2.4 レイティングシステムの調査研究の結果

2.4.1 市販フィルタリングソフトの現状

市販フィルタリングソフトについての現状を調査した。

(1) 市販日本語対応フィルタリングソフトの一覧

表2.4-1に調査した市販日本語対応フィルタリングソフトの一覧を示す。

表2.4-1調査した市販日本語対応フィルタリングソフトの一覧

ソフト名 販売会社 対応OS
CyberPatrol アスキーネット株式会社 Windows95
CYBERsitter97 アイキューズリミテッド Windows95,WindowsNT
KidsGoGoGo マキエンタープライス Windows95,Macintosh
KeepUpGoGoGo マキエンタープライス Windows95
SmartFilter 株式会社ヴァート UNIX,WindowsNT
WebSENSE アルプスシステムインテグレーション株式会社 Windows95

(2) 現状
・クライアント型のソフトのほかに、サーバーによる一括管理ができるソフトが発売されている。
・規制対象サイトにアクセスし、フロックされた場合、普通の接続エラーが表示されるものがある。任意文字表示や任意URLへ転送したりするのが望ましいのではないかと思われる。また、生徒の実態に応じたURLを作成できるほうがよいと思われる。
・検索エンジン上でも、卑猥な言葉、単語のアクセスを拒否する製品もある。
・多くのカテゴリーの中から、選択してフィルタリングできる。しかし、カテゴリー別にブロックするかしないかの指定だけで、カテゴリー毎にブロツクのランク付けができない。
・価格は初期導入費用に加えて、継続して使用する場合、データ更新料が毎年必要になる。

(3) 各ソフトの特徴・価格等
各ソフトの機能、特徴、価格等は以下のURLから得ることができる。

財団法人ニューメディア開発協会の「レイティング/フィルタリング情報べ一ジ」
http://www.nmda.or.jp/enc/rating/index.html


2.4.2 兵庫県におけるフィルタリングソフト導入の事例

(1) 概要
 兵庫県立教育研修所では、県内の学校間の交流と学校とインターネットを接続する目的で教育用の情報通信ネットワーク整備計画をした。平成9年8月に第一段として構築したものである。また、教育研修所では、職員用コンピュータ50台と研修用コンピュータ114台をこのネットワークに接続している。構築にあたってインターネット上の子どもたちに影響を与える情報へのアクセスが問題となり対応方法を検討し、結論として当所のシステムで一括してプロキシーサーバでフィルターをかける方法とし、市販のフィルタリングソフトウェアを利用することにした。現在、すべての学校が接続できる状況ではなく、段階的に整備が進められていることからフィルタリングについても今後どのようにするかは課題である。

(2) システムの構成(平成9年8月)
プロキシーサーバ WindowsNT,MS-Proxy
フィルタリングソフト CyberPatrolProxy
所内クライアント 職員用コンピュータ50台
研修用コンピュータ114台
インターネット接続 民間プロパイダ128k専用線
ダイヤルアップ接続 学校からの接続INS1500(64k23回線分)

(3) フィルタリングソフトウェアの検討
 システムの仕様を公開するために平成9年初めから検討に入り、有害情報への対策を行うとして、その方法を調査検討をした。
 当時は、まだ市販のフィルタリングソフトがやっと日本語化されたばかりで、製品も限られていた。従来からプロキシーサーバにアクセスを制限先を独自に調査し登録する方法があったが、市販のフィルタリングソフトを選び制限リストの利用を契約した。市販のフィルタリングソフトを選んだ主な理由は、
 1) フィルタリングソフトの検証
 2) 有害情報に対する対策の啓蒙
である。
 1)のフィルタリングソフトの検証については、実際にフィルタリングソフトがどのレベルで制限をし、実際に有効なものであるかを学校や研修で利用しながら行い、有用性を見る。
 2)の有害情報に対する対策の啓蒙については、フィルタリングソフトによって制限されたことを利用者が体験することで有害情報に対する対策を検討することを考える場としたい。
仕様書を公開した時点では、プロキシー版のフィルタリングソフトの日本語版の商品化がされてなかったが、日本のサイトもすでに制限の対象となっており英語版を導入し日本語版の製品を待つことにした。

