4.9 | 妥当性 | 3.9 | 区分表記の分かり易さ | 4.0 |
セックス | 必要度 | 4.8 | 妥当性 | 3.9 | 区分表記の分かり易さ | 3.9 |
暴力 | 必要度 | 4.8 | 妥当性 | 3.6 | 区分表記の分かり易さ | 3.0 |
言葉 | 必要度 | 3.9 | 妥当性 | 2.9 | 区分表記の分かり易さ | 3.1 |
その他 | 必要度 | 4.5 | 妥当性 | 3.3 | 区分表記の分かり易さ | 3.0 |
[教育用レイティング基準]
プロファイル設定 | 3.0 | 教育用レイティングとしての総合的妥当性 | 4.1 |
分析
コンテンツの評価を行う基準について、実験システムでは国際標準化しつつあるRSACiの基準(ヌード、セックス、暴力、言葉)をべースにその他の不適切な内容を収容するカテゴリを拡張し、各カテゴリについて0〜4の区分(レベル)を設けて評価する仕組みになっている。
叩き台となった実験システムのレイティング基準の総合的妥当性については「やや満足」の高評価が得られているが、他方、年齢等に応じてアクセスレベルを選択するプロファイル設定の評価が「中立」に落ちたことは、現状のままでも教育用レイティング基準として採用できる段階にはあるが、満足できる域には達していないので、教育用途でより使いやすいものにするためのレイティング基準改良の余地があるということを示している。
具体的には、各カテゴリについて必要性には高評価が得られたが、一部カテゴリでは妥当性や区分のわかりやすさ(これはプロファイル設定の実用性に関連する)について検討の余地があることが示された。また教育の場での選択可能性を広げるためにカテゴリの拡張を望む声も多く、教育用レイティング基準については教育関係者の意見を反映するかたちで今後とも改良していくべきものと思われる。
(2) レイティング情報提供サービスの仕様
[必要性、現状の妥当性]
データベース 登録内容 収録件数 3.5 登録ラベル情報 3.9
データベース 運用状況 アクセス速度' 2.6 内容 3.0
データベース サービスの評価 総合的妥当性 3.6
課題事項
・登録件数の充実
・迅速な更新
・組織内でのデータベースの利用(ミラーリング)
・ホワイトリスト/ブラックリストのデータの提供
・データベース内容が非公開のため、フロック機能評価が不十分であった
・キャッシュが大きくならない、またレスポンスが低下しない方法が必要
分析
レイティング情報提供サービス(ラベルビューロ)の機能についての利用者の立場からの評価であるが、登録されている評価ラベル情報については満足度が高いものの、登録件数については60%程度の満足度であり、ラベルデータベース登録件数(現状約13000件)について更に大幅な拡張が望まれる。
また、ラベルビューロヘのアクセス速度への不満が多く、通信回線の高速化とともに、データベースサーバ機能の高速化、分散化などアクセス改善に向けた改良が望まれる。
データベースの運用保守体制についても、不満ではないものの満足できる段階ではないとの評価であり改善を検討する必要がある。
(3) フィルタリングソフトの仕様
[性能]
処理速度2.5インストール3.0設定変更(管理者)3.3
設定変更(一般ユーザ)3.1
[機能]
PICSラベルによる選択的閲覧規制3.9オーサリング4.1
ホワイト/ブラックリスト、セルフレイティングの選択機能4.3
サードパーティ・レイティングサービスの選択3.9
[ソフトの評価]
ソフト機能3.6操作性3.3
課題事項
・安定性の確保
・高速に動作すること
・要求ハード仕様が高くないこと(メモリ、CPU)
・個別ぺ一ジ内の用語による拡張ブロック機能
・授業時にはホワイトリストが必要で、専門委員会で内容を検討し妥当なものを利用しやすいように分類して提供する方がフロックよりも有効では
・安全性が不十分(Macintosh版IFS)
・もっと簡易なものがよい
・制限の掛けられているべージをアクセスした場合の対応の検討
・ユーザクライアントの資源の少量化
・サーバタイプのフィルタリング機能への要望
分析
叩き台となった実験システムのフィルタリングソフト(クライアント動作仕様)についての評価である。
単なるブラックリスト/ホワイトリストによる一律なフィルタリングとは異なり利用者に応じて選択的なフィルタリングができるPICS方式をはじめ、利用者側の選択の幅を広げるカスタマイズ可能性について高評価が得られている。
機能、操作性についての満足度が落ちたのは、比較的大容量のメモリ、CPUパワーなどシステム要求仕様が高く、また動作に不具合が生じる場合があるなどやや安定性に問題があったためと思われる。反面、オーサリング(ラベル情報のカスタマイズ)・セルフレイティング選択(ラベル情報源選択のカスタマイズ)などカスタマイズ機能の搭載については高評価が得られ、各学校や授業の場面に応じた選択可能性が好評であることを示している。
処理の高速化、簡素化などソフトウェア性能の改善が強く望まれるほか、多数台数のクライアントに設定し多数のユーザに対応するための教育現場での運用管理について配慮(要求機器コスト・運用コストの低減、一括リモート設定、サーバタイプの開発など)する機能追加も望まれる。
(4) 全般に対する課題事項
・プロキシ版の開発を行ってほしい。
・フィルタソフトは必要だが、市販品は金額がネック
・見せたい/見せてよいべージのポジティブな評価情報提供も有効
・年齢に応じた推奨分類、対象年齢の記述(児童書の類推)
(ブースター、アンプリファイヤーとして)
・コンピュータの負荷の軽減と費用の低廉化
・学校に加えて、一般家庭も加えた実験ができればよい
分析
全般について自由記述によって、レイティングシステムの検討事項が提案された。
(1)〜(3)の評価も踏まえて、評価結果をまとめると以下のようになる。
・レイティング基準は教育利用に耐えるが、教育の場で本格的に活用するには、さらなる改良を望む。
・レイティングシステム利用時の体感処理速度の高速化、安定化を望む。
・フィルタリングソフトの運用設定管理の簡素化を望む。(プロキシサーバタイプの開発を望む)
・教育用レイティングシステムが無償で利用できることに高評価。
・利用側のシステム(コンピュータ、LAN、通信回線)が低廉なものでも快適に稼働するように望む。
・見ない/見せないというネガティブなフィルタリング(ブラックリスト型)のほかに、見たい/見せたいというポジティブなフィルタリング(ホワイトリスト型)も有効であり、機能拡張による対応を望む。
・ラベルデータベースには、ある年齢以下はあるレベル以上の情報を見せないという積極的なフィルタ利用方式のほか、対象年齢の情報を示し推奨するというような消極的な利用方式も検討の余地がある。