2.6 レイティングソフトウェア利用の教育的有効性の評価

(1) 小学校
1) サーチエンジン使用下での突発的表示の防止
 小学校の場合、今後インターネットの利用環境が広がれば、高学年の社会科などでしばしばサーチエンジンが利用されるようになるものと予想される。リンク集を利用させているだけでは物足りず、児童が主体的に情報を選択する能力を育てるためにサーチエンジンを利用させたいと考える教師も多くなるはずである。
 このような学習指導中に、児童が意図的に悪質情報にアクセスしようとすることはあまり考えられないが、サーチエンジンを利用している最中に突発的に悪質情報を掲載したべージが表示される危険性は十分考えられる。このようなときに、レイティングソフトウェアがインストールしてあると、安心して児童にサーチエンジンを使わせることができる。レイティングソフトウェアは児童が主体的に情報を選択する能力を育てる際の隠れた支援を行うものとして、教育的価値は高いと考えられる。

2) 児童生徒による自由な閲覧の実現
 今まで学校にコンピュータを配置するとなると、「コンピュータ室」のようなところに集中して配置されるのが普通であった。しかし、これからは普通教室にインターネットの端末を設置するところも増えてくると思われる。児童が日常的にインターネットに接し、身近にインターネットを活用するためには児童が日常生活を過ごす普通教室に設置するのが一番良いからである。実際、京田辺市の小中学校ではすべての普通教室に情報コンセントが設置され、普通教室からインターネットを利用できる環境が整っている
のである。
 普通教室にインターネットの端末があると、例えば毎日の電子メールの活用やちょっとした調べものをする際にも有効に利用できる。しかし、一方で児童の日常レベルにインターネットの端末を設置するのは危険でもある。インターネットは言うなれば、社会の窓であり、そこには現実社会で起こる様々な犯罪や差別、暴力や中傷などが映し出される場合もあり得るからである。このような教育活動にとって不適切な情報をレイティングソフトウェアで遮断し、児童が安全に、しかも自由にインターネットを活用できる環境を作り上げることが大切である。この意味から、レイティングソフトウェアは児童生徒の自由なインターネット利用を支援するものとしてその教育的意義を評価できるものと考えられる。

3) ポジティブな情報のラベリングによる教育利用
 一方で、ラべル情報を積極的に活用する方法も見いだすことができる。さまざまなWebべ一ジについて教育上有益なものを積極的に評価し、教育活動に利用することも可能である。例えば、そのWebべージがどのような学年あるいは教科や単元で活用できるかといった肯定的なラべル情報をデータベース化し、それに基づくレイティングが可能であれば、大変有益な教材リソースのインデックスとなる。危険や有害だけではなく、有益という視点からラベル情報を蓄積する価値は十分あるだろう。

(2) 中学校
 レイティングソフトウェア自体は教育にとって直接効果のあるものではないと思う。
しかしながら、コンピュータを生徒に開放してインターネットを自由に使わせたいが有害情報が心配で自由に利用させられないとか、学校という学習の場にあらゆる情報が無制限に入ってくるのが好ましいことなのかと言った父兄や地域の心配に対しての一つの解決策として非常に有効であると思われる。
 また、教育用ホワイトリストなどの設置によって、インターネットを用いた調べ学習などが効率的に行われるようになるなどの効果も期待される。
 反面、有害情報が遮断されなかった場合は明らかになるが、学習にとって有益な情報が遮断されてしまった場合には、遮断されていること自体がわかりにくくなってしまうという現実もある。そのため、厳密には、フィルタリングをした場合としない場合とで、同じような課題をインターネットで解決しようとした場合、どちらが有効であったかなどの比較を行う必要があるように思う。

(3) 高等学校
 国内サイトに対するIFSの有害情報排除機能は、カテゴリーやレベルをユーザーサイドで自由に設定できるため、利用者の年齢に合わせることができるなど、大変フレキシブルに設計されており、利用し易いシステムである。
 IFSのフィルタリング機能はSaftyOnlineのラベルビューロ機能と相まって優れており、設定に基づいて大体予定通りの有害情報がブロックされ、教育的に有効である。
 高等学校のインターネット教育利用には、有害情報の排除はなくてはならない機能であるが、このIFSは高校生自らがレイティング基準を設定することができるなど・積極的な情報選択能力を鍛錬するための教材としても機能している。ただ、現在のところ管理者モードでしか設定作業ができないところなどは、今後、改善の余地があると思われる。
 実際に教育活動の中でインターネットを生徒たちが自由に利用することのメリットは、計り知れないほど大きいものがある。しかし、一方、指導教師にとっては、有害情報へのアクセスもあり得ることを考えると不安である。この点に関しても、フィルタリングソフトウェアの導入は、教育活動にとって安心感を与える効果もある。
 フィルタリングソフトウェアには、市販されているものも多いが、IFSの有害情報排除機能は、これらと比較して、なんら遜色なく、運用経費の点では、他の追従を許さないものを備えている。
 今後、社会的にレイティングシステムの普及を目指すためには、現在のNMDA開発のIFSを始めとするレイティングシステムは、その大きな牽引力の役割を果たすものと考えられる。

(4) 教育センター
 教職員の情報教育研修会等で、検索エンジンを使った情報検索を行っているが、その中でレイティングソフトウェアの紹介をした。研修でこのような仕組みがあることを初めて知6教師も多かった。研修の場で情報制限を行ったことにより、情報利用上の問題点の把握とシステムの有効性が認識され、今後のインターネット利用の教育課題として意識化が図れた。実験では、画像等の表示速度の低下してしまったことやフィルタリングが完全にできないこともあり、教育的有効性の観点からシステムを改善する必要を感じた。
 実験後行われた情報教育研究会の参加教職員72名のアンケート結果では、WWWを58%が利用しており、フィルタリングの意味を理解している教職員が51%であった。学校にレイティングソフトウェアを導入したいと思っている教職員は81%(購入47%、無料34%)であるが、個人的には利用してみたいと思っている教職員は53%(購入3%、無料50%)であった。インターネットの利用校は17校であり、何らかの方法でフィルタリングしてインターネット活用をしている学校は2校であった。この結果から考えると、教職員の意識としては、教育的観点からIFSの必要であると感じている。教育センターでは教育環境としてのネットワーク運用を進める観点から、セキュリティ、ガイドライン、フィルタリングのよる情報利用制限、有益な教育情報の提供等を積極的に行う必要がある。

[目次へ戻る] [次のページへ]