(4) フィルタリングソフトウェアの利用と問題点
 フィルタリングソフトの利用について利用者は、ブラウザの設定でプロキシー設定が必要で、一般のプロバイダー利用で必要の無いことから戸惑いがあった。
 また、当初はフィルタリングソフトを知ってもらうためにすベてフィルタリングソフトを利用する設定とした。
 研修では、インターネットの活用に向けての促進とともに有害情報への関心と対策のための手法が有ることが理解された。また、フィルタリングソフトの効果として当所の職員や研修や学校で利用した教職員から問題となるべージが見られるとの指摘があり、完全なものでないことも理解された。また、大きな問題点として特定のプロバイダーなど問題となるべージが多いところは、サイトごと規制がかかり、そのサイトにある有効なべージが見られなくなることである。また、検索システムで容易に新しい規制のかからないべージを発見できることもわかった。まだまだ、インターネットを教育に利用する場合、情報が少ないとされている現状では、大手のプロバイダーをこのような規制がかかると問題である。また、この中には、学校のホームページも含まれている。解決方法としては、有効なべージを制限しないものとして登録する。しかし、問題となるべージのリストを有料で提供するシステムとしては、改善が望まれる。
 このプロキシー版のフィルタリングソフトは、制限を一律しか設定が出来なく利用者に応じで制限を変えることが出来ない。多様な選択が出来るようなシステムが望まれるが出来ることは、制限するしないの選択だけである。
現在、プロキシーサーバの性能も関係するがシステムのトラブルは少ない。また、操作性においても、容易で大きな問題はない。
 しかし、システムの更新、データベースの更新時に不具合が起こりフィルタリングが正常に行えなくなったことが有る。システムやデータの構造などがシステムの性格から公表されないことで開発側にシステムを委ねている現状である。また、日本で開発されたものでないためシステムの不具合を確認するためにも開発元まで問い合わせが必要で時間がかかる。

(5)今後の課題
 現在、フィルタリングソフトを利用していることから、有害情報の対策に対する考え方が学校にも浸透してきている。また、合わせてこれらの情報に対して取捨選択活用できる能力を子どもたちにつけさせようとする意見も多くなっている。情報倫理に対する啓蒙にもなったと評価できる。
 学校においても校内LANをインターネットに接続が出来るようになってきたことから学校においてフィルタリングに対して具体的な対策の検討が始められている。センターを経由して接続する方法として問題点でも触れたよう今後検討し多様な方法で実施することが考えられる。
 NMDAのレイティング・データベースを有効に活用できる体制、方法の検討が望まれる。
 組織的に研究を進め全国の教育センター等が独自に実施するのでは無く、有害有用なべージの情報を分散処理的に集め、共有できる体制が必要である。
 また、新しい方法として有効な情報の検索を容易にするために各機関のホームページに検索語を付加し、この検索語から自動収集しデータベース化するシステムがある。兵庫県では、各機関のホームページに検索語を付加し平成10年9月30日-10月4日の第10回全国生涯学習フェスティバルでの試験運用を目指して生涯学習情報のデータベースを構築している。
 情報を発信する側から、また利用する側でインターネット上の情報を有効に活用できる仕組みの開発が望まれる。


2.4.3 今後の技術的および社会的展開方向について

(1) 技術的方向
 W3Cは、これまでのPICS仕様に加えて、レイティング基準やフィルタリング・ルールを記述するためのプロファイルの記述言語PICSRules1.1を1997年12月末に発表した。目的は、プロファイルの記述はユーザには難しいので、共用化できるようにすること、各種サーバ(検索エンジン、プロキシなど)が、例えばクオリティ、プライバシ、年令適合性、ソフトの安全性などを規宰したプロファイルに基づいた内容を出力できるようにすること、各種フィルタリングソフト間での互換性を実現することである。
PICSRules1.1では、複数のレイティング基準の利用、複数のラベルビューロヘの接続を記述することができる。
 この結果、技術的には、文化や価値観の違いを記述しやすくなったが、文化や価値観は定性的にしか記述できない部分が多く、それらを無理に定量的に記述せざるをえない点は残る。これは、試行錯誤の積み上げでしか解決できないであろう。

(2) 社会的方向
 狸褻などのコンテンツに対する法律による規制は、米国の通信品位法(CDA)が有名である。狸褻は米国でも非合法であるが、この法律には下品なコンテンツを規制する条項が含まれていたため表現の自由に抵触するとされ、昨年には最高裁と違憲判決が出される結果となった。このため、規制場所を学校などに絞った法案(SunofCDA)が議会に提案されている。ドイツでは、昨年成立したマルチメディア法の中で、実効性に限界があるとしてもあるベき姿を示すという観点から、プロバイダにコンテンツ規制責任を一部負わせることにした。
 わが国では、インターネットのホームページやパソコン通信のメッセージも対象とする青少年健全育成条例が、福岡県で昨年7月から施行されている。インターネットを対象とする風俗営業法の改正も進められつつある。
 法律による規制は、言論の自由の観点から反対が多く、また法律は国内のみを対象とするがインターネットは国際ネットであることからくる実効性の限界もあり、フィルタリングのような規制なしの解決策が求められている。これに対して、フィルタリングを義務付けることはある樺の規制であるとして、反対意見がある。したがって、フィルタリングを採用するしないは、学校であれば現場の選択にまかせる考え方が、社会的コンセンサスを得るという観点からは正解ではなかろうか。

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